short.1
他里との友好関係を築くための密書を届ける任務を請け負った私たち。
カカシ先生を隊長に5人で任務を遂行していたのだが、案の定それを良しとしない他里から敵襲を受け、私たちは交戦することなった。
「しゃーんなろーー!!」
チャクラを込めた拳を敵に打ち込み、小さく呻き地面に倒れて動かなくなる。
一緒に闘っていたヤマト隊長が木遁で敵を拘束する。
「オレはナルトとサイのところに行くから、サクラはカカシ先輩の援護を!」
「はい!」
2体分身を出したヤマト隊長の指示に従い、1人敵と闘うカカシ先生の元に隊長の分身と走る。
木の枝から枝を飛んで敵と闘う先生の元に辿り着く。
まだ敵は私たちに気づいていない。
後ろから攻撃をしようと拳にチャクラを込めて近づこうしたその時、
「サクラ!!」
私に気づいたカカシ先生が叫んだ瞬間、後ろに気配を感じて振り向くと、先程倒したはずの敵が私に刃を向けていた。
さっきのは身代わりだ、と気づいても今更遅い。
敵の攻撃に反応出来ず、この身で受けようとして、気づいたらカカシ先生の腕の中にいた。
「カカシ、先生・・・」
「・・・大丈夫か」
「は、はい」
眉間に皺を寄せる先生に頷くと、カカシ先生の体が傾く。
「せ、先生!?」
苦しそうに呻く先生の腕を見ると、裂傷から血が流れている。
さっき私を庇った時に避けきれずに先生が敵の攻撃を受けてしまったのだ。
しかも先生の様子からただの傷ではない、刃に毒が塗ってあったんだ。
私のせい。
視界が滲み、それどころではないと無理やり拭う。
「すぐに解毒します!」
「いい・・・今すぐ敵を・・・」
先生の言葉に振り向くと、いつの間にかナルトとサイが参戦していて、あっという間に敵が捕縛された。
それを見てホッとしたのか、先生は意識を失って地面に倒れた。
「カカシ先生!」
私の悲鳴に3人は慌てて駆け寄ってくる。
先ほどまで真っ青だった顔色は発熱を訴えていて、身体は小さく震え呼吸が浅い。
解毒薬を打ったが、基本的に毒物に耐性のある上忍が意識を失うということは普通の毒薬ではない。
死に至る毒だったら。
私は震える手で何とか毒の流れを遅延させようとチャクラを先生に流す。
私ではダメでも綱手様なら治せるかもしれない。
ヤマト隊長がカカシ先生を担ぎ、その間もチャクラを流しながら急いで木ノ葉へと向かった。
****
それから先生は病院に担ぎ込まれ、シズネ先輩によって処置が行われている。
それが終わるまで私たちは執務室で終わるのを待つしかなかった。
「しかし、あのカカシが倒れるほどの毒とわね」
「はい・・・発熱と震え以外症状はないように見えましたが」
「サクラ。お前が打ったのは私の解毒剤だろう」
「は、はい。師匠に教えて貰ったのを私なりに少し変えてはいますが」
「お前のやり方なら効果は落ちてないと思うんだがね。なら、新たな毒か・・・」
「綱手のばーちゃん!カカシ先生助かるんだよな!」
「それはシズネとカカシ次第だよ」
師匠は豊満な胸の下で腕を組んで椅子の背もたれに背を預けて眉間に皺を寄せる。
自分の未熟な行いに先生を危険な目に遭わせてしまった。
私は涙が溢れないように唇を噛み、スカートを握ったとき、
執務室のドアが勢いよく開いた。
「綱手様!」
息を切らしたシズネ先輩が執務室に慌てた様子で入ってきた。
その様子に嫌な想像が頭の中を駆け巡る。
「何だ。カカシはどうした」
「あの、毒は全部抜くことが出来たんですが、それが・・・」
「何だい!はっきり言いな!!」
何故が口籠るシズネ先輩に、師匠は机を勢いよく叩く。
「はひー!!」
