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ゴナドトロピン
なんでだ。
なんで1週間前に別れた彼氏が木の葉の大門に立っているんだ。
今日の任務はアスマさんとのツーマンセルのはず、だから安心していた。この任務が終わればアスマさんに大事な話をしようと思っていたあたしの計画は彼が愛読書を軽く上げて「よっ」と言った時点で水の泡となった。
あたしの有終の美をもグダグダにしてくれるのか。この男は。
「アイツ急遽別任務でさ。オレが代行なわけ。」
と、普段通りの口調にいささか拍子抜けする。
「だからさ、致し方ないのよ。まあ、オマエにとっちゃ不本意だろうけど、任務だし?
そんな顔しないの。」
「……別にいつも通りだけど。」
彼が来たからといって何かが変わる訳でもなく。もちろんあたしの決意や覚悟が揺らぐ訳でもない。
だから、カカシはただのピンチヒッター。それだけだ。
ちょっと癪なのは彼の態度が本当に普段通りなこと。所詮あたしとの別れなんかとるに足りない日常ってやつですか。
意識するまいと思ってみても、やはりあたしの顔は強張っていて。反対にカカシの片目はハの字に下がり、口布で覆われていても表情が緩んでいるのが分かる。
……あたしと別れてもそんな余裕ですか。
このまま彼のペースで進められるとどこかでボロが出てしまうかもしれない。若干の不安を払拭するようにあたしは先手を切って走りだした。
鬱蒼と茂る木々の間をひたすら目的地に向かい跳躍し続ける。
以前なら彼と組む任務であれば、任務に私情は禁物ではあるが嬉しさのあまり意識せずとも彼の姿を目で追っていた。
それが今日は真逆だ。
意識をして彼を極力視界に入れまいとしている。
でなければ張り詰めたあたしの決意が揺らいでしまうかもしれないから。
* * * * *
廃村での盗賊討伐は意外な程に呆気なく終了した。
相手数が2人と少なかったのもあるが、あたしに戦う隙間も与えてくれない程にカカシの戦闘は圧倒的だった。
敵があたしの脇腹に蹴を食らわせかけた時のカカシの殺気は…本当に凄まじかった。あたしだって仮にも上忍。みすみすやられるわけはないし、蹴りが当たることもなかったのだけれど。あたしが反撃する前にカカシが雷切で全てを終わらせていたのだった。
体力をあまり消費することもなく、無傷で木の葉へと帰還できているのは、反比例して忍服が汚れているカカシのおかげだけれども。
これでいよいよあたしの忍としての任務は終了するのだ。
「っ!!!」
「##NAME1##っ!」
ほんの一瞬の気の緩みだった。思いもよらないところで跳躍するはずの枝を踏み外してしまった。
しまった。と思った瞬間にはカカシの腕に抱き留められていたが。
馴染みのある暖かさと、そして不意に重なる視線。どちらも今のあたしには胸の奥を絞られる軋む痛みにしかならない。いたたまれずその腕を押し退けて視線を外した。
「大丈夫?少し休もうか?」
「あたしなら、平気だから。このまま行けるから。」
「…まあそう言わずにさ、オレがちょっと疲れたんだよね。そこでちょっと休ませてヨ。」
お礼も言わず、ニコリともしないあたしを気にする風でもなく、けれど《疲れた》なんて言えば否とは言えないこともカカシは計算づくなのだろう。
そのまま先に大木の根元に寄り添って腰を下ろしてしまった。
仕方なくあたしもカカシに続き、のろのろと腰を下ろしたのだけれど。
「…で、##NAME1##はどうしたいわけ?」
「えっ?!」
予想はしていた問いなのに動揺丸出しのあたしの声は酷く間抜けなものだった。
「なんで急に別れるなんて言ったの?オレは全く意味が分からないし、その理由も理解できないんだケド。」
「…好きじゃなくなったって言ったでしょう。」
「それだけ?なら尚更理解できないヨ?
