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◉貢ぎ物

カカシ先生と付き合うようになって2週間。
キスはしているけどキス止まり。
交際経験のない私に合わせてくれていて、そんな優しさを見せられたら更に好きになってしまうじゃない。
でも最近キスをした時に先生の瞳に熱が込められていることに気づいた。
それでも先生はそれ以上は手を出さない。
我慢させてしまっているんだ。
好きな人に触れたらそれ以上したくなるのは仕方がない。
私だって物足りなくなる時が、あるし。

──勇気を出す時がきたのよ、サクラ。

今度の週末、偶然にも休みの日が一緒だと知って。
アカデミーに報告書を出しに来たカカシ先生を捕まえて「休みの日に先生の家にお泊まりに行きたい」と小さな声でそう呟いた。
聞こえたかな、と顔を上げると、数回目を瞬かせて、周囲の目を気にせず満面の笑みで私を抱きしめた。
お泊まりするということは朝、先生の家で起きる。先生と同じ、ベッドで・・・。
今から緊張してどうするんだと心臓を落ち着かせようとした時、自分のとは違う早く鳴る心臓の音が聞こえて。
なんだか嬉しかった。



だけど約束の日の2日前のお昼、綱手様の手伝いで書類整理をしていると、今にも死にそうな顔をした先生が部屋に入ってきた。
話を聞くと、明日から1ヶ月の遠征に行くことになったらしい。
つまりお泊まりは、中止・・・。
楽しみにしていたから私もショックだけど、それよりも先生の落ち込みようがおかしくてつい笑ってしまった。
先生は膨れて笑う私の両頬をムニムニと揉む。

「何笑ってんの」
「ごめんなさい、先生が何だか可愛くて」
「全然嬉しくないね」

まだ笑う私の髪もグシャグシャに撫で回されて、髪を整えながら口を尖らせて顔を上げると口布を下げた先生の顔が近くにあって、
あっ、と思った時にはキスをされていた。
短いキスにまた物足りなさを感じ、先生は口布を戻しながら微笑む。

「1ヶ月後のオレが帰ってくる日、家に来て」
「う、うん。先生の好きなもの作って待ってるね」
「・・・んー、それも楽しみなんだけどね」

先生は何故か失笑して私の耳元に口を寄せる。
息が耳にかかりゾクリとする。

「帰すつもりないよ」

いつもより低い声。
先生の言いたいことが分かり、一気に顔が真っ赤に染まる。
先生は何も言わず私の頭を優しく撫でて去って行く。
小さくなっていく背中に「気をつけて」と、そう願った。



遠征に出た先生は綱手様への報告書と一緒に何日かおきに私に手紙を書いてくれた。
遠征に出る日、どこから話を聞きつけたのかナルトが絶対付いて行くとカカシ先生から離れなくて。
お目付け役としてヤマト隊長も付いていくという条件で予定より大人数で里を離れていく皆を門で見送った。
それから先生の手紙にはナルトがどんな騒ぎを起こしたのか、事細かく書かれていた。
ナルトがよそ見をしていて足元に落ちてた犬の糞を踏んで大騒ぎして隊長にぶつかって2人で別の糞の上に転んだ、とか、雨でナルトが滑って増水した川に落ちて隊長が助けたなど。
ほとんどヤマト隊長に被害を被っていて、帰ってきたら優しくしてあげないと、と手紙を読み進めていき、毎回最後に書かれている一文にギクリとする。

"約束忘れないように"

私は机に突っ伏す。
あと半月で先生たちが帰ってくる。
その日はここ半月の間猛特訓した先生の好物を振る舞うつもり。
でもその後が問題なのだ。
あの言葉通り、先生は最後までするつもりだろう。
百戦錬磨の先生が経験0の私で満足するの?
そう思ってもきっと何も出来ないだろう。
それでも・・・。

「新しい下着買わなくちゃ・・・」

あと、いのにも相談しに行こう。



****



それからあっという間に月日は流れ。

「ただ〜いま〜」

玄関が開く音と疲れた声が聞こえて向かう。

「おかえりなさい。お風呂入れてるから入ってきて」
「うん、ありがとね」

靴を脱いで振り向いた先生の格好は土まみれで、顔も疲れ切っていた。
遠征中はお風呂なんて入れないから、帰ってくるタイミングでお湯張りは済ませている。
帰ったその足で脱衣所に向かう先生を見届けて、私はキッチンに向かって料理の続きをする。
オーブンと魚焼きグリルから促す匂いが立ち込め、鍋に味噌を入れて味見。

「うん、美味しい!」

先生の舌にも合えばいいな、と鍋の中をかき混ぜていると、

「美味しそうだね」

後ろから腕が伸びてきて、そのまま抱きしめられる。

「きゃっ!ちょっと、先生上がるの早過ぎない?烏の行水すぎるわよ!せっかくお風呂準備したのに」
「ちゃんと温まってきたよ。ほら、手暖かいでしょ」

腕に触れる手は確かに暖かい。
でも触れ方がいつもと違っていて、心拍数が一気に上がる。

「せ、先生・・・」
「ん?」
「ひゃっ!」

首元に唇が当たり、ビックリして大きな声が出る。
そのまま唇が私の体を這うように動き、未知の感覚に息を飲む。

「せんせ、ごはん、ご飯が!」

何とかそう言うと、ピタリと唇が止まり、体が離れる。

「・・・ま、お楽しみは後のがいいか」

不穏な事を言いながら先生は「ちょっとトイレ」と言って廊下へと消えていった。
あまりにも強い刺激に膝から崩れそうになるのを何とか耐える。
今のなんて先生からしたらきっと序の口だ。
今のでも羞恥のあまり気を失いそうだったのに。
どうしよう、どうしようと頭をグルグルさせていると味噌汁が沸騰して慌てて火を止めた。


