年末年始
「サクラ」
師匠の修行を終えてクタクタになった体を引きずって帰路を歩いていると、後ろから聞き慣れた声で呼び止められる。
振り返るとやはりカカシ先生で、嬉しくなって駆け寄ると頭を撫でてれた。
「サクラ、明日の予定は?」
「明日?明日は休みだけど」
すると嬉しそうに笑ってきて、不覚にもドキっとしてしまった。
「じゃあ明日行かないか?見に行ったらちょうどいい感じだったし」
「何が?」
首を傾げて聞くと、少し目を見開いて驚いた後にジトっとした目で見られる。
「約束したろ、桜が満開になったらって」
「・・・あ!」
今年の初詣のときに桜の木の下でした約束。
忘れられない、大事な思い出。
忘れてたわけじゃない。
唐突すぎて分からなかっただけで。
「ふーん・・・サクラにとっては大した約束じゃなかったのか。オレはずっと楽しみで毎日見に行ってたってのに」
ヤバい。完全に不貞腐れてる。
足元の小石を蹴ってブーブー言ってる先生の腕を掴んで上目遣いで謝る。
「違うの!急に言われたから分からなかっただけで、私もずっと楽しみにしてたから!」
必死に謝る私の姿にようやく機嫌が戻ってきたらしい。
これじゃ大きな子供だわ、と小さくため息をつく。
「じゃあ明日のお昼ぐらいにオレの家に来て。どこかでお昼食べに行こう」
「じゃあ、お弁当作ってもいい?」
私はキラキラした目で問いかけると、先生は驚いた後嬉しそうに笑って頭を撫でてくれた。
「それは楽しみだ」
私は満面の笑みで先生と別れてからスーパーに向かった。
****
お母さんに手伝ってもらって出来たお弁当を抱えて先生の部屋へと急ぐ。
先生の住むアパートが見えたと思ったら、部屋から先生が出てきたところだった。
「カカシ先生!」
大声で呼ぶと振り返った先生が手を振って階段を降りてくる。
「早かったな。迎えにいこうかと思ってたのに」
ふふふー、と笑う私に「すれ違わなくて良かった」と頭を撫でてくれた。
「それじゃ、行きますか」
そう言って私が抱えてた弁当箱を持ってくれて、もう片方の手を差し出してくれたから手を繋いで歩く。
木ノ葉で桜と言えばここと言われるぐらい有名な公園。
満開の桜並木にはたくさんの人が立ち止まり桜を見上げていた。
その人波を通り抜けた先にある坂を登ってたどり着いたのはあの桜の木。
あの日ポツポツと咲いていたから満開とはいわないけどいっぱい咲いていた。
「すごい!誰もいないからこの桜貸切だわ」
「だねぇ」
カカシ先生が木の側に立って目を細めて桜を見上げている。
その横顔が綺麗で見惚れてボーとしてると、先生が私を見てきて焦る。
「どうかした?」
「う、ううん!!」
慌てて先生から離れるとタイミングよく風がふいて桜の花びらが舞う。
「うわぁー!きれー!!」
花びらの中でクルクル回ってはしゃぐ。
その場で何回も回っていると目がまわって体がよろけてしまった。
すると、いつの間にか側にいた先生が支えるように抱きしめてくれた。
いきなり先生と近くなって体を離そうとすると力を込めてさらに密着する。
「せ、先生・・・?」
頬を染めて顔を上げると真剣な顔をした先生が見下ろしてくる。
「ねぇ、サクラ」
「な、なに・・・?」
ドキドキしてると頬に指が添えられて心臓が跳ねる。
「また来年も一緒に年越しして初詣に行って、ここで桜見てくれないか?」
「え?」
真剣な顔をしているからもっと大事な話かと思ったから拍子抜けしてしまった。
「う、うん。もちろん」
「ちなみにみんなで、じゃないからな」
「え」
みんなで思っていたから口を開けてポカーンとしてしまった。
先生はため息をついて手で私の頬を挟んで離さない。
「鈍いサクラちゃんにはハッキリ言わないとダメだねぇ」
「え、え」
戸惑う私に構わず顔を近づけてくる先生に顔が真っ赤になる。
「サクラが好きなんだ。だからこれからも2人でいたい」
「・・・・・・え」
頭が先生の言葉を理解出来なかった。
いつもの冗談かと思ったけど、真剣そのもので。
恥ずかしくて顔を逸らしたくても先生によって動かせない。
目を泳がせていると先生が顔を覗き込んでくる。
「お返事は?」
「う・・・」
もう分かっているといった顔でカカシ先生が見つめてくるから、耳まで真っ赤になる。
「わ・・・私も・・・」
「ん?」
それだけでは許さないと言った感じで聞き返される。
うー、と唸って睨んでも先生はニヤニヤ笑って離そうとしない。
息を吐いて真っ直ぐ先生の顔を見て。
「私もカカシ先生が好きです」
カカシ先生は満足そうに笑って顔を傾けて唇を合わせてきた。
最初は軽く、唇が離れてまた合わさって今度長く。
