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思春期100%


 お内裏様とお雛様と三人官女が飾られたケースの前で海堂は足を止めた。

「どーした?」

「俺の家に雛人形はねぇから、新鮮だ」

 小さいヤツだけど一応あるんだと桃城は言うが、十分立派だと海堂は返した。男二人兄弟の海堂家には雛人形はない。正確に言えばマスコットのようなかわいらしいお内裏様とお雛様だけの小さな雛飾りは毎年飾っているが、本格的な人形は店でしか見た事がなかった。
 そっかぁ、と桃城は改めて玄関に飾られた雛人形を眺める。

「鹿児島の家にはもっとデカいのがあるんだ、もっとずら〜って下まであんの。こっちの方が出すのも片付けるのも簡単だけど、デカいのも見応えあるんだぜ。アルバム持ってくるからちょっと待っててよ」

 押し込まれた居間には桃城の両親が居た。お邪魔してますとお辞儀をしている間に桃城は別な部屋に行ってしまい、海堂は焦る。桃城本人とは親しいが昔から家族ぐるみの付き合いをしているわけではないので、彼女の両親と同じ空間に残されると気まずい。

「あら〜海堂くん、いらっしゃい! 夕飯食べてく?」

「座って座って! 今お茶持って来るから…あっ、コーヒーの方が良い? それともコーラ?」

「ありがとうございます、今日は長居はしないので夕飯は大丈夫です…飲み物もお構いなく…」

 良いの良いのとあっという間にお茶とお菓子を出されも。うどん茹でるか、卵かけご飯は、煮物もあると矢継ぎ早に言われ、必死に断り続ける。自分の家に桃城が来た時も同じくらい親は歓迎するが、出そうとする物が全然違う。

「今まで雛人形は急いで片付けたけど、今年からゆっくりで良いかもねぇ」

「そうだなぁ、今どき結婚なんて早くなくても良いけど…彼氏がいるなら大丈夫かなぁ」

 何の話だと思ったが、そういえば雛人形はすぐ片付けないと婚期が遅れるという話を聞いた事がある。それにしてもわははと豪快に笑うの少し早とちりなところも桃城にそっくりだ。

「あの、桃城と…お、お宅のお嬢さんとは、その、そういう関係じゃなくて…仲良くしてもらってるというか、あの、本当に、俺にとって大切な友人で…」

「「あら〜〜〜!」」

 弁解をしたはずなのに何故か喜ばれてしまい、海堂は困り果てた。仮に彼氏だったら、こういう時父親は娘はやらんと怒るのではないか。

「あったあった、これだよ…あれ? どーしたの?」

 桃城がアルバムを抱えて戻ってきた時には、居間では小躍りする両親を前に友人が縮こまっていた。何でもないと小声で返す海堂の前にはお供え物のように食べ物が並べられていた。
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