short.1
朝。
鳥の声で目を覚ますと頭が痛い。
そういや酒飲んだっけな・・・、とボーとする頭で昨晩のことを考えていると、何故か右腕が重くて動かない。
それに甘い匂いもする。
またどこかで女捕まえて連れ込んだのか、とまだ働かない頭で右に顔を向ける。
心臓が止まった。
それは気のせいで、早鐘を打ち一気に汗が身体中から溢れる。
オレの右腕に乗っている頭は薄紅色。
珍しい髪色の人物をオレは1人、知っている。
誰よりも大事で、密かに恋心を抱いている元教え子で部下の少女。
オレはズキズキと痛む頭をフル回転させる。
「んん・・・」
サクラの声に大袈裟な程に体が跳ねる。
ゴソゴソ動いていたからかサクラも起きたらしい。
ゆっくりと眼が開き、2、3回瞬きをして目を擦りながら顔を上げた翡翠の瞳と目が合う。
「お、おはよう・・・」
そう声をかけると、虚な瞳は暫くオレを見て、だんだん瞳が丸くなってバッとサクラが飛び起きる。
毛布で見えなかったがTシャツは着ていてホッとした。
下は艶かしい白い素足だったが。
「あ、お、おはようございます!」
顔を真っ赤にしてオレから距離を取ろうとするサクラに冷や汗が止まらない。
とりあえず事実確認はしなくてはならない。
「あのさ・・・」
「あ!も、もうこんな時間!任務が入ってるから行かないと。先生は今日は休みですよね?」
「うん・・・あのね、」
「もう歳なんだからちゃんと体休めてくださいね。明日の任務は先生も一緒なんですよね?久しぶりだからナルトが浮かれそうだわ」
「・・・サクラ」
「服着替えに帰らなきゃ。あ、溜まってる報告書ちゃんと出してくださいよ。師匠怒ってましたよ!それじゃあ、また明日!」
ベッドから降りたサクラは後退りをしながらソファーに綺麗に畳まれていた服と鞄を手に取り、矢継ぎ早に話してオレの話を聞こうとせずに部屋を出て行った。
その場にオレだけが取り残され、頭を抱えて大きく長いため息を吐く。
完全にやらかしたことが決定した。
****
あれから部屋に1人でいることも出来ず、里の中を行く先も決めずに歩く。
歩きながら昨晩のことを思い出す。
確か単独の任務が終わり、明日は休みだから部屋で1人で飲もうとのんびりしている時だった。
教え子だったサクラが部屋を訪れたのは。
綱手様に帰ってきたのを聞いたのか怪我の具合を見にきたついでに一緒に夕飯を食べることになった。
まだ酒は飲めないサクラだったが、楽しそうに話すサクラの話を聞いているだけで満足だった。
そしていつもは酔わないのに、サクラが目の前にいるというだけでだいぶ酔ってしまった。
夜も遅くなり、この状態では送るのは難しくてサクラを泊めることになり──。
そこからはモヤがかかったかのように思い出せない。
こうなってはもうサクラから直接聞くしかなかった。
阿吽の門の側でヤマト率いる七班が帰ってくるのを待ち、偶然を装って4人に声をかける。
サクラと目が合うとまた顔を真っ赤にして挙動不審になり色々言い訳をして走って逃げた。
背中に仲間の痛い視線が突き刺さり、オレは頭を抱えた。
****
「ごめん」
次の日。
待ち合わせの橋の上でサクラの目の前でカカシは土下座をする。
毎回誰よりも早く待ち合わせ場所にサクラが来ることを知っていたので、それよりも早く橋で待ちサクラが逃げれないように現れた瞬間に土下座。
まだ早朝のこともあって人は少ないが、それでも商人やら任務に出たり帰還した忍が何事かと注視する。
ましてや土下座しているのははたけカカシで、上忍を土下座させている少女への視線に耐えれなくなったサクラは膝を付いてカカシを起き上がらせようとする。
「せ、先生!とにかく頭を上げて!」
カカシの腕を取るも、カカシは頑なに動こうとしない。
