お題集
◯お祭り
この日は里から少し離れた町に住んでる人のペット探しで、ナルトが頑張り夕日が沈む前に任務を終え、4人で里へと帰ろうとした時だった。
神社の前を通ると夏祭りをしていた。
それを見たナルトが祭りに行きたいと駄々をこね始め、私もカカシの服を引っ張って上目遣いでお願いをする。
カカシは「しょうがないね」とため息をついて、私たちははしゃいで神社へと走った。
境内の中はたこ焼きやわたあめ、ヨーヨー釣りなど色々な屋台が出ていて目移りをしてしまう。
小さな町だったけど、お祭りだからか結構な人が集まっていた。
顔を左右に振りながらキラキラした目で屋台を見る3人は、一番不安なナルトを真ん中にお互いが離れないように手を繋ぐ。
後ろを振り返れば少し離れたところに長身のカカシの顔が見えて、笑顔の私にカカシは手を振ってくれた。
私は何を食べようかなと屋台を見ていると、突然屋台を抜けた先から人々の歓声が上がった。
何だろうと思った瞬間、後ろから人の波が押し寄せてきて私は思わずナルトの手を離してしまった。
なんとか人の波から外れると3人の姿が見えなくなっていて。
ナルトではなく私が迷子。
サスケに色々言われそうだなと思いながら、探しにいこうかと思ったけど、逸れたらその場から動くなと任務中のカカシの言葉を思い出してその場に留まった。
仲間を来るのを待っている間祭りを楽しむ人の顔を見るとだんだん不安になってきて俯く。
もしかしたら見つけて貰えないんじゃないかと瞳に薄い膜を作り始めたとき。
「サクラ!!」
大声で呼ばれると同時に力強く腕を掴まれた。
驚いて顔を上げると、そこには珍しく息を切らしたカカシがいた。
「ごめん・・・結構前の方まで流されちゃって見つけるのに時間かかった。不安にさせちゃった?変な人に声かけられなかった?どこか怪我してないか?」
カカシは矢継ぎ早に言い眉を下げる。
先程までの不安な気持ちはどこかに吹き飛んで、こんな風に探してくれたカカシを見て嬉しくなった。
「もう、カカシ先生心配しすぎ!私だって忍なんだから大丈夫よ!」
私はそう言って笑うとカカシの顔にも笑みが浮かぶ。
すると、カカシの後ろからナルトとサスケが走ってきた。
恐らくサスケに殴られ頭に瘤を作ったナルトは手を離したことを謝ってきて、サスケも怒った顔をしていたが心配してのことだった。
その後また屋台へと歩き出そうとしたとき、カカシは私の手を握ってきた。
私は驚いて見上げると、不安そうに笑うカカシの顔を見て私は力強く手を握り返した。
◯あなたの一言で
綱手の愛のある修行にヘトヘトになりながら家路へと歩いていた。
帰る前に甘いもの食べたいなー、と足の先を家から甘栗甘の方向に向ける。
疲れてても、体が動かなくても、餡蜜の為なら頑張れる。
今日は頑張ったからスペシャル餡蜜食べようかな〜、と軽やかに歩いていると、少し先に見知った頭を見つけた。
私はニヤっと笑い、疲れもどっかにいって走って長身の背中に飛びつく。
「うおっ!?」
カカシ先生はよろめき、虚をつかれた顔をして振り返る。
私はしてやったりと先生に笑いかける。
「サクラか。ビックリしただろー」
「えへへ。先生、このあと暇?暇よね?」
有無を言わせない雰囲気に先生の顔が引き攣っている。
そんなの気にせず先生の腕を引っ張って歩き出す。
暫くして後ろからため息が聞こえた。
***
「おいしー!修行後の甘いものは格段よね!!」
「そりゃ良かったねー」
アンコを口に頬張る。
そんな私を先生は呆れたようにお茶を飲んでいる。
「先生は任務帰り?」
「そうだよー。疲れたから早く帰ろうとしたのに捕まっちゃたんだよー」
「こんな可愛い子とお茶出来るんだから、疲れなんて吹っ飛んだでしょ?」
「そうだねー」
素っ気ない返事に頬を膨らませると、先生は笑ってくる。
「ま、こうやってサクラといるときが一番楽しいかな」
カカシ先生は目を細め私を見てくる。
「それは良かったわー」
さっきの先生を真似て素っ気なく返事をして白玉を口に含み、チラっと先生を見ると意味ありげに笑っていた。
