short.1
2月14日。
男がソワソワドキドキする日。
それは女も同じで。
「はたけ上忍、あの、」
ジロッ。
声をかけてきた女が逃げていく。
「カカシさん!これ・・・」
「シャーーー!!」
2人で来た女たちが後ろで文句を言っている。
「あの、サクラちゃん」
「何よ」
「いや・・・さっきから何してるの」
「べつに」
ポケットに手を突っ込んだ腕にしがみつき、左右を一生懸命見ていた。
見ている、と言うよりは見張っているに近い。
何からかと言うと。
「カカシ先生、意外とモテるんだね」
振り返ると、頭の後ろで腕を組んで失礼なことを言いながら付いてくる黄色い少年。
その横では興味がない顔で同じく付いてくる黒髪の少年。
「お前らは何で付いてくるわけ」
「サクラちゃんからチョコ貰うんだってばよ!」
「お前らと居たら女が近寄ってこない」
貰いたい男と貰いたくない男。
その2人が並んで歩いているのは何か面白い。
そして何があってもこの3人はこのまま付いてくるらしい。
オレは小さいため息を吐いた。
****
「あら、カカシ。モテモテね」
「オレの意思じゃないよ・・・」
「そ。はい、これ」
上忍待機所に入ると、そこには紅とアスマが居た。
オレは呆れたように言うと、紅がラッピングされたものを差し出してくる。
腕にしがみついているサクラがそれに反応して体がピクリと動く。
紅はもちろん気づいて。
「私とアンコから、毎年お馴染みのビール券」
「お、サンキュ」
オレがそれを受け取ると、紅はポカーンとしているサクラにニコリと笑って離れる。
「貴方達、お腹空いてたらチョコ食べない?甘くないのもあるわよ」
「食べる食べるー!」
ナルトが嬉しそうに紅の元へ駆け寄り、サスケもゆっくりと向かう。
「おいカカシ。オレからもバレンタイン」
ソファーに座るアスマから差し出されるのを見てげんなりする。
「これのどこがバレンタインなんだよ」
「オレの愛が詰まってる」
「何が愛だ」
アスマから次の任務についての書類の束を受け取りソファーに座る。
甘いもの好きのはずのサクラはチョコに見向きすることもなく、オレに付いてきて隣に座ってくる。
「サクラ、チョコいいの?」
「うん」
サクラはニッコリと笑ってくるので、オレは首を傾げながら資料に目を落とした。
****
「貴方達、もう遅いからそろそろ帰りなさい」
紅先生の声が聞こえてきてゆっくりと目を開ける。
いつの間にか寝てしまった。
ボーとする頭で窓の外を見ると、すっかり日が暮れていた。
体を動かそうとすると毛布がかけられていて、資料を見ているカカシ先生の体にもたれかかって眠っていたらしい。
周りを見渡すと同じようにソファーの上で寝ているナルトとサスケくんにも毛布がかけられていた。
「ほら起きろナルト」
未だに眠るナルトをサスケくんが起こそうとして、私も帰ろうと立ち上がると後ろから手を掴まれた。
「サクラは送っていくから、もうちょっと待って」
まだ読み終えてない資料を振りながら、滅多にない先生の上目遣いに頬を染めて頷きまた座り直す。
「それじゃ、頼んだぞ」
先に帰り支度を済ませた先生たちがカカシ先生に声をかけて部屋を出て行った。
「オレ達も帰る」
ドアの前でサスケくんが声をかけてきて、大事なことを思い出して立ち上がる。
「待って。はい、バレンタインチョコ。ナルトにも」
鞄からラッピングされた箱を取り出して2人に渡す。
ナルトは嬉しそうに笑って、受け取った箱を掲げて回り出した。
そんなナルトを呆れたように見ていたサスケくんも、大事そうに持ってくれて嬉しくなる。
2人はそのまま部屋を出て行き、私は先生の隣に戻ると、何故か頭を撫でられた。
クシャクシャになった髪に文句を言おうとしたが、すでに先生は資料を見ていたので諦めた。
やることもなく、暫くボーとしていたら徐に先生が立ち上がって。
「ごめんサクラ、お待たせ」
先生が手を差し伸べてきたので、その手を掴んで立ち上がる。
「すっかり遅くなったな。ごめん」
「ううん」
暗いのを口実に先生の腕を掴んだら、ポケットから手を出してくれて手を繋いで歩いている。
昼間は女性が先生を狙っていたから安心出来なかったけど、今は誰も近寄ろうとはしてこない。
でも私の心は昼間より落ち着かなくて。
そのまま他愛もない話をしながら歩くとすぐに家に着いた。
「先生ありがとう。それじゃ、また明日・・・」
「サクラ」
お礼を言って家に入ろうとしたら後ろから呼び止められる。
振り返ると先生が手を差し出していて。
「オレ、まだチョコ貰ってないよ」
貰えて当然といった顔で笑ってくるから、何か悔しくなる。
当然用意してるんだけど。
