short.1
あれは、サスケとナルトがいなくなって暫くしたある日。
サクラも五代目に弟子入りをして、七班での活動が無くなって単独で任務に入るようになった。
そしていつものように写輪眼を酷使して入院することになった。
体は動かなくてもそれ以外は正常だから、やることもなく、ただボーとする日々。
そんなとき、病室のドアをノックする音が聞こえた。
「はーい、どうぞー」
看護師だろうと返事をする。
「失礼しまーす」の声とともにドアが開く。
顔だけその方向に向けて、入ってきた人物に瞠目する。
「さ、サクラ!?」
その人物は確かに自分の教え子だった。
だが、いつもの赤い服ではなく看護師が着る、所謂ナース服というものを着ていた。
「え、何驚いてるの?」
サクラは持ってきた機材などで診察の準備を始める。
綱手に弟子入りして病院勤務も始めた聞いてはいたが、この目で見るのは初めてだった。
「いや・・・そういうサービスが始まるのかと思って先生ドキッとしちゃった。服装が違うだけでこんなに変わるもんなんだな」
じっくり上から下まで見ていると、サクラが軽蔑の目で見てくる。
「綱手様に報告しておきますので」
「あ、ごめんなさい。それは勘弁して」
サクラは呆れた顔をして着々とオレの診察をしていく。
なんか教え子にこういうのをされるのは、何というか恥ずかしい。
「うん。体が動かない以外は問題はないわね。それじゃ」
サクラは診察が終わるとすぐに病室を出て行こうとする。
「え、もう帰るの?もう少しお話していこうよ」
そう言うと、サクラは肩越しに睨んでくる。
「あのね、私は仕事中なの。暇人の相手してる暇はないのよ!」
サクラはそう言って病室を勢いよく出て行った。
本当、サスケには甘いがカカシとナルトには相変わらず厳しい。
それは気を許しているからだろう、とオレは眉を下げて笑う。
いつか、サスケに向けられる好意が少しでもこっちに向いてくれたらいいのになぁ。
****
「──せんせ。カカシ先生」
体を揺さぶられる感覚に重い瞼を開ける。
そこにはサクラが心配そうな顔をしてオレを見ていた。
頭がぼー、としていて、これが現実か分からなくてサクラの頬をペチペチ叩く。
「・・・ちょっと、何するのよ」
いきなり頬を叩かれて機嫌が悪くなるサクラ。
何か言いたいのに体が重くて頭も痛い。
サクラは手を額に乗せる。
ヒンヤリとしてて気持ちいい。
「まだ熱あるわね。薬飲んだ?」
「・・・いや」
掠れ声で返事をすると、サクラは「もう」と言って側を離れていく。
そういや久しぶりに風邪ひいたんだったなー、と体のだるさから思い出す。
熱のせいなのか、昔の夢を見た。
あれからサクラを意識し出すようになって、告白して、付き合うようになって。
まだ夢を見ているような感じがする。
目が覚めたら、本当は付き合ってなくてただの上司と部下の関係で。
それだったら覚めないでほしい。
「先生、薬飲む前にお腹に入れといた方がいいんだけど。お粥食べれそう?」
「無理そう・・・」
お腹も空かないし、体を起こすのもきつい。
サクラは鞄から小さめの兵糧丸を取り出す。
「ならせめてこれ食べて」
唇に兵糧丸を押し付けられ、それを口に含んで噛む。
ナルトとサイがサクラの兵糧丸は不味すぎると言っていたから避けていたが、熱で味覚を感じなくて助かった。
「はい、薬」
「ん・・・後で飲む」
サクラに薬と水を差し出されるが、怠くて飲む気にならない。
手の甲を目の上に置く。
「今飲まなきゃ意味ないでしょ」
「うん・・・」
分かっていても、体が治そうとしているのかすごい眠い。
サクラの呼ぶ声がどんどん遠くなっていくのを感じる。
夢の世界に足を踏み込もうとした時、唇に柔らかいものを感じて、遅れて口の中に生暖かい液体が流れ込んでくる。
