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気づいた想い

薄紅色の髪。

背中まで伸ばされた髪。
休憩時間の度に櫛で整えているサクラを見て「大変だねぇ」と話しかけると、ニッと笑って髪をサラサラと流す。

「髪は女の命だもの。それに、サスケくんは長い髪が好きだから。この髪で落としてやるのよ!」

髪で落ちる男なんているのだろうか。
その言葉を飲み込んで「頑張って」とニコッと笑って言うと、サクラは嬉しそう笑って頷いた。




中忍試験第二の試験が終わったらサクラの髪が短くなっていた。
予選が終わり、ナルトといたサクラに聞くと。

「別に。イメチェンよ、イメチェン!」

あれだけ長い髪を大事にしてたのに、と思ったが「そっか」と言ったときに、サクラの顔に影が生まれたことに気づいた。
きっとサスケのことで何かあったのだろう。
そしてそれを言いたくないのなら無理に聞き出すこともない。
頭を撫でてやると、サクラは上目遣いで頬を膨らませて見てきたが、その顔はどこか泣きそうで嬉しそうだった。





その数年後の現在。

サクラの髪は伸ばされずにいた。
サスケを止めれなかった戒めなのか。
あの日からサクラの髪は止まったようだった。



****



「ーーで、説明した通りに動くからちゃんと頭に入れとく様に」

会議室でヤマトが次の任務の説明しているのをナルト、サクラ、サイは聞いていた。
サクラとサイはちゃんとメモを取っていたが、ナルトは頭に入っているのか不安だな。
そんな4人をドア近くの壁にもたれかかって見ていた。

ふと、サクラに目がいく。
ペンを走らせていると髪が頬に落ちてきて、それを耳にかける仕草から目が離せなかった。


「とりあえずこんな感じかな。何かあります?先輩」

ヤマトの声に3人もこっちを見てくる。
その時にサクラと目が合って逸らす。

「ん?いや、ないよ」
「ちゃんと聞いてました?」
「聞いてた、聞いてた。てゆうか、オレいる?4人で行くのに」

「何言ってんだってばよ!カカシ班なんだからカカシ先生もいなきゃだろ!」

机を叩き立ち上がるナルト。
成長しても血の気が多いのは変わらない。

「はいはい。終わったならオレはそろそろ行くよ。仕事があるんでね」

ドアに手をかけると、「それじゃあ30分後に門に集合ね」とヤマトが声をかけると2人も立ち上がる。




「カカシ先生」

部屋から出て暫く歩いていると後ろから呼び止められる。

「どうしたサクラ」

振り返ると小走りで駆け寄ってくるサクラ。
ポケットに入れていた腕を引っ張られる。
驚いていると、引き抜かれた手を両手で包まれたと思ったら暖かくなる。


「先生、顔色が悪いわ。ちゃんと休んでよ」

上目遣いで睨まれ、チャクラを注がれていない方の手で頭を掻く。
綱手に弟子入りしてすっかり医療忍者として成長したサクラの目は欺けないらしい。

「気をつけるよ。でもサクラ。これから任務なんだから、こんなことにチャクラ使っちゃダメでしょーよ」
「こんなの大したことないわよ」


体がぽかぽかし始めてサクラの手が離れる。
温もりが離れていくことに寂しい気持ちになった。

「それじゃ行ってくるわ」
「うん。気をつけて行っておいで」

サクラは手を振って去っていくので、オレも見えなくなるまで手を振った。



大蛇丸のアジトでサスケと会ったと聞いて心配していたが杞憂だったらしい。
守られてばかりいた少女は自分で闘う手段を身につけ、人を助ける術も手に入れた。

気づいたらオレの手から離れ、嬉しいやら寂しいやら。
そして少女の一途なまでの想いを寄せてもらえるあいつが羨ましくなる。



そんなことを考える自分に苦笑して、サクラとは反対へと歩みを進めた。



****



第七班の活動はヤマトが代理班長として4人で活動することになり、オレは別で任務をこなす日々を送っていた。



そんなある日、上忍待機所でイチャパラを読んでいるとヤマトが入ってきた。

「先輩、任務入ってたりします?」
「いや、暫く里にいるつもりだけど」
「それだったら代わりにナルトとサクラと任務に行ってもらえませんか?」
「何かあったのか?」

本から顔を上げると、ヤマトは頭をかいて申し訳なさそうにした。


「いえ、木ノ葉の使者として砂に行くことになってたんですが、ボクとサイが別の任務に呼ばれまして。2人だけで任務させるわけにはいかないので他の班に回そうとしたんですが、ナルトが嫌がって」