顔を真っ赤にして上目遣いで先生を見ると、目を細めて微笑んでいた。
私は鞄から同じラッピングされたものを取り出して先生に差し出す。
「・・・はい」
差し出したチョコを受け取った先生は小さく笑って。
「・・・2人のチョコより大きいね」
その言葉に顔が真っ赤になったと思う。
暗いから先生に見えてないことを願うしかない。
「そ、それは!先生は大人だから!」
「そっか」
「そ、そうよ・・・」
変な言い訳を使うも、先生は多分分かってる。
その大きさの意味を。
私は恥ずかしくてモジモジしていると、先生はラッピングを丁寧に剥がして箱を開ける。
口布を下げ、中に入ってるチョコレートを1つ摘んで口に運んだ。
私はその行動に目を見開く。
だって。
初めて素顔を見たから。
指についたココアを舌で舐めとる仕草は艶かしくて。
薄い唇の横にあるほくろはその人の色気を何倍も膨れ上がらせた。
「サクラ」
ボーと先生に見惚れていると、いつの間にか口布を上げていた先生に呼ばれる。
「美味しかったよ、ありがとう」
いつもの様に笑う先生だったけど、私の心中は暴れまくっていた。
何とか頷けたけど、先生の顔が見れなくて俯く。
「ほら、もう家入りなさい。親御さんが心配する」
頷いてドアへと向い、開ける前に振り返ると先生は私が入るまでちゃんと見ていてくれて。
「先生・・・おやすみなさい」
「うん。おやすみ、サクラ」
先生が手を振ってくれて、私も振り返してドアを閉めた。
ドアにそのままもたれ掛かってズルズルとしゃがみ込んで。
「うぅぅーー!!」
帰ってきたことに気づいたお母さんが蹲って唸る私を心配してたけど、私はそれどころではない。
あんなカッコいいなんて聞いてない!!
先生の強くて優しい心に惚れたけど。
見た目にも完全に惚れてしまった。
いつもあの口で名前を呼ばれていると思ったら。
キャーキャーと騒ぎながら床を叩く私に、両親が病院に連れていくべきかと心配している声が聞こえた。
私は床に置いた手を握りしめて決意する。
先生が他の人のものになるて絶対耐えられない。
先生が私に恋愛感情がないのは分かってる。
でもアピールすればいつか振り向いて貰えるかもしれない。
私は愛に生きる女。
何が何でもカカシ先生を手に入れてみせるわ!!
男がソワソワドキドキする日。
それは女も同じで。
「はたけ上忍、あの、」
ジロッ。
声をかけてきた女が逃げていく。
「カカシさん!これ・・・」
「シャーーー!!」
2人で来た女たちが後ろで文句を言っている。
「あの、サクラちゃん」
「何よ」
「いや・・・さっきから何してるの」
「べつに」
ポケットに手を突っ込んだ腕にしがみつき、左右を一生懸命見ていた。
見ている、と言うよりは見張っているに近い。
何からかと言うと。
「カカシ先生、意外とモテるんだね」
振り返ると、頭の後ろで腕を組んで失礼なことを言いながら付いてくる黄色い少年。
その横では興味がない顔で同じく付いてくる黒髪の少年。
「お前らは何で付いてくるわけ」
「サクラちゃんからチョコ貰うんだってばよ!」
「お前らと居たら女が近寄ってこない」
貰いたい男と貰いたくない男。
その2人が並んで歩いているのは何か面白い。
そして何があってもこの3人はこのまま付いてくるらしい。
オレは小さいため息を吐いた。
****
「あら、カカシ。モテモテね」
「オレの意思じゃないよ・・・」
「そ。はい、これ」
上忍待機所に入ると、そこには紅とアスマが居た。
オレは呆れたように言うと、紅がラッピングされたものを差し出してくる。
腕にしがみついているサクラがそれに反応して体がピクリと動く。
紅はもちろん気づいて。
「私とアンコから、毎年お馴染みのビール券」
「お、サンキュ」
オレがそれを受け取ると、紅はポカーンとしているサクラにニコリと笑って離れる。
「貴方達、お腹空いてたらチョコ食べない?甘くないのもあるわよ」
「食べる食べるー!」
ナルトが嬉しそうに紅の元へ駆け寄り、サスケもゆっくりと向かう。
「おいカカシ。オレからもバレンタイン」
ソファーに座るアスマから差し出されるのを見てげんなりする。
「これのどこがバレンタインなんだよ」
「オレの愛が詰まってる」
「何が愛だ」
アスマから次の任務についての書類の束を受け取りソファーに座る。
甘いもの好きのはずのサクラはチョコに見向きすることもなく、オレに付いてきて隣に座ってくる。
「サクラ、チョコいいの?」
「うん」
サクラはニッコリと笑ってくるので、オレは首を傾げながら資料に目を落とした。
****
「貴方達、もう遅いからそろそろ帰りなさい」
紅先生の声が聞こえてきてゆっくりと目を開ける。
