short.1
2月14日、バレンタインの日にナルトが泣きつかれたので七班の男3人に手作りチョコを渡した。
ナルトは泣き喜び、先生も笑って受け取ってくれた。
そしてサスケくんには特別のチョコを。
2人のチョコは失敗作の見た目の悪いチョコを渡して、サスケくんのは綺麗なチョコ、そして綺麗にラッピングをして。
同じ班だからと言って油断しているといのや他の女の子にいつサスケくんを奪われるか分からない。
いつもより丁寧にブローをして、自分が可愛く見える角度で頬を染めてサスケくんにチョコを渡したけど、サスケくんはそっけなく受け取って帰ってしまった。
でも、私にはちゃんと見えていた。
髪から覗く赤い耳を。
そして1ヶ月後の今日。
待ち合わせの橋に行くと、もう2人が待っていた。
真面目なサスケくんならともかく、ギリギリにしか来ないナルトまでいて。
目を見開いて驚いていると、ニシシと笑いながらナルトは手に持っていたものを渡してくる。
「バレンタインのお返しだってばよ!」
それはカラフルなマカロン。
ナルトにしてはお洒落なチョイスだった。
理由を聞いたら、イルカ先生と一緒に買いに行ったのだとか。
納得していると、少し頬を赤くしたサスケはこっちを見ずに渡してきたのは可愛い棒キャンディ。
サスケくんが可愛いお店で色々悩みながら選んでくれたのかな、と思ったらすごく嬉しい。
「ありがとう・・・食べてもいい?」
そう聞いてもそっぽを向くサスケくんは「あぁ」と言って離れて行く。
まだ先生は来ないだろうと、私はキャンディの包みを剥がして口に運ぼうとした時。
後ろから力強く腕を引っ張られて、驚いて振り返るとカカシ先生が立っていた。
まさか先生までこんなに早く来るとは思わなくて口を開けたまま固まっていると、先生は口布を下げて手に持っていたキャンディを口に含んだのだ。
「え、え?あ、ああ!!!」
先生の素顔と、キャンディを取られたことで一瞬止まって叫ぶ。
「あま」
「せ、先生!何してくれんのよ!!」
キャンディの甘さに顔を顰める先生の胸ぐらを掴む。
せっかくサスケくんがくれたのに!!
「サクラが任務前にお菓子食べようとしてたから」
「だ、だからって食べることないじゃない!」
思わず潤む瞳で睨むと、咥えたばかりのキャンディをバリバリと噛み砕き、何を思ったのか手に持っていたナルトのマカロンまでも全部食べたのだ。
私は呆然として、ようやく何をされたのか分かった途端、崩壊したように涙が溢れてくる。
先生は何も言わず私を見下ろしてくる。
「ば・・・」
「馬鹿ーー!!先生なんて大っ嫌い!!!」
私はこれ以上ここにいたくなくて、先生を罵倒して家へと駆け出した。
一部始終を見ていたナルトとサスケは、いきなり起こった出来事にどうしたらいいのか分からずカカシを見ると、カカシはサクラが去って行った方向をじっと見ていた。
****
「サクラいきなり帰ってきてどうしたのよ」
「なんでもない!」
さっき任務へと家を出た娘がすごい顔をして帰ってきたらビックリするのは当たり前だろう。
私も何でこんなに泣いてるのか分からない。
たかがお菓子。
それでも悲しくて、悲しくて。
私は部屋に引きこもり昼ご飯も食べずにずっと泣いていた。
****
コン、コン
何かを叩く音が聞こえて目を開ける。
泣き疲れて寝ていたみたいで、部屋の中はすっかり暗くなっていた。
涙の出しすぎでボーとしていると、また叩く音が聞こえてきた。
しかも窓から。
恐る恐る見ると、カカシ先生が窓にしがみついていたのだ。
ビックリして固まっていると、「窓開けろ」とくぐもる先生の声が聞こえた。
ーー何でくるのよ。私怒ってるのよ!?
