思春期100%
近所の神社では初詣の時に甘酒を配るのだと教えたら、予想通り桃城は行きたいと食いついてきた。それなら道に迷わないように案内してやると新年に会う約束をして、またデートと勘違いされる事をしてしまったと海堂は思った。来年は周囲に自分達の関係を誤解させるような事をできるだけしないという目標を立てたのに、早速これだ。
いや、そもそもそんな目標を立てる事自体が無理な話なのかもしれない。海堂だけでなく越前も竜崎との関係を誤解されるとよく言っているので、年頃の男女が二人で居ればそういう誤解をされてしまうものなのだろう。
「あけおめ!」
「明けましておめでとう。どうする、すぐに行くか、それとも家で少し休んでくか」
正月に桃城が家に来ると聞いた両親が甘い物を用意している。それを食べてからでも良いと話すと、桃城は悩みながらも誘惑を振り切った。
「準備できてるならすぐに行こーぜ、甘酒がなくなっちゃう!」
「そんなにすぐにはなくならねぇぞ」
寒くないように玄関で待たせて海堂は上着を取りに行く。ついでにマフラーを二枚持ち、首周りが寒そうだからと桃城へ一つを渡した。
「大丈夫だよ、そんなに寒くないし」
「しばらく外に居るんだからあった方が良いだろ」
今は平気でも神社から帰る頃に気温が下がる可能性もある、防寒具はないよりあった方が良い。文句は言わせないと巻いてやると、桃城は珍しく素直に受け入れた。赤いコートに白いマフラーを身に着けた桃城は、何だか縁起が良さそうに見えた。
初詣を甘く見ていた。神社は思っていたより人が多く、油断するとはぐれてしまいそうだ。海堂は桃城に腕を掴ませて少しずつ前に進む。
「何だっけ、二礼二拍手一礼?」
「そうだ。賽銭を入れたら二回礼をして、二回手を叩いて、最後に一礼」
順番が来ると二人は賽銭を入れて礼と拍手をして祈る。先輩から託された部をまとめ、勉強も怠らない…海堂は文武両道を祈願して顔を上げる。隣の桃城もほとんど同時に祈り終え、後続の為に手早く甘酒が振る舞われる列へ並ぶ。その間も二人の腕は繋がったままだ。
貰った直後に運良く飲食スペースのベンチが空き、そこに座ってやっと一息ついた。人が多いと体力だけでなく気力も使い、運動するよりも疲労を感じる。冷えていた体に甘酒が染み渡り、体の内側から温まった。
「やっぱ元旦だから混んでるな〜…あっ、後でおみくじ引こーぜ!」
「お守りも買っていくか」
甘酒を飲み終える頃には気力も体力も回復し、おみくじやお守りを扱う授与所へ向かう。
お守りを買ってから引いたおみくじを開くと、大吉の文字が真っ先に海堂の目に入った。占いはあまり信じないが、良いものが出るとやはり嬉しい。結ばずに持ち帰ろうと思いながら内容を読む。
願望や学問は良い事が書いてある…恋愛、すぐそばに。
「小吉か〜、まあまあかな」
すぐそばから聞こえた声に、海堂の手に力が入ってしまう。
「海堂は?」
「だ、大吉…」
「すげー、良かったじゃん!」
偶然だと分かっていても意識してしまうのが思春期だ。そしてこのおみくじが手元にあると今日の事を思い出しそうで、海堂は神社に結ぶ事にした。
「あれ、大吉なのに結ぶの?」
「神様と縁を結ぶって意味もあるから、良い結果でも結んで良いんだ」
「へー、じゃああたしもそうしよ」
隣におみくじを結ぶと、再び桃城は海堂の腕を掴む。もう周囲に人は多くないのに。だが海堂はそれを指摘しなかった。言ったら自分が桃城を意識しているのがバレてしまう、それは何だか恥ずかしい。
それに、まぁ、はぐれてしまうよりは良いか…と誰に向けているのか分からない言い訳を心の中で唱えながら、海堂は本当に大吉だったのか疑った。
