年末年始
ピンポーン
「いらっしゃい」
呼び鈴が鳴りドアを開けると、そこには白い息を吐きながら大きな荷物を持った桜色の愛弟子が1人。
「おじゃましまーす」
もう慣れたように部屋に入っていく紅一点の背中を見ていると足りない物を探してしまう。
昨年の年末は騒がしいのと生意気な愛弟子も一緒にオレの部屋に上がり込んできた。
承諾もなしに泊まりで遊びにきて追い出そうと思ったがチームワークの為と、少ない小遣いで買ってきた夕飯の鍋の具材を手に持っていたため諦めて部屋に入れた。
今までは年末関係なく任務を押しつけられていたが、上忍師となったことで休暇を与えられたのだ。
十数年ぶりの年末、静かに年を越そうとしたらこの有様。
肉を掴み離そうとしない少年たちを叱る少女。
色々予定は崩れたがこんな年末もいいものだとニコニコと見守っていた1年前の自分を思い出す。
しかしそんな日常はあっという間に崩れ去った。
サスケが里を抜けナルトは自来也様と修行へと旅立った。
置いていかれたサクラは綱手様に弟子入りをして修行に励んでいた。
実質第七班は活動休止となり、オレは上忍として任務を請け負っていた。
そんなバラバラな日常を送り年末を迎えようとする昨日。
今年も休みを貰え1人静かに過ごそうと上忍待機所で考えていると、そこにサクラが現れ今年もオレの部屋に行っていいかと聞いてきたのだ。
驚いた。
ナルトもサスケもいない今年はサクラも来ないと思っていたから。
不安そうに見上げてくるサクラに微笑んで承諾するとホッとした顔で笑ったのだ。
それを見た瞬間、サクラはオレを繋ぎ止めようとしているんだと分かった。
第七班という絆が切れないように。
****
「せんせー。野菜このぐらいでいいかしら?」
前もってオレが買ってきた食材をサクラに任せて鍋とかをセッティングしているとキッチンから声がかかる。
覗くと綺麗に切られた野菜たち。
去年は料理をしたことがないサクラはサスケに怒鳴られてセッティング側に回されていたのに。
この1年、修行の合間に練習していたのだろう。
「2人だからこれぐらいでいいでしょ」
「先生って男の人なのにあんまり食べないわよね」
「そう?」
ーーあいつらに比べたら食べないな。
その言葉が出そうになって飲み込む。
今言うべき言葉じゃないだろう。
カシュ
「あ、お酒」
「明日も任務入らないからいいの、いいの。煮えるまでサクラの話聞かせてよ」
ニコリと笑って缶を煽ると、「もー」と言いながらも嬉しそうに修行の近況を話してくれた。
そうこうしている内に食材たちが煮えたので、一緒に手を合わせて鍋から取る。
「はふ。おいし〜」
口から湯気を出してハフハフ言いながら食べるサクラに思わず吹き出す。
「なによ」
「べつに?」
ジロっと見てくるサクラを横目に野菜を口に運ぶ。
2人で鍋を空にして締めにうどんも食べた。
さすがに食べ過ぎてお腹が苦しい。
サクラも同じでソファーに寝そべっている。
オレはソファーを背もたれに床に座り、年末特番を2本目の酒を飲みながらボーと見ていた。
サクラは面白い面白くないと言っていたのだが、だんだん口数が減っていくのを感じる。
これは寝るな。
「サクラ。寝るなら布団に入って寝なさい」
そう言うと「ん〜・・・」とモゾモゾ動いたがまた静かになる。
オレはため息をついてサクラの肩を揺する。
「サクラ」
すると眠たげな眼を薄く開いて見てくる顔にいつもと違う雰囲気を感じ不覚にもドキッとした。
「せんせも・・・ねる・・・?」
「オレ?オレはもうちょっとしたら寝るよ」
「いっしょに・・・?」
眠たいのか舌が回っていない言葉に吹き出しそうになる。
「い、嫌。オレはソファーか床で寝るよ」
「だめ」
「だめって・・・」
半分しか開いていない目で睨まれて頭を掻く。
「いっしょにねるの」
「いや、でもな、サクラ」
「ねるの〜〜!!」
上半身を起こして腕を引っ張り駄々を捏ね始めるサクラに焦る。
「分かった。酒飲み終わったら寝るから先に寝といて」
「そういって・・・ソファーでねるんでしょ」
図星をつかれて内心焦る。
半分寝てる頭でも気づいたのか肩を掴まれて前後に振られる。
「ねるのーーー!!」
「分かった分かった!寝るから!酒溢れるから!!」
そう言うとようやく納得したのか肩から手を離す。
横目で見ると嬉しそうにニコニコ笑っているサクラにため息をついて酒を煽る。
「せんせ〜」
「はいはい」
先に布団に入っているサクラに呼ばれ、諦めて電気を消して布団に入る。
「サクラ、頭上げて」
「ん〜」
枕が1つしかないのでサクラに腕枕をする。
するとふふふ、とサクラが笑って腕に頬を擦り寄せる。
「なに?」
「ん〜ん」
すっかり信頼されてるな、と心の中でため息をつく。
もうちょっと男に対して危機意識を持ってくれないと危ない。
でも今までナルトとサスケばっかり構ってサクラには何もしてあげれなかった。
今はサクラしか里にいない。
綱手様には甘えることが出来ないから、オレに思う存分甘えてくるんだろう。
すっかり夢の世界へ入ったお姫様の額に口布を下げ軽くキスをすると、サクラの口角が上がった気がする。
「おやすみ、サクラ」
オレも目を閉じて腕の中の暖かさを感じながら眠りにつく。
遠くから鳴る除夜の鐘の音を聞きながら。
