short.1
「あ、サクラ」
引っ越しの為にカカシ先生の荷物を詰めるのを手伝っていたある日。
先生に呼ばれて振り返ると、黒い箱の中を見ていた。
後ろから覗くとクナイと短刀、医療パックが入っていた。
「なに、これ?」
カカシ先生の隣にしゃがんで顔を見ると、懐かしそうな、悲しそうな顔をしていた。
「これはオレが上忍になったときに、先生とリンがプレゼントしてくれたんだ」
先生はクナイと医療パックを手に取って教えてくれた。
その言葉に私は俯く。
カカシ先生の先生、四代目火影はナルトのお父さん。
ナルトに九尾を封印するときに亡くなったと聞いた。
そしてリンさんは。
詳しく聞いたことはないけど、先生の手で亡くなった女性。
ずっと先生の心に居続ける私が勝てない人。
私が落ち込んだことが分かった先生は私の頭を撫でてくれた。
この手に私は何度救われたんだろう。
先生はリンさんを手にかけたこの手を嫌っているけど、私は私を包み込んで守ってくれるこの手が大好きだ。
カカシ先生は箱の中の短刀を手に取って鞘から刀を抜くと、刀身が割れていた。
「これは父さんの形見。あの日、割れたんだ」
「あの日・・・?」
先生は情けなくしている私に微笑んで、また刀を見る。
「オビトが死んだ日」
胸が苦しくなった。
私は泣かないように眉間に皺を寄せて先生の言葉を聞く。
「刃は割れたけど、柄は無事だったから戒めのために持ってるんだ」
刀を鞘に収め箱に戻す先生の手に自分の手を添える。
先生は微笑んで私の手を取り、目を瞑り傷痕がある左目に当てる。
そこには先生の異名となるものがある。
「オビトからの上忍祝いはこれ。リンが移植してくれた」
耐えていた涙が頬を伝うと、そこからは止めどなく溢れていく。
カカシ先生は掴んでいない手で涙を拭ってくれる。
「泣かないで、サクラ」
「う・・・だって・・・」
「ごめん・・・サクラにはちゃんと話したくて」
私は頭を横にブンブンと振る。
「ううん・・・嬉しい。ありがとう、話してくれて」
私は泣きながら微笑んで、掴まれていた手で傷痕を撫でる。
「オビトさんはずっと先生を守ってくれてたんだね」
先生は目を見開いて私を見る。
「先生のことだから、死に急いで闘うって分かってたのよ。だから先生がまだ来ないように先生を守ってくれてたの。オビトさんのおかげで私は先生と逢うことが出来た」
私は先生の左目に唇を落とす。
「これからは私もカカシ先生を守るわ。だからちゃんと生きて」
左目が熱くなる。
オレは大事な人を亡くしすぎた。
その度に心が悲鳴を上げてきた。
もう大事なものは作るまいとしていたのに、オレの目の前には最も愛しい人がいる。
そしてーー。
「先生は生きて私と、この子を守って」
そう言ってサクラは愛おしそうに自身のお腹を撫でる。
そこにはオレとサクラの子が宿っている。
サクラは顔を上げてニッコリと笑う。
「あぁ・・・、絶対守るよ。だからずっと側にいてくれ、サクラ」
「当たり前!」と言って抱きついてくるサクラをオレは左目から頬を伝うものを隠すように力強く抱きしめた。
引っ越しの為にカカシ先生の荷物を詰めるのを手伝っていたある日。
先生に呼ばれて振り返ると、黒い箱の中を見ていた。
後ろから覗くとクナイと短刀、医療パックが入っていた。
「なに、これ?」
カカシ先生の隣にしゃがんで顔を見ると、懐かしそうな、悲しそうな顔をしていた。
「これはオレが上忍になったときに、先生とリンがプレゼントしてくれたんだ」
先生はクナイと医療パックを手に取って教えてくれた。
その言葉に私は俯く。
カカシ先生の先生、四代目火影はナルトのお父さん。
ナルトに九尾を封印するときに亡くなったと聞いた。
そしてリンさんは。
詳しく聞いたことはないけど、先生の手で亡くなった女性。
ずっと先生の心に居続ける私が勝てない人。
私が落ち込んだことが分かった先生は私の頭を撫でてくれた。
この手に私は何度救われたんだろう。
先生はリンさんを手にかけたこの手を嫌っているけど、私は私を包み込んで守ってくれるこの手が大好きだ。
カカシ先生は箱の中の短刀を手に取って鞘から刀を抜くと、刀身が割れていた。
「これは父さんの形見。あの日、割れたんだ」
「あの日・・・?」
先生は情けなくしている私に微笑んで、また刀を見る。
「オビトが死んだ日」
胸が苦しくなった。
私は泣かないように眉間に皺を寄せて先生の言葉を聞く。
「刃は割れたけど、柄は無事だったから戒めのために持ってるんだ」
刀を鞘に収め箱に戻す先生の手に自分の手を添える。
先生は微笑んで私の手を取り、目を瞑り傷痕がある左目に当てる。
そこには先生の異名となるものがある。
「オビトからの上忍祝いはこれ。リンが移植してくれた」
耐えていた涙が頬を伝うと、そこからは止めどなく溢れていく。
カカシ先生は掴んでいない手で涙を拭ってくれる。
「泣かないで、サクラ」
「う・・・だって・・・」
「ごめん・・・サクラにはちゃんと話したくて」
私は頭を横にブンブンと振る。
「ううん・・・嬉しい。ありがとう、話してくれて」
私は泣きながら微笑んで、掴まれていた手で傷痕を撫でる。
「オビトさんはずっと先生を守ってくれてたんだね」
先生は目を見開いて私を見る。
「先生のことだから、死に急いで闘うって分かってたのよ。だから先生がまだ来ないように先生を守ってくれてたの。オビトさんのおかげで私は先生と逢うことが出来た」
私は先生の左目に唇を落とす。
「これからは私もカカシ先生を守るわ。だからちゃんと生きて」
左目が熱くなる。
オレは大事な人を亡くしすぎた。
その度に心が悲鳴を上げてきた。
もう大事なものは作るまいとしていたのに、オレの目の前には最も愛しい人がいる。
そしてーー。
「先生は生きて私と、この子を守って」
そう言ってサクラは愛おしそうに自身のお腹を撫でる。
そこにはオレとサクラの子が宿っている。
サクラは顔を上げてニッコリと笑う。
「あぁ・・・、絶対守るよ。だからずっと側にいてくれ、サクラ」
「当たり前!」と言って抱きついてくるサクラをオレは左目から頬を伝うものを隠すように力強く抱きしめた。
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