カカシ先生と別れて家に帰り着くと一気に眠気が襲ってきた。
ベッドに倒れ込み意識が途切れようとしているとき、カカシ先生の言葉を思い出してしまった。
「私といるのが一番楽しいって・・・ふふふ!」
私は枕を抱きしめて悶える。
素っ気なくしたけど、ものすごい嬉しくて。
顔に出ないようにするのが大変で。
これは暫く寝れそうにないなと思ったけど、それでもいいかなって思える日だった。
◯私の好きな匂い
「・・・サクラ、さすがに重いんだけど」
「女性に対して重いって失礼でしょ!」
門のところで任務帰りのカカシを待ち伏せて無理やり背中に飛びつき、おんぶをしてもらっている。
「女性はこんなことしないでしょ・・・サクラももう16なんだから、男の人にくっつくのは止めなさい」
「大丈夫。先生と私の仲だから」
「何が大丈夫なんだ・・・」と呆れながらも、引き剥がそうとせず抱え直してくれる。
そんな優しい先生に嬉しくなってギューと強く抱きしめてくっつく。
「・・・あのさ、先生も一応男なんだよ。サクラちゃんの小さい胸でも当たると、いてっ!」
気にしている部分を言われて頭に拳を振り落とす。
雑誌やら年上くの一から聞き出した胸が大きくなる方法を色々試してはいるが、それでも同世代に比べたら小さい。
「それ以上胸のこと言ったら師匠にお尻触られたって言うわよ」
「お前が落ちないための不可抗力でしょうが・・・たく」
先生はそのまま私をおぶさってアカデミーへと向かう。
私は当初の目的を実行するため、先生の首筋に鼻を埋める。
「ちょっと、くすぐったいって」
先生が首をすくめるのを構わず嗅ぐ。
ーーあぁ・・・やっぱり好き。
柔軟剤の奥に隠れてる、この安心する匂いは先生の匂い。
下忍の頃に嗅いでからこの匂いに虜になってしまった。
ナルトやサスケくんの匂いは嗅いだことはあるけど、何故か先生の匂いに惹かれる。
だから時々先生の匂いを嗅ぐのだ。
「もしかして臭い?」
臭いわけない。
むしろいい匂い。
でも私がこの匂いが好きなのは知られたくない。
「うん。加齢臭?」
そう言った瞬間、先生が私を振り落とそうとする。
「キャーーー!!」
「ごめんなさいはー?」
「ごめんなさいーー!!」
大の男と少女が騒いでいるのを通りかがる人々は微笑ましく見てくる。
第七班の仲の良さは誰もが知っているからだ。
「あー!サクラちゃん何やってるんだってばよ!」
そこにもう1人の第七班が現れる。
「いいなー、いいなー!先生、オレもおんぶしてくれってばよ!」
「無茶言うな・・お前らいい加減図体のでかさを分かれ」
ナルトはキラキラした目で、ほとんど差のない先生を見上げる。
「ふふん!この背中は私のなんだから」
「別にサクラのでもないからな・・・」
ううん。
先生は私のものよ。
絶対この匂いは手放さないんだから。
私は心の中で決意してまた先生の背中を抱きついた。
◯あなたの存在
「先生・・・カカシ先生!!」
血だらけになって横たわる先生に、私はチャクラを流して治療をしながら声をかけ続ける。
私を庇って敵の攻撃で受けた傷口からどんどん血が溢れてくる。
先生はちゃんと止めてくれたのに私が焦って敵に突っ込んでしまったから。
想定外の敵襲によって味方は全滅。
私は何とか先生を担いで森の中に逃げ込んだ。
しかしここも敵に見つかるだろう。
「先生・・・目開けてよ・・・ねぇ・・・」
先生のお腹には致命傷となる穴が開いていた。
先生の顔はどんどん白くなり、どんなに呼びかけても反応してくれない。
「ねぇ・・・私まだ言ってないよ・・・」
私は先生の血で真っ赤に染まった手を先生の頬に添え、顔を先生に近づける。
「先生・・・あのね、私ね・・・」
先生の冷たくなった唇に自分の唇を合わせようとして私の意識はそこで途切れた。
****
「どうしたの、サクラ」
夜中にいきなり部屋に訪れて抱きつく私に、先生は背中を撫でてくれる。
「怖い夢でも見た?」
「うん・・・先生が死んじゃう夢」
そっか、と言って先生も抱きしめてくれる。
その温かさは夢の冷たい体を忘れさせて、ようやく体の力が抜ける。
「大丈夫。ちゃんとオレは生きてる」
