short.1
長期の任務が入り、日付が変わった頃に久しぶりに自宅に帰り着いたカカシ。
何もする気が起きず、ベッドに忍服のまま倒れ込み死んだように眠っていた。
ふ、と目を開けると、カーテンの隙間からオレンジ色の光が部屋に差し込んでいた。
上半身を起こすと身体がギシギシなり、腸が動き出してお腹が鳴る。
ほぼ丸一日何も食べていないことに気づき、冷蔵庫を覗くがもちろん何も入っていない。
どうしたものか、と考えていると、部屋のインターホンが鳴る。
寝起きと空腹のせいか頭が働かず、誰かも確認せずにドアを開けると。
「カカシ先生」
「サクラ」
久しぶりに見る教え子に驚いたがすぐに頬が緩む。
サスケが里を抜け、ナルトが自来也と共に修行の旅に、残されたサクラも綱手に弟子入りをした。
生徒が全員自分の手から離れ為、カカシは上忍として任務に入るようになった。
その為、毎日会っていたのが嘘のように顔を見なくなった。
遠目で歩いているのを見かけて程度。
1ヶ月ぶりに見る唯一の女の子。
少し背が伸びたように思える。
「どうした?」
「うん。師匠から先生が任務から帰ってきてるって聞いたから。おかえりなさい」
「──ただいま、サクラ」
ただいま、久しぶりに口から出したその言葉が少しむず痒い。
そんなことに気づかないサクラは嬉しそうに笑う。
「怪我してない?」
「大丈夫だよ」
良かった、と安心したように息を吐く少女が可愛くて頭を撫でる。
そこで、サクラが両腕に抱えるように鞄を持っていることに気づいた。
「なに、それ?」
首を傾げると、サクラは思い出したように顔を上げる。
「あ、先生、部屋に入ってもいい?」
「ん?それは別にいいけど」
カカシはドアを大きく開いて入るのを促すと、サクラは「おじゃまします」と礼儀正しく部屋の中に入る。
サクラは部屋に入るとすぐにキッチンに向かい荷物を広げている。
すると、空きっ腹を刺激するいい匂い。
「それ、サクラが作ったのか?」
鞄から取り出されたのは、タッパーに入った料理らしきもの。
サクラは1つ1つ蓋を開けていく。
「うん!先生、冷蔵庫何もないの忘れて夕方までグータラ過ごしてるだろうなって思ってご飯持ってきたの」
「・・・そりゃどーも」
短い期間しか指導していないのに、すっかりカカシの性格を理解しているようだった。
「何作ってきてくれたんだ?」
「えっとね、茄子のお浸しに、茄子のサラダ、茄子のグラタンと、茄子の味噌汁!」
サクラは魔法瓶を取り出して蓋を開けると、味噌のいい匂いが立ち込める。
「・・・・・・茄子ばっかりだな」
「うん。先生、茄子の味噌汁が好きって言ってたから茄子好きかなって思って」
「・・・まぁ好きだけど」
限度っていうものがあるだろう。
「・・・もしかして、嫌だった?」
「え!いや、嬉しいよ。ありがとう」
困った顔をしていると、サクラが泣きそうな顔をしているので慌てて取り繕う。
「良かった!それじゃ、また作って持ってくるわね」
嬉しそうにサクラは軽くなった鞄を背負って玄関に向かう。
「サクラも修行で忙しいんだから無理しなくていいよ」
「いいの。私がしたくてやってることだから」
「なんで?」
ただの担当上忍ってだけでここまでするものだろうか。
率直な質問をすると、サクラは満面の笑みを浮かべて振り返る。
「お母さんがね。手に入れるならまずは胃袋からよって教えてくれたの」
「ん?」
その言葉に固まっていると、サクラは「またねー!」と言って部屋を出て行った。
サクラがいなくなった部屋でカカシは床に座り、テーブルに置かれた料理たちを腕を組んで難しい顔で唸っていた。
サクラが最後に残したあの言葉。
カカシはどんな気持ちで食べればいいのか。
それから2時間以上悩まされたのだった。
