思春期100%
夏休みの一件以降、桃城はたまに宿題を持って海堂の家に来るようになった 今日もテストが近いけど自宅だと遊んでしまうからと言う桃城を大人しくしてるのを条件に渋々部屋にあげ、自分の筆記用具とやりかけの宿題をバッグから出す
お互い得意科目と苦手科目がちょうど入れ替わっているから分からない問題を聞き合えるのは良いが、海堂には気掛かりな事があった
「…お前、何で母さんに俺の友達って言ったんだ」
チャイムが鳴って海堂が玄関に向かおうとした時、インターホンのスピーカーから「海堂の友達の桃城ですけど、兄貴の方の海堂居ますか?」と桃城の声が聞こえてきた 応対していた母がちょっと待ってねと言ってニコニコしながら振り向くから、それはもう恥ずかしさと気まずさで複雑な心境だった
「まぁ友達じゃないけど…お前だってあたしの家に来た時にどなたですかーって聞かれたら、桃城ちゃんの知り合いの海堂ですって名乗るのかよ?」
「そんな怪しい名乗り方しねぇ」
「そーゆー事だよ、友達って言った方が自然だろ?」
そうでもないと海堂は思った 桃城が初めて家に来た日、夕飯の時の母の言葉を思い出す
『彼女がお家に来るって言ってくれたらケーキを用意してたのに』
残念そうに言われ危うく喉に詰まりそうになった 咳き込みながらただの去年の同級生だと弁解したが未だに誤解は解けていない 寧ろ友達を名乗るせいで余計に勘違いをされているように感じる
先輩から冗談で言われるのと本当にそうだと思っている親から言われるのでは受けるダメージの量はあまりにも違う 他の女子より交流が多いのは否定しない(唯一交流があると言えなくもない)が、それだけの理由で付き合ってると思わないでほしかった
「…まさか初めて家に友達来た記念に赤飯炊いてもらったとか…?」
「そんなワケねぇだろ!」
別な意味で炊かれそうにはなったとは口が裂けても言わないつもりだった
「そんなに気になるなら今度海堂があたしの家に来いよ」
「は? 何でそうなるんだ」
「お前が桃ちゃんのお友達ですって言うの聞いてみたいし」
「言うわけねぇだろ」
「絶対言う!」
「言わねぇ!」
「じゃあ来週の日曜、あたしの家で勉強会な! 逃げんじゃねーぞ!」
「誰が逃げるか、行ってやろうじゃねぇか!」
その言い合いから一週間、海堂は勉強道具を持って桃城の家に来ていた
インターホンのチャイムを鳴らすと、はーいと桃城の母らしき声がスピーカーから聞こえてくる 今まで何とも思わなかったがいざ名乗るとなると急に緊張してきた
「あの、すいません、桃城の…」
この家に居るのが全員桃城だと思い出し、すぐに長女のと付け加える
そして問題の箇所だ 隣のクラスだから同級生ではない、テニス部ではあるが男女別だ だが知り合いという不明瞭な関係性を名乗る男子は家族から怪しく思われるだろう 一瞬浮かんでしまった三文字も冗談じゃねぇ断じて違うと突き放す
そうなるともうアレしかない
「ゆ…友人の海堂ですけど、桃城居ますか…」
「居ますよぉ?」
ドアが開いてニヤニヤと笑った桃城が顔を出す
「長女の桃城って…合ってるけど」
「うるせぇ…」
「桃ちゃんって言えたら百点だったのにな ほら、入れよ」
お邪魔しますと言って家の中に入る 脱いだ靴を揃えていると後ろからパタパタと足音が聞こえてきた
「お姉ちゃん彼氏連れて来たの!?」
「彼氏じゃなくて海堂だよ、テニス部の!」
ギクリと手が止まる 同時にどこの家もそう誤解するのかと何故か少し安心した