「うん・・・」
あの夢を見てようやく分かった。
私は先生がいないとダメなんだ。
顔を上げて先生の顔を見ると、いつものように優しく微笑んでいた。
あの夢のように後悔したくない。
私はTシャツの襟首を掴んで先生を引き寄せる。
その唇は夢と違って温かった。
◯ヤキモキ
いのと休みの日にカフェで一休みしているときだった。
「サークラ。顔が怖くなってる」
向かいに座るいのが面白そうに眉間を指差している。
私は口を尖らせて眉間を摩りまた窓の外を見る。
そこには先程からカカシ先生がいる。
1人ではなく、所謂ボンキュッボンの忍服を着た美女が先生の腕を触りながら楽しそうに喋っていた。
その手を払い除けないのは任務の話をしている・・・からだと思いたい。
時折先生が目を細めて笑っているのを見るとムカムカしてくるが、すぐに不安が込み上げてくる。
私が1ヶ月前にカカシ先生に告白をして恋人の関係になった。
先生は私より14歳も年上で、どうしたって大人と子供にしか見えない。
先生は私が可哀想で無理に付き合っているんじゃないか、本当はあの人みたいな女性が好きなんじゃないかって思ってしまう。
「・・・帰る」
「あ、ちょっと、サクラー」
私はこのまま2人を見ていることも出来ず、店を出て先生の方を見ることもせずその場を立ち去った。
男が見ていることにも気づかずに。
****
「春野さん」
次の日、いつも通りを装って仕事をしていると同僚の男の人に声をかけられた。
「この資料、火影様に渡して貰えるかな」
「分かりました」
私が五代目の弟子だからか、よく火影への資料を受け取ることがある。
忙しくて持っていく暇もないというのもあるのだろうが、綱手様が怖いってが1番だと思う。
「・・・あの、まだ何か?」
資料を受け取ってもまだ立ち去ろうとしないことに不審がると、同僚は言いにくそうに頬を掻く。
「あのさ、今日って定時上がり?」
「え、はい」
「良かったら一緒にご飯とか・・・」
「サクラ」
後ろから少しの殺気と共に呼ばれて振り返ると、眉間に皺を寄せた恋人が近づいてくる。
「カカシ先生・・・」
「悪いけど、サクラは今日オレと約束があるから」
え、って驚いていると先生は私の手を引っ張ってその場を離れようとするので、私は慌てて同僚に謝って着いていった。
****
無言の先生に連れて行かれたのは上忍が与えられる執務部屋。
「先生、今日別に約束してないわよね?」
「してないよ」
じゃあさっきのは何だったんだ、と首を傾げていると、いきなり後ろから抱きしめられる。
「きゃ!せ、先生!?」
振り返りたくても強く抱きしめられて先生の顔が見れない。
「サクラ」
「なに・・・?」
いつもより低く小さい声にどうしたらいいのか分からない。
「男と喋らないで・・・2人きりにならないで」
いつも余裕の先生の悲痛な声に胸がキュンってなって頬が緩む。
「先生、それってヤキモチ?」
「うん」
先生は顔を見られたくないのか私の肩に顔を埋める。
私だけ不安に感じてたんじゃないって思ったら嬉しくなって、腰に回る先生の手に自分のを重ねる。
「子供っぽいヤキモチ」
「悪かったね。好きな子のことになったら大人でも子供みたくなるんだよ」
先生の腕が緩んで体を先生と向かい合わす。
「先生も女の人と喋らないで。体触らせないで」
「ヤキモチ?」
「うん」
先生は喉の奥で笑いながら額を合わせてくる。
「でもなぁ。ヤキモチ焼くサクラ可愛いからなぁ」
「え?」
「ん?」
とんでもない発言に体を離して聞き返す。
「この間の、わざとなの?」
「そりゃそうでしょ。サクラが見てなかったら振り払ってるよ」
ニコニコ笑う顔にイラッときた。
私がどれだけ悩んだと思ってんだ、この男は。
「・・・だったら私も先生にヤキモチ焼いてほしいから男の人とどんどん2人きりになるから」
「ちょ、なんでよ」
「嫌なら先生もやめてよね!」
先生の制止を振り切って部屋から出る。
後ろから「サクラぁ」と情けない声が聞こえたが止まってやらない。
先生はもっともっと私のことでヤキモキすればいいのよ!
