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「・・・サクラ、その子」

カカシはサクラの背中に隠れている2、3歳ぐらいの子を指差す。
朝。いつものように2時間遅れて橋の上に行くと、しゃがみ込んだナルトとサクラの側に立っていたのはピンク色の髪。
瞳は紫だったが、容姿はサクラにソックリだった。
ということは──。

「いつの間に産んで、ぐふっ!」

サクラはどこに隠し持ってたのか林檎を投げて顔面に思い切り当たる。

「ナルトと同じこと言わないでよ馬鹿!!この子は従妹のナデシコちゃん。うちに遊びに来てて、私が任務に行こうとしたら付いてきちゃったの。この子も一緒じゃ任務行けないでしょ?どうしたらいい?」
「あー、それなら大丈夫。任務無かったから」
「は?」

少し離れていたところに立っていたサスケが眉間に皺を寄せてこちらを睨んでくる。

「無かったってどういうことだ」
「だから言葉通りだって。受付行ったらお前らが受けれる任務がもう無かったんだよ」
「このクソ上忍・・・あんたが遅刻したからだろうが」
「はは、まぁその通り」
「クソっ。任務がないならオレはもう帰る」
「あー、ダメだぞ。これから大事な任務があるから」
「は?」

帰ろうとするサスケに声をかけると、「こいつ頭おかしいのか」と言いたそうな、上忍を敬う心なんて1ミリもない顔で振り返る。

「今日は特別任務。ナデシコちゃんが満足するまでみんなで遊ぶこと」

カカシはナデシコの前でしゃがんでお得意の笑顔を向けるが、サクラの背中に隠れる。

「あらら」
「顔のほとんどを隠した人が近づいてきたら怖いに決まってるでしょ」
「あぁ、そうか」

サクラが呆れたように言うと、納得したようにカカシは額当てを、口布を簡単に外した。
サクラ、ナルト、サスケは口をあんぐりさせてカカシの顔を凝視していた。

「ナデシコちゃん。今日はみんなで遊ぼうか」

カカシが微笑むと、ナデシコはサクラの背中から顔を出して頷いた。
少し頬を染めて。
まさかの端正な顔立ちに、小さいながらも春野家イケメンセンサーは有能らしい。
サクラもカカシの素顔に思わず頬を染めたほどだ。
それを見たナルトとサスケは不機嫌になる。

「さ、演習場行くぞ」



****



それからナデシコはカカシにベッタリだった。
カカシと手を繋いで楽しそうに話しているのを後ろからサクラは頬を膨らませて付いていく。
いつもサクラが好きだと、離れたくないと言っていたナデシコが自分を見むきもしないのが悔しい。
それに、いつもサクラ中心のカカシもナデシコにかかりっきりで全然構ってくれない。
サクラの機嫌がどんどん悪くなるのを感じ取ったナルトとサスケは触らぬ神に祟りなし、と静かに付いて行った。

それからいつもの第三演習場に着く。

「ナデシコちゃんに新しいお友達紹介するよ」

カカシは自分の親指を齧り、その手を地面に付くと辺りに煙が立ち込める。
ビックリしたナデシコが見たものは、カカシによって呼び出された忍犬のパックンだった。

「わんちゃん!」
「何じゃ、何の用だカカシ」
「しゃべった!」

犬の登場に嬉しそうにするが、パックンが喋って目を見開く。
しかも可愛くない喋り方で、ナデシコの犬のイメージが180度変わってしまった。

「なんじゃ小娘」
「え?」
「お主、いつの間にカカシとの子を産んだんじゃ」



「はっ!?」

パックンが自分とナデシコを交互に見たのでまた同じことを言われるのか、と思っていたらそれを上回る発言。
ナルトもサスケも同じような顔で驚いていた。
あまりにも失礼なことを言われてサクラは顔を真っ赤にして全身を震わせる。

「な、何で私がカカシ先生と!!」
「なんじゃ、お主ら付き合っておらんのか。いつもカカシがお主の話をしとるから、てっきり・・・」

サクラがカカシを思い切り睨むと、カカシは両手を上げて身の潔白を示した。

「この子は私の従妹のナデシコ!私の子供じゃありません!!」
「ほう。それにしてはソックリじゃな」
「だよなだよな!オレもソックリ過ぎて、最初見た時はサクラちゃんの子供かと・・・」
「あぁっ!?」
「ひぃっ!!」

気が立っているサクラは、話に入ってきたナルトを目線だけで殺せそうなほど睨みつけると、ナルトは涙目になってカカシの背中に隠れる。

「まぁまぁサクラ。落ち着いて」

元はと言えばこの男が原因なのに。
のほほんとしやがって。

「おねーちゃん、わんちゃんとあそびたい」

ナデシコはサクラの服を引っ張ってパックンを指差す。

「あぁ、ごめんね。パックン、お願いだから変なこと言わないでよ」
「しょうがないな」

ついてこい、とパックンは少し離れた花が生えているところにナデシコを連れて行った。
この距離なら話は聞こえないと思ったサクラはまたカカシを睨む。

「先生・・・パックンに何変なこと話してるのよ」
「変なことなんて話してないよ」
「じゃあ、何でパックンが私と先生の、こ、こ、子供なんて言い出すのよ!!
「知らないよ〜。まぁ強いて言うなら、毎晩パックンを呼び出してその日のサクラがいかに可愛かったかを朝方まで話してるぐらいで」
「それしかないでしょ!!」
「しかもそれ寝坊の原因じゃんか!!」

話を聞いていたナルトはカカシの遅刻の原因に声を荒げる。

「だってサクラの可愛さは1、2時間じゃ語れないし」
「まぁ、それは確かに」
「確かにじゃないでしょ、このお馬鹿!!」
「あいたっ!」

サクラは納得しかけるナルトの頭を叩く。
その時、カカシのズボンがグイグイと引っ張られ、下を見るといつの間にかナデシコが戻っていた。

「いっしょに、あそぼ?」
「いいよ」
「おねーちゃんも」

子供の扱いに慣れているカカシはナデシコを抱き上げ、ナデシコはサクラに手を伸ばす。
まだ怒りは収まりそうになかったが、サクラは諦めてその手を取った。


3人仲良くパックンの元に行く姿は悔しいが親子のようだと思ったナルトだったが、口に出したら殺されると思って飲み込んだ。



****



それから夕方になるまで遊び、ナデシコは眠そうに目を擦りだす。

「そろそろ帰ろうか」
「ん〜・・・」

先に立ち上がったカカシにナデシコは手を伸ばし、

「パパ、だっこぉ・・・」
「ちょっ!」

疲れからかカカシを呼び間違えたらしく、サクラは慌てる。
カカシも目をパチクリさせ、嬉しそうにナデシコを抱き抱えた。

「オレもこのぐらいの子供がいてもおかしくないか」

嬉しそうにカカシの肩に頭を乗せたナデシコはすぐに夢の世界に落ちていく。
そんな2人はまさに本当の親子みたいで・・・。

「やっぱり女の子は可愛いよね。オレも娘が出来たらパパって呼ばれたいな」
「じゃあ結婚したら?」
「ならお嫁さんはサクラか」
「はっ!?な、なに変なこと言ってんのよ!!」
「はは。耳まで真っ赤」

一瞬で赤くなったことを揶揄われたサクラはカカシの背中をポカポカ叩く。
ナデシコが起きない程度に。

「後で覚えときなさいよ!!」
「怖いな〜」

肩をすくめるが、声色は怖がるところか楽しんでいる。
遠くでボロボロになっているナルトとサスケがこっちに手を振っているのが目に見えて、サクラは最後に思い切り背中を叩いた。


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