腕を組んでため息をつくヤマトに苦笑する。

「砂には我愛羅くんがいるから会いたいんだろ。いいよ、どうせ空いてるし」
「ありがとうございます。出発は明後日なのでお願いします」
「はいはい」

ヤマトは手に持っていた任務書を渡してすぐに部屋を出て行く。
久しぶりの生徒たちとの任務に頬が緩んだ。 



****


それから2日後、いつもの待ち合わせの橋の上に着くとちゃんと2人も待っていた。
しかめっ面で。

「やー、おはよう」
「カカシ先生遅いってばよ!」
「いやな、そこの角で熊が・・・」

「もういいってばよ」
「早く行きましょ」

呆れた視線を向けて早くしろと言ってくる部下2人に、頭をガックリと下げる。

ーー昔はちゃんと突っ込んでくれたのになぁ・・・。

やはり成長というのは辛いものだ。




それから忍の足で3日かかる砂へと出発した。
木から木へ、飛んで先へと向かう。
オレとサクラは横を飛んでいたが、ナルトは高ぶっているのかだいぶ前を走る。

「おーい、ナルト。そんな調子だとすぐバテるぞ」
「分かってるってばよ!」

そう言いながら更にスピードを上げる。

「ちょっとナルト!」

サクラはナルトを止めようとスピードを上げる。
やれやれ、とため息を吐いてオレもスピードをあげた。





「よし、今日はここに泊まろう」

とある町に入って少し古い宿屋の前に立つ。

「野宿じゃなくていいんですか?」
「一応使者だからね。あっちに着くときにボロボロの身なりじゃ火影様に怒られちゃうでしょ」

そういうとサクラは苦笑した。

「てことは、てことは!明日も宿!?」
「そういうこと」

やったー!と喜ぶナルトを置いて宿屋に入る。



「オレとナルトが同じ部屋で、サクラは隣の部屋ね。何かあったらすぐに呼びなさい」

はい、と部屋の鍵をサクラに渡すと、なぜか眉を下げて見上げてくる。

「・・・先生、ここのお金って・・・」

ーーあぁ。

「だいじょーぶ。ちゃんと経費で請求するから」

そういうとサクラはほっとしたように笑った。
昔は下忍3人一緒の部屋でオレだけ別の部屋で泊まったりしていたから。
さすがに16歳になった女の子を一緒の部屋にするわけにはいかない。
それはナルトだけではなくて、オレのためでもあるわけで。


「2人とも、ここ温泉あるって!オレちょっと行ってくるってばよ!」
「ナルト。他のお客さんの迷惑になるから静かにしなさいよ」

今にも走り出しそうなナルトに注意すると、「分かってるってばよ!」と言いながら去っていった。


「サクラも温泉行ってきたら?夕飯までまだ時間あるし」
「そうですね・・・荷物降ろしたら少し行ってみます」
「オレは部屋でゆっくりしてようかな。夕飯はオレ達の部屋に運んでもらうから、時間になったら来て」
「分かりました」

部屋の前で別れて入る。
少し古いと言っても立派な宿だったので2人部屋と言ってもゆっくり休める広さだった。
前にヤマトが豪華絢爛な夕飯を用意してくれたとナルトが嬉しそうに言っていたが、今回は普通の夕飯を頼んだから絶対ガッカリされそうだな。
そう思いながらナルトが帰ってくるまでの間、ひと休みした。




ーーこんこんこん。

規則正しい音が聞こえてきて目を開ける。
気づいたら寝ていたらしい。

「は~い・・・」

起き上がりながら伸びた声で返事をすると、すっと襖が開いてサクラが顔を覗かす。


「先生、もしかして寝てた?」
「あぁ・・・ちょっとね。どうした?」
「なんか私の部屋のドライヤーの効きが悪くて。こっちの部屋の使っていいですか?」
「どうぞ」

サクラは引き出しからドライヤーを取り出して鏡台の前で髪を乾かしているのを、ぼーと見る。
温泉に入ったからか頬が赤く、風でなびく薄紅色の髪、浴衣の襟首や捲れた裾から覗く白い肌から目が離せない。

