short.1
最近カカシ先生が冷たい。
前は四六時中側にいて、鬱陶しいほどくっ付いていたのに。
今はくっつくことも、キスも前より少なくなった。
付き合い始めてちょうど3年。
雑誌で3年目は壁になるらしい。
別れるか、別れないかの。
先生はもう私に飽きたのかもしれない。
「はぁ・・・」
ここ最近、私はよくため息を吐く。
それはカカシ先生を思って。
3週間前、先生は任務に出た。
A級だからS級より危険ではないし、先生だから大丈夫だろう。
でも、手紙が来ない。
今までは1週間離れる任務の時は必ず私が寂しくないように手紙をくれた。
任務中は場所が分からないから私からの返事は出せないけど、先生はこまめに手紙を送ってくれた。
でもこの3週間、1通も来なかった。
「はぁ・・・」
「またため息?」
後ろから声をかけられて驚いて振り向くと、同じ病院勤務の男の先輩が立っていた。
先輩はベンチに座る隣に腰掛けて、ココアの缶を渡してくれた。
お礼を言ってプルタブを開けて缶を呷り、私好みの甘さと温かさにほっ、と息を吐く。
「何か悩み?」
「悩み、と言いますか・・・」
恋人のことで悩んでます、というには彼とはそこまで親しい仲ではない。
なんて言おうか考えていると。
「そうだ春野さん。今日は早番だよね?」
「はい」
「オレもなんだ。良かったら一緒にご飯でもどう?」
「・・・それって、2人でってことですか?」
「うん。やっぱりダメかな?」
私とカカシ先生が付き合っていることは周りが騒ぐから知っているはず。
それでも誘ってくるということは・・・。
ううん、ただの同僚としての誘いかもしれない。
それに、先生とは・・・。
「・・・いえ、是非ご一緒させてください」
私の返事に先輩は嬉しそうに笑って、迎えに行くからと立ち去っていった。
私もそろそろ休憩時間が終わるので、缶を呷ってココアを飲み干した。
****
それから仕事を終え先輩が迎えに来て、いきつけのオシャレなイタリアンレストランに連れてこられた。
普段こういうところに来ないから新鮮で。
先生とは居酒屋か食堂か、一楽が多い。
先生にはこんなオシャレなところ似合わないわね、と先輩と話しながら心の中は先生でいっぱいだった。
「ご馳走様でした。美味しかったです」
「いーえ。それは良かったよ」
会計を終えてお店を出るとすっかり暗くなっていた。
「送るよ」
「いえ、大丈夫ですよ」
「こんな暗い中女性を1人で帰すわけにはいかないよ」
「でも・・・」
その厚意を受け取るか受け取らないか悩んでいると、突然私たちの間に誰かが割り込んできた。
驚いて顔を上げると、そこには今、里にいないはずの人。
「・・・カカシ先生・・・」
呼びかけても先生は私に背中を向けたまま、先輩に向き合っている。
先生の顔を見た先輩は目を逸らして、私を見る。
「・・・お迎えが来たみたいだね。今日はありがとう、また明日」
「あ、はい。お疲れ様です・・・」
先輩は片手を上げて人混みの中に紛れていった。
それでも先生はこちらを見ず、気まずい空気が流れる。
──別に、先輩と食事に行っただけで疾しいことなんてないのよ。うん、そう。
私は1人で頷き、3週間ぶりに見る背中に声をかけようとした時、先生は深いため息を吐いてようやく私を見た。
「・・・とに。目を離したらすぐこれだ」
眉間に皺を寄せて先生は呟く。
・・・なにそれ。
「別に職場の人とご飯食べてただけじゃない」
「2人きりで?」
「・・・それは、ただ後輩にご飯を奢ってくれたってだけで・・・何もなかったわよ」
「あっちはどう思ってるか分からないだろ。なんかサクラに気がありそうな感じだったし」
「そんなわけ・・・!」
ない、とも言い切れなかった。
時々、そういう視線を感じるときがあったから。
でも。
「・・・先生には関係ないでしょ」
「・・・は?」
空気がピリッとした。
先生が私の発言で怒ってる。
震える手を隠すためにスカートを握った。
「何、それ。オレはサクラの彼氏じゃないのか」
「・・・っ!だって・・・」
「だって。なに」
いつもより低い声で問い詰められて声が震える。
「だって先生!私に飽きたんでしょう!」
「・・・・・・はぁ?」
人目も憚らず大声で叫ぶと、先生は変な目で見てきた。
何で私がそんな顔をされなきゃいけないのよ。
「何言ってるんだ、サクラ」
「だって、だって!先生最近、なんか冷たいし。抱きしめたりキスしてくれなくなったもの!ずっと不安だったんだもん!」
「それはサクラもでしょ」
「・・・私?」
見覚えがなくて先生の目を見ると、その瞳はどこか寂しそうだった。
「あんまりオレのこと好きって言ってくれないし、キスするときも触れるのもいつもオレから。本当にオレのこと好きなのかっていつも不安だったんだよ」
「それは・・・恥ずかしくて・・・」
「うん。分かってる。分かってるけど、やっぱり言って貰わないと辛くなるんだ。だからサクラにもオレの気持ち分かってほしくて」
「先生・・・」
先生の泣きそうな、そんな情けない顔を見るのは初めてで、私は自分から先生の背中に腕を回した。
「ごめんね、先生」
「・・・オレもごめん。試すようなことして」
先生も私に腕を回してくれて、くっ付く。
さっきまであんなに不安でしょうがなかったのに、くっ付くだけでこんなにも幸せになれるんだから不思議。
顔を上げて先生の顔を見る。
「カカシ先生好きよ、大好き」
「サクラ・・・」
私は背伸びをして先生の首に腕を回し、愛を込めて唇を合わせた。
前は四六時中側にいて、鬱陶しいほどくっ付いていたのに。
