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河川敷で父さんと歩く幼い自分。
オビトとリンと遊んでいるときに迎えに来てくれて一緒に帰ってる時間が好きだった。

気づいたら隣を歩いていた父さんが居なくなっていた。
周りを見渡すと、遠くで先生とオビトとリンが呼んでいて。
少し駆け足で近寄り、オビトとオレが口喧嘩をし始めてリンが止めて先生は見守って。
父さんが居なくなっても居場所はここにあるって、そう思ってた。
でも、オビト、リン、そして先生も居なくなって、オレはまた1人になっていた。

1人で血塗られた道を歩いていると、目の前から子供たちが駆け寄ってくる。
3人は本当に昔のオレたちのようで、オレは先生と同じように後ろを本を読みながらゆっくりと歩く。

本から顔を上げると、子供が3人から2人、2人から1人になっていて、最後の1人もオレの元から去っていった。


オレはまた1人暗闇の中動けなくて俯いていると、右手を誰かに握られて。
手を握るのはオレより小さな手。
その手を辿ってその人物を見ようと顔を上げる。



****



目を開けるとよく見知った白い天井。
そこでようやく夢を見ていたんだと分かった。

体を動かそうとすると、右腕が痺れて動かない。
顔を動かすと、腕を枕に気持ちよさそうに眠っている薄紅色の少女。
その顔を見るだけでほっとする自分がいる。

オレは腕を少し引き抜いて横向きになり、恋人を腕の中に収める。
彼女は眉間に皺を寄せて少し身動きしたので、起こしたかな?、と様子を見ているとオレの胸に擦り寄ってまた寝息を立てはじめる。



彼女と出逢って、彼女に惹かれて。
気持ちを伝えるつもりはなかったのに、彼女に告白をされて。
恋人になって、オレの部屋で一緒に過ごして朝を迎える。
気づいたら当たり前になってる日々が嬉しくて。


もし彼女がオレの手を握ってくれなかったら、オレはまだ暗闇の中にいたのだろう。
彼女はきっと大したことはしてないと思っているだろう。
それでもオレは救われたのだ。


もう2度とあの暗闇に戻ることのないように。
繋いだこの手は絶対離さないように強く握って。


この幸せな日々が失われないようにサクラを抱きしめた。

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