私は首を横に振って開けるのを拒否すると、「3秒以内に開けないと叩き割る」と物騒なことを言ってくるので慌てて窓を開けた。
「ふぅ」
先生は息を吐いて窓に腰掛ける。
私は頬を膨らませてそっぽを向き、怒ってますアピールをする。
そんな私を見て先生は頭をガシガシ掻いて。
「・・・悪かったよ」
らしからぬ声に顔を向けると、先生は眉を下げてこちらを見ていた。
それはまるで、飼い主に叱られた犬のようで。
年上の、しかも男の人に言う言葉じゃないんだろうけど。
可愛いって思ってしまった。
「・・・何であんなことしたの」
「・・・サクラに、オレ以外から貰って欲しくなかったから」
どういう意味、と聞こうとしたけど、背を向けさせられて後ろから先生の手が伸びてくる。
ビックリして目を瞑ると、すぐに「もういいよ」と言われて目を開けると。
「これ・・・」
胸元に冷たい感触があり見ると、そこには桜の形をした金属の中心に緑色の石がついたネックレス。
「バレンタインのお返し」
先生は少し恥ずかしそうに頬を掻く。
「ありがとう・・・」
私も恥ずかしくなってネックレスをぎゅっと握りしめてお礼を言うと、「ん」と短く返事して帰ろうとしている。
「もう帰るの?」
「うん。報告書まだ出してないしね」
胸ポケットから取り出した紙をペラペラ見してくる。
任務があったのに休んでしまったことに申し訳なくなる。
原因はこの人なんだけど。
そう思っていると、「あっ」と先生は何かを思い出してポケットから何かを渡してくる。
「これ。お詫び」
それは鮮やかな色の砂糖菓子。
「金平糖?」
「うん。なんかサクラっぽいなって思って」
「子供っぽいってこと?」
頬を膨らませて睨むと、先生は苦笑して頭を撫でてくる。
「可愛いってことだよ」
別に意味はないんだろうけど、すぐに顔が赤くなる。
先生はクスッと笑って窓から飛び降りた。
2階の窓から下を見ると、余裕で着地した先生が手を振ってくるので、
私も手を振りかえして見えなくなるまでずっと見ていた。
先生が見えなくなって窓を閉めたタイミングで部屋のドアが開いた。
「サクラ、夕飯ぐらいは食べなさい、ってあら。そのネックレスどうしたの」
部屋の電気を付けたお母さんは目敏く私の胸元で輝くネックレスを見つける。
「ちょっとね」
私は頬を緩ましてネックレスを触ると、お母さんはじっと見て。
「あんたそれ。真ん中の宝石じゃない」
「え!?」
私は慌てて首からネックレスを外して緑色の石を見る。
さっきは暗かったからよく見えなかったけど、確かに高そうな石が綺麗に輝いていた。
「ど、どうしよう・・・」
「どうしようも貰ったんだから返したら失礼よ。それ同じ班の子からじゃないわよね。そんな高いの買えないだろうし。あんた、誰から貰ったの」
一気に不安に襲われる私に、お母さんは興味津々に聞いてくるので顔が熱くなる。
カカシ先生って言ったらこの母はどんな顔をするだろうか。
言わないけど。
「・・・別にいいでしょ」
「ふーん?」
お母さんはにやにやしながら、私が手に持っていた金平糖の袋に気づいた。
「それもその人に貰ったの?」
「うん」
頷くとお母さんは何故か納得したように笑ってくるので、私は首を傾げる。
「なに」
「その人、よっぽどサクラのことが好きなのね」
「・・・・・・は!?な、何言ってるのよお母さん!!」
私は顔を真っ赤にして大声を出す。
「あんた、ホワイトデーのプレゼントの意味知らないでしょ」
「い、意味とかあるの?」
本当こういうのは疎いわね、とため息を吐く母にムッとする。
「ネックレスを贈るのは『あなたの側にいさせてほしい』、金平糖は『あなたのことが好き』って意味があるの」
「お父さんが知ったら倒れちゃうわー」と言いながら部屋を出て行くお母さん。
そんな言葉が入ってこないほど私の頭は混乱してて。
ーー先生は私のことが好きなの・・・!?
だから他の人から受け取って欲しくないって・・・
その意味がようやく分かって、私は枕を抱きしめてドタバタ悶える。
これからどんな顔して会えばいいのよーーー!!