「なに?何か変だった?」

視線を感じていたのかドライヤーを切って振り返って聞いてくる。

「・・・いや、何でもないよ」

首を傾げて見てくるサクラの視線に耐えられなくて、ははっと愛想笑いしていると襖が勢いよく開いた。


「いい湯だったってばよー!あれ、サクラちゃんもお風呂入ったの?」
頭にタオルを被って帰ってきたナルト。

「うん。ナルトも早く髪乾かさないと風邪ひくわよ」

サクラは使い終わったドライヤーをナルトに差し出す。
すると「髪乾かしてー」とナルトが甘えると「馬鹿!」と言ってドライヤーでナルトを殴るサクラ。
頭を抱えて「冗談だってばよー・・・」と泣いているナルトに苦笑しながら、ナルトがあのタイミングで帰ってきてくれたことを心の中で感謝した。



その後、夕飯が運ばれてきて談笑しながら食べて、明日の話をしてその日は解散した。
日付が替わろうとしている頃、オレは寝付けずにいた。
窓を開けてナルトのいびきをBGMに酒を手に月を見上げる。
この隣の部屋ではサクラが寝ている。
そう思ったら落ち着かなくて、何でこうなったんだろうな、と目を伏せて酒をあおった。



****



次の日も途中の町で1泊して、問題もなく砂の里に入り風影に親書を渡した。
ナルトは久しぶりに会った我愛羅と話に花が咲いて、本当ならその日に砂を出るはずだったがご好意で宿を用意してもらった。




次の日の朝、我愛羅たちと別れて帰りはゆっくり歩いて木ノ葉へと向かう。

「なぁなぁ、カカシ先生」
「ん?」
「何でオレたち山の中歩いてんの?」
「何でって?」
「いやだってさ、こんな山ん中じゃ宿なんてないってばよ?」
「そりゃないでしょ」

ははっと笑うオレにナルトは首を傾げる。
先頭を歩いていたオレは徐にリュックを降ろして。


「ここで野宿だ」
「えーーー!?」

ナルトは叫んで、着々と準備をするオレの後ろをついて回る。

「宿泊まらないの!?」
「もう木ノ葉に帰るだけなんだから泊まる必要ないでしょーよ。それに、これも修行の一環だ」

オレは振り返ってナルトの頭に手を置くとぶーぶー文句を言いながら離れていく。
サクラを見るともう火の準備をしていて、慣れた様子だった。


「サクラ、火作るの上手になったね」

後ろから声をかけるとサクラは振り返り、ふふん、と笑った。

「薬草取りで何回も野営したんだから。慣れたものよ」

初めてのときは火種が燃え上がらず半ベソをかいていたのに、すっかり頼もしくなったものだ。
嬉しい気持ちを抑えられず頭をグシャグシャと撫でると、「髪がボサボサになる!」と怒られてしまった。





その後簡単な夕食を済ませ、後は寝るだけ。

「火の番するから2人とも寝ていいよ」
「え、交代しながらでも・・・」
「だいじょーぶ。子供は寝る時間だから」
「子供って・・・もう16なんですけど」

頬を膨らませて睨むサクラの後ろで、「じゃあ、おやすみってばよー」と言った瞬間イビキをかくナルト。
さすがにもう少し警戒心を持ってほしいものだが。


「ほら、サクラも寝なさい。オレは大丈夫だから」
「はい・・・」

サクラは渋々寝袋の中に入り、こっちを向いて横になる。

「おやすみなさい、カカシ先生」
「おやすみ、サクラ」

挨拶を返すと、サクラは微笑んで目を閉じた。
暫くすると寝息が聞こえてきたから疲れが溜まっていたんだろう。


オレは顔を上げて星空を見て、幸せな時間を堪能した。



****



「今日もオレが火の番するから」

野営2日目。
夕飯を食べ終わった後にカカシ先生は言う。

「先生、今日は私がしますから」

さすがに2日連続徹夜をさせるわけにはいかない。
申し訳なさと、医療に携わる者として。

「大丈夫だって。2日ぐらい寝てなくてもどうってことないよ。ちゃんと寝ないと大きくならないよ」
「・・・それ、セクハラですよ」

どこの部分を言っているのか、聞かずとも分かってしまい睨むと「えー?」と先生は笑う。

「とにかく、いいから寝なさい。ナルトはもう寝たよ」

振り返ると気持ちよさそうにイビキをかくナルト。
私は頬を膨らまして寝袋に入り。

「・・・おやすみなさい」
「おやすみ、サクラ」

先生の微笑みを見ながら、ゆっくりと瞼を下ろした。










ぱち、ぱち、ぱち


小さく爆ぜる音に目を覚ます。
顔をゆっくり動かすと、焚き火に小枝を焚べる先生。
こちらからじゃ額当てが邪魔で先生の表情が分からない。
モゾモゾしていると、音に気づいた先生がこちらを見る。

