short.1
「ねぇ、カカシ先生。今日、任務終わったら先生の部屋行ってもいい?」
草むしりの任務の休憩時間。
座って本を読んでいると、恋人であるサクラが屈んで上目遣いで聞いてくる。
可愛い恋人の可愛いお願いを断るわけもなく。
「もちろん」
にこりと笑いかけると、サクラは嬉しそうに笑って。
「じゃあ、一旦家に帰ってから行くわね」
「分かった。待ってる」
約束してサクラは離れていく。
爽やかに笑うカカシだが、口布の下は夜のことを考えてにやけていたのだった。
****
ピンポーン
「いらっしゃい」
「おじゃましまーす」
約束通りサクラが部屋を訪れた。
任務で汚れてお風呂に入ったのか、横を通ったときに桃の匂いが漂ってきた。
「サクラ、ココアでいい?」
棚からサクラ専用のココアを取り出す。
夕飯はどうしようか、と考えていると。
「あ、いらない」
「え?」
サクラの言葉に驚いて止まる。
いつもなら部屋に来たら真っ先にココアを所望するサクラが。
「ねぇ、先生。パックン呼んで」
「え、パックン?」
サクラはキッチンにいるオレに近寄って頷く。
意味が分からないが、とりあえず口寄せで呼び出す。
ボンッ
「呼ばれて飛び出てパックンじゃ」
きちんと決めポーズで現れたパックンをサクラは嬉しそうに抱きしめて玄関に向かう。
オレは慌ててサクラの肩を掴む。
「サクラ、どこ行くの」
「どこって、帰るのよ」
「何で!?来たばっかりだろ」
とんでもないことを言い出す幼い恋人。
あの約束からオレがどれだけ楽しみにしていたのか知らないだろう。
主に夜のことだが。
「だってパックンに用事があったんだもん」
「それ。何でパックン?」
そう聞くと、サクラは腕の中で大人しくパックンをぎゅー、と抱きしめる。
それを見てオレはムッとする。
「最近疲れてるのかモフモフしてるのを抱きしめて眠りたくて。そこでパックンよ!ね、パックン連れて帰っていいでしょ?」
サクラとパックンは潤んだ瞳でお願いしてくる。
オレがその表情に弱いことを知っていてやっているのだ。
というか、何でパックンまで。
「だめ」
頷きそうになるのをなんとか踏みとどまる。
「何で!?」
まさか断られると思わなかったのかサクラはオレに掴みかかる。
「抱きしめたいならオレでいいでしょ」
「先生モフモフしてないじゃない」
「パックンだってそこまでモフモフしてないし。オレは温めてあげれる」
「パックンで間に合ってます」
そう言ってサクラはまた帰ろうとするので引き留める。
「急な呼び出しあったときパックンいないと困るし」
一旦戻してまた呼び出せばいいのだが。
このままサクラに帰られたら困る。
もっともなことを言われ、サクラの唇が尖っている。
「だから、ここでパックン堪能したら?」
オレの部屋にいれば、サクラはパックンを堪能出来て、オレはサクラといれる。
こんなにいい提案はないだろう。
サクラも嬉しそうに頷いた。
****
あれから毎日、サクラは任務や修行が終わった後オレの部屋に訪れるようなった。
目的はパックンなんだが、それでもサクラと夜遅くまで毎日いれるなんて幸せじゃないか。
そう思っていた。
しかし現実は甘かった。
サクラは部屋に入るや否や、オレといちゃつこうともせずパックンを要求して、パックンと遊んだり抱きしめたり。
そこまではまだ許容出来た。
だが。
夜遅くまでいるので、連日のお泊まり。
恋人と一緒のベッドに寝て何も起きないほど枯れていない。
むしろ逆だ。
なのに、サクラが抱きしめるのはオレではなくパックン。
しかも寝言までパックン。
オレの堪忍袋が切れた。
「パックン」
この日もサクラが遊びに来てベッドの上でいちゃつく2人(?)。
そんな2人を見下ろしながら呼ぶと、2人は可愛らしく見上げてくる。
「なんじゃ」
「帰れ」
オレは印を組みパックンを無理やり帰らせた。
サクラの腕の中にいたパグ犬は煙と化し、サクラは呆然とした後、目を吊り上げる。
「何するのよ先生!!」
「パックンばかり構うサクラが悪い」
「意味わからない!」
サクラはプリプリ怒ってオレに背中を向ける。
オレはそんなサクラの腰に後ろから縋り付く。
「なぁ」
話しかけてもサクラは無視。
大の男がこんな小さな少女にヤキモチをやいて縋り付くなんて滑稽だ。
アスマと紅に見られたら一生ネタにされる。
だが、惚れた弱みだからしょうがない。
「ここにもサクラの犬がいるんだけど」
情けなくも縋るように言うと、サクラはチラッとオレを見て、呆れたように笑う。
「大きな甘えん坊の犬だわ」
「そうだよ。だからちゃんとオレを見て」
ぎゅう、とサクラに抱きつくとサクラは優しく頭を撫でてくれる。
「分かったから、今度ちゃんとパックンに謝ってよね」
「うん」
どっちが大人で子供なのか分からない。
これは将来、絶対尻に敷かれるぞ。
パックンは忍犬たちにそう語ったそうな。
