ツイログ71
先程の事など何もなかったかのように偵察に行こうとする桃城に同行を申し出た。良い奴だと正直に伝えると照れくさそうにするところも愛おしく、忍足は目を細める。それと同時に、桃城には気付かれないように、胸の内に火を灯す。
忍足は知っている。思い出した、と言う方が正しいかもしれない。この後自分達が辿る道を。コートに膝を着き、誰も折る事のできなかったものが容易く折られる姿を。あの光が消え落ちる一瞬を。ただその場から救い出すのが精一杯だった自分を。
だから、次こそは。
たとえ何が起きようと。
自分がどうなろうと。
どんな手を使ってでも。
お前だけは、俺が。
「テメーはまた勝手に突っ走ろうとしやがって」
先回りをするように男が立っていた。桃城は驚くが、忍足はその比ではない。あの時、彼はこの場に居なかった。これから二人が偵察に行く事は誰も知らない筈だ。なのに、どうしてここに居る。
「偵察だか何だか知らねぇが、お前が行くなら俺も行く。何するか分かったもんじゃねぇからな…文句は言わせねぇぞ」
桃城は驚きと喜びが混ざったような声で海堂を呼び、駆け寄った。忍足も仕方ないという表情を装い、その後に続く。
しかし内心は混乱していた。どっちだ。海堂もあれを知っているのか、それとも知らずにここに居るのか。
いや、この際海堂の事はどちらでも良い。大事なのはこれからだ。知っているなら防げる可能性は高いし、知らなくても協力者は多い方が良い。どちらだろうと、忍足がする事は変わらない。どんな手を使ってでも桃城を守ると忍足は誓ったのだ。今この場で協力するとしたら海堂以上に信用できる者はいない。腹立たしい程に自分と同類の男を、その愛が揺らぐ事のない男を、信用できないわけがない。
物語の分岐を目の当たりにした忍足は海堂の様子を伺う。宿敵の顔には忍足のように『前回』を知っているようなものはなく、ただ、清々しい程の彼氏面をしていた。