涙目のサクラにカカシはポツリと喋りだす。
「あの夜のことを覚えてないんだ」
「え」
「いや、サクラが遊びにきて酒を飲んでたことまでは覚えてる。でもサクラとベッドで寝た経緯は覚えてない」
「・・・そう」
顔を上げなくてもサクラの声色が落ちたことが分かる。
カカシは顔を上げてサクラの腕を掴む。
「サクラ。オレと付き合って、いや、結婚しよう」
「け、結婚!?」
サクラは目を見開いて叫ぶ。
その後ろから「結婚!?」「しー!」と聞こえた。
声は2つ、しかし気配は1人。
十中八九あいつらだ。
ヤマトにナルトとサイの足止めを頼んでいたから影から3人で様子を見ていたのだろう。
カカシの発言に驚くサクラには後ろの声は聞こえなかったらしく、まだ目を丸くしている。
カカシはそんなサクラの手を引いて一緒に立ち上がる。
「手出したんだから責任取らなきゃだろ?サクラのご両親にもご挨拶しに行かないとだな。それより先に市役所と、指輪か」
「か、カカシ先生!」
顎に手を当ててこれからの行動を考えていると、顔を真っ赤にしたサクラが手を引く。
「ち、違うの!」
「え?」
「何もされてないのよ!」
「・・・え?」
今度はカカシが目を丸くする。
「本当よ、本当に何もしてないのよ私たち。ただ同じベッドで、寝てただけで・・・」
嘘は付いていないようでやっと肩の力が抜けてしゃがむ。
嫌がるサクラを無理襲ったわけじゃなくて本当に良かった。
しかし。
「なら、何でオレを避けてたんだ?」
「そ、それは・・・」
オレと同じようにしゃがんで俯くサクラの顔を覗き込むと、顔を真っ赤にして何やらゴニョゴニョと指を回している。
「せ、先生が・・・」
「オレが?」
サクラはチラッとカカシを見て恥ずかしそうに目を逸らす。
「・・・最初は先生はソファーで寝てたの。でも途中で寝ぼけてベッドに潜り込んできたと思ったら私を思い切り抱きしめて、可愛いとか、私のことがす、好きとか言い出して・・・そのまま寝たのよ。そんなこと言われたら避けないわけないじゃない!髪にキスまでしてくるし!」
「それは、大変申し訳ありませんでした・・・」
最悪すぎる。
そんなに酒に弱いわけでもないのに、好きな子が目の前にいるというだけで悪酔いしてしまったらしい。
これからは酒は控えよう。
「本当悪かった。次からは気をつけるから──」
これでこの話は終わりと立ちあがろうとすると、サクラに手を掴まれる。
驚いて見ると、頬を染めて上目遣いで見てくるサクラ。
「サクラ?」
「・・・手を出してなかったらダメなの?」
「えっ」
「結婚、してくれないの?」
目を潤ますサクラに、カカシは喉を鳴らす。
頬に手を添え、サクラがその上から自身の手を重ねる。
「・・・いいのか?」
そう聞くと、サクラは目を伏せてこくん、と頷く。
カカシは嬉しそうに微笑み、口布を下げて顔を傾ける。
サクラがゆっくり目を瞑り、あともう少しで唇が重なる時。
「ごっほん!」
サクラの後ろからわざとらしい咳払いにそちらを見ると、困った顔をしているヤマトと、何を考えてるか分からないサイ、そして両目から滝のように涙を流して号泣しているナルト。
「えー、お楽しみのところすみません。けど一応ここは外なので・・・」
ヤマトの言葉にサクラはハッ!と周りを見ると、こちらを見ていた人々が目を逸らす。
今、自分たちは何をしようとしていたのか──。
カカシを見ると愛おしいものを見るように微笑まれ、サクラは顔から湯気が出るんじゃないかと思うほど真っ赤になる。
勢いよく立ち上がり、ジリジリと後ろに下がり・・・。
「い、イヤぁぁぁぁぁぁ!!!」
サクラは全力で駆け走った。
任務のことも忘れて。
それから1週間、サクラはカカシから逃げ回ったのだった。
鳥の声で目を覚ますと頭が痛い。
