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思春期100%


「はい、部活お疲れさん! 疲れた時は甘いモン食べるのが一番だぞ!」

「「桃ちゃん先輩ありがとうございますっ!」」

「これが義理チョコだからな越前、初めて貰っただろ?」

「義理チョコくらい知ってるけど…ふーん、ちゃんとつまみ食いしなかったんだ」

桃城は部活を終えた男子テニス部を訪れ、一年生にチョコを配る 大半が先輩からの差し入れに素直に喜ぶ中、越前だけは食べかけではなかった事に感心していた

「残念でした! あたしの分は別にキープしてんの!
…あ、二年生はこっちな 一年生が頑張ってんだからお前らも気合いれろよ」

「はぁ!? 俺らも!?」

一口チョコのアソートパックを渡された荒井は慌てる 部長に殺される、死にたくないと他の部員達も怯えた

「女子テニス部二年生一同からの差し入れだからありがたく食べろよ 勿論ホワイトデーは三倍のお返しよろしくな!」

「ぜ、全員かよ…」

桃城個人からのチョコではないと聞いてざわついていた二年生は安心する お返し目当ての割り勘差し入れだろうと命が助かって良かった

「…何で全員残ってんだ」

施錠しようと出てきた海堂が部室の前でたまっている部員達を見る 背後から聞こえてきたド低音に驚く男子を他所に桃城はゴソゴソとバッグを漁り、海堂に包みを押し付けるように手渡す

「海堂はコレな!」

そのハート柄のかわいらしい袋は海堂だけでなくその場に居た全員が凝視する どっちだ、本命の証か、それとも一番安い袋か…どっちでも良いけど堂々と渡されると見てる方が恥ずかしい、でも見たい そんな複雑な心境から目を離せずにいた

「妹から海堂くんに渡しといてーって頼まれてさぁ」

「妹?」

海堂は思わず桃城を見つめる 一応「妹が自分の分も用意したのか」くらいのつもりだったが、桃城を含め海堂以外の全員が「お前のチョコはどうした」という意味だと捉えた
あはは…とわざとらしく桃城は笑い、軽く手を上げた

「ごめんっ! あたしも作ったけど部屋に忘れて来た!」

ピシリと海堂が固まった
貰える事が確定していた筈の本命チョコを忘れられたのか 二人の関係を誤解している部員達は同情のあまり誰も声を出せない

「ホントにごめんって! そんなにがっかりすんなよ、後で持ってくから!」

「別にがっかりしてねぇ…おい叩くな」

桃城にバシバシと背中を叩かれている海堂を部員達は見守る 手作りなんだ、持ってくんだ、としみじみ思いつつ、分かりやすくショックを受けている海堂という貴重な光景が見れたのは少し面白かった


送るついでに受け取ると申し出たが桃城はすぐに持っていくから今日は送らないでまっすぐ帰れと言って聞かず、仕方なく海堂は家で待つ事にした 勉強や宿題に関係なしに桃城がただ遊びに来る事はほとんどなかった だから何だというわけではないが、友達のようで何となく落ち着かない
インターホンのチャイムが鳴った瞬間に立ち上がり玄関に向かう ドアを開けるとまだ母とインターホン越しに話していた桃城が驚いて海堂を見た

「ごめん、待った?」

「…いや」

そう言われるとまるで桃城が来るのを楽しみにしていたかのようで、反射的に否定する
飲み物を持って来るから先に部屋に行ってるように告げて台所へ寄ると既に母が紅茶を淹れてお盆に乗せていた

「お菓子はどれにする?」

「あ…いや、今日はなくて良い…」

歯切れ悪く言うと、そうだと思ったと言うように微笑まれた

飲み物だけを持って海堂が部屋に戻る 薄いピンク色の来客用カップと自分のカップが並んでいるのもすっかり見慣れてしまった

「クリスマスの礼もあるし、ちょっと頑張ってみたんだ」

桃城は持ってきた箱をテーブルに乗せて開ける 中に入っていたガトーショコラを見て自分で作ったのかと聞けば得意げに肯定する

「まぁ混ぜて焼くだけの簡単なヤツだけどさ …レシピ通りに作ったから味は多分大丈夫だと思うけど」

「多分って何だ」

「味見してないし」

「お前が?」

海堂は意外そうに桃城を見つめる クリスマスにつまみ食い阻止を頼んできた彼女の事だから食べかけを渡されても仕方がないくらいに考えていたのに、試食もしていないとは思わなかった

「だってつまみ食いしたら欠けちゃうだろ 凄いの渡してやるって決めてたんだからな」

桃城は紙の焼き型がついたままの丸いガトーショコラを見るが、海堂は桃城から目を離せなかった
あの食い意地の張った桃城が、つまみ食いよりも綺麗なまま渡す事を優先した
やればできるんだなと感心し、カップを乗せてきたお盆にガトーショコラを乗せて立ち上がる

「切ってくるから待ってろ」

「え、あたしいらないからな お母さんと分けろよ」

「毒味だ」

「毒味って何だよ!」

文句を言う桃城を部屋に残して海堂は再び台所に行く 背後から暖かい目で見守られているのを感じながらガトーショコラを切り分け、フォークを持って部屋に戻った

「ホントにいいのに…」

「似合わねぇから遠慮なんかするな」

皿を押し付けると桃城は渋々受け取る せめてそっちが先に食べろと言われ、海堂はフォークでガトーショコラの端を一口大に切る 口に入れて飲み込むまでの間ずっと見つめられ全く落ち着かなかった

「どう? うまい?」

「…ああ」

「そっか!」

嬉しそうに桃城が笑い、自分もフォークを取る

「…うまっ! 海堂にあげんの勿体ねーなぁ、勿体ねーよ!」

「さっきまでいらねぇって言ってただろうが」

貰った本人よりも喜んで食べている桃城を見て、海堂は改めて遠慮が似合わない奴だとカップで隠した口元を緩ませる
同時に桃城が頑張ったなら自分が手を抜くわけにはいかないとも考え、少し早いが来月に向けて気合を入れた
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