シズネ先輩は師匠の迫力に涙目になる。
すると、
「良いよシズネ。オレが言うから」
部屋の外から声が聞こえて、そこから現れた人物に私たちは全員固まった。
現れたのは、ぶかぶかの木ノ葉の任務服を着た5、6歳の男の子だった。
格好も不思議だったが、それより目を惹くのは銀髪に青灰の瞳、そして左目には深々と傷跡が残っている。
そんな人物を私たちは1人しか知らない。
唖然としている私たちに子供は眉を下げて頭を掻く。
その動作もすごく見覚えがあった。
綱手様はゆっくりと子供を指差して。
「・・・お前、カカシか」
「はい、はたけカカシです」
声もいつもの優しい低い音ではなく、子供特有の高い声。
一瞬、誰かが変化してるんじゃないかって思ったけど、この気怠そうな雰囲気、そして眠そうな眼は一朝一夕に出来ることではない。
何が起きたのか分からず、サイを除いた3人が口をポカンと開けたまま固まっているのを先生は眉を下げて笑った。
師匠は頭を抱える。
「・・・取り敢えず説明しろ、シズネ」
「は、はい。私の見解ですが、恐らくカカシさんが受けた毒は特殊なもので、発熱が起きた段階で解毒しても効果がないタイプかと。そして発熱は身体の収縮への反応で、カカシさんが意識を取り戻してからは発熱はありません」
「ふむ・・・取り敢えず、命に別状はないんだね?」
「はい。身体を縮めるだけの毒みたいです。元に戻す方法も、捕虜がまだ吐かないらしくて今日中には難しいみたいですね」
ナルト達が捕まえた襲ってきた敵は捕縛されて捕虜となり、地下で尋問されている。
中忍試験にいた試験管の、尋問のスペシャリストのイビキさんによって。
私ならすぐに吐いてしまいそう。
「それはイビキに任せるしかないね。それより、このカカシをどうするかだが・・・」
「あ、オレは大丈夫ですので」
「そんな舌足らずで言われても説得力ないってばよ」
ナルトに笑われて睨むカカシ先生だが、幼い容姿にあの眼力はなく、ただただ可愛いかった。
「それに分からないことばかりの毒なんだ。1人で何かあったらどうする」
「・・・はい」
珍しくしょぼん、とする先生。
子供だから更に可愛くて、笑いそうなのを我慢してるとカカシ先生がこちらを睨む。
「・・・笑ってんのバレバレだからね、お前ら」
お前ら。
その言葉にチラッと横を見ると、ヤマト隊長とナルトも口を一文字に結んで体を震わせていた。
サイはいつもと同じ薄っぺらい笑みを浮かべているから分からないけど。
同じように笑いを堪えていた綱手様が咳払いをする。
「ヤマト」
「はい」
「明日までお前がカカシの面倒を見ろ」
「そう言われると思ってました・・・。分かりまし──」
「師匠!!」
隊長の言葉を遮ってカカシ先生の隣に立つ。
「何だサクラ」
「その役目、私にさせてください!」
「「えっ!」」
後ろからナルトとヤマト隊長の驚いた声が重なる。
「理由を言ってみろ」
「・・・カカシ先生がこうなったのは私のせいなんです。だから私に責任を取らせてください!」
「サクラ・・・」
バッ、と頭を下げると、隣から聞こえた先生の声に何を言いたいのか分かる。
きっと「そんなこと気にするな」と言われると思った私は師匠からの言葉を頭を下げたまま待つ。
師匠のため息と椅子のギシッとなる音が聞こえ。
「・・・分かった、お前に任せよう」
「綱手様!」
許しの声に頭を上げると、シズネ先輩が心配そうに声を上げる。
「何だシズネ。私の決定に不満でもあるのか」
「いえ、その不満と言いますか、カカシさんはこんな見た目ですが一応成人男性ですし、サクラも昔と違って立派な大人ですから、その・・・」