何か特別なワケでもあるの?」
困ったように片目を下げた笑顔を向けているけれど、徐々に彼は核心を突いてくる。
普段の喧嘩程度ならここら辺で折れてしまうかもしれないけれど、ごめんねカカシ。今回ばかりは駄目なんだ。
ごめんね。本当は大好きだけれど。
「別にワケなんてないよ。嫌いになったの。正直、顔も見たくない、の。」
そう言った途端にお腹の底がきゅうと引きつれたような軽い痛みを感じた。
ああ、お腹の子が怒ってるんだと思った。まだ2センチにも充たない身体で胎動なんてまだまだ先なのに、精一杯の抗議を訴えてるんだ。
嘘を通すあたしに。
そして、全てにおいて完璧なはたけカカシが唯一計算違いをしたことについて。
だからこそ彼には悟られずに覚悟を貫き通さなければいけない。
里を出てお腹の子と生きていく覚悟を。
カカシはあたしが知らないと思っているだろうけど、知っているんだよ。あなたに幾つもの大名筋からの縁談話が来ていることを。
そしてそれを尽く断っていることを。
カカシ、あなたにとってあたしが足枷になるような、負担になる存在にはなりたくない。
カカシ、あなたは他国にまで名が知れ渡っている優秀な忍。木の葉の、火の国の言わば動脈のような存在だから。だからこそ、あたしみたいな何の取り柄もないくのいち風情が傍に居れば、必ずあなたの足を引っ張る事になる。
ましてや子どもまで出来たとなると、あなたの弱みを増やすことになるだろうから。
けれど今日の任務にカカシが来るなんて予想外だったから、カカシを納得させるだけの言葉は持ち合わせていない。
それでもカカシが納得しようがしまいが明日からは彼とは無関係に生きていくのだ。
「ねえ、お前なんか隠してるでしょ。」
隣の足元の土がジャリッと鳴って、彼が立ち上がった。
どくりと心臓が大きく鳴り響く。
「何のためにオレが今日の任務無理やり代わって貰ったと思う?」
頭上で彼の声が心地よく響いてくる。一体何を言おうとしているのか解りかねて顔を挙げると、少し目を細めた切ない表情のカカシがいた。
もしかして、まさか…という嬉しいのか不安なのかもうワケのわからない感情が一気に頭を駆け巡る。
「お前の口からちゃんと聞きたかったんだけどね。やっぱり待ちきれないヨ。
ありがとう##NAME1##
オレに家族を与えてくれて。」
不意討ちのようにカカシの発した言葉の意味が理解出来なかった。目の前の視界が遮られて暖かな温度を感じるまで自分が抱き締められていることに気が付けなかった。
「…知ってたの?……いつから?。」
「予想はしてた。」
「予想?なんで?」
「…お前が宴会の時に酔ってたあの夜から。」
「でも、あの時カカシも酔ってたよね?だから…」
失敗したんじゃないの?
「失敗なんかしてないヨ。酔ってたのはお前だけでしょうよ。」
そう言ってニヤリといたずらっ子の様に笑うカカシを見て、ようやく全ては彼の計画通りなんだと理解した。
ああ、やっぱり彼は完璧なはたけカカシだったんだ。
ぽろぽろとあたしの決意が崩れていき、安心したように身体から力が抜けていくのを感じた。
けれど、情けなくもあたしの口から出てくるのは押しつぶされそうになる不安要素でしかなく。
「あたし…きっとカカシの弱みになっちゃうよ……。だから…」
だからこそ決意してたのに。と言おうとする前に背中に回された腕に力が入ったのを感じた。
「違う。逆だよ##NAME1##。オレの家族は強みになる。それも絶対的なね。
ねえ、##NAME1##、オレは《写輪眼のカカシ》だよ?」
ああ、やっぱり彼にはかなわない。
彼のその言葉は揺るぎない自信に満ちていて。
それはカカシ自身に課せられた重圧やら使命やら立場やら、全てを引っ括めて理解しているからこそ繰り出される言葉なんだと思った。
それでもこれから先のことを考えると、木の葉の上層部や相談役達が渋い顔をするのは予測出来ることだけれど。
「まずは帰って綱手様に報告だ~ね。」
その後でアスマかな、なんて呑気に笑顔で話すカカシを見ていたら、なんとでもなるような気になってきたから不思議だ。
「じゃあ、帰りますか。」
「…うん。」
差し出されたその手に素直に従い繋ぎ合う。
カカシの手から流れてくる体温は、優しいけれど強くて、逞しくて、そしてあたし達にとって絶対的な強みになるんだと、実感できた。
End
なんでだ。
なんで1週間前に別れた彼氏が木の葉の大門に立っているんだ。
今日の任務はアスマさんとのツーマンセルのはず、だから安心していた。この任務が終わればアスマさんに大事な話をしようと思っていたあたしの計画は彼が愛読書を軽く上げて「よっ」と言った時点で水の泡となった。
あたしの有終の美をもグダグダにしてくれるのか。この男は。
「アイツ急遽別任務でさ。オレが代行なわけ。」
と、普段通りの口調にいささか拍子抜けする。
「だからさ、致し方ないのよ。まあ、オマエにとっちゃ不本意だろうけど、任務だし?
