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「先生、あそこ入りましょう」

サクラはカカシの手を引っ張り、ある場所を指差していた。
その先にはサクラのお気に入りの甘味処が。

「サークラ。昨日も一昨日も食べたでしょ」
「だって!期間限定のあんみつ今日までなのよ!?食べなきゃいけないじゃない」
「太るよ、サクラちゃん」

苦笑し手を引っ張りこの場を離れようとするカカシにサクラは頬を膨らませる。
そしてーー。



「冷血のカカシ」


ポツリと呟いた言葉にカカシの足が止まる。

「・・・どこで聞いたの、サクラ」

眉間に皺を寄せて振り返るカカシに、サクラはにんまりと笑って。

「あんみつ奢ってくれたら教えてあげる」


****


「で、誰から聞いたの」
「何が?」
「さっきの、オレの呼び名だよ」

あんみつが目の前に運ばれて目を輝かせていると、お茶を啜りながらカカシが聞いてくる。

「あぁ、ヤマト隊長から聞いたの」
「あいつ・・・」

頭を抱えてため息をつくカカシを気にせずあんみつを口に運び喜ぶサクラ。

「・・・他に何か聞いた?」

サクラはスプーンを咥えて、思い出そうとしている。

「あ、昔、カカシ先生は全然笑わなくて、剣山みたいに尖ってたってガイ先生とゲンマさんが言ってたわ」

今とは正反対ね、とサクラが笑い、カカシは顔に影を落とす。

「それ・・・何でか理由聞いた?」
「ううん」

首を横に振るサクラにほっとする。
ガイたちも気を使ったのだろう。
いつか、過去にあったことはちゃんと自分の口で言いたい。



「もしガイ先生たちがカカシ先生の理由を話そうとしても聞かないわよ」

カカシは驚いてサクラを見ると、ドキッとするような微笑みを向けていた。

「話してくれるの、待ってるからね」
「・・・うん」

照れてお茶を飲む。
子供だ子供だと思ってても、気づいたらどんどん大人になっていく彼女に気が抜けない。
いつか、ずっと住み着いてる心の闇は彼女に照らされて晴れる気がする。




「あ、そうだ!」

あんみつを食べ終えて満足にお腹を撫でていたサクラは、何かを思い出したのか眉間に皺を寄せてこちらを睨む。
本当表情がコロコロ変わって面白い。

「先生!昔は時間ルール厳守の忍だったんでしょ。なんで今はそんなだらけきっちゃったのよ!」

サクラが拳をテーブルに叩きつけると、周りの客が何事かとこちらを見てくる。
スプーンを握りしめる手がワナワナと震えているのは、下忍時代のカカシの遅刻癖を思い出しているからだろう。

「まぁ、色々ね。大人になると丸くなるんだよ」
「何それ!この間のデート2時間遅刻したこと反省してるの!?」
「してるしてる」

嘘つき、と頬を膨らませるサクラに苦笑する。
怒った顔が見たくてわざと遅れている、とはさすがに言えない。


するとサクラの目線がメニューにうつり、指を指す。
すぐにサクラの意図を理解したカカシは肩をすくめて。

「サクラ、本当に太るよ?」
「明日演習で体動かすから大丈夫よ!」

おかわりさせろ、と目で訴えてくる恋人に、カカシあることを思いつく。


「じゃあ、オレも体動かすのお手伝いしよう」
「え?」

目を見開くサクラにカカシは身を乗り出して顔を耳元に寄せて。



「これから毎日、寝ずにオレに抱かれてたら体重なんてすぐに落ちるよ」


甘く囁いて体を戻すとサクラの顔が真っ赤になっていて、カカシは目を細めて微笑む。

「こ、こんな、昼間から何言ってるのよ・・・!」
「えー?だってサクラが運動したいって言うから。オレに任せてくれたらいいから」

カカシはニコリと笑う。
側から見たら人が良さそうな笑顔だが、私からしたら厭らしく見える。
実際厭らしいことを言っているのだ、この男は。
本当にこの男が剣山みたいに尖っていたのか信じられない。

サクラは勢いよく立ち上がり、店の出口へと向かう。


「あれ、おかわり食べないの?」
「いらない!ダイエット!!」

忍らしからぬ足取りで歩くサクラにまた周りの客の注目を集め、カカシは吹き出す。

「先生、早く!」
「はいはい」

カカシは笑いながら立ち上がり会計をする。
チラっと外を見ると、こちらに背を向け後ろで手を組んでカカシを待っているサクラ。
その姿を見るだけで頬が緩む。




ーー昔のオレはこんな気持ちになるなんて思わなかっただろう。
自分自身を蔑み、人を寄せ付けず、幸せを拒んだ。
もし、教え子たちがオビトの火の意思を受け継いでいなかったらオレは容赦なくアカデミーに戻して昔と変わらない日々を送っていただろう。

本当に3人に出逢えて良かった。




会計を終えたカカシが店から出てくると、サクラは満面の笑みでカカシの手を取り歩き出す。

これからも続く幸せに向かって。


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