それから一緒にご飯を食べたけど、さっきの出来事のせいで全く味を感じなかった。
先生が何か喋ってたけど何も覚えていない。
だって、だって・・・。


夕飯の後は一緒にお皿を片付け、私もお風呂に入ろうかなと考えているとソファーに座っていた先生に呼ばれる。

「サクラおいで」
「で、でも・・・」
「いいから」

柔らかく微笑んで手を差し伸べてくる。
私は震える手でその手を取る。

「ここ、座って」

先生が指差すのは大きく開かれた脚の間。
本当に?と先生を見ても有無を言わさない笑顔。
恐る恐るそこに座ると、お腹に先生の手が回されて隙間なくピッタリと引き寄せられる。
心臓が口から出そうなほど跳ねていて、絶対先生に聞こえてると思ってたら後ろから喉の奥で笑う声が聞こえた。

「サクラの心臓、すごいね」

お腹にあった先生の手が上がり、胸と胸の、ちょうど心臓の辺りに当てられて変な声が出そうになった。

「ほら、すごいドキドキしてる」
「あ・・・」

先生の手がまた動き出き、少し下がって胸の下を撫でる。
官能的な触り方に思わず声が出る。

「サクラ」

今までと違う呼ぶ声に、ゆっくりと後ろを振り向くと顔を傾けた先生の顔が近づいてきて、唇を塞がれる。
いつもは触れたらすぐ離れるのに長く、何度も唇が合わさる。
慣れないキスに息が続かなくてはぁ、と口が開いた隙に先生の舌が入ってきた。

「んんっ!」

突然侵入してきた舌にビックリして頭を後ろに引いたけどその分先生が近づいてきて。
それを繰り返し、気づいたら私はソファーに押し倒されていた。
惜しむように唇が離れ、目の前にある先生の瞳は今までみたことのない熱を帯びていた。
先生の手が私の服にかかり、その手を止める。

「ま、待って、せめてお風呂に入らせて」
「ダメ」
「ご飯作ったらから匂いが・・・やっ!」

首筋に先生の鼻が埋まり匂いを嗅いでくる。

「オレは気にしないよ」
「私は気にする!」
「サークラ。オレね、この1ヶ月、ずーと我慢してたんだ。もう我慢できないよ」

飢えた色違いの瞳に見つめられ、お腹の下が疼く。
「せめてベッドに連れてって」と呟くと同時に抱え上げられた。



****



「・・・っく、・・・はぁ・・・」

あれからベッドに降ろされて服と下着を脱がされ
もう何十分と胸を舐められている。
自分の口から漏れる声が恥ずかしくて手の甲で唇を押さえているけれど、それでも与えられる刺激に少なからず漏れ出る。
先生が小さな胸の頂を噛んだ時、腰が跳ねて声が我慢出来なかった。
聞こえてしまった、と目線を下げると胸を咥えたまま先生は私を見上げる。
その目が弧を描いたと思ったら頂を強く吸われ甲高い悲鳴を上げた。



あれから下もグチャグチャに掻き回され、今にも意識を手離しそう。
身体を起こした先生は勢いよく服を脱いだ。
鍛えられたお腹に一気に艶かしくなり、恥ずかしくて目線を上に動かすと私を見下ろす瞳と交わう。
何年も見てきたいつもの優しい"カカシ先生"ではなくて、初めて見る雄の"はたけカカシ"。
余裕のなさそうな先生がまた顔を近づきて、私はゆっくりと瞳を閉じた。




****



窓辺から聞こえる鳥の声に目を覚ます。
頭を置く枕がいつもより固くて寝にくい。
良いポジションを探そうと寝返りを打つと、ふわっと嗅ぎ慣れた匂いが鼻を通り抜ける。
ゆっくり目を開けると、目の前には肌色。
いつもよりボーとする頭でその肌色をペタペタ触っていると、頭の上からふふふ、と笑う声が降りてくる。

「サクラ、擽ったい」

顔を上げると、口に手を当てて笑うカカシ先生。
一気に昨晩の出来事が蘇り、あまりの恥ずかしさに毛布を引き上げて顔の上まで被る。

「どうしたの」
「べっ、別に!」

少し動くたびにお腹の下に鈍痛が走るけど、それよりも今は顔を見られたくない。

「顔見せてよ」

強請るような声に毛布を少し下げて目だけを出すと、先生は私が大好きな笑顔を浮かべる。

「おはよう」
「おはようございます・・・」
「身体は?大丈夫か?」
「うん・・・大丈夫、です・・・」
「何で敬語」

おかしそうに笑われる。
逆に何で先生はいつも通りでいられるの?これが経験の差?
悶々としていると先生は私の髪に指を絡めてくる。

「サクラ」

愛おしそうに名前を呼ばれ、毛布から顔を出す。
ゆっくりと顔が近づいてきて、額を合わせ合う。
深い灰色と紅い瞳。
ずっと側で見てきた大好きな色。
これからは私だけの色。

「愛してるよ、サクラ。我慢した甲斐があった」
「・・・もう」

私は失笑しながら先生の背中に手を回して、何度も何度も愛を確かめ合った。



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