それをゴクン、と飲み込む。
薄ら目を開けると、近くにあったサクラの顔が離れていく。
「風邪・・・うつるぞ」
「そんなやわな体じゃないわよ」
サクラはそう言ってまた水を口に含んで顔を近づける。
唇と水を受け入れ、喉仏が上下に動く。
サクラの顔が離れようとするとき、その頭の後ろを手で支えて、深く唇を合わせた。
※****
「は・・・」
滅多に聞けないカカシ先生の吐息。
相手は風邪をひいた病人だと分かってるんだけど。
薬を飲もうとしない先生に、医療に携わる身としては許せなくて。
先生の薬を自分の舌に乗せて水を飲まないように含む。
そして、手を目の上に乗せて寝ようとする先生の唇に合わせる。
熱で鈍っている先生の虚をつくなんて簡単だった。
薄く開いている唇の隙間に水と薬を流し込む。
先生の喉が動くのを確認して顔を離すと、その瞳は熱で潤んでいた。
また水を含んで唇を合わせて流し込む。
顔を離そうとしたら先生の熱い手が後頭部に回って、唇が合わさって先生の舌が入ってくる。
熱のせいでいつもより熱い舌。
気持ちよくてもっとしていたいけど。
私はゆっくりと体を離す。
「この続きは、ちゃんと風邪が治ってからね」
中途半端に終わって不満そうにしている先生にウインクをする。
「はぁ・・・どこでこんなこと覚えたの・・・」
「いつも先生にやられっぱなしは癪だから、師匠と紅先生に」
「あの2人は・・・」
先生は腕で目を覆ったまま動かなくなる。
耳を澄ますと小さく寝息を立てていた。
元々眠気もあった上、即効性のある綱手直伝の薬ですぐに夢の中に入ったらしい。
私はくすり、と笑って先生の腕を布団の中に戻す。
口布も額当ても外して、風邪で弱々しい先生。
こんな先生を見れるのは私だけ。
嬉しい気持ちが溢れて、先生の額に軽くキスをする。
「早く良くなってよね、カカシ先生」
サクラも五代目に弟子入りをして、七班での活動が無くなって単独で任務に入るようになった。
そしていつものように写輪眼を酷使して入院することになった。
体は動かなくてもそれ以外は正常だから、やることもなく、ただボーとする日々。
そんなとき、病室のドアをノックする音が聞こえた。
「はーい、どうぞー」
看護師だろうと返事をする。
「失礼しまーす」の声とともにドアが開く。
顔だけその方向に向けて、入ってきた人物に瞠目する。
「さ、サクラ!?」
その人物は確かに自分の教え子だった。
だが、いつもの赤い服ではなく看護師が着る、所謂ナース服というものを着ていた。
「え、何驚いてるの?」
サクラは持ってきた機材などで診察の準備を始める。
綱手に弟子入りして病院勤務も始めた聞いてはいたが、この目で見るのは初めてだった。
「いや・・・そういうサービスが始まるのかと思って先生ドキッとしちゃった。服装が違うだけでこんなに変わるもんなんだな」
じっくり上から下まで見ていると、サクラが軽蔑の目で見てくる。
「綱手様に報告しておきますので」
「あ、ごめんなさい。それは勘弁して」
サクラは呆れた顔をして着々とオレの診察をしていく。
なんか教え子にこういうのをされるのは、何というか恥ずかしい。
「うん。体が動かない以外は問題はないわね。それじゃ」
サクラは診察が終わるとすぐに病室を出て行こうとする。
「え、もう帰るの?もう少しお話していこうよ」
そう言うと、サクラは肩越しに睨んでくる。
「あのね、私は仕事中なの。暇人の相手してる暇はないのよ!」
サクラはそう言って病室を勢いよく出て行った。
本当、サスケには甘いがカカシとナルトには相変わらず厳しい。
それは気を許しているからだろう、とオレは眉を下げて笑う。
いつか、サスケに向けられる好意が少しでもこっちに向いてくれたらいいのになぁ。
****
「──せんせ。カカシ先生」
