short.1
今日は久々の女子会。
いのとサイとの間に子供が産まれたので、いのの家にヒナタと遊びにきていた。
「か、可愛いー!!」
いのの腕の中で安らかに眠っている、母親譲りの金髪の赤子を見て思わず大きな声が出てしまった。
サクラの声に反応して泣きそうにり、慌てて自分の口に手を当てる。
泣くかと思ったけどまた寝息が聞こえてきた。
「本当可愛いね」
「男の子だっけ。名前決まったの?」
「うん。いのじんって言うの」
「いのじん・・・カッコいい名前貰ったわね」
そう言っていのじんの柔らかい頬を突くと、いのじんが寝ながら笑ってくれて胸がキュンとした。
「はー・・・やっぱり赤ちゃんは可愛いなぁ。シカマルとテマリさんのところのシカダイも可愛かったし。ヒナタも来年よね。名前は決まってるの?」
「うん・・・ボルトって名前なの」
「ボルト・・・いい名前ね」
愛おしそうにお腹を撫でるヒナタは長年想い続けてきたナルトと結婚して、来年の3月に子供を出産予定だ。
「そういうサクラはどうなのよ」
「何が?」
「六代目とのことに決まってるでしょうが。そういう予定はないの?」
心臓が跳ねた。
サクラとカカシが付き合い始めて2年経ったある日、カカシにプロポーズをされた。
もちろん受け入れて晴れて夫婦になって2年。
同期もどんどん結婚して子供も産まれてきている。
カカシとはそういうこともしているし、愛されてるとちゃんと感じてる。
でも、子供の話はしたことがない。
「どうかな・・・仕事忙しいみたいだし。そう言う話もしないし」
いのじんの手を触りながら答える。
やはり子供は欲しい。
カカシに似てたらきっと美形なんだろうなって時々考える。
「あのね。そうやってサクラが受け身なのが悪いんじゃないの?」
いのは人差し指で私のおでこを突く。
「六代目がうんと年上だから甘えるのはしょうがないけど。あの人のほほんとしてるんだから、早くしないとおじいちゃんになっちゃうわよ」
「のほほん・・・」
確かに現役時代に比べたらのんびりしてる気がする。
お茶を飲んでるときも縁側にいるおじいちゃんを感じる時がある。
見た目は羨ましいぐらいに老けないのに、中身は多分おじいちゃんだ。
「でも・・・いつもカカシ先生からだから、どうしたらいいのか分からないし・・・」
「私がちゃんと教えてあげるから!!」
グイグイ来るいのに、母親になってもこの性格が落ち着くことはないのかと心の中で思う。
助けを求めてヒナタを見るが、ニコニコこちらを見るだけで助けるつもりはないらしい。
私は諦めて身を任せることにした。
夕方にいのたちと別れて買い物を済ませ、夕飯の準備が終わる頃にカカシが帰宅した。
「おかえりなさい、カカシさん」
「ただいま、サクラ」
カカシはそう言いながら額にチュッとキスをした。
結婚して変わらない中、変わったこともある。
それはサクラのカカシへの呼び方。
結婚するのに先生と呼ぶのはどうかと思ったのだ。
カカシはそのままでも良いと言ったが、いいタイミングだと思い、さん付けに変えた。
最初の頃は上手く呼べないサクラにカカシが意地悪してくるので鳩尾に拳をお見舞いしていた。
さすがに2年経てば慣れたが、まだ外では恥ずかしくてまだ先生呼び。
こういうのがまだ子供っぽいのかなぁとため息をついた。
「サクラ?」
ため息付いたサクラを心配して顔を覗き込んでくる。
「な、何でもない!もう少しでご飯出来るから手洗って座ってて」
カカシは「はいはい」と返事をして洗面所に消えて行った。
カカシの顔を見ると、お昼のいのの言葉が思い出して心が落ち着かない。
カカシが好きな和食をテーブルに並べ、向かいに座り一緒に手を合わせ「いただきます」と言ってご飯を食べながら他愛もない会話をする。
「そういえば、今日はいのちゃんの子供見に行ったんでしょ?」
カカシからまさかの話題にドキっとした。
「うん。いの譲りの綺麗な髪の男の子で可愛かったよ。ヒナタも順調に育ってるって」
