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思春期100%

「海堂ってさぁ、バレンタインにチョコ貰えたら嬉しい?」

 突然の質問に海堂は戸惑う。自分の為に用意してくれるのは嬉しいが、「バレンタインにチョコを貰えたら」と指定されたのが引っかかった。

「テニス部の差し入れって意味か?」

「ううん、個人的に。出かけてもパフェとか食べないから甘い物好きじゃないのかなって思って」

「たしかにそんなに食わねぇが嫌いってわけじゃねぇし…貰えたら、そりゃ…」

 個人的に、バレンタインに、チョコを貰う。誰から。母はくれるだろう…そして、桃城も。
 食べたくなって袋に開けた痕跡があったり、つまみ食いをして一口分が欠けてるような、そんなチョコを貰えたら。

「…嬉しい、んじゃ、ねぇか…」

 まるで彼女から貰う事を期待しているような返答に、羞恥が込み上げてくる。顔が見れなくなって、ふいと視線を逸らした。

「そっか、じゃあユイちゃんに伝えとくな」

「…は?」

「海堂くんってチョコ渡しても受け取ってくれなそうだから聞いてきて〜って頼まれたんだよ」

 いつもしかめっ面してるからだぞと指をさされても、海堂はポカンとしたままだった。

「お前の話じゃなかったのか」

「何であたし?」

「他に貰う心当たりがねぇ」

 バレンタインと言えば家族や友人、恋人からチョコを貰う日だ。彼女はいないし友人と呼べるような女子も桃城くらいなので、他の誰かから貰うなんて考えもしなかった。それに対して寂しいなぁと桃城は呟くが、海堂はそうは思わない。

「でも良かったな、今年はあたし以外からも貰えるぞ! 最高記録更新だな!」

「別に俺はお前から貰えればそれで構わねぇんだが…」

「えー? 友チョコ一個で良いなんて欲がねーなぁ、欲がねーよ」

「そういう意味じゃねぇ」

 両手に持った大きな紙袋がいっぱいになるくらい貰えたとしても、その中に桃城からのチョコがなければきっと物足りないだろう。逆に言えば、たった一つだけでも桃城からチョコを貰えれば満足する。そんな自信が海堂にはあった。

「…お前からのチョコが一番嬉しい」

 勿論他の女子から貰ったらありがたいとは思うが、それでも一番親しい相手…彼女の言葉を借りるなら『大親友の桃ちゃん』から貰うのが何より嬉しい気がする。

「そんなに期待されたら頑張るしかねーな! 待ってろよ、桃ちゃんが世界に一個だけの愛情たっぷり大親友チョコ作ってやるからな!」

「そこまではしなくて良い」

「遠慮すんなって! あと女子にはあたしから上手く言っといてやるよ!」

「上手くって何だ、本当に大丈夫だからな」

「分かったよ、好きな人からのチョコしか受け取らないって伝えとくよ」

「まぁそれなら…!? ち、違う! いや違くねぇが、違う!!」

 真っ赤になって慌てて訂正しようとする海堂を見て、桃城も頬を赤くしながら笑った。それが冗談か本気か、海堂には分からなかった。
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