カカシ先生の馬鹿ーーー!!
ナルトは泣き喜び、先生も笑って受け取ってくれた。
そしてサスケくんには特別のチョコを。
2人のチョコは失敗作の見た目の悪いチョコを渡して、サスケくんのは綺麗なチョコ、そして綺麗にラッピングをして。
同じ班だからと言って油断しているといのや他の女の子にいつサスケくんを奪われるか分からない。
いつもより丁寧にブローをして、自分が可愛く見える角度で頬を染めてサスケくんにチョコを渡したけど、サスケくんはそっけなく受け取って帰ってしまった。
でも、私にはちゃんと見えていた。
髪から覗く赤い耳を。
そして1ヶ月後の今日。
待ち合わせの橋に行くと、もう2人が待っていた。
真面目なサスケくんならともかく、ギリギリにしか来ないナルトまでいて。
目を見開いて驚いていると、ニシシと笑いながらナルトは手に持っていたものを渡してくる。
「バレンタインのお返しだってばよ!」
それはカラフルなマカロン。
ナルトにしてはお洒落なチョイスだった。
理由を聞いたら、イルカ先生と一緒に買いに行ったのだとか。
納得していると、少し頬を赤くしたサスケはこっちを見ずに渡してきたのは可愛い棒キャンディ。
サスケくんが可愛いお店で色々悩みながら選んでくれたのかな、と思ったらすごく嬉しい。
「ありがとう・・・食べてもいい?」
そう聞いてもそっぽを向くサスケくんは「あぁ」と言って離れて行く。
まだ先生は来ないだろうと、私はキャンディの包みを剥がして口に運ぼうとした時。
後ろから力強く腕を引っ張られて、驚いて振り返るとカカシ先生が立っていた。
まさか先生までこんなに早く来るとは思わなくて口を開けたまま固まっていると、先生は口布を下げて手に持っていたキャンディを口に含んだのだ。
「え、え?あ、ああ!!!」
先生の素顔と、キャンディを取られたことで一瞬止まって叫ぶ。
「あま」
「せ、先生!何してくれんのよ!!」
キャンディの甘さに顔を顰める先生の胸ぐらを掴む。
せっかくサスケくんがくれたのに!!
「サクラが任務前にお菓子食べようとしてたから」
「だ、だからって食べることないじゃない!」
思わず潤む瞳で睨むと、咥えたばかりのキャンディをバリバリと噛み砕き、何を思ったのか手に持っていたナルトのマカロンまでも全部食べたのだ。
私は呆然として、ようやく何をされたのか分かった途端、崩壊したように涙が溢れてくる。
先生は何も言わず私を見下ろしてくる。
「ば・・・」
「馬鹿ーー!!先生なんて大っ嫌い!!!」
私はこれ以上ここにいたくなくて、先生を罵倒して家へと駆け出した。
一部始終を見ていたナルトとサスケは、いきなり起こった出来事にどうしたらいいのか分からずカカシを見ると、カカシはサクラが去って行った方向をじっと見ていた。
****
「サクラいきなり帰ってきてどうしたのよ」
「なんでもない!」
さっき任務へと家を出た娘がすごい顔をして帰ってきたらビックリするのは当たり前だろう。
私も何でこんなに泣いてるのか分からない。
たかがお菓子。
それでも悲しくて、悲しくて。
私は部屋に引きこもり昼ご飯も食べずにずっと泣いていた。
****
コン、コン
何かを叩く音が聞こえて目を開ける。
泣き疲れて寝ていたみたいで、部屋の中はすっかり暗くなっていた。
涙の出しすぎでボーとしていると、また叩く音が聞こえてきた。
しかも窓から。
恐る恐る見ると、カカシ先生が窓にしがみついていたのだ。
ビックリして固まっていると、「窓開けろ」とくぐもる先生の声が聞こえた。
ーー何でくるのよ。私怒ってるのよ!?