いつの間にか寝てしまった。
ボーとする頭で窓の外を見ると、すっかり日が暮れていた。
体を動かそうとすると毛布がかけられていて、資料を見ているカカシ先生の体にもたれかかって眠っていたらしい。
周りを見渡すと同じようにソファーの上で寝ているナルトとサスケくんにも毛布がかけられていた。
「ほら起きろナルト」
未だに眠るナルトをサスケくんが起こそうとして、私も帰ろうと立ち上がると後ろから手を掴まれた。
「サクラは送っていくから、もうちょっと待って」
まだ読み終えてない資料を振りながら、滅多にない先生の上目遣いに頬を染めて頷きまた座り直す。
「それじゃ、頼んだぞ」
先に帰り支度を済ませた先生たちがカカシ先生に声をかけて部屋を出て行った。
「オレ達も帰る」
ドアの前でサスケくんが声をかけてきて、大事なことを思い出して立ち上がる。
「待って。はい、バレンタインチョコ。ナルトにも」
鞄からラッピングされた箱を取り出して2人に渡す。
ナルトは嬉しそうに笑って、受け取った箱を掲げて回り出した。
そんなナルトを呆れたように見ていたサスケくんも、大事そうに持ってくれて嬉しくなる。
2人はそのまま部屋を出て行き、私は先生の隣に戻ると、何故か頭を撫でられた。
クシャクシャになった髪に文句を言おうとしたが、すでに先生は資料を見ていたので諦めた。
やることもなく、暫くボーとしていたら徐に先生が立ち上がって。
「ごめんサクラ、お待たせ」
先生が手を差し伸べてきたので、その手を掴んで立ち上がる。
「すっかり遅くなったな。ごめん」
「ううん」
暗いのを口実に先生の腕を掴んだら、ポケットから手を出してくれて手を繋いで歩いている。
昼間は女性が先生を狙っていたから安心出来なかったけど、今は誰も近寄ろうとはしてこない。
でも私の心は昼間より落ち着かなくて。
そのまま他愛もない話をしながら歩くとすぐに家に着いた。
「先生ありがとう。それじゃ、また明日・・・」
「サクラ」
お礼を言って家に入ろうとしたら後ろから呼び止められる。
振り返ると先生が手を差し出していて。
「オレ、まだチョコ貰ってないよ」
貰えて当然といった顔で笑ってくるから、何か悔しくなる。
当然用意してるんだけど。
顔を真っ赤にして上目遣いで先生を見ると、目を細めて微笑んでいた。
私は鞄から同じラッピングされたものを取り出して先生に差し出す。
「・・・はい」
差し出したチョコを受け取った先生は小さく笑って。
「・・・2人のチョコより大きいね」
その言葉に顔が真っ赤になったと思う。
暗いから先生に見えてないことを願うしかない。
「そ、それは!先生は大人だから!」
「そっか」
「そ、そうよ・・・」
変な言い訳を使うも、先生は多分分かってる。
その大きさの意味を。
私は恥ずかしくてモジモジしていると、先生はラッピングを丁寧に剥がして箱を開ける。
口布を下げ、中に入ってるチョコレートを1つ摘んで口に運んだ。
私はその行動に目を見開く。
だって。
初めて素顔を見たから。
指についたココアを舌で舐めとる仕草は艶かしくて。
薄い唇の横にあるほくろはその人の色気を何倍も膨れ上がらせた。
「サクラ」
ボーと先生に見惚れていると、いつの間にか口布を上げていた先生に呼ばれる。
「美味しかったよ、ありがとう」
いつもの様に笑う先生だったけど、私の心中は暴れまくっていた。
何とか頷けたけど、先生の顔が見れなくて俯く。
「ほら、もう家入りなさい。親御さんが心配する」
頷いてドアへと向い、開ける前に振り返ると先生は私が入るまでちゃんと見ていてくれて。
「先生・・・おやすみなさい」
「うん。おやすみ、サクラ」
先生が手を振ってくれて、私も振り返してドアを閉めた。
ドアにそのままもたれ掛かってズルズルとしゃがみ込んで。
「うぅぅーー!!」
帰ってきたことに気づいたお母さんが蹲って唸る私を心配してたけど、私はそれどころではない。
あんなカッコいいなんて聞いてない!!
先生の強くて優しい心に惚れたけど。
見た目にも完全に惚れてしまった。
いつもあの口で名前を呼ばれていると思ったら。
キャーキャーと騒ぎながら床を叩く私に、両親が病院に連れていくべきかと心配している声が聞こえた。
私は床に置いた手を握りしめて決意する。
先生が他の人のものになるて絶対耐えられない。
先生が私に恋愛感情がないのは分かってる。
でもアピールすればいつか振り向いて貰えるかもしれない。
私は愛に生きる女。
何が何でもカカシ先生を手に入れてみせるわ!!
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