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先日カカシ先生に告白をされました。
いきなりだったし、まさか先生に好意を持たれてるなんて全然気づかなかったし。
それに、先生のことを異性として見たことがなかった。
だから断ろうと思ったんだけど、それを察した先生が「返事は今すぐじゃなくていいから。ちゃんと考えてほしい」と言ってきた。
その真剣な瞳に、私は頷くことしか出来なかった。




それから暫くしたある日。
カカシ先生に任務が入った。
護衛任務だから小隊を組むほどではないし、護衛対象から目立たないでとお願いがあったのでツーマンセルで行うことになり。
ならもう1人はどうする?
敵に襲撃される危険な任務ではないが、護衛対象が重要人物なのでそれに力がある人物を。
だが上忍2人を付けるほどではない。

はたけカカシと簡単に連携を取れて、中忍といえば。


「と、いうわけでサクラ。お前が選ばれたからしっかり励みな」
「は、はい・・・」

私が選ばれたのはすごく嬉しいんだけど。
今の私たちの状況に素直に喜べない・・・。
顔が引き攣る私に先生はいつもの笑顔を浮かべて顔を覗き込んでくる。

「明日から2日間、よろしくなサクラ」
「お願い、します・・・」



****



それから護衛対象の依頼人と私、カカシ先生での任務が始まった。
依頼人は他里の重鎮で、国境まで送り届けるのが今回の任務。
普通は自国の忍なりに警護して貰うのだが、常に人が側にいるのが好きではないらしく、木ノ葉に着いた時に護衛を送り返したらしい。
だから国境まで私たちが送ることになったのだ。
穏やかな人で、道中は私が話し相手に、先生が周りを警戒をして、夕方には目的地の中間にある街で1泊して、次の日には無事に国境まで送り届けることができた。

「ありがとうございました、2人とも。すごく楽しいひと時でした」
「こちらこそ。また木ノ葉に来てくださいね」
「えぇ、もちろん。あぁ、そうだ。これはお二人に内緒で」
「え?」

依頼人は鞄の中から1枚の封筒を取り出して私たちに差し出してくる。
それを受け取って中身を見ると1枚の紙が入っていて、よく見ると2人分の宿泊の予約の紙だった。

「昨日泊まった旅館すごく良かったでしょう?帰りにまた行ってきてくださいな」
「そ、そんな、いただけません!」
「私からの少しばかりのお礼です。昨日は寝ずの晩だったでしょう?ここで疲れを取ってから帰ってください」
「で、でも・・・」

どうしたらいいのか分からず横にいる先生を見ると、先生は微笑んで封筒を受け取る。

「ありがとうございます。ありがたく使わせていただきます」

せっかくの親切を断るのも失礼だったかもしれない。
先生が受け取ると決めたならそれに従うまで。
依頼人は嬉しそうに頷く。

「良かった。ではまたいずれお会いしましょう」
「はい。お気をつけて」

手を振って去っていく依頼人を見届けると、先生は腕を上に上げて背伸びをする。

「それじゃ、帰りますかー」
「はい・・・」

私はポーチからイチャパラを取り出して歩き出す先生の背中を追いかけた。



****



それから朝出たばかりの旅館に戻り、先生が予約の紙を女将に渡すとすぐに案内されて。
そこは昨日私たちが泊まったより遥かにアップグレードされた部屋だった。
しかも露天風呂付き。

「・・・これは、お礼の手紙出さないとな」
「うん・・・」

夕飯も立派な夕飯に舌鼓を打って楽しんだ。
残る楽しみはお風呂だけ。
部屋に1つしかないお風呂。
早く入ってみたいけど、上官より先に入るわけにもいかない。
そんな私の考えが分かったのか、先生は立ち上がる。

「サクラ、部屋の風呂入っておいでよ。オレは大浴場の方に行ってくるから」
「え、でも・・・」
「いいからいいから。やっぱり広い風呂の方が足も伸ばせるからね」

先生はニコリと微笑む。
私が気を使わないようにさりげなく行動してくれるので、私が感謝を述べると先生は頷いて部屋を出て行こうとするも、その足を止める。

「あ、そうだ。これから布団敷きにくるって言ってたから気をつけて」
「はい。行ってらっしゃい」
「・・・行ってきます」

手を振ると、先生は何故か何とも言えない表情で笑って部屋を出て行った。
何か変なことでも言ったかな?と首を傾げたが、スタッフの人が入ってくる前にお風呂に入らなくては、と思考を中断して私もお風呂の準備をした。




露天風呂が旅館のオススメというだけあって、お風呂から見える夜景は絶景だった。
1人にしては広すぎる檜風呂でゆっくり体が癒され、これはやっぱり先生にも入ってもらわないと、とお風呂から上がって化粧水もばっちり塗って、部屋に戻って見えた光景に目を見開いた。

だって、2組の布団がピッタリくっ付いていたから。

私がお風呂に入ってる間にバッチリセッティングされていた。
忍に気配を悟らせないなんて、なかなかやるわね。
なんて変なことを考えてしまい、目の前の問題に頭を向ける。
そりゃ男女が1つの部屋に泊まるということは恋人か夫婦だって考えるわよね?
先生は歳の割に若く見えるから、絶対そう思われてこうなったわけで・・・。
そこまで考えて頬に熱が集まるのを感じる。
この布団で何が起きるか分からないほど初心ではない。
経験はないけどね。
でもくノ一の特別講習で一通りは学んでるし。

私と先生は師弟関係で上司と部下だけど、数日前に告白をされてその関係が少し崩された。
先生はどう考えてるか分からないけど、先生も大人だからそれなりに経験を積んでるわけで。
もしかしたら、そういう雰囲気になるかもなわけで・・・。