「はー・・・ナルトもサイも父親かぁ・・・あんなに小さかった子たちが親なんて変な感じだなぁ・・・」
「カカシさん、年寄りぽい」
「そりゃそうだよ・・・もう30代も半ばだよ」
カカシはため息をつきながらお茶を飲む。
「いのと話してたんだけど、カカシさんおじいちゃんみたいだよねって」
「ちょ・・・おじさんはまだいいけど、おじいちゃんって」
「だって本当そうなんだもん。昔はもうちょっとシャキってしてたのに、最近はのほほんとしてるから」
教え子たちからそう言われてショックなのか頭を下げるカカシを見て笑ってしまう。
「そりゃ君たちのお世話から解放されたら老けるよ。体力も精神もすごい使ってたからねぇ」
「そんなに大変だった?」
「大変だったよ。下忍時代は3人ともワガママばっかりだったから特に。子供持った親気分だったね」
その言葉に体がピクっと揺れたのをカカシは見逃さなかった。
「どうした?」
「う、ううん!お茶のおかわりは?」
「貰おうかな」
カカシは湯呑みを差し出してきたので受け取り、自分のも持ってキッチンへ逃げるように向かいお湯を沸かす。
その後は別の話題で盛り上り、カカシがお風呂に入ってる間にお皿を洗っていた。
片付けが終わったタイミングでカカシが上がってきたので、着替えを持って脱衣所に向かった。
普通ならお風呂でゆっくり安らぐところだが、今の私はそれどころではない。
お風呂から上がって目を向けたのは着替えの上に置いてある下着。
いのにアドバイスを貰い、ランジェリー屋さんの店員さんに選んでもらった、布が少ないピンクの下着。
いわゆる勝負下着。
「はぁ・・・」
思わずため息をついてしまった。
つきたくもなる。
いのに唆されて勢いのまま買ってしまったが。
これを使って里一番のモテ男で百戦錬磨のカカシを誘うというのはS級任務じゃないだろうか。
目線を下着から鏡に映る自分へと移す。
昔に比べたら成長はしているが、いのやヒナタに比べたら貧相な体つき。
引っ込むところは引っ込んでるが、出るべき所も引っ込んでいる。
こんな体に先生はどこに魅力を感じているのだろう。
付き合う前はカカシの周りに魅力的な美女が付き纏っていて、それを見るたびいつもイライラしていた。
そんな女性をいつも見ているはずのカカシが告白をしたのはまさかのサクラで、周りも当の私も本当に驚いた。
(とにかく!ここまできたらやるしかない!女は度胸よ、しゃんなろーー!!)
裸のままガッツポーズをして、買った下着を身につけて寝巻きを着て浴室を出た。
リビングに戻るとカカシはソファーに座りTVを見ながらボーとしていた。
私はお風呂上がりと緊張から喉がカラカラになっていたので、コップと冷蔵庫に入っていた水のペットボトルを取り出す。
キャップを回す音が聞こえたのかソファーから「俺にもちょうだい」と聞こえたので、もう1個コップを取り出してソファーに向かう。
「はい」
「ありがとー」
テーブルにコップを置いてソファーに座る。
いつもより近く、カカシに寄り添うように。
コップを取ろうとしたカカシは間近に来たサクラにビックリして固まっていた。
「どうしたの」
「何が?」
「いや・・・いつもより近いから」
「・・・ダメ?」
「そんなわけないでしょ」
カカシは優しく目を細め私の頭を撫でて、その手でコップを手に取って水を飲む。
お風呂上がりに普段は使わないボディクリームも使ってるのに、鼻がいいカカシが気づかないわけがない。
こっちは気が気じゃないのにちょっとムっとして、カカシが水をテーブルに戻すタイミングで抱きついた。
「・・・今日は随分積極的だね」
私はさらに強く抱きつく。
いのに色々伝授されたが、いざ実行しようとしたら頭が真っ白になって結局抱きつくことしか出来なかった。
すると、カカシの指が頬に添えられてビックリして体を離そうとしたが、いつの間にか腰に回されてた腕で動けなかった。