先輩が言いにくそうに指をグルグル回す。
その赤い表情に何が言いたいのか分かり、その赤みが私にも移る。
「シズネ。お前はカカシとサクラがセックスするかもと言いたいのか」
「つ、綱手様!!」
顔を真っ赤にして慌てるシズネ先輩、後ろからヤマト隊長の咳き込む声が聞こえて、居心地の悪さに隣の先生の顔が見れない。
「それは大丈夫だろう。こいつの中身はあれだが、身体は子供なんだ。こいつの小さいアレにサクラが満足出来るわけないだろ」
「ぶふっ!!」
はっはっは、と高らかに笑う師匠にどう反応したらいいのか。
後ろからまたヤマト隊長のおかしそうに噴き出す声が聞こえ、隣のカカシ先生がゆっくり後ろを振り向く。
ナルトの小さな悲鳴が聞こえたから、きっととんでもない殺気が飛んだのだろう。
ひとしきり笑った師匠は息を吐いて、先生に向き合う。
「カカシ、お前はどうしたい」
師匠の言葉に先生がこっちを見上げてくる。
目が合うと先生は諦めたように笑った。
「サクラがこうなったら頑固なのはよく知ってますからね。迷惑かけるオレがどうこう言えませんよ」
「うむ。まぁサクラならカカシに何かあってもすぐに対処できるだろ。そうだな?」
「は、はい!!」
「よし。ならこれにて解散!私は忙しいんだ」
師匠は立ち上がり、私の横を通る時に肩を叩いてシズネ先輩と一緒に部屋を出て行った。
「サクラ」
下から名前を呼ばれて見ると、カカシ先生はいつものように眉を下げて笑う。
「悪いけど、取り敢えず明日までよろしく」
「は、はい!私、頑張ります!」
握り拳を作って意気込むと、「そんなに力入れなくていいから」と先生は私の背中を軽く叩いてヤマト隊長の元へと歩いた。
その時の隊長の強張った顔は見なかったことにして。
****
「おじゃま、します・・・」
あれから先生の部屋の方がいいだろうということになり、夕飯を一緒に食べてお邪魔することになった。
下忍時代ぶりの先生の部屋にキョロキョロと部屋の中を見渡す。
相変わらず簡素で物がほとんどない。
「ま、ま、取り敢えずゆっくりしてよ。お茶でも・・・・・・」
キッチンにいる先生を見ると、上の棚を開けようとしているが手が届かないようで、私が代わりに開けて急須を手に取る。
「悪いね」
「ううん。先生こそゆっくり休んでて。そのために私がいるんだから」
「・・・じゃあ、そうさせてもらおうかな」
少し寂しそうに笑った先生はソファーに腰掛けた。
座ると足が床に届かないから、可愛さにまたムズムズする。
「お茶っ葉分かる?」
「う、うん!大丈夫!」
先生を見てました、何てこと言えなくて、目が合った瞬間にすぐに逸らしてお茶を手に取った。
「せんせー、お茶入れたよ・・・ってあれ?」
茶飲みを2つ持って先生の元に行くと、ソファーに座ったまま目を瞑っていた。
そっとテーブルに茶飲みを置いても反応がない。
規則正しい息に、眠っているんだと分かった。
今日は色んなことがあって疲れただろうし、子供の体だから尚更眠くなったのだろう。
私は起こさないように先生をお姫様抱っこで持ち上げてベッドに寝かせる。
気持ちよさそうに眠る先生を見ていると私も眠気が誘われて欠伸をする。
寝ようかな、って思ったけど、もちろん他に布団なんてなくて。
ソファーでって思ったけど、私も今日はすごい疲れたから出来たらちゃんと眠りたい。
私はチラッと眠る先生を見て、シズネ先輩と師匠の言葉を思い出してしまい頬が熱くなる。
──いやいや、カカシ先生だし。しかも今は子供だし。大丈夫よ。何かあっても殴ればいいんだし!