「どうした?まだ寝てていいぞ」

空は数多の星が瞬き、まだ太陽が顔を出しそうにはない。

「なんか目が冴えちゃって・・・」


寝袋から出て、毛布を持って先生の隣に座る。

「私が火の番するから、先生は寝てて」

はい、と毛布を渡そうとするが、先生は眉を下げるだけで。

「大丈夫だって。もうちょっと寝てなさい」
「だから冴えちゃったの!いいから寝る!」


無理やり毛布を押し付けると、先生は諦めて木の幹に背を預けて毛布に包まる。

「何かあったら起こせよ?」
「うん。おやすみなさい、先生」
「おやすみ」

先生は額当ても口布もそのままに目を閉じた。






ぱち、ぱち、ぱち



火が絶えないように小枝を入れていく。
話し相手がいなくなると、急に眠気に襲われ始め、頭を振りながら欠伸を噛み殺す。


チラッと先生を見る。
相変わらずナルトのイビキが煩いが、先生からは何も聞こえない。
肩まで毛布をかけて目を閉じている。
これを機に、普段はじっくり見れない顔を観察する。


思ったよりまつ毛が長い。
口布の上からでも整った顔立ちなのが分かる。
年上のくのいち達が話していたが、先生はこんな怪しい風貌なのにモテるらしい。
抱かれたいとか何とか騒いでいたのを覚えている。


なんで口布付けているのかしら。
そう思ったとき、3人で先生の素顔を見ようと躍起になっていたことを思い出して笑みが溢れる。
あの時は楽しかった。
喧嘩ばかりする2人もあの時だけは協力して、何とかして剥がそうとするのに結局見れなくて。

今の先生は無防備だ。
もしかしたら、今だったらあの口布を下げて素顔が見れるかもしれない。
そしたら2人に自慢出来る。



ゴクリと喉を鳴らして、火のことなんて忘れてジリジリと先生に近寄る。
そして慎重に手を伸ばしてーー。



「何やってんの」


いきなり先生の目がパチリと開いた。

「きゃあっっーー」

思わず叫びそうになって慌てて口を塞ぐ。
ナルトを見ると相変わらずの爆睡。


「せ、先生、起きてたの・・・!?」
「あんだけ熱い視線向けられたら誰だって起きるでしょ」


「先生ドキドキしちゃう」なんてふざけながら体を伸ばしている。

「そ、そんな風に見てないわよ!」

確かにガン見してたけど!
そんな風に言われると恥ずかしくて頬が熱くなる。


「じゃあ、何であんなに先生のこと見てたの?」
「別に・・・」

あなたの素顔を見ようとしてました、なんて言えなくて顔を逸らすと、「ふーん」と聞こえてそれからは何も追求してこなかった。




ぱち、ぱち、ぱち


お互い何も喋らず、私は枝を焚べる。
先生寝直さないのかしら、って思った時、冷たい風が吹いてブルリと震えて。


「くしゅんっ」

夜はまだ寒い。
火に近づいて体を抱いて寒さに耐えていると。


「ほら、サクラ寒いんでしょ。毛布に包まりな」

そう言って先生は私が渡した毛布を返そうとしてくる。

「いい。先生少ししか寝てないでしょ。寝直したら?」
「もう目が覚めたから。ほら」
「いいってば!」

先生が毛布を押しつけてくるが、私は頑として受け取らない。
先生はため息をついて、私の腕を掴んで引っ張った。



「きゃっ!」

油断していたから思い切り先生の胸に飛び込んでしまった。
今までこんな近くに先生を感じたことなくて、洗剤なのか先生の匂いなのか、いい匂いを感じて心臓が早鐘を打つ。
離れようとするも、先生の腕が離そうとしてくれない。
先生は背中から毛布を被り、私の腰を引き寄せて包まる。