体を揺さぶられる感覚に重い瞼を開ける。
そこにはサクラが心配そうな顔をしてオレを見ていた。
頭がぼー、としていて、これが現実か分からなくてサクラの頬をペチペチ叩く。
「・・・ちょっと、何するのよ」
いきなり頬を叩かれて機嫌が悪くなるサクラ。
何か言いたいのに体が重くて頭も痛い。
サクラは手を額に乗せる。
ヒンヤリとしてて気持ちいい。
「まだ熱あるわね。薬飲んだ?」
「・・・いや」
掠れ声で返事をすると、サクラは「もう」と言って側を離れていく。
そういや久しぶりに風邪ひいたんだったなー、と体のだるさから思い出す。
熱のせいなのか、昔の夢を見た。
あれからサクラを意識し出すようになって、告白して、付き合うようになって。
まだ夢を見ているような感じがする。
目が覚めたら、本当は付き合ってなくてただの上司と部下の関係で。
それだったら覚めないでほしい。
「先生、薬飲む前にお腹に入れといた方がいいんだけど。お粥食べれそう?」
「無理そう・・・」
お腹も空かないし、体を起こすのもきつい。
サクラは鞄から小さめの兵糧丸を取り出す。
「ならせめてこれ食べて」
唇に兵糧丸を押し付けられ、それを口に含んで噛む。
ナルトとサイがサクラの兵糧丸は不味すぎると言っていたから避けていたが、熱で味覚を感じなくて助かった。
「はい、薬」
「ん・・・後で飲む」
サクラに薬と水を差し出されるが、怠くて飲む気にならない。
手の甲を目の上に置く。
「今飲まなきゃ意味ないでしょ」
「うん・・・」
分かっていても、体が治そうとしているのかすごい眠い。
サクラの呼ぶ声がどんどん遠くなっていくのを感じる。
夢の世界に足を踏み込もうとした時、唇に柔らかいものを感じて、遅れて口の中に生暖かい液体が流れ込んでくる。
それをゴクン、と飲み込む。
薄ら目を開けると、近くにあったサクラの顔が離れていく。
「風邪・・・うつるぞ」
「そんなやわな体じゃないわよ」
サクラはそう言ってまた水を口に含んで顔を近づける。
唇と水を受け入れ、喉仏が上下に動く。
サクラの顔が離れようとするとき、その頭の後ろを手で支えて、深く唇を合わせた。
※****
「は・・・」
滅多に聞けないカカシ先生の吐息。
相手は風邪をひいた病人だと分かってるんだけど。
薬を飲もうとしない先生に、医療に携わる身としては許せなくて。
先生の薬を自分の舌に乗せて水を飲まないように含む。
そして、手を目の上に乗せて寝ようとする先生の唇に合わせる。
熱で鈍っている先生の虚をつくなんて簡単だった。
薄く開いている唇の隙間に水と薬を流し込む。
先生の喉が動くのを確認して顔を離すと、その瞳は熱で潤んでいた。
また水を含んで唇を合わせて流し込む。
顔を離そうとしたら先生の熱い手が後頭部に回って、唇が合わさって先生の舌が入ってくる。
熱のせいでいつもより熱い舌。
気持ちよくてもっとしていたいけど。
私はゆっくりと体を離す。
「この続きは、ちゃんと風邪が治ってからね」
中途半端に終わって不満そうにしている先生にウインクをする。
「はぁ・・・どこでこんなこと覚えたの・・・」
「いつも先生にやられっぱなしは癪だから、師匠と紅先生に」
「あの2人は・・・」
先生は腕で目を覆ったまま動かなくなる。
耳を澄ますと小さく寝息を立てていた。
元々眠気もあった上、即効性のある綱手直伝の薬ですぐに夢の中に入ったらしい。
私はくすり、と笑って先生の腕を布団の中に戻す。
口布も額当ても外して、風邪で弱々しい先生。
こんな先生を見れるのは私だけ。
嬉しい気持ちが溢れて、先生の額に軽くキスをする。
「早く良くなってよね、カカシ先生」
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