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恋人未満(長編)

「ちょっとガイ先生。何で戦争前からボロボロなんですか!」

忍連合軍の集合場所に行くと、同じ第3部隊のガイ先生がボロボロの状態で現れたのだ。
医療忍術で治療し、回復したガイ先生はハッハッハと笑う。

「いやー、すまんな。暁と闘っていたものでな」

私が呆れて見ていると、ガイ先生は顔を上げて遠くを見る。
その方向を見ると、その先には土壁の上に立つ第3部隊を率いる我が師。

「あそこにカカシがいると、近い将来を見ているようだな」
「・・・はい」

ガイ先生の言葉に私は目を細めて先生を見る。

近い将来。

カカシ先生はあんな風に火影として立ち、皆を纏める日が来るだろう。 
私は、また置いていかれる覚悟を決めないといけない。







「ちょっとガイ。お前なんでそんなボロボロなわけ」

第3部隊の作戦会議を行うため上から降りてきた先生は私たちに近づいてくる。

「ハハハ。同じことをサクラにも言われたぞ。さすが師弟だな!」

腰に手を当てて高らかに笑うガイ先生に、先生は私と同じように呆れて見ている。
その目線が私に移動してドキッとした。


「サクラの木ノ葉ベスト初めて見た。似合ってるよ」

目を細め笑い褒めてくれる先生に、戦争前なのに顔が緩んでしまう。

「忍服もいつもと違うから気になってて・・・変じゃない?」
「変じゃないですよ!サクラさんはいつだって素敵です!!」
「ああ!だが、このタイツを着た方がもっと良い感じになるぞ!」

鼻息荒く私に接近して褒めてくれるリーさん、同じように私に近づき親指を立てているガイ先生。


濃い顔2つと緑の全身タイツ。
・・・ダブルでキツイ。


「ガイ。それは女の子には酷でしょ」

顔を引き攣らせる私を見兼ねて先生が2人を引き剥がしてくれる。
「ん、そうか?」と納得してないガイ先生は顔を顰めている。




「カカシ隊長、そろそろ」
「あぁ」

後ろから呼ぶ声に先生は振り向き、真剣な顔をしてまた私を見る。

「サクラ」
「はい」

思わず背筋が伸びる。
もうカカシ先生は部隊長の顔をしていたから。

「お前の医療忍術頼りにしている。だが、無理するな。お前が倒れたら元も子もない」
「・・・はい」

確かにこの闘いの要は医療班と言っていい。
負傷した忍を治さない限り勝機はない。
第3部隊には数多く医療忍者がいるのに、私だけに伝えられた言葉に嬉しくなる。
部隊長になっても私を見てくれている先生に涙腺が緩みそうになり、その顔を見られたくなくて俯く。


私の心情が分かったのか、何も言わずに頭を撫でて先生は部隊の中心へと向かう。



「カカシのやつ。リーには何もないのか」
「しょうがないですよ、ガイ先生。サクラさんはここにいる唯一の生徒なんですから」


「だからガイ先生が言ってください!」「もちろんだ、リー!!」と、後ろで熱い抱擁をしている濃い2人を見向きもしないで私は先生が向かった方向を見ていた。


ーー先生も無理しないで・・・。死なないで・・・。


直接言えなかった言葉を心の中で願う。




****



敵を感知した先生を追って現場に降り立つと、そこにはかつて私たち第七班が最初に闘った再不斬と白がいた。

「再不斬・・・白・・・」

私の呟きでカカシ先生とリーさんとクナイを交えていた2人はこちらを向く。

「ほう。お前はあの時のカカシの部下のくの一か。大きくなったな」

懐かしそうに言ってくる再不斬に心が締め付けられる。
白は彼を慕い、彼も白を思い、お互いの為に闘って、同じところに行けることを願って。
そんな彼らの心を踏み躙るカブトが憎い。


カブトの術で意識を刈り取られるのを必死に抗う2人。

「カカシ・・・何としてでも俺を止めろ・・・。俺は、人間として死んだ・・・」
「あぁ・・・分かっているよ」

先生は額当てをずらし写輪眼を開き、ただの戦闘人形となった2人と闘い始める。
医療班である私も戦闘に加わりながら皆を治療していく。






忍刀七人集も穢土転生され、戦場は混乱に陥っていた。

どんどん仲間が負傷し、戦闘に入らず治療をしていた時。


「春野さん!こっちに来てください!」
「っはい!」

ふらふらになる体に鞭を打って呼ばれた人の元へ走る。

「カカシ隊長が再不斬との闘いで胸に怪我を負ったので治療をお願いします!」
「カカシ先生が!?」

その言葉に鼓動が早くなる。

「命に別状はないみたいですが、今後のために治療をお願いします」
「はい!」

私はその人と別れ、急いで先生の元へと急いだ。




辿り付くとそこには封印された2人遺体と、再不斬の刀を持ったカカシ先生と話すサイがいた。

「カカシせ・・・」


話を遮るのに躊躇したが治療が先と声をかけようとした時。


カカシ先生が今まで感じたことのないほどの怒気を含んでいて、体が震え足が止まってしまった。
それに気づいたサイが私に声をかけてきて、振り返った先生が怯える私に気づいて眉を下げる微笑む。

「ごめん。怯えさせたか」

私はバレているだろうが首を横に振る。
そして治療するために岩に座るよう促し、先生の前に跪き傷を治していく。


お互い何も喋らず、先生は治療する私を見下ろしてくる。
先生と出会って4年。
まだ知らないことばかりの先生だけど、それでも今、先生が何を考えているのかが分かる。

敵として出会ったけど、あの2人は私たちにとって大切で、私たち3人を成長させてるくれた人たち。
その人たちを無下に扱われたことに、とてつもない怒りを覚えているのだ。



「先生」
「ん?」
「私も同じよ。たぶん・・・ナルトだって」

サスケくんも、と言いたかったけど、変わってしまった彼はもう思わないかもしれない。

「・・・うん」

顔を上げると、少し哀しそうに笑う先生と目が合う。

「この戦争に勝って、ナルトを守りましょう」
「あぁ、そうだな」


私がいつものように笑うと、先生の顔も私を安心させてくれるいつもの笑顔を見せてくれた。


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