私は1人頷いて、先生を壁側に追いやって私はその隣に体を滑らす。
シングルベッドだから2人で寝るには狭い。
私はまたしょうがないから、と自分の中で言い訳して、眠るカカシ先生を抱きしめる。
子供特有の暖かさにだんだんと意識が沈んでいく。
ぎゅっ、と更に抱きしめると、先生からいつもの優しい落ち着く匂いがして心が安らいだ。
「おやすみなさい、カカシ先生・・・」
部屋の中に時計の針の音と、規則正しい寝息が1つ。
カカシはゆっくりと瞼を開ける。
自分の体に腕を巻き付けて眠るサクラ。
カカシはサクラを起こさないようにしながら、大きくため息を吐く。
「・・・オレも男なんだって」
****
「ん、んぅ・・・」
いつもの時間に目が覚めたサクラは眉間に皺を寄せて目を開ける。
何かいつもと違うかも、とボーとする頭でそんなことを考えていると、
「おはよう」
顔の近くから聞こえた声に目を見開くと、目の前に肌色があった。
バッ、と顔を上げると、そこにはカカシ先生の顔があり。
昨日の子供の顔ではなくて、いつもの大人のカカシ先生の顔。
でも今はいつものではない。
普段付けている口布は付けていない。
それどころか、服を着ていないのだ。
顔を真っ赤にして口をパクパクさせる私に、心の中を読んだように先生は状況を説明する。
「どうも一晩寝たら元に戻る毒だったみたいでね。オレもさっき起きたから分からないけど、たぶん元に戻ったことで服が耐えれなくて弾けちゃったみたいなんだ。だからちょっと落ち着い──」
「しゃーーーんなろーーーー!!」
窓の外にいた鳥が驚いて空へと羽ばたいた。
カカシ先生を隊長に5人で任務を遂行していたのだが、案の定それを良しとしない他里から敵襲を受け、私たちは交戦することなった。
「しゃーんなろーー!!」
チャクラを込めた拳を敵に打ち込み、小さく呻き地面に倒れて動かなくなる。
一緒に闘っていたヤマト隊長が木遁で敵を拘束する。
「オレはナルトとサイのところに行くから、サクラはカカシ先輩の援護を!」
「はい!」
2体分身を出したヤマト隊長の指示に従い、1人敵と闘うカカシ先生の元に隊長の分身と走る。
木の枝から枝を飛んで敵と闘う先生の元に辿り着く。
まだ敵は私たちに気づいていない。
後ろから攻撃をしようと拳にチャクラを込めて近づこうしたその時、
「サクラ!!」
私に気づいたカカシ先生が叫んだ瞬間、後ろに気配を感じて振り向くと、先程倒したはずの敵が私に刃を向けていた。
さっきのは身代わりだ、と気づいても今更遅い。
敵の攻撃に反応出来ず、この身で受けようとして、気づいたらカカシ先生の腕の中にいた。
「カカシ、先生・・・」
「・・・大丈夫か」
「は、はい」
眉間に皺を寄せる先生に頷くと、カカシ先生の体が傾く。
「せ、先生!?」
苦しそうに呻く先生の腕を見ると、裂傷から血が流れている。
さっき私を庇った時に避けきれずに先生が敵の攻撃を受けてしまったのだ。
しかも先生の様子からただの傷ではない、刃に毒が塗ってあったんだ。
私のせい。
視界が滲み、それどころではないと無理やり拭う。
「すぐに解毒します!」
「いい・・・今すぐ敵を・・・」
先生の言葉に振り向くと、いつの間にかナルトとサイが参戦していて、あっという間に敵が捕縛された。
それを見てホッとしたのか、先生は意識を失って地面に倒れた。
「カカシ先生!」
私の悲鳴に3人は慌てて駆け寄ってくる。
先ほどまで真っ青だった顔色は発熱を訴えていて、身体は小さく震え呼吸が浅い。
