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short.1

成人の日。

木ノ葉も成人を迎える若者を里中でお祝いをする。

そして今年の成人の集団の中心にいるのが我が教え子達。
袴姿の2人の青年、煌びやかな振袖を着た女性。
出会ってから早数年。
あの小さかった子達が大人の仲間入りをしたことに感慨深くなる。



「カカシせんせー!」

遠くから様子を見ていると駆け寄ってくる2人と手を引かれてくる1人。


「よー、お疲れさん」
「先生!どう?」
「馬子にも衣装だな」
「孫?オレってばカカシ先生の孫じゃないってばよ」
「馬鹿!違うわよ」
「・・・ウスラトンカチ」
「なんだと!サスケ!」


それをきっかけに口喧嘩をし始めるのを呆れて見ていると、横に立ってたサクラに服を引っ張られる。
サクラを見ると上目遣いで微笑み、下忍時代から変わらない表情に安心する。

「私はどう?カカシ先生」
「似合ってるよ。綺麗になったね、サクラ」

目を細めて微笑むと、頬を染めて満面の笑みを浮かべる。



「おーい。飯奢ってやるからそろそろ行くぞー」

いつまで待っても終わりそうにないので声をかけるとすぐに駆け寄ってくる。
ほんと、現金な奴らだよ。


****


ナルトの希望で居酒屋へ。
オレの隣にサクラが座り、その向いにサスケ、ナルトが座る。


「オレビール!3人は?」
「俺も」
「オレは日本酒。サクラはジュースだからな」
「分かってますよ」

成人式を迎えても誕生日がまだのサクラは頬を膨らませる。
その様子にふっ、と笑うと横腹を殴られた。




「それじゃカンパーイ!」

ナルトの声でカチンと気持ちよく合わせる。

「うげ・・・にげぇ・・・」
「ふっ、お子ちゃまだな」
「なんだと!」

今にも噛みつきそうになるも、すぐに落ち着いて酒を飲むナルト。

ーー本当大人になっちゃって。

感慨深くお酒を飲み、空になった器に注ごうすると隣に座っているサクラが注いでくれる。

「ありがとう。気がきくねぇ」
「綱手様に何度も連れ回されましたから」

ニコッと笑ってジュースを飲む。
その横顔はすっかり大人の女性になっていて、子供たちの成長を見ると月日の流れを感じさせられる。



酒と一緒に頼んだつまみを食べながら成人式の話に花を咲かせた。
何故か盛り上がったのが、オレの火影としての成人お祝いの祝辞について。
オレが真面目に話してるのが元生徒の3人にはツボに入ったらしく、笑いを堪えるのに必死だったらしい。

「とゆうかカカシ先生。あれ先生が書いてないでしょ」
「正解。シカマルに書かせた」
「やっぱり!カカシ先生にあんな真面目な文章書けるわけないってばよ」
「お前失礼だな・・・」

ケラケラ笑う生徒たちにため息をついて酒を煽る。





暫く和気藹々と話していたのだが、3杯目の酒で結構酔ったのかナルトは畳に大の字でいびきをかき、サスケは酒を持ったまま机に突っ伏している。

「たく。調子に乗って飲みまくるから」
「最近、先生忙しくて構って貰えなかったから嬉しかったんですよ。2人とも」

ーー嬉しいこと言ってくれちゃって。

「それってサクラも?」
「えっ、・・・うん」

顔を覗き込みながら聞くと、頬を染めて俯く姿に頬が緩む。


「とりあえず2人起こそう。こんなでかい子供2人も運べないよ」

オレは立ち上がってナルトを揺するがピクリともしない。
ナルトは諦めて俯すサスケの肩を揺すると、静かに顔を上げるが目が据わっている。


「サスケ、もうお開きにしよう。自分で帰れるか?」
「・・・・・・あぁ」

サスケは小さく頷き立ち上がると、酔っているとは思えない足取りで歩き店から出ようとしていた。

「あいつ大丈夫か・・・?サクラはナルト見てて。サスケを見送ったついでに会計してくるから」
「はーい」

オレは伝票を手に取って慌ててサスケの後を追いかける。




フラフラ歩きながらもぶつかりそうになったら見事な身のこなしで避けていくサスケを見送り、会計を終え座席に戻った瞬間、自分の目を疑った。



「あ、カカシせんせぇ、お帰りなさ〜い」

そこにはさっきとは明らかに違う頬の染め方でニコニコ笑うサクラ、そして手には空になったビールジョッキを持っていた。


ーーあれサスケのだよな・・・確か結構残ってたような・・・


オレはこの状況を理解してため息をついた。

「サクラ・・・お前まだ未成年でしょうが。お酒飲んだらダメでしょ」
「だって残ってたからもったいなかったんだもん」

頬を膨らませるサクラに、頭を悩ませる。
オレはサクラの隣に座り、最初に出されて温くなった水を差し出す。


「とりあえずこれ飲んで。お前1人で帰すわけにはいかなくなったから送ってく。先にナルトを送ってーー」

そう言ってサクラからナルトに視線を移した瞬間、横から勢いよくサクラが突っ込んできた。
体が倒れないように慌てて手をつくと、サクラは嬉しそうにオレの胸に頬擦りしていた。

「ちょ・・・サクラどうしたの」
「んふふ〜」

サクラは答えずスリスリ頬を寄せてくるだけ。
オレは諦めて座り直すと、更に体を密着させてくる。



「は〜・・・先生いい匂いがする」
「そう?」

当分離れそうにないなと諦めて、頭を撫でてやるとギュッと力が入ったのを感じた。

「・・・せんせ」
「ん?」

「私、先生が好き・・・」
「オレもサクラが好きだよ。ナルトもサスケのことも」


サクラのいきなりの告白に内心驚くが、そう言って一線を引く。
居心地のいい先生と生徒の関係が壊れないように。


少し体を離したサクラは頬を膨らませて俯き、ポツリと何かを言った。

「え、何?」

小さい声に聞き取れず、顔を近づけて聞き返す。



すると、ガバッと顔を上げたサクラはオレの口布を下げて噛み付くように唇を押し付けてきた。

「んぐっ!」


いきなりの行動に慌てて体を離そうとするが、サクラはオレの首に腕を回して離れようとしない。


「ちょ・・・サクラ・・・!」

なんとか体を離して止めると、サクラは瞳を潤ませて睨んでくる。


「私は先生が好き。男の人として好きなの。私から逃げないでよ」


心臓が跳ねる。
心の内にある想いに気づいていながら、気づかないふりをし続けていた。

オレは大きく息を吐いてサクラを見つめる。

「たく・・・せっかくこの関係が崩れないようにしてたってのに」
「そんな関係、殴って壊してやるわよ」
「本当・・・お前はかっこいいよ」


サクラの頬に手を添え微笑む。

サクラは堪えていた涙を流し、満面の笑みを浮かべて目を閉じる。

それを合図に顔を近づけ唇を合わせる。
さっきよりも長く。
愛おしむように。




時々聞こえるナルトのいびき。
あいつは影分身に送らせる。


腕の中にいる愛しい子と長い夜を過ごすために、2人で一緒に家に帰ろう。
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