仮装
しかし海堂の予想は当たらず、三着目のゴーストメイド服は金色が着る事になった。理由は単純に、真田が着るには少し小さかったからだ。
「真田副部長、新しい仮装っスよ! 魔女のワンピース!!」
「だから何故女装なのだ!!」
「そんなの俺が見たいからに決まってるじゃないスか!!」
ストレートに告げられ、真田はたじろぐ。そして躊躇いつつも魔女のワンピースを受け取り、更衣室へ向かった。
「…真田が魔女をやるなら赤也は使い魔の仮装をしたらどうじゃ」
「えっ」
「使い魔と言えば黒猫が一般的ですね」
「猫耳!?」
「ですが『男は狼』という言葉もあるので、狼男はどうでしょう? ハロウィンにピッタリですよ」
「というわけじゃ、この狼男の仮装セットを使いんしゃい」
「あー、それなら…って何スかその首輪とリードは!? SMプレイは趣味じゃないっスよ! 柳さんと海堂に渡してくださいよ!!」
「騒がしいぞ赤也!! 静かにせんか!!」
更衣室から出てきた真田の体はパツンとあちこちが張ったミニスカワンピースに包まれていた。本当はもっと丈に余裕があるのだが、サイズが合わず筋肉に持ち上げられた裾は危うい長さになっている。広い歩幅でズガズガと歩くとさらにずり上がって足の付け根の近くまで見えそうだ。
たくましい太ももに見惚れていた切原だが、すぐに仁王と柳生もミニスカ魔女姿の真田を見ていると気付き、脚を隠すように抱きついた。
「真田副部長!! 生脚はヤバいんでタイツ履いてください!! 仁王先輩と柳生先輩が副部長をエロい目で見てる!!」
「何っ!?」
「誤解ですよ二人共」
「柳生はともかく俺にそんなマニアックな趣味はないぜよ」
「仁王先輩が誤魔化すって事はやっぱエロい目で見てる証拠じゃないスか!! ヤダ〜〜〜ッ!!」
「今のは本当に正直に言ったんじゃが」
「日頃の行いですよ」
一方少し離れた廊下に居た海堂と桃城の耳に先程の切原の叫び声が届いた。
「…切原が海堂はSMプレイが趣味って叫んでなかったか?」
「名誉毀損で訴える」
エプロンの後ろのリボンを結んでやりながらゴースト執事が呟き、ゴーストメイドの仮装をしている桃城を見る。
「何でこんなにスカートが短ぇんだ…」
黒とグレーの落ち着いた色合いなのにスカート丈は下着が見えそうなくらいで、海堂はモヤモヤとした気持ちがこみ上げてくる。同じゴーストメイド服を着ている乾はロングスカートのクラシックなメイド服なのに、どうして桃城はミニスカートなのか。そしてどうして女装をしてケロッとしているのか。不思議で仕方がない。
「長いスカートだと裾踏んじまいそうだから助かったぜ!」
裾を踏むよりももっと他にいろいろある…そう言っても普段はできない仮装を楽しんでる桃城には通じないだろう。
「海堂はデカいサイズ選んだのに肩幅ギリギリだな、入って良かったな」
振り向いた桃城は海堂の窮屈そうな肩や腕をさする。ベビーパウダーを付けられた顔はうっすらと白く、ゴーストメイドの仮装に合っていた。
自分を見つめている海堂を見上げ、桃城は笑う。
「こーゆー服も似合うだろ?」
「…見れなくもねぇ」
「素直じゃねーなぁ、素直じゃねーよ…そんな奴にはイタズラするしかねーよな?」
ゴーストメイドは勝ち誇ったようにトリックオアトリートと問いかける。しかしゴースト執事はジャケットのポケットからチョコを取り出し、桃城へ差し出した。
しばらくの沈黙の後、桃城は海堂に抱きつき無理矢理お姫様抱っこをさせる。
「おい! 重てぇだろうが!」
「サービスしてやってんだからありがたく思え!」
「二人共何してるんスか」
「越前、取り込み中だから二人きりにしてあげよう」