そういや酒飲んだっけな・・・、とボーとする頭で昨晩のことを考えていると、何故か右腕が重くて動かない。
それに甘い匂いもする。
またどこかで女捕まえて連れ込んだのか、とまだ働かない頭で右に顔を向ける。
心臓が止まった。
それは気のせいで、早鐘を打ち一気に汗が身体中から溢れる。
オレの右腕に乗っている頭は薄紅色。
珍しい髪色の人物をオレは1人、知っている。
誰よりも大事で、密かに恋心を抱いている元教え子で部下の少女。
オレはズキズキと痛む頭をフル回転させる。
「んん・・・」
サクラの声に大袈裟な程に体が跳ねる。
ゴソゴソ動いていたからかサクラも起きたらしい。
ゆっくりと眼が開き、2、3回瞬きをして目を擦りながら顔を上げた翡翠の瞳と目が合う。
「お、おはよう・・・」
そう声をかけると、虚な瞳は暫くオレを見て、だんだん瞳が丸くなってバッとサクラが飛び起きる。
毛布で見えなかったがTシャツは着ていてホッとした。
下は艶かしい白い素足だったが。
「あ、お、おはようございます!」
顔を真っ赤にしてオレから距離を取ろうとするサクラに冷や汗が止まらない。
とりあえず事実確認はしなくてはならない。
「あのさ・・・」
「あ!も、もうこんな時間!任務が入ってるから行かないと。先生は今日は休みですよね?」
「うん・・・あのね、」
「もう歳なんだからちゃんと体休めてくださいね。明日の任務は先生も一緒なんですよね?久しぶりだからナルトが浮かれそうだわ」
「・・・サクラ」
「服着替えに帰らなきゃ。あ、溜まってる報告書ちゃんと出してくださいよ。師匠怒ってましたよ!それじゃあ、また明日!」
ベッドから降りたサクラは後退りをしながらソファーに綺麗に畳まれていた服と鞄を手に取り、矢継ぎ早に話してオレの話を聞こうとせずに部屋を出て行った。
その場にオレだけが取り残され、頭を抱えて大きく長いため息を吐く。
完全にやらかしたことが決定した。
****
あれから部屋に1人でいることも出来ず、里の中を行く先も決めずに歩く。
歩きながら昨晩のことを思い出す。
確か単独の任務が終わり、明日は休みだから部屋で1人で飲もうとのんびりしている時だった。
教え子だったサクラが部屋を訪れたのは。
綱手様に帰ってきたのを聞いたのか怪我の具合を見にきたついでに一緒に夕飯を食べることになった。
まだ酒は飲めないサクラだったが、楽しそうに話すサクラの話を聞いているだけで満足だった。
そしていつもは酔わないのに、サクラが目の前にいるというだけでだいぶ酔ってしまった。
夜も遅くなり、この状態では送るのは難しくてサクラを泊めることになり──。
そこからはモヤがかかったかのように思い出せない。
こうなってはもうサクラから直接聞くしかなかった。
阿吽の門の側でヤマト率いる七班が帰ってくるのを待ち、偶然を装って4人に声をかける。
サクラと目が合うとまた顔を真っ赤にして挙動不審になり色々言い訳をして走って逃げた。
背中に仲間の痛い視線が突き刺さり、オレは頭を抱えた。
****
「ごめん」
次の日。
待ち合わせの橋の上でサクラの目の前でカカシは土下座をする。
毎回誰よりも早く待ち合わせ場所にサクラが来ることを知っていたので、それよりも早く橋で待ちサクラが逃げれないように現れた瞬間に土下座。
まだ早朝のこともあって人は少ないが、それでも商人やら任務に出たり帰還した忍が何事かと注視する。
ましてや土下座しているのははたけカカシで、上忍を土下座させている少女への視線に耐えれなくなったサクラは膝を付いてカカシを起き上がらせようとする。
「せ、先生!とにかく頭を上げて!」
カカシの腕を取るも、カカシは頑なに動こうとしない。
涙目のサクラにカカシはポツリと喋りだす。
「あの夜のことを覚えてないんだ」
