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カップルあんみつ

「カッカシせんせー!」

任務終わり、解散の合図を出して報告書を出しに行こうと歩み出そうとした時に後ろからハートマークが付きそうな声に呼び止められる。
すごく嫌な予感がして、後ろを振り返らず立ち去ろうとすると腕を掴まれる。

「カカシ先生ってば!聞こえてるんでしょ!!」

嫌々振り向くと、頬を膨らませて睨んでくるのは我が班の紅一点、春野サクラ。

「サクラ・・・何か用か?」

もう分かってる。
こういう猫撫で声を出すということはそういうことなんだろうが、一応聞いとく。

「うん!あのね、あんみつがね、」
「悪い。先生これから忙しいから」

予感が的中し、この場を去ろうとするのにサクラの手がそれを許さない。

「どうせ報告書出して家帰って寝るだけでしょ!」
「そんなん分かんないでしょ。恋人と甘い時間過ごすかもしれないじゃない」
「アスマ先生と紅先生がカカシ先生に恋人いないって前に言ってたわ!」

あいつら・・・。

「ねっねっ、おねが〜い」

サクラは目を潤ませて上目遣いで見てくる。
オレがその顔をされたら断れないことを知っていて。
オレは諦めて大きくため息を吐いた。



****



アカデミーに2人で向かい、報告書を書くために机に向かっているのだが、サクラがピッタリ横にくっ付いて書くのを覗いてくる。
紅たちによってオレとサクラが付き合っているという噂が広がったせいで、仲間たちがニヤニヤしながらこっちを見てきて居心地が悪い。

「・・・なぁ、サクラ」
「なに?」
「何でこんなに近いわけ?」
「だって他にすることないんだもん」
「なら図書館行ってくるとかさ・・・」
「先生が逃げないように見張っとかないといけないのよ!」

早く書いてよ、促され、早くこの状況を終わらせようと適当に書いたら「字が汚い」と文句を言われた。




夕方になると受付は報告書の提出で列を成す。
その間もサクラはピッタリくっついてくるわけで。

「サクラ、まだ時間かかりそうだからそこの椅子に座ってなさい」

依頼人が待ってる間座るように設置されているソファーを指差すと、サクラはそっちを見て首を横に振る。

「いい」
「でも本当に時間かかるからさ。任務で疲れただろ?」
「いいの!目を離したら先生逃げるもの!」
「逃げないって・・・」

オレ達のやりとりを聞いて周りの奴らが小さく笑う。
居心地の悪さにため息を吐くも、当のサクラは気づいていないのか気にしないのか、逃がさないとばかりにオレの腕に腕を絡めてくっ付いてくる。
その時に小さめの柔らかいのが当たっているのに気づいてしまった。

──早く列進んでくれ・・・。

こんな時に限って列の進みが悪く、受付の前に来た時にはすっかり疲れ切っていた。
受付にはイルカ先生がハンコを持って座っていた。

「お疲れ様です」
「どうも・・・」
「お、サクラも一緒か?」
「はい。これからカカシ先生とデートなので」





この瞬間、広い部屋が静寂に包まれた。

「え」

それを破ったのはイルカ先生。
オレは開いた口が閉まらないほどサクラの言葉に唖然としていた。

「さ、サクラ、今なんて・・・」

イルカ先生は顔中から汗が吹き出していて、先ほどまでとは明らかに挙動がおかしくなっている。

「だから、カカシ先生とデ──」

口を尖らせたサクラがまた同じことを言おうとして、オレは慌ててサクラの口を手で塞ぐ。

「あ、あはは!この子は何言ってんですかねー。それじゃあ失礼します!」

口を塞がれて文句を言うサクラを抱えて急いで受付を出た。



「もう!何するのよカカシ先生!」
「それはオレのセリフだっての・・・何考えてんのよお前は・・・」

抱えていたサクラを降ろすと、頬を膨らませてサクラが睨んでくる。
痛くも痒くもないが、まぁ、怒っても可愛いなと思ってしまった。

「何って、デートよ」
「デートじゃないでしょ・・・イルカ先生が本気にしたらどうすんの」
「あら。男と女が2人で食事しにいくのをデートって言わなくて何?」
「そりゃ・・・・・・」



「何だ・・・?」

口布の上から口を押さえて真剣に考える。
腰に手を当てていたサクラは惚けているオレの手を握る。

「ほら、行きましょう先生?」

微笑むサクラの表情に、今まで意識していなかった何かが心の底から湧いてくる。
その気づいてはいけないようなモノに無理やり蓋をして、
楽しそうに笑うサクラの後を付いて行った。


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