解毒薬を打ったが、基本的に毒物に耐性のある上忍が意識を失うということは普通の毒薬ではない。
死に至る毒だったら。
私は震える手で何とか毒の流れを遅延させようとチャクラを先生に流す。
私ではダメでも綱手様なら治せるかもしれない。
ヤマト隊長がカカシ先生を担ぎ、その間もチャクラを流しながら急いで木ノ葉へと向かった。
****
それから先生は病院に担ぎ込まれ、シズネ先輩によって処置が行われている。
それが終わるまで私たちは執務室で終わるのを待つしかなかった。
「しかし、あのカカシが倒れるほどの毒とわね」
「はい・・・発熱と震え以外症状はないように見えましたが」
「サクラ。お前が打ったのは私の解毒剤だろう」
「は、はい。師匠に教えて貰ったのを私なりに少し変えてはいますが」
「お前のやり方なら効果は落ちてないと思うんだがね。なら、新たな毒か・・・」
「綱手のばーちゃん!カカシ先生助かるんだよな!」
「それはシズネとカカシ次第だよ」
師匠は豊満な胸の下で腕を組んで椅子の背もたれに背を預けて眉間に皺を寄せる。
自分の未熟な行いに先生を危険な目に遭わせてしまった。
私は涙が溢れないように唇を噛み、スカートを握ったとき、
執務室のドアが勢いよく開いた。
「綱手様!」
息を切らしたシズネ先輩が執務室に慌てた様子で入ってきた。
その様子に嫌な想像が頭の中を駆け巡る。
「何だ。カカシはどうした」
「あの、毒は全部抜くことが出来たんですが、それが・・・」
「何だい!はっきり言いな!!」
何故が口籠るシズネ先輩に、師匠は机を勢いよく叩く。
「はひー!!」
シズネ先輩は師匠の迫力に涙目になる。
すると、
「良いよシズネ。オレが言うから」
部屋の外から声が聞こえて、そこから現れた人物に私たちは全員固まった。
現れたのは、ぶかぶかの木ノ葉の任務服を着た5、6歳の男の子だった。
格好も不思議だったが、それより目を惹くのは銀髪に青灰の瞳、そして左目には深々と傷跡が残っている。
そんな人物を私たちは1人しか知らない。
唖然としている私たちに子供は眉を下げて頭を掻く。
その動作もすごく見覚えがあった。
綱手様はゆっくりと子供を指差して。
「・・・お前、カカシか」
「はい、はたけカカシです」
声もいつもの優しい低い音ではなく、子供特有の高い声。
一瞬、誰かが変化してるんじゃないかって思ったけど、この気怠そうな雰囲気、そして眠そうな眼は一朝一夕に出来ることではない。
何が起きたのか分からず、サイを除いた3人が口をポカンと開けたまま固まっているのを先生は眉を下げて笑った。
師匠は頭を抱える。
「・・・取り敢えず説明しろ、シズネ」
「は、はい。私の見解ですが、恐らくカカシさんが受けた毒は特殊なもので、発熱が起きた段階で解毒しても効果がないタイプかと。そして発熱は身体の収縮への反応で、カカシさんが意識を取り戻してからは発熱はありません」
「ふむ・・・取り敢えず、命に別状はないんだね?」
「はい。身体を縮めるだけの毒みたいです。元に戻す方法も、捕虜がまだ吐かないらしくて今日中には難しいみたいですね」
ナルト達が捕まえた襲ってきた敵は捕縛されて捕虜となり、地下で尋問されている。
中忍試験にいた試験管の、尋問のスペシャリストのイビキさんによって。
私ならすぐに吐いてしまいそう。
「それはイビキに任せるしかないね。それより、このカカシをどうするかだが・・・」
「あ、オレは大丈夫ですので」
「そんな舌足らずで言われても説得力ないってばよ」
ナルトに笑われて睨むカカシ先生だが、幼い容姿にあの眼力はなく、ただただ可愛いかった。