何もする気が起きず、ベッドに忍服のまま倒れ込み死んだように眠っていた。
ふ、と目を開けると、カーテンの隙間からオレンジ色の光が部屋に差し込んでいた。
上半身を起こすと身体がギシギシなり、腸が動き出してお腹が鳴る。
ほぼ丸一日何も食べていないことに気づき、冷蔵庫を覗くがもちろん何も入っていない。
どうしたものか、と考えていると、部屋のインターホンが鳴る。
寝起きと空腹のせいか頭が働かず、誰かも確認せずにドアを開けると。
「カカシ先生」
「サクラ」
久しぶりに見る教え子に驚いたがすぐに頬が緩む。
サスケが里を抜け、ナルトが自来也と共に修行の旅に、残されたサクラも綱手に弟子入りをした。
生徒が全員自分の手から離れ為、カカシは上忍として任務に入るようになった。
その為、毎日会っていたのが嘘のように顔を見なくなった。
遠目で歩いているのを見かけて程度。
1ヶ月ぶりに見る唯一の女の子。
少し背が伸びたように思える。
「どうした?」
「うん。師匠から先生が任務から帰ってきてるって聞いたから。おかえりなさい」
「──ただいま、サクラ」
ただいま、久しぶりに口から出したその言葉が少しむず痒い。
そんなことに気づかないサクラは嬉しそうに笑う。
「怪我してない?」
「大丈夫だよ」
良かった、と安心したように息を吐く少女が可愛くて頭を撫でる。
そこで、サクラが両腕に抱えるように鞄を持っていることに気づいた。
「なに、それ?」
首を傾げると、サクラは思い出したように顔を上げる。
「あ、先生、部屋に入ってもいい?」
「ん?それは別にいいけど」
カカシはドアを大きく開いて入るのを促すと、サクラは「おじゃまします」と礼儀正しく部屋の中に入る。
サクラは部屋に入るとすぐにキッチンに向かい荷物を広げている。
すると、空きっ腹を刺激するいい匂い。
「それ、サクラが作ったのか?」
鞄から取り出されたのは、タッパーに入った料理らしきもの。
サクラは1つ1つ蓋を開けていく。
「うん!先生、冷蔵庫何もないの忘れて夕方までグータラ過ごしてるだろうなって思ってご飯持ってきたの」
「・・・そりゃどーも」
短い期間しか指導していないのに、すっかりカカシの性格を理解しているようだった。
「何作ってきてくれたんだ?」
「えっとね、茄子のお浸しに、茄子のサラダ、茄子のグラタンと、茄子の味噌汁!」
サクラは魔法瓶を取り出して蓋を開けると、味噌のいい匂いが立ち込める。
「・・・・・・茄子ばっかりだな」
「うん。先生、茄子の味噌汁が好きって言ってたから茄子好きかなって思って」
「・・・まぁ好きだけど」
限度っていうものがあるだろう。
「・・・もしかして、嫌だった?」
「え!いや、嬉しいよ。ありがとう」
困った顔をしていると、サクラが泣きそうな顔をしているので慌てて取り繕う。
「良かった!それじゃ、また作って持ってくるわね」
嬉しそうにサクラは軽くなった鞄を背負って玄関に向かう。
「サクラも修行で忙しいんだから無理しなくていいよ」
「いいの。私がしたくてやってることだから」
「なんで?」
ただの担当上忍ってだけでここまでするものだろうか。
率直な質問をすると、サクラは満面の笑みを浮かべて振り返る。
「お母さんがね。手に入れるならまずは胃袋からよって教えてくれたの」
「ん?」
その言葉に固まっていると、サクラは「またねー!」と言って部屋を出て行った。
サクラがいなくなった部屋でカカシは床に座り、テーブルに置かれた料理たちを腕を組んで難しい顔で唸っていた。
サクラが最後に残したあの言葉。
カカシはどんな気持ちで食べればいいのか。
それから2時間以上悩まされたのだった。
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