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short.1

「ほらサクラ、ちゃんと歩いて」
「歩けない〜先生抱っこ〜」

地面にしゃがみ込み、両腕を上げて見上げてくるのは先程恋人になった元教え子。


成人のお祝いで4人で居酒屋で飲み、泥酔したナルトを影分身に送らせてサクラと手を繋いでオレの部屋に向かっていた時。
急にサクラが手を離して走り出したのだ。
しかし少しとはいえ初めての酒。
すぐに酔いが回ったのかしゃがみ込んで動かなくなった。
慌てて駆け寄ったら先程の会話だ。


「抱っこって・・・子供じゃないんだから」
「い〜や〜!!抱っこして!」

今にも駄々をこね始めるそうなサクラにため息をつく。
先程の積極的な彼女はどこにいったんだ。

「・・・おんぶじゃダメ?」
「ダメ。抱っこ!」

ん、と更に腕を伸ばしてくる彼女にまたため息をつく。
オレがしゃがむと嬉しそうに笑うサクラに、昔からサクラには弱いなぁと思った。

サクラの脇に手を差し込み持ち上げ、お尻の下で支える。
オレの首に腕が回ったのを確認して歩き出す。



「んふふ!先生の抱っこ久しぶり〜。下忍ぶりかしら」
「たく。体は大きくなったのに中身は変わらないな」

彼女が下忍時代、何かにつけて抱っこしろ、おんぶしろと強要されていた。
忍として生きるなら甘やかしてはいけないと分かっていても、自分の可愛いところを分かってアピールしてくる彼女に最後は言うことを聞いてしまうのだ。

「あの頃から必死だったから」
「何が?」

「先生が他の人に取られないようにするのが」



自分の耳を疑って気づいたら足が止まっていた。
目を見開いてサクラを見ると、その顔はニヤリと笑っていた。

「気づかなかった?」
「・・・うん」
「上忍を欺けるなんて、さすが私だわ」



サクラは嬉しそうに微笑んで、口布越しに頬にキスをする。
気分が良くなったのか口布を下げて唇を合わせてきた。

「せんせ・・・」

お酒のせいなのかキスのせいなのか、サクラのトロンとした目を見ると手を出したくなるが、その手はサクラを支えている。
それを知ってか知らずか、サクラは顔中にキスを落としてくる。

「サクラ・・・後で覚えときなさいよ」

声を低くして言うと、「こわ〜い」と言いながら抱きついてくる。
冗談で言ってると思っているのだろうが、下忍の時とは違って体が柔らかく、そして押し付けられる2つの膨らみを感じて否応なく反応してしまう。



すれ違う人に凝視されながらサクラを抱き抱えて家路を急ぐ。
その間、機嫌良さそうに鼻歌を歌っている彼女に頭を悩ませる。

様々なことを乗り越えて教え子達が伝説の三忍と呼ばれ始めて随分経つ。
誰かに守られていた少女は、気づいたら守る側へと成長していた。
そして綱手の意思を引き継いで木ノ葉の医療の礎にもなっている。

そのせいか、誰にも弱音を吐かない、甘えない子になってしまってのを寂しく思っていた。
しかし鳴りを潜めていたものがお酒によって急浮上しているのだ。


猫のようにオレの肩に頬を擦り寄せる彼女を見ると不安しかない。
こんな風に酒に酔って誰にでも甘えるんじゃないかと。
こんな彼女に甘えられたら誰だって落ちる。
オレみたいに。



「サクラ。お前は暫く外で飲むの禁止だからな」
「え〜!なんでぇ?」
「なんでも。オレが部屋で飲んでやるから」

ブーブー文句を言っている彼女を抱え直して歩く。
自分の泥酔しないラインを覚えるまでは外では飲ませられない。
この子に魅力されて若い男が集まってきたら気が気じゃない。




「ねぇ・・・せんせー・・・?」
「んー?」

もう少しで部屋が見える道に入るとサクラが肩にもたれかかったまま喋る。


「だいすき」


「・・・っ!」

心臓が鷲掴みされた。
心を落ち着かせて横を伺うと、とんでもない爆弾を残した少女は寝息を立てていた。

オレは今日一番のため息をつく。
そして、気持ちよさそうに眠る恋人に頬を緩ませる。



「オレも愛してるよ」




今日はただお姫様を抱きしめて寝る。
明日は一緒に買い物に行って度数の低いお酒を買って2人で飲もう。

焦ることはない。

オレはこの子を手放すつもりはないのだから。


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