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今日はカカシ先生に任務が入っていて暇を持て余し、ちょうど任務が終わったいのに食事に誘われていきつけのお店に向かっている時だった。
隣を歩いていたいのが急に立ち止まるので、不審に思い振り返る。

「いの、どうしたのよ」
「サクラ、あんたカカシ先生と別れたわけ?」
「はぁ!?何言ってんのよイノブタ!」

いきなり失礼なことを言われて怒鳴るも、いのは私の言葉など耳に入ってないみたいにある方向をずっと見ていた。
私は首を傾げながら同じ方向を見ると。



そこには恋人であるカカシ先生が女の人の腰に腕を回してホテルに入っていったところだった。



****



「サクラ。しばらく任務が忙しくて夜会えそうにないんだ」

次の日の朝。
いつもの橋の上で待ち合わせをしていると、珍しくヤマト隊長と一緒にカカシ先生が現れる。
浮気現場を見たから顔を合わせたくないのに、更に会えない宣言。

──本当に任務なの。

その言葉が思わず口から出そうになって慌てて飲み込む。

「分かったわ。任務頑張って」

偽りの微笑みを向けると先生は嬉しそうに笑って頭を撫でてくれる。
いつもなら温かくて愛おしい手が今は嫌悪感しかない。
身長差から先生からは私が顔を上げないと見えないのが救いだ。

「カカシ先生も一緒に行くのか?」

ヤマト隊長と話してたナルトが近寄り嬉しそうに先生に話しかけてくる。

「いや。オレは別の任務」

そう言うとナルトは頬を膨らませて不満気な顔をする。
そんなナルトに先生は困ったように笑って頭を撫でる。

「じゃあ頑張れよ2人とも。──あぁ、そうだった」

ナルトの頭を撫でて立ち去ろうとした先生は踵を返して私の所に戻ってくる。

「これサクラにあげようと思ってね」

先生は笑ってポーチから取り出したものを私に差し出してきた。





「で、これがそのブツってわけ?」

任務が終わったいのを捕まえて甘味処の1番奥の席に座り、私たちは机の上に置かれた物を見て顔を顰めている。
それは先生が任務前にくれた緑色の石がついたネックレス。
その出来事は1週間前。
それから毎日任務前や後に先生がなにかとプレゼントを渡してくるようになった。
それはアクセサリーだったり、甘いものだったり。
前からプレゼントはしてくれてたけど、ここ毎日だ。
今目の前にはあるのはネックレスの他に、指輪やピアスもある。
そして。

「これが私が隠し撮りした1週間のカカシ先生の写真よ」

いのが机の上に何枚もの写真を広げる。
それは先生が女の人と親密にくっついて、この前と同じホテルに入って行く写真。

「ここ毎日同じ人とホテルに入ってってるわ」

見事にスクープを捉えた写真。
いのは探偵の才能があるのではないだろうか。

それより。
1日のみならず毎日恋人をほったらかして別の女の人とホテル。
しかも毎日のプレゼント。
やましいことがあるから贈ってきてるのではないか。
私が机の上で爪が食い込むほど拳を握りしめる。
そんな私をいのは心配そうに見て。

「で、どうするの?」



****



「これ、どういうこと!」

数日後。
ようやく先生を捕まえて喫茶店に連れ込む。
私は先生にいのの浮気写真を叩きつける。
店内にいる客が何事かとこちらを伺っている。
しかし当の本人は。

「これ綺麗に撮れてるね。サクラが撮ったの?」

先生は何枚か手に取って呑気に見ているのだ。
その反応に更に私の怒りを膨れ上がらせる。

「しらばっくれないないでよ!浮気してるでしょ!!」

近くに座っていた客が私の言葉にコーヒーを噴き出す。
先生はというと、動揺もせずいつもの飄々とした顔で。

「してないよ」
「嘘!」
「嘘じゃない。この人は依頼人だよ。ストーカーに悩まされてて、犯人が捕まるまで彼氏役になってたんだ」
「なんでホテルにまで行くのよ!」
「そっちの方が信憑性が高まるだろ?言っとくけど手は出してないよ」
「信じられない!!」

男女がホテルに入って手を出してないなんて信じれるわけない。
思い切り先生を睨むと、先生はため息を吐く。

「どうしたら信じるんだよ」
「ここに浮気の証拠があるんだから無理に決まってるでしょ!」
「じゃあ、オレが嘘ついてないって分かったら何でもしてくれる?」
「いいわよ。ちゃんと証明できたらね!」

どうやったって無理だと思っている私が鼻を鳴らすと、先生は何故かにっこり笑う。
そのタイミングで店のドアについているベルが鳴る。


「カカシさん」

私の後ろから先生を呼ぶ声が聞こえて振り返ると、そこには先生と写真に写っていた女性が立っていた。
いきなり浮気相手に遭遇して固まる私。
そして先程テーブルに広げられていた浮気写真を思い出して慌ててテーブルを見ると、それは綺麗に無くなっていた。
先生が早業で片付けていたのだ。

「こんにちは。どうだった?」
「はい!昨日、警備部隊の方がストーカーを捕まえてくださって、先程、二度と私に近づかないという念書を書かせました。これで安心して過ごせます。ありがとうございます!」
「それは良かった」

女性は涙を滲ませながら先生に何度もお礼を言っている。
状況に全く追いつけていない私は女性の顔をポカーンと見ていると、ようやく私に気がついたようで。

「あら?もしかして、こちらの方が・・・」
「そう。恋人のサクラだよ」

先生が私を紹介すると、女性はパァと嬉しそうに笑う。

「カカシさんが仰ってた通り本当に可愛い方ですね!」
「でしょ?」
「いつもカカシさんからあなたの話を聞いていたので、いつかお会い出来たらって思ってたんですよ」

女性は私の両手を握って嬉しそうに手を上下に振る。
私を置いてどんどん話が進んでいく状況に私は一言も発せずにいる。
でもだんだん分かってきた。
もしかして。

「ごめんなさいね。ずっとカカシさんをお借りしてて。ストーカーがしつこくてカカシさんに彼氏役をして貰ってたんです。でもようやく捕まって依頼は終了したので安心してください」

女性がにこやかに微笑んでくるのに対して私の顔からは血の気が引く。
ようやくストーカーから解放された彼女はテンションが上がって私の顔色には気づかず。

「本当にありがとうございました。あ、それと私、他に好きな人がいるので。それじゃあ!」

女性は晴れやかに手を振って店を出て行く。
私たちの話を聞こうと静かになっていた店内は女性が出て行ってまた賑やかになる。
私だけが未だに女性が去っていった方向から顔を戻せないでいると。



「──さて」

先生の声に大袈裟に肩が跳ねる。
いつの間にか後ろに立っていた先生は私の肩に優しく触れる。
私はというと、尋常じゃないほどの冷や汗をかいていた。
手のひらは汗でびっしょりだ。


「サクラちゃんは何をしてくれるのかなぁ?」


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