私は首を横に振って開けるのを拒否すると、「3秒以内に開けないと叩き割る」と物騒なことを言ってくるので慌てて窓を開けた。
「ふぅ」
先生は息を吐いて窓に腰掛ける。
私は頬を膨らませてそっぽを向き、怒ってますアピールをする。
そんな私を見て先生は頭をガシガシ掻いて。
「・・・悪かったよ」
らしからぬ声に顔を向けると、先生は眉を下げてこちらを見ていた。
それはまるで、飼い主に叱られた犬のようで。
年上の、しかも男の人に言う言葉じゃないんだろうけど。
可愛いって思ってしまった。
「・・・何であんなことしたの」
「・・・サクラに、オレ以外から貰って欲しくなかったから」
どういう意味、と聞こうとしたけど、背を向けさせられて後ろから先生の手が伸びてくる。
ビックリして目を瞑ると、すぐに「もういいよ」と言われて目を開けると。
「これ・・・」
胸元に冷たい感触があり見ると、そこには桜の形をした金属の中心に緑色の石がついたネックレス。
「バレンタインのお返し」
先生は少し恥ずかしそうに頬を掻く。
「ありがとう・・・」
私も恥ずかしくなってネックレスをぎゅっと握りしめてお礼を言うと、「ん」と短く返事して帰ろうとしている。
「もう帰るの?」
「うん。報告書まだ出してないしね」
胸ポケットから取り出した紙をペラペラ見してくる。
任務があったのに休んでしまったことに申し訳なくなる。
原因はこの人なんだけど。
そう思っていると、「あっ」と先生は何かを思い出してポケットから何かを渡してくる。
「これ。お詫び」
それは鮮やかな色の砂糖菓子。
「金平糖?」
「うん。なんかサクラっぽいなって思って」
「子供っぽいってこと?」
頬を膨らませて睨むと、先生は苦笑して頭を撫でてくる。
「可愛いってことだよ」
別に意味はないんだろうけど、すぐに顔が赤くなる。
先生はクスッと笑って窓から飛び降りた。
2階の窓から下を見ると、余裕で着地した先生が手を振ってくるので、
私も手を振りかえして見えなくなるまでずっと見ていた。
先生が見えなくなって窓を閉めたタイミングで部屋のドアが開いた。
「サクラ、夕飯ぐらいは食べなさい、ってあら。そのネックレスどうしたの」
部屋の電気を付けたお母さんは目敏く私の胸元で輝くネックレスを見つける。
「ちょっとね」
私は頬を緩ましてネックレスを触ると、お母さんはじっと見て。
「あんたそれ。真ん中の宝石じゃない」
「え!?」
私は慌てて首からネックレスを外して緑色の石を見る。
さっきは暗かったからよく見えなかったけど、確かに高そうな石が綺麗に輝いていた。
「ど、どうしよう・・・」
「どうしようも貰ったんだから返したら失礼よ。それ同じ班の子からじゃないわよね。そんな高いの買えないだろうし。あんた、誰から貰ったの」
一気に不安に襲われる私に、お母さんは興味津々に聞いてくるので顔が熱くなる。
カカシ先生って言ったらこの母はどんな顔をするだろうか。
言わないけど。
「・・・別にいいでしょ」
「ふーん?」
お母さんはにやにやしながら、私が手に持っていた金平糖の袋に気づいた。
「それもその人に貰ったの?」
「うん」
頷くとお母さんは何故か納得したように笑ってくるので、私は首を傾げる。
「なに」
「その人、よっぽどサクラのことが好きなのね」
「・・・・・・は!?な、何言ってるのよお母さん!!」
私は顔を真っ赤にして大声を出す。
「あんた、ホワイトデーのプレゼントの意味知らないでしょ」
「い、意味とかあるの?」
本当こういうのは疎いわね、とため息を吐く母にムッとする。
「ネックレスを贈るのは『あなたの側にいさせてほしい』、金平糖は『あなたのことが好き』って意味があるの」
「お父さんが知ったら倒れちゃうわー」と言いながら部屋を出て行くお母さん。
そんな言葉が入ってこないほど私の頭は混乱してて。
ーー先生は私のことが好きなの・・・!?
だから他の人から受け取って欲しくないって・・・
その意味がようやく分かって、私は枕を抱きしめてドタバタ悶える。
これからどんな顔して会えばいいのよーーー!!
カカシ先生の馬鹿ーーー!!
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