「いらっしゃい」
呼び鈴が鳴りドアを開けると、そこには白い息を吐きながら大きな荷物を持った桜色の愛弟子が1人。
「おじゃましまーす」
もう慣れたように部屋に入っていく紅一点の背中を見ていると足りない物を探してしまう。
昨年の年末は騒がしいのと生意気な愛弟子も一緒にオレの部屋に上がり込んできた。
承諾もなしに泊まりで遊びにきて追い出そうと思ったがチームワークの為と、少ない小遣いで買ってきた夕飯の鍋の具材を手に持っていたため諦めて部屋に入れた。
今までは年末関係なく任務を押しつけられていたが、上忍師となったことで休暇を与えられたのだ。
十数年ぶりの年末、静かに年を越そうとしたらこの有様。
肉を掴み離そうとしない少年たちを叱る少女。
色々予定は崩れたがこんな年末もいいものだとニコニコと見守っていた1年前の自分を思い出す。
しかしそんな日常はあっという間に崩れ去った。
サスケが里を抜けナルトは自来也様と修行へと旅立った。
置いていかれたサクラは綱手様に弟子入りをして修行に励んでいた。
実質第七班は活動休止となり、オレは上忍として任務を請け負っていた。
そんなバラバラな日常を送り年末を迎えようとする昨日。
今年も休みを貰え1人静かに過ごそうと上忍待機所で考えていると、そこにサクラが現れ今年もオレの部屋に行っていいかと聞いてきたのだ。
驚いた。
ナルトもサスケもいない今年はサクラも来ないと思っていたから。
不安そうに見上げてくるサクラに微笑んで承諾するとホッとした顔で笑ったのだ。
それを見た瞬間、サクラはオレを繋ぎ止めようとしているんだと分かった。
第七班という絆が切れないように。
****
「せんせー。野菜このぐらいでいいかしら?」
前もってオレが買ってきた食材をサクラに任せて鍋とかをセッティングしているとキッチンから声がかかる。
覗くと綺麗に切られた野菜たち。
去年は料理をしたことがないサクラはサスケに怒鳴られてセッティング側に回されていたのに。
この1年、修行の合間に練習していたのだろう。
「2人だからこれぐらいでいいでしょ」
「先生って男の人なのにあんまり食べないわよね」
「そう?」
ーーあいつらに比べたら食べないな。
その言葉が出そうになって飲み込む。
今言うべき言葉じゃないだろう。
カシュ
「あ、お酒」
「明日も任務入らないからいいの、いいの。煮えるまでサクラの話聞かせてよ」
ニコリと笑って缶を煽ると、「もー」と言いながらも嬉しそうに修行の近況を話してくれた。
そうこうしている内に食材たちが煮えたので、一緒に手を合わせて鍋から取る。
「はふ。おいし〜」
口から湯気を出してハフハフ言いながら食べるサクラに思わず吹き出す。
「なによ」
「べつに?」
ジロっと見てくるサクラを横目に野菜を口に運ぶ。
2人で鍋を空にして締めにうどんも食べた。
さすがに食べ過ぎてお腹が苦しい。
サクラも同じでソファーに寝そべっている。
オレはソファーを背もたれに床に座り、年末特番を2本目の酒を飲みながらボーと見ていた。
サクラは面白い面白くないと言っていたのだが、だんだん口数が減っていくのを感じる。
これは寝るな。
「サクラ。寝るなら布団に入って寝なさい」
そう言うと「ん〜・・・」とモゾモゾ動いたがまた静かになる。
オレはため息をついてサクラの肩を揺する。
「サクラ」
すると眠たげな眼を薄く開いて見てくる顔にいつもと違う雰囲気を感じ不覚にもドキッとした。
「せんせも・・・ねる・・・?」
「オレ?オレはもうちょっとしたら寝るよ」
「いっしょに・・・?」
眠たいのか舌が回っていない言葉に吹き出しそうになる。
「い、嫌。オレはソファーか床で寝るよ」
「だめ」
「だめって・・・」
半分しか開いていない目で睨まれて頭を掻く。
「いっしょにねるの」
「いや、でもな、サクラ」
「ねるの〜〜!!」
上半身を起こして腕を引っ張り駄々を捏ね始めるサクラに焦る。
「分かった。酒飲み終わったら寝るから先に寝といて」
「そういって・・・ソファーでねるんでしょ」
図星をつかれて内心焦る。
半分寝てる頭でも気づいたのか肩を掴まれて前後に振られる。
「ねるのーーー!!」
「分かった分かった!寝るから!酒溢れるから!!」
そう言うとようやく納得したのか肩から手を離す。
横目で見ると嬉しそうにニコニコ笑っているサクラにため息をついて酒を煽る。
「せんせ〜」
「はいはい」
先に布団に入っているサクラに呼ばれ、諦めて電気を消して布団に入る。
「サクラ、頭上げて」
「ん〜」
枕が1つしかないのでサクラに腕枕をする。
するとふふふ、とサクラが笑って腕に頬を擦り寄せる。
「なに?」
「ん〜ん」
すっかり信頼されてるな、と心の中でため息をつく。
もうちょっと男に対して危機意識を持ってくれないと危ない。
でも今までナルトとサスケばっかり構ってサクラには何もしてあげれなかった。
今はサクラしか里にいない。
綱手様には甘えることが出来ないから、オレに思う存分甘えてくるんだろう。
すっかり夢の世界へ入ったお姫様の額に口布を下げ軽くキスをすると、サクラの口角が上がった気がする。
「おやすみ、サクラ」
オレも目を閉じて腕の中の暖かさを感じながら眠りにつく。
遠くから鳴る除夜の鐘の音を聞きながら。
1/7ページ