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short.1

「おにはーそとー」


ぽてん


「・・・先生」
「ん?」
「これ何回目!?いい加減当ててよ!」

私は怒鳴りながら床に落ちている散らばらないように袋に入れた豆を指さす。


「だって、サクラに当てるなんて無理だよ。痛いよ?これ」
「当てなきゃいけないのよ!袋に入ってんだからそこまで痛くないっての!」
「そこまででも、サクラには痛い思いして欲しくないから投げませーん」


イラっ


私は眉間に皺を寄せて床に落ちている豆を拾って。
大きく振りかぶって。


「鬼は外ーー!!」


バチーーーン!!


「いっったぁーーー!!?」

チャクラを込めた豆(砲)は見事先生の腕に当たり、先生は腕を抱えて蹲る。

「本当ね、袋でも痛いみたい。来年は豆の数減らそうかしら」
「何すんの、サクラ・・・」
「本当に痛いか試そうかと思って」
「絶対別の念が込められてたでしょ・・・」

ニコリと笑う私に先生はジト目で睨んでくる。
治そうかと言ったら大丈夫、と遠慮されてしまった。
きっと明日にはアザになってるかもしれない。
思い切り投げたから。




「じゃあ豆まきも終わったことだし、恵方巻き食べましょ。今年は北北西だって」

私は今日の為に色々具材を用意して、それぞれ好きなものを入れて巻けるようにした。


好きなものを乗せたら太い恵方巻きになってしまった。
先生に「食べられるの?」と笑われたけど無視して、北北西を向いて黙々と食べる。
先生は食べるでもなくただ私をジーと見てくる。
何か変なところでもあるのかと聞きたいが、喋りたくないので首を傾げて目で問いかける。
私が言いたいことを理解した先生は、ニヤリと笑って。


「いや、太いものを咥えてるサクラえろいなって思って」

「んぐっ!!!」

お米が変なところに入って咳き込む。


「な、何言ってるのよ!」
「あれ、喋っていいの?」
「先生のせいでしょー!!」

顔を真っ赤にして怒鳴るが、先生はニヤニヤ笑うだけ。
私は諦めて食べ始める。
もう無言と方角も意味がなくなってしまった。
先生はまだ食べずに私を見てくる。


「先生食べないの?」
「食べていいの?」
「?、うん」

その為にたくさん用意しているんだが。
先生の意図が分からなかったが、取り敢えず目の前の太巻きを食べようとした時だった。
いきなり体を持ち上げられ、先生の膝の上に降ろされる。

「え、なに!?」

突然の事態に恵方巻きを持ったまま固まっていると、それを取り上げられてお皿の上に戻される。
そして先生は唇を首筋に当ててきて、ようやく何がしたいのかが理解出来た。



「先生、何してんのよ!」
「だってオレが食べたいのサクラなんだもん。サクラも食べていいって言ったし」
「恵方巻きのことを言ったのよ!」

何とか離れようも足掻くが、腕を体に巻きつけてきて動くことが出来ない。
その間にも先生の唇と手は忙しなく動く。

「んっ・・・」

その甘い動きに委ねそうになった時。



ぴんぽーん



「あ・・・」

既のところで意識を取り戻す。

気持ちを落ち着かせて立ちあがろうとするが、先生がそれを許そうとしない。

「先生、誰か来たから・・・」
「どうせセールスか何かだよ。続き、しよ?」

立ちあがろうとした私は、普段は見下ろされる先生を見下ろし、上目遣いでお願いしてくる先生にクラッとする。


ぴんぽーん。ぴんぽーん。


しかし、その間も来客を知らせる音が鳴り響く。

「ほら、何か緊急かもしれないから。離して先生」

そう言うと「ちぇっ」と言って腕を離す先生。
私は外に聞こえるように返事をしながら玄関へと急いだ。



****


暫く外で話し声が聞こえていた。
もしかしたら本当に急ぎの用だったのかもしれない。
ポリポリと豆まきの残りを食べていると、玄関が閉まる音がした。


「サクラー、誰だ・・・」

豆を食べながら振り返ると、

そこにはナルトが立っていた。 

「・・・ナルト?」

眉間に皺を寄せていると、ナルトはニヤリと下忍時代を彷彿させる笑い方をして。


「鬼はーー外ーーー!!」


ナルトは手に持っていた入れ物に手を突っ込み、大量に握りしめた豆を思い切りオレに投げつけてきた。


「いだたたた!」


休みモードですっかり油断して、変わり身出すことも出来ずもろに受けてしまった。


「やったってばよ!やっと当てれた!」

ガッツポーズをしているナルトと、床に散らばる豆に理解が出来てないオレ。

「なにこれ・・・」
「すっかりしてやられたわね、カカシ先生」

顔を上げると、ナルトの後ろから笑いながら部屋に入ってくるサクラ。

「サクラ・・・これどういうことなの・・・」
「ナルトが先生で豆まきしたいっていうから、入れちゃった」

舌を出してテヘッと笑うサクラ。

ーー可愛いなぁ。

場違いなことを考えていると、嬉しそうなナルトがオレにピースをしてくる。


「今日、豆ぶつけようと思ってみんなのところ回ってたんだよ。でもさ、サスケは明らかに気配あるのに居留守使うし、サイはいのに守られてるし、ヤマト隊長にはあの顔で怒られるし・・・で、カカシ先生はきっと今頃サクラちゃんに意地悪してるだろうなーって思ったんだってばよ」


それでぶつけにいこーと思ってさー、とニシシと笑うナルトに頭を抱える。
もし情事中だったら気まずくなると考えなかったんだろうか、コイツは。




「はー、満足したってばよ。それじゃオレはこれで・・・」

身を翻して帰ろうとするナルトの肩を思い切り掴む。

「ナルト。この惨状のまま帰ろうとしてるのか?」

ん?、とオレはにこやかに笑っているが、ナルトの肩はミシミシと音を立てていた。
ナルトの襲来によって、豆が至る所に散らばっている。
これでは何のためにサクラが豆を袋に入れてくれたのかが分からない。


「ちゃんと、掃除して、帰ります・・・」

久々のオレの本気の怒りに、ナルトは涙目で掃除をして帰った。



****


その数日後。
部屋を掃除していると、掃除機に何かが当たり飛んでいくのが見えた。

「あ、まだあった」

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