「何っ!! 山の祠を壊しただと!?」

「違うんスよ!! 海堂と桃城が喧嘩したから俺達止めたんスよ!! そしたら何か知らねーけどピタゴラスイッチして俺が投げ飛ばされてたまたま祠が下敷きになっただけで、わざとじゃないんスよ!!」

 言い訳ではなく本当だと付き添いの日吉が補足すると、真田もひとまずは納得する。

「それからずっと切原が肩が重いとか頭が痛いとか寒気がすると言ってるんですよ。手足に謎の痣も浮かんでいるし…これは完全に憑かれたな。あの祠に何が祀られていたか調べる必要があるぞ」

「何で嬉しそうなんだよ!?」

「…赤也」

「何スか副部長…」

「たわけッッッ!!」

 合宿所全体に轟くような喝の直撃に切原は吹っ飛んだ。かろうじて日吉は耐えたが、頭の中で喝がビリビリと響いて振動しているような感覚に襲われる。

「祠を壊すのもそうだが簡単に投げ飛ばされるなど鍛えてない証拠だ!! たるんどる!!」

「すいませんっしたぁ!! …あれっ?」

 切原はぐるりと腕を回す。それからぺたぺたと手足を触り、額に手を当てた。

「か…肩が軽い! 頭痛も痛くない! 寒くもないし痣も消えた!!」

「頭痛が痛いは間違った日本語だぞ。だが症状が消えたという事はあの一喝で祓われた…? 真田さん、もしかして退魔師の末裔か何かですか?」

「む…そう言った話は一度も聞いた事はないが…」

「つまり悪霊とか神様より真田副部長の方が怖いって事か! すげー納得!」

「何だと!? …まぁ良い、それより怪我はないのか。祠が壊れる勢いで投げ飛ばされたんだろう」

「いでででで! 大丈夫っス…いだっ! 副部長、そんなにグリグリしないでくださいよ!」

 真田は切原の顔や腕に触れ、擦り傷や痣がないか確認する。ぐいぐいと強く探られ切原は呻くが、横で見ていた日吉はあの一喝に何故魔除けの効果があったのか察した。
 古今東西、愛で解決できる物事は多いものだ。
 それか本当に切原に憑いていた何かより真田の方が怖かったかだ。
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