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思春期100%


 部室では昨日のバレンタインにチョコを何個貰ったか後輩達が話し合っている。馬鹿馬鹿しいと思うが、そういう年頃なんだよと自称親友の女子は何度も言っていた。
 バレンタインに一喜一憂するのが年頃の男子だぞ、お前ももうちょっとソワソワしろよ。そう言われたのは数日前だ。何で異性の彼女に男子の年頃事情を説かれるのかは分からない。

「リョーマくんは?」

「家族以外だと桃先輩と小坂田」

「あの時の小坂田めちゃくちゃ速かったよな、越前が反応できない速さで渡すなんて並の女子じゃねーよ」

「竜崎さんからは貰ったの?」

 越前が小さい声で貰ったと返すと、三人だけでなく二年生達も駆け寄って良かったなぁと揉みくちゃにする。

「おい、部室で騒ぐんじゃねぇ」

 すいませーんと返ってくる声は楽しげで、あまり真に受けていないようだ。

「海堂先輩は何個貰ったんスか、家族抜きで」

「二個だ」

「「二個ぉ!?」」

 越前の周囲に集まっていた部員達が一気に海堂の周りに集結する。その素早さをコートの中で活かせと思ったが、突然の事に驚いて声にならなかった。

「お前っ、何だよ二個って!?」

「桃ちゃん先輩以外からチョコ受け取るなんて海堂先輩らしくないっスよ!」

「そうだぞ、怒られても知らないからな!?」

「…何が言いたいか知らねぇが、もう一つはあいつの妹からのチョコだ。桃城以外からは受け取ってねぇ」

 良かった良かったとみんなから安堵され、何が良いんだとどうにかこぼす。桃城は頑張って三個以上貰えよ」とバンバン背中を叩いてきたのだから、他の女子からチョコを貰っても怒るわけがない。

「まぁ海堂は一個だよなぁ」

「それ以上貰ったらダメだよなぁ」

「そもそも海堂先輩って桃先輩以外からのチョコは受け取らないでしょ」

「渡されたなら貰うぞ、受け取らねぇ方が失礼だろ」

「「えっ!?」」

 再び部員達に詰められ、あちこちから文句が飛んできた。そうは言われても用意してくれた物を無碍にはできないだろう。



「悪いが、受け取れない」

 そんな事を考えていたのに、次のバレンタインでは海堂は渡されたチョコを受け取れなかった。テニス部への差し入れやクラス全員に配るのであれば受け取るが、言葉と共に渡されたこのチョコは駄目だ。

「好きな相手がいるから、他の人からは貰えない」

 今年こそいっぱい貰えると良いなと笑う女子が頭に浮かぶ。付き合ってるわけではないが、彼女以外からは貰えない。去年部員達からあんなに文句を言われたのがようやく分かった。


「中学最後のバレンタインは何個貰えたんだよ?」

「一個」

「またぁ!? もー、海堂ってホントにモテないなぁ、モテないぜ…!」

「俺は一個で良いんだ」

 その唯一貰ったチョコの価値を知らない桃城は、そうかなぁと呆れたように返す。バレンタインデーは基本的にあげる側である彼女は、数ではなく誰から貰えたかが大事だという事があまりピンとこないようだ。

「友チョコ一個で良いのかよ? もっと欲張って良いのに」

「…別に、友チョコじゃなくても良いぞ、俺は」

「…あっ、そっかぁ親友チョコだよなぁ!」

 遠回しすぎたアピールは当然気付かれず、友情を喜ばれて終わりだった。今のは仕方がない、直球に言わなかった自分が悪いと海堂は自覚していた。
 だから、来年こそは。次に彼女から渡される物は、友と付かないチョコだったら良い。
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