この日は里から少し離れた町に住んでる人のペット探しで、ナルトが頑張り夕日が沈む前に任務を終え、4人で里へと帰ろうとした時だった。
神社の前を通ると夏祭りをしていた。
それを見たナルトが祭りに行きたいと駄々をこね始め、私もカカシの服を引っ張って上目遣いでお願いをする。
カカシは「しょうがないね」とため息をついて、私たちははしゃいで神社へと走った。
境内の中はたこ焼きやわたあめ、ヨーヨー釣りなど色々な屋台が出ていて目移りをしてしまう。
小さな町だったけど、お祭りだからか結構な人が集まっていた。
顔を左右に振りながらキラキラした目で屋台を見る3人は、一番不安なナルトを真ん中にお互いが離れないように手を繋ぐ。
後ろを振り返れば少し離れたところに長身のカカシの顔が見えて、笑顔の私にカカシは手を振ってくれた。
私は何を食べようかなと屋台を見ていると、突然屋台を抜けた先から人々の歓声が上がった。
何だろうと思った瞬間、後ろから人の波が押し寄せてきて私は思わずナルトの手を離してしまった。
なんとか人の波から外れると3人の姿が見えなくなっていて。
ナルトではなく私が迷子。
サスケに色々言われそうだなと思いながら、探しにいこうかと思ったけど、逸れたらその場から動くなと任務中のカカシの言葉を思い出してその場に留まった。
仲間を来るのを待っている間祭りを楽しむ人の顔を見るとだんだん不安になってきて俯く。
もしかしたら見つけて貰えないんじゃないかと瞳に薄い膜を作り始めたとき。
「サクラ!!」
大声で呼ばれると同時に力強く腕を掴まれた。
驚いて顔を上げると、そこには珍しく息を切らしたカカシがいた。
「ごめん・・・結構前の方まで流されちゃって見つけるのに時間かかった。不安にさせちゃった?変な人に声かけられなかった?どこか怪我してないか?」
カカシは矢継ぎ早に言い眉を下げる。
先程までの不安な気持ちはどこかに吹き飛んで、こんな風に探してくれたカカシを見て嬉しくなった。
「もう、カカシ先生心配しすぎ!私だって忍なんだから大丈夫よ!」
私はそう言って笑うとカカシの顔にも笑みが浮かぶ。
すると、カカシの後ろからナルトとサスケが走ってきた。
恐らくサスケに殴られ頭に瘤を作ったナルトは手を離したことを謝ってきて、サスケも怒った顔をしていたが心配してのことだった。
その後また屋台へと歩き出そうとしたとき、カカシは私の手を握ってきた。
私は驚いて見上げると、不安そうに笑うカカシの顔を見て私は力強く手を握り返した。
◯あなたの一言で
綱手の愛のある修行にヘトヘトになりながら家路へと歩いていた。
帰る前に甘いもの食べたいなー、と足の先を家から甘栗甘の方向に向ける。
疲れてても、体が動かなくても、餡蜜の為なら頑張れる。
今日は頑張ったからスペシャル餡蜜食べようかな〜、と軽やかに歩いていると、少し先に見知った頭を見つけた。
私はニヤっと笑い、疲れもどっかにいって走って長身の背中に飛びつく。
「うおっ!?」
カカシ先生はよろめき、虚をつかれた顔をして振り返る。
私はしてやったりと先生に笑いかける。
「サクラか。ビックリしただろー」
「えへへ。先生、このあと暇?暇よね?」
有無を言わせない雰囲気に先生の顔が引き攣っている。
そんなの気にせず先生の腕を引っ張って歩き出す。
暫くして後ろからため息が聞こえた。
***
「おいしー!修行後の甘いものは格段よね!!」
「そりゃ良かったねー」
アンコを口に頬張る。
そんな私を先生は呆れたようにお茶を飲んでいる。
「先生は任務帰り?」
「そうだよー。疲れたから早く帰ろうとしたのに捕まっちゃたんだよー」
「こんな可愛い子とお茶出来るんだから、疲れなんて吹っ飛んだでしょ?」
「そうだねー」
素っ気ない返事に頬を膨らませると、先生は笑ってくる。
「ま、こうやってサクラといるときが一番楽しいかな」
カカシ先生は目を細め私を見てくる。
「それは良かったわー」
さっきの先生を真似て素っ気なく返事をして白玉を口に含み、チラっと先生を見ると意味ありげに笑っていた。
カカシ先生と別れて家に帰り着くと一気に眠気が襲ってきた。