今はくっつくことも、キスも前より少なくなった。
付き合い始めてちょうど3年。
雑誌で3年目は壁になるらしい。
別れるか、別れないかの。
先生はもう私に飽きたのかもしれない。
「はぁ・・・」
ここ最近、私はよくため息を吐く。
それはカカシ先生を思って。
3週間前、先生は任務に出た。
A級だからS級より危険ではないし、先生だから大丈夫だろう。
でも、手紙が来ない。
今までは1週間離れる任務の時は必ず私が寂しくないように手紙をくれた。
任務中は場所が分からないから私からの返事は出せないけど、先生はこまめに手紙を送ってくれた。
でもこの3週間、1通も来なかった。
「はぁ・・・」
「またため息?」
後ろから声をかけられて驚いて振り向くと、同じ病院勤務の男の先輩が立っていた。
先輩はベンチに座る隣に腰掛けて、ココアの缶を渡してくれた。
お礼を言ってプルタブを開けて缶を呷り、私好みの甘さと温かさにほっ、と息を吐く。
「何か悩み?」
「悩み、と言いますか・・・」
恋人のことで悩んでます、というには彼とはそこまで親しい仲ではない。
なんて言おうか考えていると。
「そうだ春野さん。今日は早番だよね?」
「はい」
「オレもなんだ。良かったら一緒にご飯でもどう?」
「・・・それって、2人でってことですか?」
「うん。やっぱりダメかな?」
私とカカシ先生が付き合っていることは周りが騒ぐから知っているはず。
それでも誘ってくるということは・・・。
ううん、ただの同僚としての誘いかもしれない。
それに、先生とは・・・。
「・・・いえ、是非ご一緒させてください」
私の返事に先輩は嬉しそうに笑って、迎えに行くからと立ち去っていった。
私もそろそろ休憩時間が終わるので、缶を呷ってココアを飲み干した。
****
それから仕事を終え先輩が迎えに来て、いきつけのオシャレなイタリアンレストランに連れてこられた。
普段こういうところに来ないから新鮮で。
先生とは居酒屋か食堂か、一楽が多い。
先生にはこんなオシャレなところ似合わないわね、と先輩と話しながら心の中は先生でいっぱいだった。
「ご馳走様でした。美味しかったです」
「いーえ。それは良かったよ」
会計を終えてお店を出るとすっかり暗くなっていた。
「送るよ」
「いえ、大丈夫ですよ」
「こんな暗い中女性を1人で帰すわけにはいかないよ」
「でも・・・」
その厚意を受け取るか受け取らないか悩んでいると、突然私たちの間に誰かが割り込んできた。
驚いて顔を上げると、そこには今、里にいないはずの人。
「・・・カカシ先生・・・」
呼びかけても先生は私に背中を向けたまま、先輩に向き合っている。
先生の顔を見た先輩は目を逸らして、私を見る。
「・・・お迎えが来たみたいだね。今日はありがとう、また明日」
「あ、はい。お疲れ様です・・・」
先輩は片手を上げて人混みの中に紛れていった。
それでも先生はこちらを見ず、気まずい空気が流れる。
──別に、先輩と食事に行っただけで疾しいことなんてないのよ。うん、そう。
私は1人で頷き、3週間ぶりに見る背中に声をかけようとした時、先生は深いため息を吐いてようやく私を見た。
「・・・とに。目を離したらすぐこれだ」
眉間に皺を寄せて先生は呟く。
・・・なにそれ。
「別に職場の人とご飯食べてただけじゃない」
「2人きりで?」
「・・・それは、ただ後輩にご飯を奢ってくれたってだけで・・・何もなかったわよ」
「あっちはどう思ってるか分からないだろ。なんかサクラに気がありそうな感じだったし」
「そんなわけ・・・!」
ない、とも言い切れなかった。
時々、そういう視線を感じるときがあったから。
でも。
「・・・先生には関係ないでしょ」
「・・・は?」
空気がピリッとした。
先生が私の発言で怒ってる。
震える手を隠すためにスカートを握った。
「何、それ。オレはサクラの彼氏じゃないのか」
「・・・っ!だって・・・」
「だって。なに」
いつもより低い声で問い詰められて声が震える。
「だって先生!私に飽きたんでしょう!」
「・・・・・・はぁ?」
人目も憚らず大声で叫ぶと、先生は変な目で見てきた。
何で私がそんな顔をされなきゃいけないのよ。
「何言ってるんだ、サクラ」
「だって、だって!先生最近、なんか冷たいし。抱きしめたりキスしてくれなくなったもの!ずっと不安だったんだもん!」
「それはサクラもでしょ」
「・・・私?」
見覚えがなくて先生の目を見ると、その瞳はどこか寂しそうだった。
「あんまりオレのこと好きって言ってくれないし、キスするときも触れるのもいつもオレから。本当にオレのこと好きなのかっていつも不安だったんだよ」
「それは・・・恥ずかしくて・・・」
「うん。分かってる。分かってるけど、やっぱり言って貰わないと辛くなるんだ。だからサクラにもオレの気持ち分かってほしくて」
「先生・・・」
先生の泣きそうな、そんな情けない顔を見るのは初めてで、私は自分から先生の背中に腕を回した。
「ごめんね、先生」
「・・・オレもごめん。試すようなことして」
先生も私に腕を回してくれて、くっ付く。
さっきまであんなに不安でしょうがなかったのに、くっ付くだけでこんなにも幸せになれるんだから不思議。
顔を上げて先生の顔を見る。
「カカシ先生好きよ、大好き」
「サクラ・・・」
私は背伸びをして先生の首に腕を回し、愛を込めて唇を合わせた。
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