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short.1

「ねー、サクラ」
「なにー?」

夜。
仕事が終わり、自分の家ではなくカカシの家に帰り一緒にご飯を食べて思い思いに過ごす日々。
付き合い始めて数年、半同棲し始めて半年。
一緒に過ごすのが当たり前になった頃。

私がソファーで寝そべり、先生はソファーを背もたれに座って好きな本を読んでいると、先生は本から顔を上げないで呼んできた。
私も大した話ではないと思って本を読みながら返事をする。


「サクラのご両親が揃ってる日聞いといて」
「え?」

突拍子もない言葉に顔を先生に向けると、先生は本を読んでいる。
しかしページはずっと同じ。

「それってどう意味?」
「んー、そういう意味」

私は体を起こして覗き込むと、先生は顔を上げるがこちらを見ない。
髪から覗く耳は赤くなってる。
珍しく照れてる先生に悪戯心が芽生える。

「女の子にとって大事なことなのよ。ちゃんと言って」

わざと頬を膨らませて言うと、先生はようやく私を見て照れ笑う。
ソファーに座り直して私に向き合い、手を握って深呼吸をする。
そして真剣な顔をして真っ直ぐ私の顔を見て。



「サクラ」
「はい」

「オレと、結婚してください」
「・・・はい!」

私は満面の笑みで先生に飛びつき、先生も抱きしめてくれる。
そして私たちは自然と顔が近づき唇を合わせた。



****



「はぁ・・・」
「もう先生、何回目?」

私と先生は手を繋いで私の実家に向かう。
服装はどうしたらいいか、別のお土産がいいんじゃないか、ここ数日落ち着かない先生は本当に可愛かった。
服装は忍服、お土産は両親の好きなものを。
どちらも私のチョイスだ。


「やっぱりちゃんとした服装の方が良かったんじゃないか?」
「先生は忍なんだからその格好が正装でしょ」
「そうだけどさ・・・、親御さんに挨拶しにいくのにこれって・・・」

普段は頼りがいがある年上の彼氏は今日は情けない。

「先生が畏まった格好してたら、みんな絶対イジってくるわよ」
「それは困るな。うん、困る・・・」

木ノ葉随一のカカシ先生を弄れる人は、先生の同期。
そして師匠とナルトぐらいだ。
先生も同じ人を思い浮かべたのか、眉間に皺が寄っていて思わず笑ってしまった。
師匠と七班のみんなには婚約の話はしているが、他にはまだ話していない。
だからスーツを着ている先生を見たら絶対注目される。




暫く歩き実家に着く。
先生と付き合うようになってすぐ、仕事を理由に一人暮らしを始めた。
半分は仕事で遅くなって親に迷惑をかけたくなかったから、もう半分は先生の家に泊まるたびにいちいち何か言われるのが嫌だったから。
今回、先生から話があることは伝えているが、結婚の話はしていない。
それに、先生と付き合っていることも伝えていないのだ。


