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short.1

「先生、おんぶして」

いつもの修行が終わって解散の合図を出した後。
いきなりサクラがそう言い出して、両手をオレの方へ向けていた。

「は?」
「おんぶ。して!」

サクラは眉を顰めて更に強要してくる。
最近の子は何考えてるのか分からない。

「何でよ」
「疲れたから!」

疲れる度におんぶさせられてたらこっちの身が保たないだろ・・・。

「あのね、サクラ、おわっ!」

いつまでもしようとしないオレに我慢出来なくなったのか、背中に飛びついてよじ登ってきた。


「ちょ、サクラ、やめなさい!」
「あーー!!カカシ先生ずるいってばよー!」

遠くから見ていたナルトは、よじ登りしがみついているサクラを見て叫びながら走ってくる。

「さ、サクラちゃん!オレがおんぶしてあげるってばよ」

頬を染めて明らかに下心丸出しのナルトに、背中からふんっと鼻息が聞こえた。

「いやよ。ナルトどこか触ってきそうだし。それにあんたじゃ意味ないわ」
「そ、そんな〜・・・」

ショックで項垂れるナルトを無視して、オレの腰に足を絡ませ、しっかりしがみついてくる。

「さぁ、カカシ先生!帰りましょう!」
「帰りましょうって・・・オレこれから報告書出しにいかないといけないんだけど・・・」
「しょうがない、付き合ってあげるわ」
「・・・このまま?」
「このまま」

首にも腕を回しピッタリくっついてくるサクラに、ため息をついてサクラを支えて歩き出す。
悲嘆に暮れているナルトを置き去りにして。



****



サクラをおんぶしたまま里を歩くと、当然周りがオレ達を見て笑っている。
こんな姿を仲間・・・特にあの2人に見られたら溜まったものじゃないと早歩きで目的地に向かう。

「確かにいのの言った通りだわ」
「・・・何が?」

楽しそうに笑っていたサクラの言葉に、当然分からなくて聞き返す。

「いのもね、アスマ先生におんぶして貰ったんだって。そしたら見える景色が全然違って楽しかったって自慢されたの」

・・・なるほど。
いのに自慢げに話されて、ライバル心に火がついたのだろう。
そして、きっとアスマも無理やりせがまれた口だ。


下忍たちはまだまだ小さい。
オレ達が見える景色もこの子達からしたら何も見えなくて。
同じ目線の高さになって見えたものに感動を覚える。

それはオレが小さい頃に父さんにして貰った時のように。



「それで、どんな感じですかお姫様」
「景色良好!いい感じだわ!」

嬉しそうに抱きついてくるサクラに呆れながらも頬が緩む。


「カカシ先生はいつもこの景色を見ていたのね。私も大きくなったら見れるかしら」
「うーん。サクラは女の子だからねぇ。それでも今よりかは遠くまで見れるようになると思うよ」
「そうよね・・・。じゃあ、またおんぶしてくれる?」

「えー・・・。じゃあ、サクラがオレのお願い聞いてくれたらね」
「お願い?なになに?」

覗き込んで聞いてくるサクラを横目に考える。

「そうだねー・・・」



****



「サクラちゃん可愛いってばよ!!」

ナルトが私の周りを駆け回りながら褒めまくる。
褒めてくれるのは嬉しいけど、ウザい。
どうせならサスケくんに褒めて欲しいけど、こっちを見向きもしてくれない。
そして、このお願いをしてきた張本人は3時間経った今でも現れない。


イライライラ


ナルトのウザさと遅刻でイラつきがピークに達そうとしたとき。

「やー、諸君おはよう。さっきそこの角でおばあさんに・・・」
「「はい、嘘!!」」

私とナルトが先生を指差して怒鳴る。
先生は頭を掻きながら今日の任務の話をして、2人が任務先へと歩き出したので私もその後ろをついて行こうとした時、後ろから腕を掴まれた。



「サクラ、お願い聞いてくれたんだ。似合ってるよ」

覗き込むようにして笑ってくるから、頬が赤く染まる。


先生のお願い。


『サクラのツインテールが見たいなぁ』


「やっぱりナルトのツインテールより、本当の女の子の方が何倍も可愛いね」

そう言って先生は私の髪を掬ってはサラサラと流すのを繰り返す。
時々その指が耳に当たるから落ち着かない。


「せ、先生。ちゃんとお願い聞いたんだから今日もおんぶしてくれるんでしょ」
「んー、いいけど、サクラがまたしてくれるならね」
「え!1回で終わりじゃないの!?」
「だって可愛いサクラ見たいんだもん。次は別の髪型でもいいかなぁ」

目を細めてそんなこと言うから、恥ずかしくて髪ゴムを外していつもの髪型になる。

「あれ、もうおしまい?」

先生はちょっとガッカリしたような顔をしている。

「サービスは終わり!また今度よ!」

私は何故かドキドキする胸を押さえて2人の元へと駆ける。


恥ずかしい思いより、おんぶをして貰っている間は先生を1人占め出来る喜びの方が大きいことに私はまだ気づいていなかった。

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