ベッドに倒れ込み意識が途切れようとしているとき、カカシ先生の言葉を思い出してしまった。
「私といるのが一番楽しいって・・・ふふふ!」
私は枕を抱きしめて悶える。
素っ気なくしたけど、ものすごい嬉しくて。
顔に出ないようにするのが大変で。
これは暫く寝れそうにないなと思ったけど、それでもいいかなって思える日だった。
◯私の好きな匂い
「・・・サクラ、さすがに重いんだけど」
「女性に対して重いって失礼でしょ!」
門のところで任務帰りのカカシを待ち伏せて無理やり背中に飛びつき、おんぶをしてもらっている。
「女性はこんなことしないでしょ・・・サクラももう16なんだから、男の人にくっつくのは止めなさい」
「大丈夫。先生と私の仲だから」
「何が大丈夫なんだ・・・」と呆れながらも、引き剥がそうとせず抱え直してくれる。
そんな優しい先生に嬉しくなってギューと強く抱きしめてくっつく。
「・・・あのさ、先生も一応男なんだよ。サクラちゃんの小さい胸でも当たると、いてっ!」
気にしている部分を言われて頭に拳を振り落とす。
雑誌やら年上くの一から聞き出した胸が大きくなる方法を色々試してはいるが、それでも同世代に比べたら小さい。
「それ以上胸のこと言ったら師匠にお尻触られたって言うわよ」
「お前が落ちないための不可抗力でしょうが・・・たく」
先生はそのまま私をおぶさってアカデミーへと向かう。
私は当初の目的を実行するため、先生の首筋に鼻を埋める。
「ちょっと、くすぐったいって」
先生が首をすくめるのを構わず嗅ぐ。
ーーあぁ・・・やっぱり好き。
柔軟剤の奥に隠れてる、この安心する匂いは先生の匂い。
下忍の頃に嗅いでからこの匂いに虜になってしまった。
ナルトやサスケくんの匂いは嗅いだことはあるけど、何故か先生の匂いに惹かれる。
だから時々先生の匂いを嗅ぐのだ。
「もしかして臭い?」
臭いわけない。
むしろいい匂い。
でも私がこの匂いが好きなのは知られたくない。
「うん。加齢臭?」
そう言った瞬間、先生が私を振り落とそうとする。
「キャーーー!!」
「ごめんなさいはー?」
「ごめんなさいーー!!」
大の男と少女が騒いでいるのを通りかがる人々は微笑ましく見てくる。
第七班の仲の良さは誰もが知っているからだ。
「あー!サクラちゃん何やってるんだってばよ!」
そこにもう1人の第七班が現れる。
「いいなー、いいなー!先生、オレもおんぶしてくれってばよ!」
「無茶言うな・・お前らいい加減図体のでかさを分かれ」
ナルトはキラキラした目で、ほとんど差のない先生を見上げる。
「ふふん!この背中は私のなんだから」
「別にサクラのでもないからな・・・」
ううん。
先生は私のものよ。
絶対この匂いは手放さないんだから。
私は心の中で決意してまた先生の背中を抱きついた。
◯あなたの存在
「先生・・・カカシ先生!!」
血だらけになって横たわる先生に、私はチャクラを流して治療をしながら声をかけ続ける。
私を庇って敵の攻撃で受けた傷口からどんどん血が溢れてくる。
先生はちゃんと止めてくれたのに私が焦って敵に突っ込んでしまったから。
想定外の敵襲によって味方は全滅。
私は何とか先生を担いで森の中に逃げ込んだ。
しかしここも敵に見つかるだろう。
「先生・・・目開けてよ・・・ねぇ・・・」
先生のお腹には致命傷となる穴が開いていた。
先生の顔はどんどん白くなり、どんなに呼びかけても反応してくれない。
「ねぇ・・・私まだ言ってないよ・・・」
私は先生の血で真っ赤に染まった手を先生の頬に添え、顔を先生に近づける。
「先生・・・あのね、私ね・・・」
先生の冷たくなった唇に自分の唇を合わせようとして私の意識はそこで途切れた。
****
「どうしたの、サクラ」
夜中にいきなり部屋に訪れて抱きつく私に、先生は背中を撫でてくれる。
「怖い夢でも見た?」
「うん・・・先生が死んじゃう夢」
そっか、と言って先生も抱きしめてくれる。
その温かさは夢の冷たい体を忘れさせて、ようやく体の力が抜ける。
「大丈夫。ちゃんとオレは生きてる」
「うん・・・」
あの夢を見てようやく分かった。