「もしかしてサクラ・・・子供欲しくなったの?」
わざと耳元に顔を寄せていつもより低く甘く囁いてくる。
弱い耳元にかかる吐息と図星をつかれて顔が真っ赤になる私を見てカカシはニヤニヤしていた。
「やっぱりね。子供の話が出るたび挙動不審だったから」
カカシはそう言って頬に唇を寄せる。
私は恥ずかしくなって体を離そうとするが、カカシの力に勝てる訳もなかった。
「サクラから誘ったのに逃げなくてもいいでしょ」
「も、もう!先生!!」
恥ずかしくて思わず昔の呼び方で呼んだ。
「サクラは可愛いなぁ」とカカシは私を抱きしめ唇にキスをした。
私は恥ずかしくてカカシの胸に顔を埋めると、カカシは愛おしそうに私の毛先を弄る。
「・・・サクラはさ」
暫くそうしていると、呟くように喋り出したので顔を上げると真剣な顔をして私を見ていた。
「サクラはこれからもっと成長していく。綱手様の意思を継いだサクラを中心に医療は進んでいく」
「4年前、これからって時に俺の我儘でサクラの大切な時間を奪った。そしてそれからずっとサクラを縛ってる。師としてやっちゃいけないことなのにね」
先生の辛そうな顔を見て泣きそうなった。
そんなことないって言いたかったのに言葉が出なかった。
「サクラの成長を願うなら手放さなきゃいけないのに、もうサクラがいないとダメなんだ」
いつの間にか頬を流れていた涙を先生は親指で拭ってくれた。
「ねぇ、サクラ・・・サクラの時間、もっと俺にくれる?」
眉を八の字に下げて情けない顔をして見てくる先生。
私から誘ったのに断ると思っているのだろうか、この人は。
それにこの人は間違っていることがある。
「・・・私は自分でカカシ先生といることを選んだの。先生に奪われたなんて思ってない」
「・・・うん、サクラはそう言ってくれると思った」
「それに・・・」
「ん?」
言い淀む私の顔を覗き込んで続きを促すカカシの顔が見れなくて顔を逸らそうとするが、両手でガッツリ掴まれる。
「・・・・・・私だって同じよ」
「同じ?」
「私も・・・先生の時間奪ってるって思ってたの。火影になってからは尚更。私は離れた方がいいだって何回も考えたけど、離れられなかったの!」
顔が逸らせないので上目遣いで睨んだら、カカシは目を細めて嬉しそうに微笑んでいた。
「何で?」
意地悪そうに笑って聞いてくるので真っ赤に顔が染まる。
分かって聞いてきてる、この人は!
「そ、そんなこと分かるでしょ!」
「聞きたい」
聞くまで顔から手を離してくれそうにないカカシに観念する。
「好きだからよ。カカシ先生が好きだから離れたくないの!!」
顔を林檎のように真っ赤にして睨むと満足そうに微笑む先生は強く抱きしめて耳元に顔を寄せる。
「俺もサクラが好き・・・愛してるからもう離せない」
そんな甘い囁きがダイレクトに脳に届き、頭から湯気が出そうなほど顔が熱くなる。
でもその言葉が嬉しくて私からも抱きしめると、カカシは私を抱き上げベッドまで運んだ。
所謂お姫様抱っこで。
ベッドに仰向けで体を沈めると、先生が覆い被さってくる。
いつもののほほんとした感じではく、欲を含んだ目をしていた。
「サクラから初めて誘って貰いましたし、頑張りますかぁ。それに、いつもとは違う匂いがしてきてもう我慢出来なくて」
匂いに気付いてたのに知らんぷりしてたのかと、カカシを睨む。
そんな私の考えが分かったのかヘラっと笑ってくる。
いつもそうだ。
余裕綽々として私の行動を楽しむ。
いつかそんなカカシを動揺させたいと、カカシの腕に抱かれながら心の中で決め込んだ。
鳥の鳴き声とカーテンの睡魔から入ってくる太陽の光で目を覚ます。
体にかかる重みを見ると細く見えるけど筋肉質な腕に抱かれていた。
その腕を辿っていくと、未だに眠る愛しい人の寝顔。
いつもより幼く見える顔に、口布を外した口元にあるホクロは私だけが見れる特権にニヤけてしまう。