そんな顔しないの。」
「……別にいつも通りだけど。」
彼が来たからといって何かが変わる訳でもなく。もちろんあたしの決意や覚悟が揺らぐ訳でもない。
だから、カカシはただのピンチヒッター。それだけだ。
ちょっと癪なのは彼の態度が本当に普段通りなこと。所詮あたしとの別れなんかとるに足りない日常ってやつですか。
意識するまいと思ってみても、やはりあたしの顔は強張っていて。反対にカカシの片目はハの字に下がり、口布で覆われていても表情が緩んでいるのが分かる。
……あたしと別れてもそんな余裕ですか。
このまま彼のペースで進められるとどこかでボロが出てしまうかもしれない。若干の不安を払拭するようにあたしは先手を切って走りだした。
鬱蒼と茂る木々の間をひたすら目的地に向かい跳躍し続ける。
以前なら彼と組む任務であれば、任務に私情は禁物ではあるが嬉しさのあまり意識せずとも彼の姿を目で追っていた。
それが今日は真逆だ。
意識をして彼を極力視界に入れまいとしている。
でなければ張り詰めたあたしの決意が揺らいでしまうかもしれないから。
* * * * *
廃村での盗賊討伐は意外な程に呆気なく終了した。
相手数が2人と少なかったのもあるが、あたしに戦う隙間も与えてくれない程にカカシの戦闘は圧倒的だった。
敵があたしの脇腹に蹴を食らわせかけた時のカカシの殺気は…本当に凄まじかった。あたしだって仮にも上忍。みすみすやられるわけはないし、蹴りが当たることもなかったのだけれど。あたしが反撃する前にカカシが雷切で全てを終わらせていたのだった。
体力をあまり消費することもなく、無傷で木の葉へと帰還できているのは、反比例して忍服が汚れているカカシのおかげだけれども。
これでいよいよあたしの忍としての任務は終了するのだ。
「っ!!!」
「##NAME1##っ!」
ほんの一瞬の気の緩みだった。思いもよらないところで跳躍するはずの枝を踏み外してしまった。
しまった。と思った瞬間にはカカシの腕に抱き留められていたが。
馴染みのある暖かさと、そして不意に重なる視線。どちらも今のあたしには胸の奥を絞られる軋む痛みにしかならない。いたたまれずその腕を押し退けて視線を外した。
「大丈夫?少し休もうか?」
「あたしなら、平気だから。このまま行けるから。」
「…まあそう言わずにさ、オレがちょっと疲れたんだよね。そこでちょっと休ませてヨ。」
お礼も言わず、ニコリともしないあたしを気にする風でもなく、けれど《疲れた》なんて言えば否とは言えないこともカカシは計算づくなのだろう。
そのまま先に大木の根元に寄り添って腰を下ろしてしまった。
仕方なくあたしもカカシに続き、のろのろと腰を下ろしたのだけれど。
「…で、##NAME1##はどうしたいわけ?」
「えっ?!」
予想はしていた問いなのに動揺丸出しのあたしの声は酷く間抜けなものだった。
「なんで急に別れるなんて言ったの?オレは全く意味が分からないし、その理由も理解できないんだケド。」
「…好きじゃなくなったって言ったでしょう。」
「それだけ?なら尚更理解できないヨ?
