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年末年始

「ただーいまー」

ソファーでウトウトしていると、玄関から声が聞こえてくる。
擦って目を開けると、寒さで鼻と耳が赤いカカシが部屋に入ってきた。

「おかえりなさい」
「いやー・・・今日は寒さが一段と厳しかった・・・はい、野菜とお肉買ってきたよ」

身震いをするカカシに苦笑しながらソファーから立ち上がろうとすると、慌ててカカシがそれを止める。

「こら。サクラはジッとしてる」
「でも、ずっと座ってるのも先生に悪いわ」
「いいの。サクラは今は自分の体とお腹の子のことだけを考えてなさい。鍋はオレが用意するから」

膝掛けを渡され素直に座ると、カカシは手を洗って鍋の準備をし始める。
サクラのお腹に2人の子供が宿ってからというものの、カカシの過保護っぷりに拍車がかかった。
まだお腹も出ていない段階から任務はダメだ、立ち仕事はダメだ、働き過ぎはダメだと何に対しても言うので、綱手に何度叱られたことか。
この間少し早く産休に入り、カカシも同じタイミングで長期の休みを取得した。
サクラに何かあったらいけないと、自分指名の任務以外には絶対出ないと駄々を捏ね、綱手が頭を抱えているよを見て申し訳なかった。
だがこんなふうに代わりに家事をこなしてくれるのだから、その執拗ぶりには目を瞑るしかないだろう。
綱手もなんだかんだと言いながら子供が無事に産まれるのを今か今かと楽しみにしているからこそ、カカシの我儘を許したのだ。


「はーい、出来たよ」

それから暫くしてカカシが大きな鍋をテーブルに置く。
蓋を開けると野菜とキノコが入った栄養満点のお鍋に、お腹が自然と空いてくる。
2人はテーブルを挟むように座り、手を合わせる。

「「いただきます」」

カカシがサクラのお皿に具材を取り分けてくれる。
大きな椎茸を噛むと、椎茸本来の味と出汁が溢れてきて口の中が幸せになる。
にこにこ笑いながら食べているサクラを見てカカシも頬を緩ます。

「そう言えば、買い物の途中でナルトに会ったよ」
「ナルトに?」
「そ。明日、新年の挨拶にうちに来るって言ってたけど、今からキバやシカマル達と年明けまで騒ぐって言ってたから来るのはきっと夕方だろうな」
「じゃあ明日は午前中にお参りに行って、夕飯は久しぶりに3人で食べない?」
「いいね。じゃあまた明日買い出しに行かなきゃなぁ。あいつ、2人分は平気で食べるから。あそこの店なら開いてるだろ」
「なら私も・・・」
「だめ」
「・・・けち」

自分も買い物に行きたいと言おうとしたら遮るように止められる。
頬を膨らませて不満気にするサクラ。

「お腹に何かあったらどうすんの。人混みの中歩かせるのも嫌だってのに・・・」
「でも神様にはちゃんとご挨拶しないといけないのよ?赤ちゃんのこともお願いしとかないと!」
「うん。だからそれは許した。でも買い物はダメだ」
「ぶー・・・」
「お母さんがそんな顔しない。明日あんみつ買ってきてあげるから。新年限定のが出るんだろ?」
「・・・分かったわ。白玉増やしてもらってね」
「はいはい」

納得して笑うサクラにカカシは呆れたように笑う。
最近大人っぽくなったと思ったら昔のように子供のような顔をするもんだから、見ていて飽きない。


鍋を完食して、2人は一緒にお風呂に入る。
これもサクラが妊娠したと分かってからの当たり前に。
その前は恥ずかしいから一緒に入りたくないと頑として断ってきたけど、床で滑ったら危ないと真面目に心配されてなくなく一緒に入ることにした。
サクラの体をカカシが丁寧に洗い、一緒に湯船に入る。
別にえっちなことはしていないというのに落ち着かない。
カカシも我慢はしているのだが、それでもサクラの身体に触ると否応なしに反応してしまう。
だからサクラに先に上がらせて1人処理してから上がるようにもなった。
それを知っているサクラは何だか申し訳ない気持ちでいっぱいだ。



もう少しで年が変わる。
暖かい格好でソファーに座りテレビを観ていると、アナウンサーの女の人が神社で年越しをしようと集まった人たちにインタビューをしている。

「はい、ココア」
「ありがとう」

カカシが湯気の立ったマグカップを渡してくれるのでそれを受け取り、火傷しないようにチビチビ飲む。

「本当に今年は年越しまで起きてるのか?」
「うん。除夜の鐘を最後まで聞きたいし。いつも先生に邪魔されて聞けた試しがないもの」

ジトっと恨みがましくこちらを見てくるのでカカシは目線を逸らす。
毎年年越しは一緒に過ごしているものの、年を越す前にカカシにベッドに連れ込まれて気づいたら年越してました、というのが通年となっていた。
今年はそれが出来ないから聞くチャンスだ。
そしてこの男の煩悩を消してください。

「あ、見て!鳴らしてるわ」
「あぁ、本当だね」
「いいなぁ。私も行きたかった」

テレビで除夜の鐘を付いている人達を見て、今にも駆け出しそうに外を見ている姿はやはりまだまだ子供。
まぁまだ10代なのだからこれが年相応というものだろう。
それを自分が縛り付けてしまっている。
どれだけ愚かで酷なことをしてしまっているかと分かっているのに、もうこの手を離すことも、離してあげることもできない。

「カカシ先生?」

サクラの声に意識を取り戻すと、サクラは心配そうにこちらを見ている。

「ん?」
「なんか落ち込んでるみたいだけどどうかしたの?」

これでも自分の感情を隠すのは得意なのに、何故か昔からサクラにはバレバレで。
それもサクラに惹かれたところだろう。

「いーや、何でもないよ。暫くサクラ抱けてないから脳内で犯してたところ」
「・・・先生はちゃんと最後まで鐘聞いて煩悩全部消してもらったほうが良いわ」
「えー?」

心配して損した、と頬を膨らませて怒るサクラに微笑する。
こうやって何でも信じてしまうところも可愛くて揶揄ってしまうのだ。

「あ!先生、もう少しで日付が変わるわ!」

テレビを見ていたサクラは嬉しそうに声を上げる。
テレビには60秒のカウントダウンが映し出されている。
サクラはソファーから立ち上がり窓辺に近づく。
カカシも立ち上がり着ていた上着を脱いでサクラの肩にかける。

「これじゃ先生が寒いわ」
「いいの。サクラが体壊す方が心配。それにオレが風邪引いたらサクラが看病してくれるんだろ?」
「それは勿論するけど・・・新年早々風邪引くのは勘弁してほしいわ
「はは。確かに。じゃあ今日もサクラを抱きしめて暖まるよ」

コツン、と頭をサクラの頭に乗せる。
そこからジワリとお互いの体温を感じれて気持ちが良い。
来年にはもう1つ、新たな体温が増えるのだ。
そうこうしていると、テレビから盛り上がる声と共にカウントダウンが聞こえてくる。

そして0のタイミングでカカシとサクラにキスをする。
唇を離して2人は至近距離で見つめ合い微笑む。

「・・・今年もよろしくお願いします、カカシ先生」
「よろしく、サクラ」

サクラは自身のお腹に手を当て、カカシもその上から手を合わせる。
愛おしそうにお腹を見つめる2人の思うことは同じ──


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