ずっと見ていたいけどそろそろ朝ごご飯の準備をしようと腕をすり抜けベッドから起きあがろうとすると、後ろから腕を掴まれてビックリする。
振り返ると、いつも以上に眠たげな眼をしたカカシが起きていた。
「おはよう・・・」
「おはよう、カカシさん」
求める顔をしたカカシに、顔を寄せて日課の朝のキスをする。
そろそろご飯の準備をしたいのだが、まだ掴まれたままなので眉間に皺を寄せる。
「下着、可愛かったよ。興奮した」
いきなりあの下着の話をされ、カカシの思う壺だと分かってても顔が赤くなる。
思った通りニヤニヤして私の顔を見てくるのが悔しい。
「・・・匂いのときも思ったけど、カカシさんは話すタイミングがおかしいのよ」
顔を赤くして睨むと、カカシは「ハハッ」と笑って私の腕を引っ張りベッドの中に引き戻した。
「ちょっと!ご飯の準備するんだから!」
起きあがろうとする私の体に腕を絡めてくる。
「産まれてくる子供、きっとサクラに似た可愛い女の子だろうな」
カカシは目を細め愛おしそうに見つめ話す。
今まで先のことなんて話してくれなかったカカシに、私も同じように見つめる。
「違うわ。カカシさん似の美形の子よ。それに、私に似た女の子だったらカカシさん気が気じゃなくなるわ」
私はニヤリと笑いかけると、カカシは吹き出した。
「そりゃそうだ。これから大変になるな」
そう言ってカカシは私の額に自分の額を合わせて目をつぶる。
きっと未来のことを考えているのだろう。
私も3人で手を繋いで歩く未来を思い描きながら、また夢の世界へと落ちていった。
いのとサイとの間に子供が産まれたので、いのの家にヒナタと遊びにきていた。
「か、可愛いー!!」
いのの腕の中で安らかに眠っている、母親譲りの金髪の赤子を見て思わず大きな声が出てしまった。
サクラの声に反応して泣きそうにり、慌てて自分の口に手を当てる。
泣くかと思ったけどまた寝息が聞こえてきた。
「本当可愛いね」
「男の子だっけ。名前決まったの?」
「うん。いのじんって言うの」
「いのじん・・・カッコいい名前貰ったわね」
そう言っていのじんの柔らかい頬を突くと、いのじんが寝ながら笑ってくれて胸がキュンとした。
「はー・・・やっぱり赤ちゃんは可愛いなぁ。シカマルとテマリさんのところのシカダイも可愛かったし。ヒナタも来年よね。名前は決まってるの?」
「うん・・・ボルトって名前なの」
「ボルト・・・いい名前ね」
愛おしそうにお腹を撫でるヒナタは長年想い続けてきたナルトと結婚して、来年の3月に子供を出産予定だ。
「そういうサクラはどうなのよ」
「何が?」
「六代目とのことに決まってるでしょうが。そういう予定はないの?」
心臓が跳ねた。
サクラとカカシが付き合い始めて2年経ったある日、カカシにプロポーズをされた。
もちろん受け入れて晴れて夫婦になって2年。
同期もどんどん結婚して子供も産まれてきている。
カカシとはそういうこともしているし、愛されてるとちゃんと感じてる。
でも、子供の話はしたことがない。
「どうかな・・・仕事忙しいみたいだし。そう言う話もしないし」
いのじんの手を触りながら答える。
やはり子供は欲しい。
カカシに似てたらきっと美形なんだろうなって時々考える。
「あのね。そうやってサクラが受け身なのが悪いんじゃないの?」
いのは人差し指で私のおでこを突く。
「六代目がうんと年上だから甘えるのはしょうがないけど。あの人のほほんとしてるんだから、早くしないとおじいちゃんになっちゃうわよ」
「のほほん・・・」
確かに現役時代に比べたらのんびりしてる気がする。
お茶を飲んでるときも縁側にいるおじいちゃんを感じる時がある。
見た目は羨ましいぐらいに老けないのに、中身は多分おじいちゃんだ。
「でも・・・いつもカカシ先生からだから、どうしたらいいのか分からないし・・・」
「私がちゃんと教えてあげるから!!」
グイグイ来るいのに、母親になってもこの性格が落ち着くことはないのかと心の中で思う。