何か特別なワケでもあるの?」
困ったように片目を下げた笑顔を向けているけれど、徐々に彼は核心を突いてくる。
普段の喧嘩程度ならここら辺で折れてしまうかもしれないけれど、ごめんねカカシ。今回ばかりは駄目なんだ。
ごめんね。本当は大好きだけれど。
「別にワケなんてないよ。嫌いになったの。正直、顔も見たくない、の。」
そう言った途端にお腹の底がきゅうと引きつれたような軽い痛みを感じた。
ああ、お腹の子が怒ってるんだと思った。まだ2センチにも充たない身体で胎動なんてまだまだ先なのに、精一杯の抗議を訴えてるんだ。
嘘を通すあたしに。
そして、全てにおいて完璧なはたけカカシが唯一計算違いをしたことについて。
だからこそ彼には悟られずに覚悟を貫き通さなければいけない。
里を出てお腹の子と生きていく覚悟を。
カカシはあたしが知らないと思っているだろうけど、知っているんだよ。あなたに幾つもの大名筋からの縁談話が来ていることを。
そしてそれを尽く断っていることを。
カカシ、あなたにとってあたしが足枷になるような、負担になる存在にはなりたくない。
カカシ、あなたは他国にまで名が知れ渡っている優秀な忍。木の葉の、火の国の言わば動脈のような存在だから。だからこそ、あたしみたいな何の取り柄もないくのいち風情が傍に居れば、必ずあなたの足を引っ張る事になる。
ましてや子どもまで出来たとなると、あなたの弱みを増やすことになるだろうから。
けれど今日の任務にカカシが来るなんて予想外だったから、カカシを納得させるだけの言葉は持ち合わせていない。
それでもカカシが納得しようがしまいが明日からは彼とは無関係に生きていくのだ。
「ねえ、お前なんか隠してるでしょ。」
隣の足元の土がジャリッと鳴って、彼が立ち上がった。
どくりと心臓が大きく鳴り響く。
「何のためにオレが今日の任務無理やり代わって貰ったと思う?」
頭上で彼の声が心地よく響いてくる。一体何を言おうとしているのか解りかねて顔を挙げると、少し目を細めた切ない表情のカカシがいた。
もしかして、まさか…という嬉しいのか不安なのかもうワケのわからない感情が一気に頭を駆け巡る。
「お前の口からちゃんと聞きたかったんだけどね。やっぱり待ちきれないヨ。
ありがとう##NAME1##
オレに家族を与えてくれて。」
不意討ちのようにカカシの発した言葉の意味が理解出来なかった。目の前の視界が遮られて暖かな温度を感じるまで自分が抱き締められていることに気が付けなかった。
「…知ってたの?……いつから?。」
「予想はしてた。」
「予想?なんで?」
「…お前が宴会の時に酔ってたあの夜から。」
「でも、あの時カカシも酔ってたよね?だから…」
失敗したんじゃないの?
「失敗なんかしてないヨ。酔ってたのはお前だけでしょうよ。」
そう言ってニヤリといたずらっ子の様に笑うカカシを見て、ようやく全ては彼の計画通りなんだと理解した。
ああ、やっぱり彼は完璧なはたけカカシだったんだ。
ぽろぽろとあたしの決意が崩れていき、安心したように身体から力が抜けていくのを感じた。
けれど、情けなくもあたしの口から出てくるのは押しつぶされそうになる不安要素でしかなく。
「あたし…きっとカカシの弱みになっちゃうよ……。だから…」
だからこそ決意してたのに。と言おうとする前に背中に回された腕に力が入ったのを感じた。
「違う。逆だよ##NAME1##。オレの家族は強みになる。それも絶対的なね。
ねえ、##NAME1##、オレは《写輪眼のカカシ》だよ?」
ああ、やっぱり彼にはかなわない。
彼のその言葉は揺るぎない自信に満ちていて。
それはカカシ自身に課せられた重圧やら使命やら立場やら、全てを引っ括めて理解しているからこそ繰り出される言葉なんだと思った。
それでもこれから先のことを考えると、木の葉の上層部や相談役達が渋い顔をするのは予測出来ることだけれど。
「まずは帰って綱手様に報告だ~ね。」
その後でアスマかな、なんて呑気に笑顔で話すカカシを見ていたら、なんとでもなるような気になってきたから不思議だ。
「じゃあ、帰りますか。」
「…うん。」
差し出されたその手に素直に従い繋ぎ合う。
カカシの手から流れてくる体温は、優しいけれど強くて、逞しくて、そしてあたし達にとって絶対的な強みになるんだと、実感できた。
End