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短い夢
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短3 雨の色ににている 「……ついてないなぁ」 今にも泣きだしそうな、どんよりとした鉛色の空を見上げて大きくため息をついた。 火の国から木の葉の里へ薬品分析の研究員として赴任してきてはや半年。慣れない土地で無我夢中で仕事をしてきたあたしは、そういえば、ゆっくりと空を見上げるなんて久しぶりだなぁ。と気付いた。 ぽつ、ぽつと今まで我慢していた空から雫がこぼれ落ちてきて、足元の地面に水玉の染みを描き始める。 久しぶりに早く仕事を終わらすことが出来たのに、これじゃゆっくりと買い物を楽しむどころじゃない。 あぁ、天気予報の言うことを聞いて傘を持ってくればよかった、と後悔しても後の祭りだ。 しだいに激しくなる雨は容赦なくあたしの体を濡らしていく。 店が連なる商店街を恨めしく思いながら家路を急いだ。 急ぎ足で自宅のアパートを目指す。その間にもあたしの上に容赦なく雨は降り注ぎ、まさに濡れ鼠の状態だ。 しかし、ここの里の人達はあまり傘をささないらしい。 忍びさんが多い為なのかあたしにはそこら辺の事情はよくわからないけど、さっきからすれ違う忍びらしき服装の人達は、雨に濡れる様子も気にすることなく歩いている。 こんなにも焦ってるのは自分だけなのかな?と思わず苦笑いをしてしまう。 今まで忍びさんと殆ど接することがなかったため、ここでのささいな日常が軽くカルチャーショックだったりするのだ。 ようやく、見慣れたアパートが見えてきてあたしはほっとした。 「………あれ?…」 見慣れたアパートだけれど、少しの違和感を感じる。 1階にあるあたしの部屋の玄関前の軒先に…見知らぬ人物が立っていた。 すぐに目に飛び込んできたのは銀髪。そして顔が殆ど隠されていて、唯一見えているのは右目だけ。 その目線の先は文庫本らしい。 おそらく服装からして忍びであることは予想がつく。 ……忍びさんがなにしてるんだろう?…。 単純な疑問があたしの頭に浮かぶ。 自分のアパートを目の前にして、思わず立ち止まってその忍びさんを見つめていた。……というか、見惚れていたのかもしれない。 なんというか、綺麗だなあ、と素直に感じたのだ。 銀髪に雨の雫がきらきらと輝いている。その顔は殆ど隠れていてあらわになっている片目と、口布ごしに通っている鼻筋からは妙な男の色気を想像させる。けれど決して不快なものではなく。 ふいに、彼の視線が文庫本から離れ、お互いの視線が思い切りぶつかる。 「あ……、雨、やまないですね。」 中途半端に跳ねる私の心臓とともに、なんとも間抜けな言葉があたしの口から飛び出してしまう。 声をかけられるとは思っていなかったのか、一瞬、少しびっくりしたような表情だったけど、すぐに右目が弓なりに笑顔をつくる。 「ほんとだネ、なかなか止みそうにないネ。」 思わずその笑顔につられて、微笑んでしまう。 「忍びさん、ですよね?あまやどり……ですか?」 「ん~…まぁそんなとこかな?あ、もしかして、ここキミの家の前?」 「あ、そうなんですけど……。」 「ごめ~んネ、もう少し小降りになったら行くから、それまでは…。」 ここで雨宿りさせてね、と片手に持った本を少し挙げてみせた。 その時の彼の表情が、忍びとは思えないほどの可愛らしいそれで。 あたしよりも遥かに長身で身体のたくましそうな男を前にして、なぜか実家で飼ってた犬を思い出した。 「あっ、ちょっと待っててくださいねっ」 反射的に口から出たのと同時に、あわてて玄関を開けて、中へと入った。 きっと、あの銀髪忍者さんは何事かとキョトンとしているだろうな。 なんて思えばあたしの顔に血流が上がってくるのを感じ、下駄箱横の傘立てからあわてて傘を掴む。 「これ、よかったら使って下さいっ。」 もしかしたら、もういなくなってるんじゃないだろうか、というあたしの不安は彼の姿を再び見て一掃された。 「……いいのカナ?」 少し困った様な笑顔での返答。 そりゃそうだよな。なにせ手渡そうとしてるのは色は地味なブルーだけれども、明らかに女物と見て取れる傘。 そもそも忍びに傘はたいして必要ないんじゃないか、と根本的な疑問が沸き上がる。 声なんかかけてしまったのも、もしかして迷惑だったのかも、とか今まで忍びさんと関わることが皆無だったから、普通な感覚で声をかけてしまった事に、今更ながら激しく後悔してしまった。 「ありがとう、じゃ、遠慮なく借りるネ。」 あたしの心配をよそに、爽やかな笑顔であたしの手から傘を受け取った。 「あっ、またここ通ることがあったら玄関前にでも置いといてくださいね。ほっほんと、いつでもいいんでっ」 あぁ、あたしはきっと茹でダコの様に赤い顔をしているんだろう。 これじゃまるでまた来て下さいと言ってるみたいじゃないか。 てっきり断られるかと思っていたあたしは、思わず上ずってしまいながら慌てて言い訳のように巻くしたててしまった。 「そう言ってもらえると助かるヨ。また返しにくるネ。そ~いや名前も聞いてなかったネ。」 「あ……、」 まさか名前を聞かれるとは思っていなかったので、一瞬躊躇してしまう。 「オレは、はたけカカシ。」 弓なりの笑顔に思わずつられてしまう。 「##NAME1##です」 「##NAME1##ちゃんか…、ありがとう助かったよ。じゃあまた、今度ネ。」 そう言って、彼は躊躇うことなくあたしのブルーの傘をさして笑顔で手を振った。 そして、忍びらしからぬ少し猫背気味な姿勢でゆっくりと歩き出して行く。 なぜだか、あたしはすぐに部屋へ戻る気にはなれず、猫背な銀髪さんが小さくなっていく様をいつまでも雨の中、見送っていた。 あの人はまた来るだろうか?かすかな甘い期待とともに、いつもよりも少しだけ非日常の感覚を、あたしはかみしめていた。 END
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