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「カカシ。この後飲みに行かないか」

任務が終わり報告書を出したところでアスマに捕まる。

「悪いけど早く帰るから」

手をヒラヒラ振って出入り口に向かうと、アスマは後ろを付いてくる。

「最近付き合い悪くないか」
「しゃうがないでしょ。早く帰って愛でないといけないんだから」

オレは振り返り印を組み、その場には煙だけが残して消える。
それを見たアスマは呆れたように口から煙を吐き出した。



****



「ただいまー」

自分の部屋のドアを開ける。
オレの声を聞いて、廊下の奥から足音が聞こえてくる。

「お帰りなさい先生」

ひょこっと現れたのは元生徒で部下で、2ヶ月前に恋人から奥さんになった愛しい人。

「ただいまーサクラ」

思い切り抱きしめて額にキスをするとくすぐったそうに笑いながら身を捩る。


「はー・・・久しぶりのサクラは癒されるなぁ」

覆い被さるように玄関でサクラを堪能する

「久しぶりって・・・朝一緒に出たじゃない。それにお昼にも執務室で会ったでしょ」

サクラは顔を上げて呆れたように言ってくる。
サクラが昼過ぎに医療のことで報告に来たのが数時間前。


「十分だよー。オレは四六時中サクラといたいのに。サクラもオレの補佐になってよー」
「馬鹿なこと言わないの!病院の仕事があるんだから。それにシカマルがいれば充分でしょ」

片手を上げて頭をペチンと叩いてくる。
昔はつま先立ちにならないと頭に届かなかったのに本当成長したな。
感慨深くなっているオレから離れたサクラは1人キッチンへと戻る。

「手洗いとうがいちゃんとしてよー?あと、洗濯ものはちゃんと籠に入れてよね」
「はーい」

キッチンから聞こえる声に頬が緩む。
これでは奥さんというより母親だな、といつも思う。



****


キッチンに戻るといい香りが漂ってきてお腹が空腹を自覚する。
昔は全く料理が出来なかったのに、何回も練習して今ではナルトが直談判(オレに)してくるほどの美味さになった。
大泣きされてしがみつかれても、手料理を男に食わせるわけがない。



オレはここ数年猛アプローチしてサクラを手に入れたのだ。
ナルト、サスケ、サイ、ヤマトまでもがサクラに恋をしているのは誰が見ても分かることなのに、当の本人は仕事一本で全く気づかなかったのだ。
もちろんオレの想いにも。

グイグイいきすぎてもナルトのように殴られるし、サイのよう静かにアプローチしても気づくわけがない。
自分からアプローチするのに慣れていないサスケはともかく、女に慣れていないヤマトも敵ではなかった。
木ノ葉一の技師と呼ばれ、百戦錬磨のオレにかかればなんてことない。

絶妙なアプローチとサクラの好物で釣ったりと、色々な方法で好意を少しずつ伝え、オレから告白をして見事に成功したのだ。

恋人になった報告をしたときの男たちの顔が今でも忘れられない。
それからナルトとヤマトに嫌がらせを受けているが、目の前の幸せからしたらちっぽけなことだ。



「あ、そうだ。ケーキ買ってきたんだよ」

アスマと別れた後、サクラの好きなケーキ屋に寄ってサクラが1番好きなケーキを買ってきた。
今日はサクラと結婚して2ヶ月。大事な記念日だ。

「わ、本当?ちょうど良かった。いのから美味しい紅茶貰ったのよ」

エプロンで手を拭いたサクラが嬉しそうにオレからケーキを受け取るのを見て、こっちも嬉しくなる。
みんなといる時は違う表情は俺だけの特権だから。

「そうだ。ケーキ食べる時に話したいことがあるから」
「え、なにそれ。気になるんだけど。今じゃダメなの?」
「ふふふ!後のお楽しみよ。悪いことじゃないから大丈夫!」

下忍時代から変わらない笑い方に、何かオレを驚かせようとしてるんだろうなぁ、と少し楽しみな自分がいる。






その後はサクラの料理を食べながら、お互いの今日あったことを話すのが付き合い始めてからの日常になった。
オレが火影になってからは任務に行くこともなくなり、毎日事務作業の代わり映えのない毎日。
だから色んな患者を見るサクラの話は1日の唯一の楽しみになっている。


「でね、相変わらずナルトは擦り傷ばかり作るのよ。いい加減落ち着くことが出来ないのかしら。それに、九尾の力で治るから見る必要ないのに「見てくれー」って毎日来てただ喋って帰るの」


「あいつ暇なのかしら」と首を傾げるサクラに、ナルトが可哀想に思えてくる。
相変わらず自分への好意には疎いらしい。
この子は一体何人の男を手のひらで転がしているんだろうか・・・
とゆうかアイツ、まだサクラにちょっかい出してるのか。1回締めるか。



物騒なことを考えているとは梅雨知らず、サクラは食後のデザートを美味しそうに食べている。
明日食べてもいいようにプリンも買ってたんだが、それもペロリと平らげた。

「あー、美味しかった!」
「ご飯もおかわりしてたのによく食べるね」
「だってお腹が空くんだもん」

そう言ってサクラはオレの手元を見ている。
あるのはオレでも食べれる抹茶のゼリー。
サクラは上目遣いでジーとオレを見つめてくる。

「・・・どうぞ」
「ありがとー!」

オレが差し出すとサッと奪って美味しそうに食べるサクラを頬杖をついて呆れて見る。
明日ぐらいに「太ったー!!」って騒ぎそうだな。




「そういえば、何か話したいことがあるって言ってなかった?」

オレがそう聞くと、ゼリーに夢中なサクラは顔を上げずに。

「あ、うん。赤ちゃん出来たんだ」


サクラが何でもないみたいに言うから、頭がその言葉を理解出来ずに固まる。

「・・・・・・ごめんサクラ、もう1回言ってくれる?」
「だから、赤ちゃん出来たの」

「・・・誰と誰の?」
「私と先生に決まってるでしょ!」

サクラは眉間に皺を寄せて、スプーンを持ってる手をテーブルに叩きつける。

「・・・マジ?」
「嘘ついてどうすんのよ!!」

吊り上がった深緑の瞳がどんどん潤みだし、オレは慌てて立ち上がって座っているサクラを抱きしめる。


「ごめんサクラ!」
「ぅく・・・先生・・・喜んでくれると、思ったのに・・・」

サクラの肩が震え、白い頬に涙が流れる。

「ごめん・・・いきなりだったから頭が追いつかなくて。嬉しいに決まってるでしょ」

オレは床に膝をついてサクラの顔を覗き込む。

「サクラ」
「なに・・・」

眉間に皺を寄せて涙を拭うサクラの手を握る。


「オレと結婚してくれてありがとう。オレに家族を作ってくれてありがとう」

サクラは涙を溜めた目を丸く見開き、すぐに満開に咲いたように笑って胸に飛び込んできて、オレは力強くサクラを抱きしめた。





「名前何にしようか」
「もう先生。まだどっちか分からないのに気が早いわ」

薄紅髪を手ですくと、サクラはクスクス笑いながら気持ち良さそうに胸に擦り寄る。


父を亡くし、友と師を亡くして。
大切なものなど作る気がなかったのに、この子と出会って欲が出て。
この子を手放したくなくて必死になって。
そしたら向こうからも手を伸ばしてくれて。
そして家族になってくれた。


色んなことがあったけど、きっとオレはこの子と一緒になるために生きてきた気がする。



「サクラ。オレと出会ってくれてありがとう」


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