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思春期100%


「海堂〜」

隣のクラスだろうと構わず教室に入り前の席を勝手に拝借する女子をチラリと見てから海堂は弁当に視線を戻す 何だと興味なさげに聞けば、桃城はビニール袋からパンを出しながら笑った

「英語の教科書貸して、家に忘れてきた!」

「またか」

「な、パン一口やるから!」

一口大に千切ったパンを海堂の口元に持っていく 食べたいわけではなかったが強引に押し込まれ、半強制的に交渉を成立させられた

学年が上がりクラスが変わってから約一ヶ月、今日のように桃城は何度か教科書を借りに海堂を訪ねてきた 最初に来たのは四月の上旬、クラスメートの大半が二人を凝視した 去年の同級生以外はそれはもう驚いた 隣のクラスの明るく交友関係の広い女子が、顔が怖くて近寄りがたい男子に会いに来た 誰かと親しげに話す海堂を見た事がなく、それも相手は真逆のタイプで目を疑った 互いに語気が強くなって言い争いが始まった時は肝が冷えたが、休み時間の終わりが近付くと海堂が押し付けるように教科書を渡し、次の休み時間には桃城が笑顔で礼を言って返しに来て、ただただ首をひねるしかなかった
今では同級生達も見慣れ、海堂の事も思ったより話しにくい相手ではないと認識するようになった そして二人が付き合ってると誤解するようにもなった

「食い終わったら渡すから待ってろ」

「サンキューマムシ! …あ、卵焼き貰って良い?」

海堂が答える前に「こっちもやるから」と別なパンを開けて千切った 断ってごねられても嫌だから蓋の上に置いておけと許可した瞬間いただきますと元気な声が聞こえてくる

「やっぱり海堂の弁当ってうまいな!」

母の作る料理が美味しいのは知っているが、桃城が食べる様子を見ると尚更そうだと思う 弁当のおかずも、購買のパンも、ハンバーガーも、何でもそう思う

「そーだ、あとこれ」

「パンならいらねぇぞ」

「パンはもうあげねーよ」

持ってきたビニール袋を海堂に渡す ゴミじゃないだろうなと疑いながら受け取るとピンクの何かが透けていた
ピンク色の物は包装紙だった 留めてあるシールを剥がして開けば、中に紺色のバンダナが入っていた

「誕生日だろ、おめでと!」

浮かんだ言葉は一つだけではなく、渋滞してしまい口から出てこない 素直な礼はあっと言う間に最後尾に取り残されたが、それでは負けたようで悔しいと何とか絞り出す

「…今日、使う」

それが最大級の感謝の言葉だと桃城は気付き、大事に使えよと笑って返した
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