草むしりの任務の休憩時間。
座って本を読んでいると、恋人であるサクラが屈んで上目遣いで聞いてくる。
可愛い恋人の可愛いお願いを断るわけもなく。
「もちろん」
にこりと笑いかけると、サクラは嬉しそうに笑って。
「じゃあ、一旦家に帰ってから行くわね」
「分かった。待ってる」
約束してサクラは離れていく。
爽やかに笑うカカシだが、口布の下は夜のことを考えてにやけていたのだった。
****
ピンポーン
「いらっしゃい」
「おじゃましまーす」
約束通りサクラが部屋を訪れた。
任務で汚れてお風呂に入ったのか、横を通ったときに桃の匂いが漂ってきた。
「サクラ、ココアでいい?」
棚からサクラ専用のココアを取り出す。
夕飯はどうしようか、と考えていると。
「あ、いらない」
「え?」
サクラの言葉に驚いて止まる。
いつもなら部屋に来たら真っ先にココアを所望するサクラが。
「ねぇ、先生。パックン呼んで」
「え、パックン?」
サクラはキッチンにいるオレに近寄って頷く。
意味が分からないが、とりあえず口寄せで呼び出す。
ボンッ
「呼ばれて飛び出てパックンじゃ」
きちんと決めポーズで現れたパックンをサクラは嬉しそうに抱きしめて玄関に向かう。
オレは慌ててサクラの肩を掴む。
「サクラ、どこ行くの」
「どこって、帰るのよ」
「何で!?来たばっかりだろ」
とんでもないことを言い出す幼い恋人。
あの約束からオレがどれだけ楽しみにしていたのか知らないだろう。
主に夜のことだが。
「だってパックンに用事があったんだもん」
「それ。何でパックン?」
そう聞くと、サクラは腕の中で大人しくパックンをぎゅー、と抱きしめる。
それを見てオレはムッとする。
「最近疲れてるのかモフモフしてるのを抱きしめて眠りたくて。そこでパックンよ!ね、パックン連れて帰っていいでしょ?」
サクラとパックンは潤んだ瞳でお願いしてくる。
オレがその表情に弱いことを知っていてやっているのだ。
というか、何でパックンまで。
「だめ」
頷きそうになるのをなんとか踏みとどまる。
「何で!?」
まさか断られると思わなかったのかサクラはオレに掴みかかる。
「抱きしめたいならオレでいいでしょ」
「先生モフモフしてないじゃない」
「パックンだってそこまでモフモフしてないし。オレは温めてあげれる」
「パックンで間に合ってます」
そう言ってサクラはまた帰ろうとするので引き留める。
「急な呼び出しあったときパックンいないと困るし」
一旦戻してまた呼び出せばいいのだが。
このままサクラに帰られたら困る。
もっともなことを言われ、サクラの唇が尖っている。
「だから、ここでパックン堪能したら?」
オレの部屋にいれば、サクラはパックンを堪能出来て、オレはサクラといれる。
こんなにいい提案はないだろう。
サクラも嬉しそうに頷いた。
****
あれから毎日、サクラは任務や修行が終わった後オレの部屋に訪れるようなった。
目的はパックンなんだが、それでもサクラと夜遅くまで毎日いれるなんて幸せじゃないか。
そう思っていた。
しかし現実は甘かった。
サクラは部屋に入るや否や、オレといちゃつこうともせずパックンを要求して、パックンと遊んだり抱きしめたり。
そこまではまだ許容出来た。
だが。
夜遅くまでいるので、連日のお泊まり。
恋人と一緒のベッドに寝て何も起きないほど枯れていない。
むしろ逆だ。
なのに、サクラが抱きしめるのはオレではなくパックン。
しかも寝言までパックン。
オレの堪忍袋が切れた。
「パックン」
この日もサクラが遊びに来てベッドの上でいちゃつく2人(?)。
そんな2人を見下ろしながら呼ぶと、2人は可愛らしく見上げてくる。
「なんじゃ」
「帰れ」
オレは印を組みパックンを無理やり帰らせた。
サクラの腕の中にいたパグ犬は煙と化し、サクラは呆然とした後、目を吊り上げる。
「何するのよ先生!!」
「パックンばかり構うサクラが悪い」
「意味わからない!」
サクラはプリプリ怒ってオレに背中を向ける。
オレはそんなサクラの腰に後ろから縋り付く。
「なぁ」
話しかけてもサクラは無視。
大の男がこんな小さな少女にヤキモチをやいて縋り付くなんて滑稽だ。
アスマと紅に見られたら一生ネタにされる。
だが、惚れた弱みだからしょうがない。
「ここにもサクラの犬がいるんだけど」
情けなくも縋るように言うと、サクラはチラッとオレを見て、呆れたように笑う。
「大きな甘えん坊の犬だわ」
「そうだよ。だからちゃんとオレを見て」
ぎゅう、とサクラに抱きつくとサクラは優しく頭を撫でてくれる。
「分かったから、今度ちゃんとパックンに謝ってよね」
「うん」
どっちが大人で子供なのか分からない。
これは将来、絶対尻に敷かれるぞ。
パックンは忍犬たちにそう語ったそうな。
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