「え」
「いや、サクラが遊びにきて酒を飲んでたことまでは覚えてる。でもサクラとベッドで寝た経緯は覚えてない」
「・・・そう」
顔を上げなくてもサクラの声色が落ちたことが分かる。
カカシは顔を上げてサクラの腕を掴む。
「サクラ。オレと付き合って、いや、結婚しよう」
「け、結婚!?」
サクラは目を見開いて叫ぶ。
その後ろから「結婚!?」「しー!」と聞こえた。
声は2つ、しかし気配は1人。
十中八九あいつらだ。
ヤマトにナルトとサイの足止めを頼んでいたから影から3人で様子を見ていたのだろう。
カカシの発言に驚くサクラには後ろの声は聞こえなかったらしく、まだ目を丸くしている。
カカシはそんなサクラの手を引いて一緒に立ち上がる。
「手出したんだから責任取らなきゃだろ?サクラのご両親にもご挨拶しに行かないとだな。それより先に市役所と、指輪か」
「か、カカシ先生!」
顎に手を当ててこれからの行動を考えていると、顔を真っ赤にしたサクラが手を引く。
「ち、違うの!」
「え?」
「何もされてないのよ!」
「・・・え?」
今度はカカシが目を丸くする。
「本当よ、本当に何もしてないのよ私たち。ただ同じベッドで、寝てただけで・・・」
嘘は付いていないようでやっと肩の力が抜けてしゃがむ。
嫌がるサクラを無理襲ったわけじゃなくて本当に良かった。
しかし。
「なら、何でオレを避けてたんだ?」
「そ、それは・・・」
オレと同じようにしゃがんで俯くサクラの顔を覗き込むと、顔を真っ赤にして何やらゴニョゴニョと指を回している。
「せ、先生が・・・」
「オレが?」
サクラはチラッとカカシを見て恥ずかしそうに目を逸らす。
「・・・最初は先生はソファーで寝てたの。でも途中で寝ぼけてベッドに潜り込んできたと思ったら私を思い切り抱きしめて、可愛いとか、私のことがす、好きとか言い出して・・・そのまま寝たのよ。そんなこと言われたら避けないわけないじゃない!髪にキスまでしてくるし!」
「それは、大変申し訳ありませんでした・・・」
最悪すぎる。
そんなに酒に弱いわけでもないのに、好きな子が目の前にいるというだけで悪酔いしてしまったらしい。
これからは酒は控えよう。
「本当悪かった。次からは気をつけるから──」
これでこの話は終わりと立ちあがろうとすると、サクラに手を掴まれる。
驚いて見ると、頬を染めて上目遣いで見てくるサクラ。
「サクラ?」
「・・・手を出してなかったらダメなの?」
「えっ」
「結婚、してくれないの?」
目を潤ますサクラに、カカシは喉を鳴らす。
頬に手を添え、サクラがその上から自身の手を重ねる。
「・・・いいのか?」
そう聞くと、サクラは目を伏せてこくん、と頷く。
カカシは嬉しそうに微笑み、口布を下げて顔を傾ける。
サクラがゆっくり目を瞑り、あともう少しで唇が重なる時。
「ごっほん!」
サクラの後ろからわざとらしい咳払いにそちらを見ると、困った顔をしているヤマトと、何を考えてるか分からないサイ、そして両目から滝のように涙を流して号泣しているナルト。
「えー、お楽しみのところすみません。けど一応ここは外なので・・・」
ヤマトの言葉にサクラはハッ!と周りを見ると、こちらを見ていた人々が目を逸らす。
今、自分たちは何をしようとしていたのか──。
カカシを見ると愛おしいものを見るように微笑まれ、サクラは顔から湯気が出るんじゃないかと思うほど真っ赤になる。
勢いよく立ち上がり、ジリジリと後ろに下がり・・・。
「い、イヤぁぁぁぁぁぁ!!!」
サクラは全力で駆け走った。
任務のことも忘れて。
それから1週間、サクラはカカシから逃げ回ったのだった。
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