思春期100%
海堂が桃城から日曜日に買い物に付き合えと誘われたのは二学期の終わりも近付いた頃だった
年末まで一ヶ月を切る時期になるとコートだけでは少し心許ない 買ったばかりのマフラーを巻いて家を出る
桃城の家に着くとちょうど彼女が家から出てきたところだった 防寒対策をしてきた海堂と違い、タイツは履いてはいるが下はショートパンツでマフラーも手袋も無い
「寒くねぇのか」
「全然、海堂こそ暑くねーの? マムシだから寒がりなのか?」
「こっちが普通だ、十二月だぞ」
そうかなぁと言う桃城に持って来た紙袋を差し出す 家を出る前に母に呼び止められ、桃城ちゃんに渡してと言われた物だ
「何?」
「母さんからお前に渡すように頼まれた」
「あたしに? 何だろ、お菓子かな」
紙袋を開けると赤と白のチェック柄のマフラーとメッセージカードが入っていた 二人は驚いて顔を見合わせる
「えっ! え、こんなの貰って良いの!?」
「良いから渡したんだろ!」
中身までは知らなかった海堂も桃城と一緒に凝視する 桃城が遊びに来ると伝えると毎回嬉しそうにするのは分かっていたが、プレゼントを用意するまでだとは知らなかった
桃城はマフラーを取り出して、上に乗っていたカードを見る 短いメッセージの後に海堂薫の母よりと綺麗な文字で書いてあった
「…いつも薫と遊んでくれてありがとう、だって」
絶対にそれだけじゃないと海堂は思った 大きな紫色の目が自分に向けられる、こちらはそんなに友達が居ないのかと誤解してるに違いない
「帰りに海堂の家寄るよ、お礼言わなきゃ」
「…ああ」
桃城は早速ぐるりと軽く巻くがマフラーは長く余る部分が多い 目の前の海堂は長くてもしっくりきているのに自分のはそうではなく、桃城は首を傾げる
「何やってんだ」
「や、何か上手くいかなくて」
「…貸せ」
海堂は受け取ったマフラーを桃城に巻く 桃城はやり方を覚えようと手際よく巻いていくのを見ていたが、途中で分からなくなり首元から視線を上げた
「これで良いだろ」
直後に海堂も顔を上げる
近い
紫色に自分が映っているのに気付き、ビクリと後退った
「お、すげー! サンキュー、お前巻くの上手だな!」
急に熱くなって変な汗が出ている海堂のそばで、桃城はもこもこと巻かれたマフラーに素直に喜んでいた
「でもちょっと暑いな」
「歩いてたらすぐ寒くなるだろ…」
自分に言い聞かせるように海堂が呟く
「…だと良いけど」
桃城は頬に手を当てる 熱が引くまでにはもう少し時間が掛かりそうだった