「それに分からないことばかりの毒なんだ。1人で何かあったらどうする」
「・・・はい」
珍しくしょぼん、とする先生。
子供だから更に可愛くて、笑いそうなのを我慢してるとカカシ先生がこちらを睨む。
「・・・笑ってんのバレバレだからね、お前ら」
お前ら。
その言葉にチラッと横を見ると、ヤマト隊長とナルトも口を一文字に結んで体を震わせていた。
サイはいつもと同じ薄っぺらい笑みを浮かべているから分からないけど。
同じように笑いを堪えていた綱手様が咳払いをする。
「ヤマト」
「はい」
「明日までお前がカカシの面倒を見ろ」
「そう言われると思ってました・・・。分かりまし──」
「師匠!!」
隊長の言葉を遮ってカカシ先生の隣に立つ。
「何だサクラ」
「その役目、私にさせてください!」
「「えっ!」」
後ろからナルトとヤマト隊長の驚いた声が重なる。
「理由を言ってみろ」
「・・・カカシ先生がこうなったのは私のせいなんです。だから私に責任を取らせてください!」
「サクラ・・・」
バッ、と頭を下げると、隣から聞こえた先生の声に何を言いたいのか分かる。
きっと「そんなこと気にするな」と言われると思った私は師匠からの言葉を頭を下げたまま待つ。
師匠のため息と椅子のギシッとなる音が聞こえ。
「・・・分かった、お前に任せよう」
「綱手様!」
許しの声に頭を上げると、シズネ先輩が心配そうに声を上げる。
「何だシズネ。私の決定に不満でもあるのか」
「いえ、その不満と言いますか、カカシさんはこんな見た目ですが一応成人男性ですし、サクラも昔と違って立派な大人ですから、その・・・」
先輩が言いにくそうに指をグルグル回す。
その赤い表情に何が言いたいのか分かり、その赤みが私にも移る。
「シズネ。お前はカカシとサクラがセックスするかもと言いたいのか」
「つ、綱手様!!」
顔を真っ赤にして慌てるシズネ先輩、後ろからヤマト隊長の咳き込む声が聞こえて、居心地の悪さに隣の先生の顔が見れない。
「それは大丈夫だろう。こいつの中身はあれだが、身体は子供なんだ。こいつの小さいアレにサクラが満足出来るわけないだろ」
「ぶふっ!!」
はっはっは、と高らかに笑う師匠にどう反応したらいいのか。
後ろからまたヤマト隊長のおかしそうに噴き出す声が聞こえ、隣のカカシ先生がゆっくり後ろを振り向く。
ナルトの小さな悲鳴が聞こえたから、きっととんでもない殺気が飛んだのだろう。
ひとしきり笑った師匠は息を吐いて、先生に向き合う。
「カカシ、お前はどうしたい」
師匠の言葉に先生がこっちを見上げてくる。
目が合うと先生は諦めたように笑った。
「サクラがこうなったら頑固なのはよく知ってますからね。迷惑かけるオレがどうこう言えませんよ」
「うむ。まぁサクラならカカシに何かあってもすぐに対処できるだろ。そうだな?」
「は、はい!!」
「よし。ならこれにて解散!私は忙しいんだ」
師匠は立ち上がり、私の横を通る時に肩を叩いてシズネ先輩と一緒に部屋を出て行った。
「サクラ」
下から名前を呼ばれて見ると、カカシ先生はいつものように眉を下げて笑う。
「悪いけど、取り敢えず明日までよろしく」
「は、はい!私、頑張ります!」
握り拳を作って意気込むと、「そんなに力入れなくていいから」と先生は私の背中を軽く叩いてヤマト隊長の元へと歩いた。
その時の隊長の強張った顔は見なかったことにして。
****
「おじゃま、します・・・」
あれから先生の部屋の方がいいだろうということになり、夕飯を一緒に食べてお邪魔することになった。
