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short.1

今日はここ数年で1番の大雪だとお天気のお姉さんが言っていた。
雪は一晩で火の国を銀世界へと変えた。
もちろん木ノ葉隠れの里も例外ではなく──。

「先生ー!早く早くー!!」

真っ白な世界で走り回るピンク色。
火の国は滅多に雪が積もらないので、朝からサクラは大はしゃぎ。
カカシはというと、いつも以上に背中を曲げて震えながらサクラの後をゆっくり付いて行く。

「もう、先生遅いわよ!」
「サクラは、こんな寒い中、元気だねぇ・・・」
「先生が寒がりすぎよ。年寄りみたい!」

サクラはそう言ってまた一人駆け出し、まだ足跡の付いていない雪を楽しそうに踏んで歩く。
そのサクラの小さな足跡の横に自分の大きな足跡を付けていく。
しかし、今日は非番で良かったとつくづく思う。
こんな足場が悪い中での任務は足音を消しても足跡のせいで敵にバレてしまう。
顔を上げてまだシンシンと落ちてくる雪を見ていると、周りも静かなことに気づいた。
サクラはどこに行った、と見渡すと、大きな木の下で蹲っているのを見つける。
体調でも悪くしたのかと思って近寄ろうとした時、徐にサクラは立ち上がり、雪を固めてそれを転がし始めた。

「何してんの」
「雪だるま!」

楽しそうに歩くサクラの背中に、先程サクラが座り込んでいた木を見るとそこに大きな雪だるまが飾ってあった。
木の枝と石で顔が作られたそれは、今にも眠そうな目をしていた。
すごく見覚えのある顔を見ていると、満足そうに戻ってきたサクラは、大きい雪だるまの横にあった、小さい雪玉の上に転がしていた玉を乗せた。
そして手際よくそれに顔を付けていく。

「出来た!」

木の枝を折ってVの字の口の雪だるま。
どうやら作っていたのはカカシとサクラの雪だるまらしい。
寄り添うように置かれていて、自然と口角が上がる。

「可愛い、ね・・・」

雪だるまからサクラを見ると、何故かまた雪玉を握っているサクラ。

「・・・まだ作るの?」
「うん、あと2つ作らないと」

2つ。今里にいない2人。
サクラの言いたいことは分かるが。
カカシはサクラの手を掴み、手を開かせるとそのまま雪玉が足元に落ちる。

「今日はもうダメ」
「どうしてよ」
「もう手が真っ赤になってるのは見逃せない」

長く素手で雪を触っていたサクラの手は可哀想なほど真っ赤になって冷えていた。
カカシは口布を下げてサクラの手を包み込んで息を吹きかける。

「明日の朝まで雪降るらしいから、また明日にしよう」
「・・・明日までこの子達残ってるかしら」
「残るよ。オレとサクラの雪だるまなんだから」

いつ帰るかも分からない2人を健気に待ち続ける2人。
まさにカカシたちにそっくりな雪だるまだった。
「ね」と促すとサクラは渋々頷いた。
そのまま手を繋いでカカシの家へと向かう。
去り際、サクラは「またね」と雪だるまに声をかけて。

だんだんと小さくなっていく背中を雪だるま達は寄り添いながら見送った。


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