思春期100%
ここは音声認証でドアが開く部屋です、男子が女子に向かってかわいいと言ったとAIが判断したらドアが開きます
ドアに掛けられたホワイトボードにはそう書いてあった 読み終えた桃城は変な部屋だなと軽く思いながら、自分とは対照的に考え込んでいる男子を見上げる
「…そんな難しい顔するなよ」
「うるせぇ…」
これが同じクラスの男子や後輩なら実際は思ってなくても言えるだろう だが相手は思ってない事は言わない海堂だ、長丁場になる事は間違いない
「まぁそんなに急がなくてもいっか、海堂が頑張ればすぐ出られるもんな」
文章の最後には部屋の食べ物や飲み物はご自由にどうぞと補足があった どうせ時間が掛かるんだからくつろごうと桃城はドアから離れて冷蔵庫を開ける
「海堂! ケーキ入ってる!」
「バカ、怪しいから食うな!」
「でもご自由にどうぞって書いてるし」
「注文の多い料理店授業でやっただろ!」
「大丈夫だって、服脱げとかクリーム塗れとか書いてないから!」
棚から皿とフォークを出し、テーブルにケーキと一緒に並べる 腹が減っては戦はできぬって言うだろと謎の説得を受け、渋々海堂は電気ケトルでお湯を沸かして飲み物の準備をする 淹れた紅茶を持っていくと桃城は礼を言ってケーキが乗った皿を渡した
食べる準備はしたものの、やはり怪しいと躊躇う海堂の目の前で桃城はいただきますと言ってケーキを口にする うまいと目を輝かせて食べ進める様子に警戒しているのが馬鹿らしくなり、海堂もケーキを食べ始めた
「なぁなぁ、海堂がかわいいって思う女子ってどんな感じ? 同じ学年なら誰?」
「興味ねぇ」
「じゃあ芸能人は?」
「…知らねぇ」
「えっ、一人くらい居るだろ!」
桃城は同学年の女子や人気アイドルの名前をあげていくが、良い反応は見られない
「じゃあ年下は? うちの妹とか」
「思ってたらまずいだろうが」
「まぁロリコンだよな…えー、海堂がかわいいって思いそうな女子…かわいい女子…
…あ、あたしか!」
呆れられる前に「なんつって!」と言うつもりだった だが一文字目のなを言うのと同時に海堂が激しく咳き込んだ
「どーした海堂!?」
「…ッ、何でも、ねぇ…っ…!」
桃城は慌てて立ち上がり、海堂の背中をさする
「冗談だって、そんなに驚くなよ…たしかにめちゃくちゃかわいくはねーけど何か傷つくだろ」
「…別に、かわいいだろ…」
掠れた声で呟いた直後、「ロックを解除しました」と機械的な音声が流れてきた
「…違う! か…かわいくなくはねぇって意味だ!」
うっかり溢してしまった本音に海堂は焦って弁解する 苦しすぎる言い訳なのは言った本人も理解していた
キョトンとした表情で聞いていた桃城は笑って海堂の背中をバシバシと叩いた
「何だよ、海堂も少しは女子に対する気遣いが分かってきたんだな!」
そこまでかわいくないと言った事に対するフォローだと解釈したらしい 特に気にした様子もなく、これ食べたら出ようなと桃城は自分の席に戻る
誤魔化せて良かったような、何でこんなので誤魔化せるんだと思うような…そんな複雑な気持ちは言えるわけもなく、追及されなくて良かったと海堂は無理矢理飲み込んだ