「ちょ、ちょっと、先生!」
「2人で包まれば寒くないでしょ」


確かに寒くないけど。
こんなに近くに男の人とくっついたことないから熱くなる。
少しでも離れようとするが、先生が更に力を入れてもっと近くなる。

「サクラは暖かいねぇ」なんて呑気に言うから、キッと顔を上げると先生は目を瞑っていた。
やっぱり寝足りないのかしら。



私はぼんやりと火を見ていた。
さっき枝を焚べたから暫くは大丈夫かなって思いながら、だんだん瞼が下がってくる。
先生が寝てるんだから私が火の番しなきゃ、と頭を振るが、先生の温もりを感じていると眠気に逆らえなくて。

先生の体にピッタリくっついて耳を澄ますと、規則正しく聞こえる心臓の音。
ここにちゃんと先生がいる。
そう思ったら心がポカポカしてきて、気づいたら夢の中へと落ちていった。


夢なのか現実なのか分からなかったけど、暖かい手で頭を撫でられた気がして気持ちよかった。




****



3人で任務に行ってから2週間。
あれから先生とは何も変わらず、会えば普段通りに接していた。



とある日、いのと休みが一緒ということで、馴染みの甘味処であんみつを食べていた。

「ねぇ、サクラぁ?」

向かいに座るいのは、団子を食べながら話しかけてくる。

「何?」

大した話じゃないだろうと、あんみつを頬張っていると。



「あんた、カカシ先生好きなの?」



「んぐっ!!」


とんでもない発言に危うくあんこを噴き出すところだった。
咳き込む私にいのはお茶を差し出す。
それを飲み干していのを睨む。


「な、何言ってんのよ!!」
「だって、3人で任務に行ってからおかしいわよ。カカシ先生の話題が出ただけで嬉しそうに笑うし、遠くで先生の姿を見かけただけで頬を染めてるし」


・・・確かに。
何かあるごとに先生を探しているし、私だけに微笑んでくれたら胸が高鳴る。
あの夜から、ずっとカカシ先生のことを考えてる自分に気づかないふりをして。


「なんかあんたを見てたら思い出しちゃった」
「・・・何をよ」

頬を染める私にいのは綺麗な唇で弧に描いて。



「恋してますって顔」



****



いのと別れて1人で里をとぼとぼ歩いていた。
ずっといのの言葉を繰り返して。

カカシ先生のことが好きなんてありえない。
だって、私の好きな人は・・・。


「あ、サクラちゃん!」

俯いて歩いていると声をかけられて、前を見ると大きく手を振りながら駆け寄ってくるナルト。


「ヤマト隊長が次の任務のことで話があるから集まってくれって」
「分かった」

すぐに頭を切り替えて行こうとしたら。

「あ、カカシ先生知らない?」

ナルトの言葉に頭から振り切った人物がまた戻ってきて。

「し、知らないけど、何で?」
「次の任務、カカシ先生も参加するらしいから、先生も探してこいって言われたんだってばよ」
「ふーん・・・」


ーーまた先生と任務行けるんだ。


そっけなく返事をしなが、心の中はどんどん落ち着かなくなり、頬が緩むのをナルトにバレないように逸らす。



すると、後ろの方から最近よく探している気配を感じて勢いよく振り向く。

「ど、どしたのサクラちゃん・・・、あ、カカシ先生!」


いきなり後ろを振り向いた私にビックリしたナルトは同じ方向を見ると、角から本を読みながらカカシ先生が現れ、呼ばれてこっちに気づいて微笑みながら近づいてくる。


「よぉ」
「見つかって良かったってばよ。ヤマト隊長が任務の話があるから来てくれって」
「あぁ、忘れてた」

ははっと笑う先生に、「えー」とナルトは呆れたように見る。



「じゃ、行きますか」

先生は固まっている私に微笑んで頭にポンっと手を置いてくる。
今までと何も変わらない笑顔のはずなのに。
いのの言葉でようやく気づいた私は。

顔を見られたくなくて俯くと、「どうした?」と顔を覗き込んでこようとするカカシ先生。


やばい!と思った私は全速力で走り出す。


「え、サクラちゃん!?待ってってばよー!」


後ろから驚いた声が聞こえたけど構わずに里の中を走る。



この顔を見られたらまずい。

だってーー
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