緊張から息を止めてしまって、唇が離れてようやく息を吸えた。
そんな私を愛おしそうに目を細めて笑ってくるから、恥ずかしくて先生の胸に顔を埋めると先生はぎゅっと抱きしめくる。
更に恥ずかしくなったけど、大好きな匂いに包まれて心落ち着く。
「先生」
「ん?」
胸から顔を上げて先生の顔を見ると、優しく微笑んでくる。
「来年もこの桜見れるといいね」
そういうと、嬉しそうに笑って額にキスをして。
「うん」
そう返事をすると強く、強く抱きしめてくれて。
嬉しくて嬉しくて、私からも抱きしめ返す。
目を閉じて思う存分カカシ先生を堪能して、ふと桜の根元を見ると忘れられたお弁当箱が。
「せ、先生。お弁当食べよう」
腕を緩めて先生の顔を見ようとしても「ん〜」と返事をするだけで一向に離そうとせず、頭に顔を埋めて匂いを嗅いでくる。
「っ!お弁当!せっかく作ってきたんだから」
「・・・このままサクラもいいけど、サクラの手作り弁当も捨てがたいな」
そう言ってようやく体を離してニコニコと手を繋いで歩いていくけど、期待しないで欲しい。
お弁当の中は不揃いなおにぎりに揚げすぎた唐揚げ、少し黒焦げなたこさんウインナーとボロボロな卵焼き。
野菜を切るだけなら上手く出来るようになったけど、焼く煮るは苦手。
なのに嬉しそうに食べる先生に申し訳なくなる。
「先生。無理して食べなくていいよ・・・」
眉を下げて泣きそうになる私の頭を撫でてくれる。
「美味しいよ。せっかくサクラが作ってくれたんだから残すわけないだろ?」
笑って唐揚げを食べてくれるけど、明らかに硬そうな音がしている。
「先生!来年までにはもっと上手くなるから!!」
身を乗り出して宣言する私に目を丸くした先生はニヤリと笑う。
「じゃあこれからも夜にご飯作りに来てよ」
「え?」
「隣で教えれるし。そしたらオレ好みの味作れるようになるでしょ?」
「う、うん・・・そうね・・・」
確かにそうなんだけど、なんか嫌な予感が・・・。
「で、朝ごはんも作ったらいい」
ようやく先生の思惑が分かって真っ赤になる。
朝ごはんを作るということは、お泊まりをするということで・・・。
真っ赤になってプルプル震える私を横目に「楽しみだなぁ」なんて言いながらお茶を啜っている。
もうそこから弁当の失敗なんて忘れて夜のことしか考えられないままお花見が終わったのだった。
師匠の修行を終えてクタクタになった体を引きずって帰路を歩いていると、後ろから聞き慣れた声で呼び止められる。
振り返るとやはりカカシ先生で、嬉しくなって駆け寄ると頭を撫でてれた。
「サクラ、明日の予定は?」
「明日?明日は休みだけど」
すると嬉しそうに笑ってきて、不覚にもドキっとしてしまった。
「じゃあ明日行かないか?見に行ったらちょうどいい感じだったし」
「何が?」
首を傾げて聞くと、少し目を見開いて驚いた後にジトっとした目で見られる。
「約束したろ、桜が満開になったらって」
「・・・あ!」
今年の初詣のときに桜の木の下でした約束。
忘れられない、大事な思い出。
忘れてたわけじゃない。
唐突すぎて分からなかっただけで。
「ふーん・・・サクラにとっては大した約束じゃなかったのか。オレはずっと楽しみで毎日見に行ってたってのに」
ヤバい。完全に不貞腐れてる。
足元の小石を蹴ってブーブー言ってる先生の腕を掴んで上目遣いで謝る。
「違うの!急に言われたから分からなかっただけで、私もずっと楽しみにしてたから!」
必死に謝る私の姿にようやく機嫌が戻ってきたらしい。
これじゃ大きな子供だわ、と小さくため息をつく。
「じゃあ明日のお昼ぐらいにオレの家に来て。どこかでお昼食べに行こう」
「じゃあ、お弁当作ってもいい?」
私はキラキラした目で問いかけると、先生は驚いた後嬉しそうに笑って頭を撫でてくれた。
「それは楽しみだ」
私は満面の笑みで先生と別れてからスーパーに向かった。
****
お母さんに手伝ってもらって出来たお弁当を抱えて先生の部屋へと急ぐ。
先生の住むアパートが見えたと思ったら、部屋から先生が出てきたところだった。
「カカシ先生!」
大声で呼ぶと振り返った先生が手を振って階段を降りてくる。
「早かったな。迎えにいこうかと思ってたのに」
ふふふー、と笑う私に「すれ違わなくて良かった」と頭を撫でてくれた。
「それじゃ、行きますか」
そう言って私が抱えてた弁当箱を持ってくれて、もう片方の手を差し出してくれたから手を繋いで歩く。
木ノ葉で桜と言えばここと言われるぐらい有名な公園。
満開の桜並木にはたくさんの人が立ち止まり桜を見上げていた。
その人波を通り抜けた先にある坂を登ってたどり着いたのはあの桜の木。