下忍時代ぶりの先生の部屋にキョロキョロと部屋の中を見渡す。
相変わらず簡素で物がほとんどない。
「ま、ま、取り敢えずゆっくりしてよ。お茶でも・・・・・・」
キッチンにいる先生を見ると、上の棚を開けようとしているが手が届かないようで、私が代わりに開けて急須を手に取る。
「悪いね」
「ううん。先生こそゆっくり休んでて。そのために私がいるんだから」
「・・・じゃあ、そうさせてもらおうかな」
少し寂しそうに笑った先生はソファーに腰掛けた。
座ると足が床に届かないから、可愛さにまたムズムズする。
「お茶っ葉分かる?」
「う、うん!大丈夫!」
先生を見てました、何てこと言えなくて、目が合った瞬間にすぐに逸らしてお茶を手に取った。
「せんせー、お茶入れたよ・・・ってあれ?」
茶飲みを2つ持って先生の元に行くと、ソファーに座ったまま目を瞑っていた。
そっとテーブルに茶飲みを置いても反応がない。
規則正しい息に、眠っているんだと分かった。
今日は色んなことがあって疲れただろうし、子供の体だから尚更眠くなったのだろう。
私は起こさないように先生をお姫様抱っこで持ち上げてベッドに寝かせる。
気持ちよさそうに眠る先生を見ていると私も眠気が誘われて欠伸をする。
寝ようかな、って思ったけど、もちろん他に布団なんてなくて。
ソファーでって思ったけど、私も今日はすごい疲れたから出来たらちゃんと眠りたい。
私はチラッと眠る先生を見て、シズネ先輩と師匠の言葉を思い出してしまい頬が熱くなる。
──いやいや、カカシ先生だし。しかも今は子供だし。大丈夫よ。何かあっても殴ればいいんだし!
私は1人頷いて、先生を壁側に追いやって私はその隣に体を滑らす。
シングルベッドだから2人で寝るには狭い。
私はまたしょうがないから、と自分の中で言い訳して、眠るカカシ先生を抱きしめる。
子供特有の暖かさにだんだんと意識が沈んでいく。
ぎゅっ、と更に抱きしめると、先生からいつもの優しい落ち着く匂いがして心が安らいだ。
「おやすみなさい、カカシ先生・・・」
部屋の中に時計の針の音と、規則正しい寝息が1つ。
カカシはゆっくりと瞼を開ける。
自分の体に腕を巻き付けて眠るサクラ。
カカシはサクラを起こさないようにしながら、大きくため息を吐く。
「・・・オレも男なんだって」
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「ん、んぅ・・・」
いつもの時間に目が覚めたサクラは眉間に皺を寄せて目を開ける。
何かいつもと違うかも、とボーとする頭でそんなことを考えていると、
「おはよう」
顔の近くから聞こえた声に目を見開くと、目の前に肌色があった。
バッ、と顔を上げると、そこにはカカシ先生の顔があり。
昨日の子供の顔ではなくて、いつもの大人のカカシ先生の顔。
でも今はいつものではない。
普段付けている口布は付けていない。
それどころか、服を着ていないのだ。
顔を真っ赤にして口をパクパクさせる私に、心の中を読んだように先生は状況を説明する。
「どうも一晩寝たら元に戻る毒だったみたいでね。オレもさっき起きたから分からないけど、たぶん元に戻ったことで服が耐えれなくて弾けちゃったみたいなんだ。だからちょっと落ち着い──」
「しゃーーーんなろーーーー!!」
窓の外にいた鳥が驚いて空へと羽ばたいた。
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