私は先生がいないとダメなんだ。
顔を上げて先生の顔を見ると、いつものように優しく微笑んでいた。
あの夢のように後悔したくない。
私はTシャツの襟首を掴んで先生を引き寄せる。
その唇は夢と違って温かった。
◯ヤキモキ
いのと休みの日にカフェで一休みしているときだった。
「サークラ。顔が怖くなってる」
向かいに座るいのが面白そうに眉間を指差している。
私は口を尖らせて眉間を摩りまた窓の外を見る。
そこには先程からカカシ先生がいる。
1人ではなく、所謂ボンキュッボンの忍服を着た美女が先生の腕を触りながら楽しそうに喋っていた。
その手を払い除けないのは任務の話をしている・・・からだと思いたい。
時折先生が目を細めて笑っているのを見るとムカムカしてくるが、すぐに不安が込み上げてくる。
私が1ヶ月前にカカシ先生に告白をして恋人の関係になった。
先生は私より14歳も年上で、どうしたって大人と子供にしか見えない。
先生は私が可哀想で無理に付き合っているんじゃないか、本当はあの人みたいな女性が好きなんじゃないかって思ってしまう。
「・・・帰る」
「あ、ちょっと、サクラー」
私はこのまま2人を見ていることも出来ず、店を出て先生の方を見ることもせずその場を立ち去った。
男が見ていることにも気づかずに。
****
「春野さん」
次の日、いつも通りを装って仕事をしていると同僚の男の人に声をかけられた。
「この資料、火影様に渡して貰えるかな」
「分かりました」
私が五代目の弟子だからか、よく火影への資料を受け取ることがある。
忙しくて持っていく暇もないというのもあるのだろうが、綱手様が怖いってが1番だと思う。
「・・・あの、まだ何か?」
資料を受け取ってもまだ立ち去ろうとしないことに不審がると、同僚は言いにくそうに頬を掻く。
「あのさ、今日って定時上がり?」
「え、はい」
「良かったら一緒にご飯とか・・・」
「サクラ」
後ろから少しの殺気と共に呼ばれて振り返ると、眉間に皺を寄せた恋人が近づいてくる。
「カカシ先生・・・」
「悪いけど、サクラは今日オレと約束があるから」
え、って驚いていると先生は私の手を引っ張ってその場を離れようとするので、私は慌てて同僚に謝って着いていった。
****
無言の先生に連れて行かれたのは上忍が与えられる執務部屋。
「先生、今日別に約束してないわよね?」
「してないよ」
じゃあさっきのは何だったんだ、と首を傾げていると、いきなり後ろから抱きしめられる。
「きゃ!せ、先生!?」
振り返りたくても強く抱きしめられて先生の顔が見れない。
「サクラ」
「なに・・・?」
いつもより低く小さい声にどうしたらいいのか分からない。
「男と喋らないで・・・2人きりにならないで」
いつも余裕の先生の悲痛な声に胸がキュンってなって頬が緩む。
「先生、それってヤキモチ?」
「うん」
先生は顔を見られたくないのか私の肩に顔を埋める。
私だけ不安に感じてたんじゃないって思ったら嬉しくなって、腰に回る先生の手に自分のを重ねる。
「子供っぽいヤキモチ」
「悪かったね。好きな子のことになったら大人でも子供みたくなるんだよ」
先生の腕が緩んで体を先生と向かい合わす。
「先生も女の人と喋らないで。体触らせないで」
「ヤキモチ?」
「うん」
先生は喉の奥で笑いながら額を合わせてくる。
「でもなぁ。ヤキモチ焼くサクラ可愛いからなぁ」
「え?」
「ん?」
とんでもない発言に体を離して聞き返す。
「この間の、わざとなの?」
「そりゃそうでしょ。サクラが見てなかったら振り払ってるよ」
ニコニコ笑う顔にイラッときた。
私がどれだけ悩んだと思ってんだ、この男は。
「・・・だったら私も先生にヤキモチ焼いてほしいから男の人とどんどん2人きりになるから」
「ちょ、なんでよ」
「嫌なら先生もやめてよね!」
先生の制止を振り切って部屋から出る。
後ろから「サクラぁ」と情けない声が聞こえたが止まってやらない。
先生はもっともっと私のことでヤキモキすればいいのよ!
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