あの日ポツポツと咲いていたから満開とはいわないけどいっぱい咲いていた。
「すごい!誰もいないからこの桜貸切だわ」
「だねぇ」
カカシ先生が木の側に立って目を細めて桜を見上げている。
その横顔が綺麗で見惚れてボーとしてると、先生が私を見てきて焦る。
「どうかした?」
「う、ううん!!」
慌てて先生から離れるとタイミングよく風がふいて桜の花びらが舞う。
「うわぁー!きれー!!」
花びらの中でクルクル回ってはしゃぐ。
その場で何回も回っていると目がまわって体がよろけてしまった。
すると、いつの間にか側にいた先生が支えるように抱きしめてくれた。
いきなり先生と近くなって体を離そうとすると力を込めてさらに密着する。
「せ、先生・・・?」
頬を染めて顔を上げると真剣な顔をした先生が見下ろしてくる。
「ねぇ、サクラ」
「な、なに・・・?」
ドキドキしてると頬に指が添えられて心臓が跳ねる。
「また来年も一緒に年越しして初詣に行って、ここで桜見てくれないか?」
「え?」
真剣な顔をしているからもっと大事な話かと思ったから拍子抜けしてしまった。
「う、うん。もちろん」
「ちなみにみんなで、じゃないからな」
「え」
みんなで思っていたから口を開けてポカーンとしてしまった。
先生はため息をついて手で私の頬を挟んで離さない。
「鈍いサクラちゃんにはハッキリ言わないとダメだねぇ」
「え、え」
戸惑う私に構わず顔を近づけてくる先生に顔が真っ赤になる。
「サクラが好きなんだ。だからこれからも2人でいたい」
「・・・・・・え」
頭が先生の言葉を理解出来なかった。
いつもの冗談かと思ったけど、真剣そのもので。
恥ずかしくて顔を逸らしたくても先生によって動かせない。
目を泳がせていると先生が顔を覗き込んでくる。
「お返事は?」
「う・・・」
もう分かっているといった顔でカカシ先生が見つめてくるから、耳まで真っ赤になる。
「わ・・・私も・・・」
「ん?」
それだけでは許さないと言った感じで聞き返される。
うー、と唸って睨んでも先生はニヤニヤ笑って離そうとしない。
息を吐いて真っ直ぐ先生の顔を見て。
「私もカカシ先生が好きです」
カカシ先生は満足そうに笑って顔を傾けて唇を合わせてきた。
最初は軽く、唇が離れてまた合わさって今度長く。
緊張から息を止めてしまって、唇が離れてようやく息を吸えた。
そんな私を愛おしそうに目を細めて笑ってくるから、恥ずかしくて先生の胸に顔を埋めると先生はぎゅっと抱きしめくる。
更に恥ずかしくなったけど、大好きな匂いに包まれて心落ち着く。
「先生」
「ん?」
胸から顔を上げて先生の顔を見ると、優しく微笑んでくる。
「来年もこの桜見れるといいね」
そういうと、嬉しそうに笑って額にキスをして。
「うん」
そう返事をすると強く、強く抱きしめてくれて。
嬉しくて嬉しくて、私からも抱きしめ返す。
目を閉じて思う存分カカシ先生を堪能して、ふと桜の根元を見ると忘れられたお弁当箱が。
「せ、先生。お弁当食べよう」
腕を緩めて先生の顔を見ようとしても「ん〜」と返事をするだけで一向に離そうとせず、頭に顔を埋めて匂いを嗅いでくる。
「っ!お弁当!せっかく作ってきたんだから」
「・・・このままサクラもいいけど、サクラの手作り弁当も捨てがたいな」
そう言ってようやく体を離してニコニコと手を繋いで歩いていくけど、期待しないで欲しい。
お弁当の中は不揃いなおにぎりに揚げすぎた唐揚げ、少し黒焦げなたこさんウインナーとボロボロな卵焼き。
野菜を切るだけなら上手く出来るようになったけど、焼く煮るは苦手。
なのに嬉しそうに食べる先生に申し訳なくなる。
「先生。無理して食べなくていいよ・・・」
眉を下げて泣きそうになる私の頭を撫でてくれる。
「美味しいよ。せっかくサクラが作ってくれたんだから残すわけないだろ?」
笑って唐揚げを食べてくれるけど、明らかに硬そうな音がしている。
「先生!来年までにはもっと上手くなるから!!」
身を乗り出して宣言する私に目を丸くした先生はニヤリと笑う。
「じゃあこれからも夜にご飯作りに来てよ」
「え?」
「隣で教えれるし。そしたらオレ好みの味作れるようになるでしょ?」
「う、うん・・・そうね・・・」
確かにそうなんだけど、なんか嫌な予感が・・・。
「で、朝ごはんも作ったらいい」
ようやく先生の思惑が分かって真っ赤になる。
朝ごはんを作るということは、お泊まりをするということで・・・。
真っ赤になってプルプル震える私を横目に「楽しみだなぁ」なんて言いながらお茶を啜っている。
もうそこから弁当の失敗なんて忘れて夜のことしか考えられないままお花見が終わったのだった。