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short.1

季節は梅雨。
常に空には分厚い雲が覆い、ムシムシジメジメとしてて気分が下がる。
雨が降っていないからといって傘を持たずに出ると、突然の雷雨に襲われるのだ。
ここにもその1人が。
綺麗な金髪と夏の青空のような瞳を持つ活発な少年は、当然のように傘を持っておらず、突然の大雨に全身をずぶ濡れにしてとある建物を歩く。
彼が通った後にはくっきり足跡が残っているのだが、同じような境遇に合った人の足跡もチラホラと。


ナルトは途中で会ったイルカからタオルを借りて、カカシの上忍が与えられる執務室のドアをノックもせず開ける。

「カカシせんせー、服が乾くまで居させて・・・っていない、の、か・・・」

部屋の中にはその名前の人物は居ないが、人は居た。
その人物は、部屋の真ん中に応接用に置いてあるソファーに寝転がって気持ちよさそうに寝息を立てていた。
普通なら部屋の所有者ではない人物がいたら不審に思うが、ナルトは顔を綻ばせる。
何故なら、この部屋の持ち主の生徒でありナルトの大切な仲間で好きな人だからだ。

どうやらサクラも雨に打たれてここで濡れたブーツを乾かしているようだった。
普段は隠されている白い素足が目に入り、知らずのうちに喉が鳴る。
それに気づき慌てて邪念を振り払うように頭を振る。
もし何かしようなら、彼女の恋人に何をされるか・・・。
ナルトは恐ろしいことを考えて身震いする。
ふと、彼女の白い太ももにある赤いものが目に入る。
もしかして怪我をしているのだろうか、とその足に手を伸ばした時だった。



「何してんの?」



喋り方は優しいのに、その声は地の底から上がってきたのではないかとら思うぐらいの低さに、ナルトは背筋が凍る。
恐る恐る振り返ると、そこにはにっこりと笑っているこの部屋の持ち主。
顔は笑顔なのに、漂ってくるのは殺気。
カカシの細められた目がすっ、と開いたのを見てナルトは涙目になる。

「いや、その!服が濡れたから乾かさせて貰おうかなー、なんて・・・」
「その辺走ってたら乾く」

そう言ってカカシはナルトの首根っこを掴んで部屋から放り出す。
「そんなー!」と部屋の外から聞こえてきたがカカシは気にせずサクラに近寄る。
カカシの手には毛布。
突然部屋にやってきたサクラはソファーに寝転がり寝てしまった。
見かねたカカシが別の部屋の毛布を借りて戻ってきたら先程の場面に出くわしたのだ。
恋人が部屋を訪れて浮かれていたのに、その恋人に男が触ろうとしているシーンを見て苛立ちがピークに達する。
カカシは持ってきた毛布を呑気に寝ているサクラにボスっと放り投げる。

「な、何!?」

サクラは突然の衝撃に飛び起きて周りを見渡す。

「お前、無防備過ぎ」

カカシは向かいのソファーに座り、腕を組んでサクラを睨む。

「え〜?」

サクラは起きて機嫌の悪いカカシを見ながら目を擦る。
気持ちよく寝ていた所を起こされて眠気が取れないのか欠伸もして。


そんなサクラに益々苛立ちが募る訳で。
元はと言えばサクラが悪い。

雨に降られたから乾かせてと突然やってきて、ソファーで寛いでいるかと思ったら寝始めた。
風邪を引いたらいけないと毛布を取りに行こうとした時に見たサクラの投げ出された素足。
男が見たら情欲を抱くであろう白い素足を惜しげもなく出して寝こけている。
そんな油断しきった恋人の姿に嫉妬したカカシが、サクラが寝ているのをいいことに太ももにこっそりキスマークを付けた。
まさか他の男への牽制の為に付けたキスマークを触ろうとする奴がいるとは思わなかったが。
ナルトじゃなかったら瀕死の状態にしていたかもしれない。


そんなことがあったとは梅雨知らずのサクラはまた眠そうな顔をしている。

「まだブーツ乾いてないから、乾いたら起こしてぇ・・・」

そう言ってサクラはソファーに倒れ込み毛布を被ってまた寝息を立て始める。

サクラは昔から自分への好意に疎い。
誰にでも隔てなく接するので好意を抱く男が多いのだが、それを本人が気づいていないからタチが悪い。
カカシがいないところで無防備なサクラに男が触ろうとするかもしれないと思ったら、はらわたが煮えくり返りそうだ。


どうにかしなきゃな・・・、とカカシは幸せそうに眠るサクラにこっそりため息を吐いたのだった。


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