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short.1

春野サクラとはたけカカシには誰にも言えない秘密があった。
2人は恋人同士ではあるが、担任教師と生徒でもあって。
もしバレてしまえば必ず別れが来てしまう危うい関係だった。
だから2人で会う時には細心の注意の払い、会っていても不思議ではない図書館で勉強を教えてもらうのがその日最後に会える至福の時間だった。
鍵を締めるという約束で司書から鍵を預かっているので、今は2人だけの恋人の時間。
いつもはちゃんと勉強しながら話すのだが、今日開いている本は教科書ではない。

「カカシ先生、わっか〜い!」

楽しそうに本を見ているサクラと、苦虫を潰したような顔をしているカカシ。
サクラが見ているのは、図書館にある卒業アルバム。
カカシが数年前の卒業生だと知ったサクラが本棚から探してきたのだ。
昔の自分を見られるのが嫌で取り上げようとするのだが、その細い身体からは信じられないほどの怪力には勝てず、諦めて愛読書を読み始めた。

「あ、先生、図書委員だったのね。でもそんな感じ。いつも本読んでるもんね」

サクラは委員会クラブの集合写真に写っているカカシを見つけて嬉しそうな顔をする。
指が今より幼い顔のカカシの顔をなぞる。

「・・・もし、同い年だったらどんな感じだったのかな」

ポツリ、と呟いた言葉にカカシがサクラを見ると、その表情はさっきとうって変わって顔に影を落としていた。
本当なら友達に恋人の惚気や不満話をしたがる年頃なのに、担任と付き合っていることで誰にも言えなくて辛そうにしているサクラを何度も見てきた。
カカシは本をパタン、と閉じてサクラに向き合う。

「・・・あの時のオレはさ、他の奴らとは違うって変に大人ぶって、みんなの輪に入ろうとしなかったんだよ。まぁ、それでも話しかけてくる奴はいたけどな」

カカシはあるページに載っている、ピースサインをする黒髪の少年と可愛らしく笑う茶髪の少女の写真を指でなぞる。

「だからきっと、あの頃に出会っててもサクラはオレのこと見向きもしなかったと思うんだよね。何年も経って色んなことを経験したから、サクラが好きな今のオレがあるんだよ」

好きな、と少しだけ主張して微笑むと、頬を赤くしたサクラが口を尖らせる。

「それでも、会いたかったの。私の知らない先生がいるのが嫌なの!」

サクラはアルバムをパタン、と閉じて椅子から立ち上がる。
本棚に向かうサクラに、カカシはマスクを付けていても分かる程ににやけきっていた。
サクラが卒業するまであと半年。
それが過ぎればサクラしか知らないオレが来るのに、とカカシはサクラの後を追いかけた。

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