助けを求めてヒナタを見るが、ニコニコこちらを見るだけで助けるつもりはないらしい。
私は諦めて身を任せることにした。
夕方にいのたちと別れて買い物を済ませ、夕飯の準備が終わる頃にカカシが帰宅した。
「おかえりなさい、カカシさん」
「ただいま、サクラ」
カカシはそう言いながら額にチュッとキスをした。
結婚して変わらない中、変わったこともある。
それはサクラのカカシへの呼び方。
結婚するのに先生と呼ぶのはどうかと思ったのだ。
カカシはそのままでも良いと言ったが、いいタイミングだと思い、さん付けに変えた。
最初の頃は上手く呼べないサクラにカカシが意地悪してくるので鳩尾に拳をお見舞いしていた。
さすがに2年経てば慣れたが、まだ外では恥ずかしくてまだ先生呼び。
こういうのがまだ子供っぽいのかなぁとため息をついた。
「サクラ?」
ため息付いたサクラを心配して顔を覗き込んでくる。
「な、何でもない!もう少しでご飯出来るから手洗って座ってて」
カカシは「はいはい」と返事をして洗面所に消えて行った。
カカシの顔を見ると、お昼のいのの言葉が思い出して心が落ち着かない。
カカシが好きな和食をテーブルに並べ、向かいに座り一緒に手を合わせ「いただきます」と言ってご飯を食べながら他愛もない会話をする。
「そういえば、今日はいのちゃんの子供見に行ったんでしょ?」
カカシからまさかの話題にドキっとした。
「うん。いの譲りの綺麗な髪の男の子で可愛かったよ。ヒナタも順調に育ってるって」
「はー・・・ナルトもサイも父親かぁ・・・あんなに小さかった子たちが親なんて変な感じだなぁ・・・」
「カカシさん、年寄りぽい」
「そりゃそうだよ・・・もう30代も半ばだよ」
カカシはため息をつきながらお茶を飲む。
「いのと話してたんだけど、カカシさんおじいちゃんみたいだよねって」
「ちょ・・・おじさんはまだいいけど、おじいちゃんって」
「だって本当そうなんだもん。昔はもうちょっとシャキってしてたのに、最近はのほほんとしてるから」
教え子たちからそう言われてショックなのか頭を下げるカカシを見て笑ってしまう。
「そりゃ君たちのお世話から解放されたら老けるよ。体力も精神もすごい使ってたからねぇ」
「そんなに大変だった?」
「大変だったよ。下忍時代は3人ともワガママばっかりだったから特に。子供持った親気分だったね」
その言葉に体がピクっと揺れたのをカカシは見逃さなかった。
「どうした?」
「う、ううん!お茶のおかわりは?」
「貰おうかな」
カカシは湯呑みを差し出してきたので受け取り、自分のも持ってキッチンへ逃げるように向かいお湯を沸かす。
その後は別の話題で盛り上り、カカシがお風呂に入ってる間にお皿を洗っていた。
片付けが終わったタイミングでカカシが上がってきたので、着替えを持って脱衣所に向かった。
普通ならお風呂でゆっくり安らぐところだが、今の私はそれどころではない。
お風呂から上がって目を向けたのは着替えの上に置いてある下着。
いのにアドバイスを貰い、ランジェリー屋さんの店員さんに選んでもらった、布が少ないピンクの下着。
いわゆる勝負下着。
「はぁ・・・」
思わずため息をついてしまった。
つきたくもなる。
いのに唆されて勢いのまま買ってしまったが。
これを使って里一番のモテ男で百戦錬磨のカカシを誘うというのはS級任務じゃないだろうか。
目線を下着から鏡に映る自分へと移す。
昔に比べたら成長はしているが、いのやヒナタに比べたら貧相な体つき。
引っ込むところは引っ込んでるが、出るべき所も引っ込んでいる。
こんな体に先生はどこに魅力を感じているのだろう。
付き合う前はカカシの周りに魅力的な美女が付き纏っていて、それを見るたびいつもイライラしていた。
そんな女性をいつも見ているはずのカカシが告白をしたのはまさかのサクラで、周りも当の私も本当に驚いた。
(とにかく!ここまできたらやるしかない!女は度胸よ、しゃんなろーー!!)
