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思春期100%


桃城は焼き色のついたチーズケーキの表面に包丁を入れた ゆっくりと刃が沈んでいき、砕いたビスケットが敷いてある底だけ少し力を込める 切り分けた物を皿に乗せるとクリーム色のしっとりとした断面が見えた 今すぐつまみ食いをしたい気持ちを抑えて残りを箱に戻し、食べられないように自分の名前を書いて冷蔵庫に入れる

二つの皿を持って部屋に戻ったが、両手が塞がっている為ドアのが開けられず、中で待っている海堂に声を掛けた

「海堂、ドア開けて」

少し待つとドアが内側から開いた 礼を言って中に入ると、自分の分があるのを見て先月の桃城同様いらないと海堂は呟く

「でもバレンタインにあたしも食べたんだから、海堂も食べないとフェアじゃないだろ」

それを言われてしまうと押し付けるように渡された皿を拒否できなかった 急かされるままに桃城の向かいに座り、フォークを取る

「いただきまーす!」

大きめの一口大に切ったケーキを口に入れる ん、と声をあげる桃城に妙にソワソワとした気持ちで見ていた海堂はギクリとした

「…うまい!」

満面の笑みを浮かべる桃城を見て静かに息を吐く 何でもよく食べる事は分かっているが、実際に良い反応をされると安心する

「これ海堂が作ったんだろ、すげーなぁ、すげーよ!」

素直に褒めちぎられるとさっきまでとはまた違ったむず痒さを感じた

「混ぜて焼いただけだ、お前でも作れる」

「何だよそのビミョーに棘がある言い方…じゃあ今度作り方教えろよな」

ニコニコと食べ進める桃城の様子を眺めながら海堂もケーキを食べる 最初は何度か見ていたがあまりにも美味しそうに食べるものだから逆に落ち着かなくなり、途中からほとんど顔を上げられなかった


食べ終えた海堂は持ってきた荷物の中からラッピングされた包みを出した 母と桃城以外で海堂にチョコを渡した珍しい女児にもお返しを渡さなければいけない

「妹は居るか」

「今出かけてる、お返しなら渡しとこうか?」

「食うなよ」

「食べねーよ!」

疑惑の目を向けつつも他に手は無く桃城へ預ける 失礼な奴とムッとして横に置く桃城に海堂はさらに別な包みを渡した

「こっちは母さんからだ」

バレンタインに「大きめに作ったからお母さんにも分けてあげて」と桃城から頼まれた海堂は貰ったガトーショコラの一切れを母に渡していた そのお返しにと昨夜母から預かったのがこの包みで、中身は海堂も知らない 頼むからただのお菓子であってくれと内心祈りつつ桃城に手渡す

「お〜…何か凄そうだな…後でちゃんと言うけど、帰ったらありがとうって伝えといて」

開けて良いかと聞く桃城に頷き、手を止める 少し躊躇いながらも海堂は荷物の中から小さい袋を取り出した

「…これもだ」

ラッピングを丁寧に開けようとしていた桃城が中断して袋を受け取る 礼を言いながらシールを剥がして中身を見た

「あ、ハンドクリームだ」

「使うか」

「たまに使ってる…あっ! ピーチティーの香りだって!」

蓋を開けてクリームを手の甲に少しだけ乗せる 塗り広げると爽やかな甘い香りがした しっとりと潤うがベタつかず、すぐに漫画やスマホを持てそうだ

「良い匂いだなー、海堂も使ってみろよ」

「お前のだから自分で使え」

「せっかくだからちょっとくらい試せって」

「いらねぇ、店で散々試した」

「え、これ海堂が選んだの?」

しまったと思った時には桃城と目が合った 母からのお返しのどさくさに紛れさせたのに墓穴を掘ってしまった

「…桃ちゃんだからこれ選んだんだな?」

どうして桃城に桃と関連する物を贈ろうと思ったのか、どうしてこんなに恥ずかしく感じるのか 押し寄せる気持ちに揺さぶられながら必死に言い訳を探す

「うるせぇ…それが…いや、それしか…」

何度も言い直したが上手く誤魔化せそうな言葉が見つからず、何でもないと終わらせる
海堂の動揺が伝染したのか、桃城までソワソワしてきた

「あ…ありがとな!」

「…おう…」
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