年末年始
ピンポーン
「いらっしゃい」
「おじゃましまーす」
3年前と同じシチュエーションだが、その時と違うものがある。
「先生の部屋久しぶりだってばよ!」
数年ぶりに修行から帰郷した教え子の1人、ナルトだ。
先にナルトが入って後から入ってきたサクラがにこやかに笑ってきたので微笑み返す。
あれから数年が経ち、ナルトが帰ってきて第七班が復活した。
せっかくだから大晦日をみんなで過ごそうということになり同じ班のヤマトとサイも誘ったのだが、3人で過ごしてくれと遠慮されたのだ。
その時にヤマトが「サクラと2人きりじゃなくていいんですか」とイジってきたので、取り敢えず雷切浴びせといた。
2年前の春に恋人になって去年も一昨年も2人で過ごしてきたが、何よりも七班を大事にするサクラたってのお願いなのだから聞かないわけにはいかない。
それにオレもナルトと過ごしたかった。
ナルトはご飯食べたら帰すつもりだし、サクラはそのままお泊まりだからそれまでは先生モードだ。
部屋に来る時に買ってきて貰った食材をサクラに任せて、オレとナルトは鍋の準備。
「サクラちゃん、本当に料理出来るようになったんだね」
「なによ。疑ってたわけ?」
準備が終わって手持ちぶさたになったナルトがサクラの後ろから覗き込む。
下忍の頃はサクラの方が背が高かったが、今ではナルトが見下ろしている。
サクラもどんどん背が伸びて顔が近くなったのでキスがしやすくなった。
──2人とも本当大きくなったな。
きっとあいつも背が伸びてるんだろう。
2人を見て里にいないもう1人を思う。
「先生、これ鍋に詰めて」
物思いに浸っていると、サクラが食材が入ったトレイを渡してくる。
「はいはい」
「この肉、ヤマト隊長からなんだぜ」
「へー。あいつも気がきくねぇ」
今日は特別だからすき焼き。
食べ盛りの2人のためにヤマトが良い肉を、他の食材はオレがお金を出した。
鍋に野菜やら肉を詰めてる間、手持ち無沙汰になったナルトが床に座り、サクラはお皿の準備をしている。
「トイレ〜」とナルトが立ち上がる。
トイレのドアが閉まったのを確認して、サッと口布を下げてお皿を並べていたサクラの唇に軽くキスをする。
一瞬だったこともあり、目をパチクリさせていたサクラはすぐに何をされたのか分かり、文句を言おうとした瞬間トイレのドアが開く音が聞こえて、
バンッ!
「・・・何やってんの?」
「・・・ちょっと、大きい虫が飛んでたから」
トイレから出てきたナルトが見たものは、少し凹んだトレイを持っているサクラと、床に倒れて動かないカカシだった。
****
それからたくさんあった野菜と肉たちは若者たちがペロリと平らげ、時間も良い感じだった。
オレは隣で寝転がって腹を撫でるナルトの肩を揺さぶる。
「おいナルト。そろそろ帰れ」
「え〜・・・もうこのまま泊まるってばよ・・・」
ふざけるな。
片付けをしていたサクラの肩が小さく揺れるのを見逃さない。
「体がでかくなったお前の寝るところなんてないぞ」
「ちぇ〜・・・あ、じゃあじゃあ!オレサクラちゃん送るよ!」
「えっ」
ばっ、と起き上がったナルトがそう言うと、サクラはビックリした声をあげる。
こいつは本当に・・・。
オレはナルトの腕を掴んで無理やり立ち上がらせる。
「サクラは今日は帰らないよ」
「え?」
疑問に思うナルトの肩を押して玄関に向かわせ、靴を履かせる。
振り返ったナルトに見せつけるように、追いかけてきたサクラの肩を引き寄せる。
「サクラはこれからオレと甘い夜を過ごすから」
「ばっ・・・!!」
「・・・・・・え」
「じゃあよいお年を〜」
体を離そうとするサクラを押さえつけ、放心状態のナルトを玄関の外に追い出した。
暫く玄関の前にいた気配は、ゆっくりと離れていく。
「ちょっとカカシ先生!」
横を見ると、頬を染めて眉間に皺を寄せたサクラが睨んでいた。
あぁ、怒った顔も可愛いなどど場違いなことを考えてしまう。
「何で、あんなこと・・・!」
「あんなことって、本当のことでしょ?オレたち付き合ってるんだから」
「そ、そうだけど、まだナルトには・・・ってひゃ!」
サクラの腰に手を回して引き寄せると、サクラが可愛い悲鳴をあげる。
「あれ、ナルトにはまだ言ってなかったっけ」
「言ったけど、何か冗談みたいに受け取られたから・・・」
また体を離そうとするサクラに、腕に力を込めてピッタリくっ付くと体をが強張ったのを感じる。
あぁ、本当に可愛い。
「だからあんな空気読まないこと言ってたのか。ま、これでようやく分かったでしょ。サクラはもうオレのだって」
「!!」
俯いているからよく見えないけど、耳が薄紅色の髪より赤くなっていて、ほくそ笑む。
オレはその赤い耳に顔を近づけると、肩が小さく跳ねる。
「・・・今年も一緒に寝るでしょ?」
低く囁くと、サクラは体をプルプル震えさせ、オレの胸元に顔を埋める。
何回もしてるのに未だにお誘いや行為に慣れないところが初々しくて可愛いくて。
この子といると、どれだけ除夜の鐘を聞いても煩悩は取れそうにない。
オレはサクラを所謂お姫様抱っこで抱え、ベッドに向かう。
その間も胸元に顔を埋めて恥ずかしがるサクラ。
初詣は昼になりそうだ。