「はぁ・・・」
「もう、先生しっかりしてよ!」

私は先生の背中をバシッと叩いてインターホンを鳴らす。
すると、すぐにドアが開いてお母さんが出てきた。

「まぁ、カカシ先生!どうぞ入って入って」
「あ、どうも・・・」

母に促されて頭を掻きながら家の中に入っていく後ろ姿を見ながら私も入る。



「おぉ、カカシ先生、いらっしゃい」
「あ、お邪魔します」

ソファーで新聞を読んでいる父に先生は挨拶をする。

「お父さん、こっち座って。話があるから」

私は4人掛けのテーブルに来るよう促す。
先生が緊張しているのが分かり、笑いそうになるのを堪えた。






「なんだ急に改まって」
「あんた、また何かやらかしたんじゃないでしょうね」
「違うわよ!先生から話があるって言ったでしょ」

そう言うと2人の顔が先生に向き、隣から喉を鳴らす音が聞こえた。

「あー、えーと、その・・・」

チラっと先生が私を見てきたが、私は我関せずの態度を示した。
覚悟を決めたのか、先生は大きく息を吐いて2人と向き合う。



「実は私、サクラ・・・さんと前からお付き合いをさせていただいていまして」

「は」

先生の言葉に、お父さんは口をあんぐりと開け固まり、お母さんは素っ頓狂な声をあげた。

「それで・・・その、お嬢さんとの結婚の許しをいただければと」

先生は私を優しい目で見つめてきて、私は泣きそうになるのを我慢して笑いかける。

2人は固まったまま何も言わない。
先生の顔に焦りが生まれると。



「なーんだ、そんなこと。改まって言うから何かと思ったわよ」
「「え」」

突然母が笑い出して、今度はこっちが間抜けになってしまった。


「お、お母さん・・・そんなことって」
「だってあんたに彼氏がいたこと分かってたもの」
「え!!」

私は驚きすぎて椅子から立ち上がった。

「ど、どうして分かったのよ!」
「あんたね、母を舐めるんじゃないわよ。一時期、あんたすごい浮かれてたし、それからすぐに一人暮らししたいって言い出したからピンッときたわよ」
「う・・・」

たしかに、ずっと想ってた先生と付き合えるようになって浮かれてた。
自分の中では上手く隠せたと思ってたのに。
侮れないわ、母。


「まぁ、相手がカカシ先生だとは分からなかったから、さすがに驚いたわ」
「すみません・・・」
「いいのよ全然!もういくらでも貰ってやって。とゆうか、この子の処女はもう貰ってるんでしょ」
「お、お母さん!!」

顔を真っ赤にして怒鳴ると、ずっと固まっていた父がいきなり体を乗り出して先生の肩を掴んだ。


「そうなんですか先生!!!」
「え!!」
「この子に手、出したんですか!!」
「え、あ、はい、すみません・・・」

肩を掴まれたまま素直に言うと、お父さんの手は離れ、机に突っ伏してしまった。


「あ、あの・・・」
「大丈夫、大丈夫。この人、娘を溺愛してるから落ち込んでるだけだから」
「はぁ・・・」



突っ伏したまま動かない父を心配そうに見ている先生に、母は瞳を輝かせて。

「それよりカカシ先生!素顔を見せてもらう事は出来ます?」
「あ、それはもちろん」

先生は口布に指をかけて下げる。

「あらやだ!すっごいイケメンよお父さん!!」

テンションの上がったお母さんは父の背中をバシバシ叩くが微動だにしない。
さすが私の母。
美形好きは遺伝だったらしい。


「これは孫は美形に産まれるわね」

先生の顔をガン見しながら頷く母の隣で、父が「まごぉ!」と叫んでとうとう泣き出した。

私はそんな2人に頭を抱えて盛大にため息をついた。


****


「ごめんね、先生・・・」

家を出て暫く歩いて私が謝ると、先生が笑いながら頭を撫でてくれる。

「いや。サクラのご両親は相変わらずでお元気そうで良かったよ」

私は知らないが、担当につくときに挨拶に来たときのことを言っているんだろう。
恥ずかしくて私はさらに落ち込む。



「でも反対されなくて良かったよ。14も離れてるし、元担任だからどう思われるか分からなかったから」

先生は手を繋ぎ安堵の息を吐く。

「大丈夫よ。私がどれだけ先生が素敵か、今までずっと話してきたんだから」
「はは・・・、ガッカリされないように気をつけるよ」

緊張疲れなのか、いつも曲がっている背中がさらに曲がっている。



「でもようやくこれで・・・」

先生は止まって見つめてくる。
その瞳から喜びを感じる。

「うん、これで・・・」

私が微笑むと、先生が顔を近づけてくる。
あともう少しで・・・。


「これで次に行けるわね!」


「え?」


あともう少しで合わさる距離で先生が固まる。

「次は師匠に報告に行って、その次は七班のみんなとご飯よ」
「え、サクラちゃん・・・?まだ行くの・・・?」
「どうせなら1回で済ませた方がいいでしょ?師匠もナルトたちも先生に言いたいことがあるんだって」


ーー大事な愛弟子、大事な女の子を奪った男へ文句を言う為だろう・・・。


何故か頭を抱える先生の手を引っ張って。

「さ、行きましょう旦那様」

満面の笑みで呼ばれて心ときめく。
この子が手に入るなら、どんな目にあっても耐えられる。


繋いだ手を強く握って、これからも2人で歩いていこう。


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