「ふー、サッパリした」
「ひゃあ!!」

自慢の頭脳がグルグル回っていると、後ろからいきなり声が聞こえて素っ頓狂な声で叫ぶ。
後ろを振り返ると、襖を開けてタオルで頭を拭いたまま、目を丸くして先生はこちらを見て固まっていた。
全く気配がしなかった。

「ごめん。早く戻りすぎたか?」
「う、ううん。こっちこそごめんなさい。おかえりなさい、先生」
「ただーいま。お風呂はどうだった?」
「うん!最高だった!先生も入ってきてよ」
「じゃあ明日の朝入ってこようかな」

一気にテンションが上がった私に先生は失笑して寝室に入り、荷物を敷かれた布団の横に置く。
布団を見ても何も動じない先生。
この光景が普通になるほど女の人と何回もこういうとこに来てるの?
そんなことを考えてしまい、先ほどまで恥ずかしいくらい動揺してた自分が馬鹿みたい。
それが顔に出てたのか、先生が顔を覗き込んでくる。

「どうした?もう寝るか?」
「う、ううん!全然眠くないわ!」

寝る、という単語に過剰に反応してしまい、私は手を横に勢いよく振る。
私の反応を特に気にしなかったらしく、先生は持っていたビニール袋の中を探る。

「売店でサクラの好きそうなの買ってきたんだけど食べるか?」
「うん!」

袋から出てきたのはプリンだった。
温泉で熱った体にはちょうどいいかもしれない。
先生からプリンを受け取り、座椅子に座ってスプーンで掬う。
向かいに座った先生はまた袋を漁り、銀の缶を取り出してプルタブを開ける。

「あ、お酒」
「もう任務は終わったからいいの。あ、でも綱手様には内緒な」
「・・・もう」

茶目っ気にウインクを飛ばしてくるから勝手に心臓が反応するけど、平常心を装ってプリンを口に運んだ。


プリンを食べ終わる頃にはお互いに喋ることもなくなり、ただボーとTVを見ていた。
することもなくなると、だんだんと瞼が落ちてきて目を擦る。
昨日は眠るわけにもいかなかったから、任務が終わって温泉にも入って一気に睡魔が襲ってきた。

「サクラ、眠い?」

頑張って首を横に振ると、お酒を飲む先生は眉を下げて笑う。

「何で無理してるの」
「だって、せっかくのプレゼントだから、楽しまないと・・・」
「早く寝て、朝早く起きたらいいんじゃないか?朝の露天風呂もきっと格別だぞ」
「うん・・・」
「なら早く寝なさい。オレももう寝ようかな」

先生はお酒を煽って空の缶をテーブルの上に置いた。




「じゃ、おやすみ〜」
「おやすみ、なさい・・・」

照明を落として、それぞれの布団に入る。
布団はくっ付いたままで。
寝る前に離してくれるかな〜、なんて期待を持っていたけど、先生は気にすることもなく布団に入ったので私も続いて隣の布団に入った。
昨日も一緒の部屋だったけど任務中だったし、寝ることはなかったら意識せずに済んだ。
でも、今は先生が同じ部屋で、隣の布団で寝ている。
横向きに寝返りして先生を見ると、仰向けで口布を付けたまま目を閉じていた。
この人は寝る時でも外さないのか。
それに、私のことが好きと言っておきながら何故こうも平然と寝れるのか。
何で私だけこんなドキドキしてるんだろう。

「・・・本当に私のこと好きなのかな」

「好きだよ」

独り言で呟いた言葉に返事が返ってきて目を見開く。
先生の瞼がゆっくりと開き、灰青と紅蓮の瞳が私を映す。

「お、起きてたの・・・?」
「うん」

寝てると思っていたのに聞かれてて、顔が熱くなる。

「寝れないのか?」
「う、いや、えっと、寝ます!」

恥ずかしくて、また寝返りを打って先生に背中を向ける。
とりあえず落ち着こうと深呼吸をする。

「サクラ」
「・・・・・・・・・」
「そっち行ってもいい?」
「えっ!?」

驚いて振り向くと、返事もしてないのに先生は私の掛け布団を捲って入ってこようとしていた。
至近距離に先生の顔がきて、バッと顔を戻す。
そのまま先生が後ろにピッタリくっ付いてきて、お腹にも腕が回されて。
私の心臓は口から出そうなほど跳ねていた。

「──サクラさ」

耳元で先生の声が聞こえて思わず変な声が出そうになる。

「今日、ずっと意識してたでしょ。特に布団が敷かれたときから」

なぜそれを。
顔を後ろに向けると、暗闇に慣れてぼんやりと浮かぶ先生の顔は意地悪気に微笑んでいた。
悔しいからまた顔を戻した。

「ひどい・・・私の反応楽しんでたんですね」
「ごめーんね。オレのこと意識してくれてるサクラが可愛くて」
「この・・・」
「いたた、痛いって」

喉の奥で笑う先生に腹が立って、お腹に回る先生の手をつねってやった。

「さっさと離れてください」
「んー、何もしないからこのまま寝ない?」
「無理です。寝れません」
「人の体温に触れてたら眠くなるよ。ほら温かい」

更にくっつく先生にどんどん心拍数が上がって落ち着かないけど、その温かさに同じぐらい安心できて。
任務の疲れもあって私の瞼はすぐに降りた。





「・・・サクラ?」

静かになって呼びかけると、返事はなく、規則正しい呼吸が聞こえた。

「まさか本当にこのまま寝るとは」

恋慕を抱かれてる相手の腕の中で素直に寝るか?
何もしないとは言ったが、師というだけでここまで気を許されるものなのか。

「・・・早くオレのこと好きになってちょーだいよ」

起こさないように髪を撫でながら、まだ陽が登りそうにない窓の外を見て今夜も寝れないことを覚悟した。

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