裸のままガッツポーズをして、買った下着を身につけて寝巻きを着て浴室を出た。
リビングに戻るとカカシはソファーに座りTVを見ながらボーとしていた。
私はお風呂上がりと緊張から喉がカラカラになっていたので、コップと冷蔵庫に入っていた水のペットボトルを取り出す。
キャップを回す音が聞こえたのかソファーから「俺にもちょうだい」と聞こえたので、もう1個コップを取り出してソファーに向かう。
「はい」
「ありがとー」
テーブルにコップを置いてソファーに座る。
いつもより近く、カカシに寄り添うように。
コップを取ろうとしたカカシは間近に来たサクラにビックリして固まっていた。
「どうしたの」
「何が?」
「いや・・・いつもより近いから」
「・・・ダメ?」
「そんなわけないでしょ」
カカシは優しく目を細め私の頭を撫でて、その手でコップを手に取って水を飲む。
お風呂上がりに普段は使わないボディクリームも使ってるのに、鼻がいいカカシが気づかないわけがない。
こっちは気が気じゃないのにちょっとムっとして、カカシが水をテーブルに戻すタイミングで抱きついた。
「・・・今日は随分積極的だね」
私はさらに強く抱きつく。
いのに色々伝授されたが、いざ実行しようとしたら頭が真っ白になって結局抱きつくことしか出来なかった。
すると、カカシの指が頬に添えられてビックリして体を離そうとしたが、いつの間にか腰に回されてた腕で動けなかった。
「もしかしてサクラ・・・子供欲しくなったの?」
わざと耳元に顔を寄せていつもより低く甘く囁いてくる。
弱い耳元にかかる吐息と図星をつかれて顔が真っ赤になる私を見てカカシはニヤニヤしていた。
「やっぱりね。子供の話が出るたび挙動不審だったから」
カカシはそう言って頬に唇を寄せる。
私は恥ずかしくなって体を離そうとするが、カカシの力に勝てる訳もなかった。
「サクラから誘ったのに逃げなくてもいいでしょ」
「も、もう!先生!!」
恥ずかしくて思わず昔の呼び方で呼んだ。
「サクラは可愛いなぁ」とカカシは私を抱きしめ唇にキスをした。
私は恥ずかしくてカカシの胸に顔を埋めると、カカシは愛おしそうに私の毛先を弄る。
「・・・サクラはさ」
暫くそうしていると、呟くように喋り出したので顔を上げると真剣な顔をして私を見ていた。
「サクラはこれからもっと成長していく。綱手様の意思を継いだサクラを中心に医療は進んでいく」
「4年前、これからって時に俺の我儘でサクラの大切な時間を奪った。そしてそれからずっとサクラを縛ってる。師としてやっちゃいけないことなのにね」
先生の辛そうな顔を見て泣きそうなった。
そんなことないって言いたかったのに言葉が出なかった。
「サクラの成長を願うなら手放さなきゃいけないのに、もうサクラがいないとダメなんだ」
いつの間にか頬を流れていた涙を先生は親指で拭ってくれた。
「ねぇ、サクラ・・・サクラの時間、もっと俺にくれる?」
眉を八の字に下げて情けない顔をして見てくる先生。
私から誘ったのに断ると思っているのだろうか、この人は。
それにこの人は間違っていることがある。
「・・・私は自分でカカシ先生といることを選んだの。先生に奪われたなんて思ってない」
「・・・うん、サクラはそう言ってくれると思った」
「それに・・・」
「ん?」
言い淀む私の顔を覗き込んで続きを促すカカシの顔が見れなくて顔を逸らそうとするが、両手でガッツリ掴まれる。
「・・・・・・私だって同じよ」
「同じ?」
「私も・・・先生の時間奪ってるって思ってたの。火影になってからは尚更。私は離れた方がいいだって何回も考えたけど、離れられなかったの!」
顔が逸らせないので上目遣いで睨んだら、カカシは目を細めて嬉しそうに微笑んでいた。
「何で?」
意地悪そうに笑って聞いてくるので真っ赤に顔が染まる。
分かって聞いてきてる、この人は!
「そ、そんなこと分かるでしょ!」
「聞きたい」
聞くまで顔から手を離してくれそうにないカカシに観念する。
「好きだからよ。カカシ先生が好きだから離れたくないの!!」
顔を林檎のように真っ赤にして睨むと満足そうに微笑む先生は強く抱きしめて耳元に顔を寄せる。
「俺もサクラが好き・・・愛してるからもう離せない」
そんな甘い囁きがダイレクトに脳に届き、頭から湯気が出そうなほど顔が熱くなる。
でもその言葉が嬉しくて私からも抱きしめると、カカシは私を抱き上げベッドまで運んだ。
所謂お姫様抱っこで。
ベッドに仰向けで体を沈めると、先生が覆い被さってくる。
いつもののほほんとした感じではく、欲を含んだ目をしていた。
「サクラから初めて誘って貰いましたし、頑張りますかぁ。それに、いつもとは違う匂いがしてきてもう我慢出来なくて」
匂いに気付いてたのに知らんぷりしてたのかと、カカシを睨む。
そんな私の考えが分かったのかヘラっと笑ってくる。
いつもそうだ。
余裕綽々として私の行動を楽しむ。
いつかそんなカカシを動揺させたいと、カカシの腕に抱かれながら心の中で決め込んだ。
鳥の鳴き声とカーテンの睡魔から入ってくる太陽の光で目を覚ます。
体にかかる重みを見ると細く見えるけど筋肉質な腕に抱かれていた。
その腕を辿っていくと、未だに眠る愛しい人の寝顔。
いつもより幼く見える顔に、口布を外した口元にあるホクロは私だけが見れる特権にニヤけてしまう。
ずっと見ていたいけどそろそろ朝ごご飯の準備をしようと腕をすり抜けベッドから起きあがろうとすると、後ろから腕を掴まれてビックリする。
振り返ると、いつも以上に眠たげな眼をしたカカシが起きていた。
「おはよう・・・」
「おはよう、カカシさん」
求める顔をしたカカシに、顔を寄せて日課の朝のキスをする。
そろそろご飯の準備をしたいのだが、まだ掴まれたままなので眉間に皺を寄せる。
「下着、可愛かったよ。興奮した」
いきなりあの下着の話をされ、カカシの思う壺だと分かってても顔が赤くなる。
思った通りニヤニヤして私の顔を見てくるのが悔しい。
「・・・匂いのときも思ったけど、カカシさんは話すタイミングがおかしいのよ」
顔を赤くして睨むと、カカシは「ハハッ」と笑って私の腕を引っ張りベッドの中に引き戻した。
「ちょっと!ご飯の準備するんだから!」
起きあがろうとする私の体に腕を絡めてくる。
「産まれてくる子供、きっとサクラに似た可愛い女の子だろうな」
カカシは目を細め愛おしそうに見つめ話す。
今まで先のことなんて話してくれなかったカカシに、私も同じように見つめる。
「違うわ。カカシさん似の美形の子よ。それに、私に似た女の子だったらカカシさん気が気じゃなくなるわ」
私はニヤリと笑いかけると、カカシは吹き出した。
「そりゃそうだ。これから大変になるな」
そう言ってカカシは私の額に自分の額を合わせて目をつぶる。
きっと未来のことを考えているのだろう。
私も3人で手を繋いで歩く未来を思い描きながら、また夢の世界へと落ちていった。
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