同期で恋敵で
「サクラ、お前が好きだ」
任務終わりにゲンマに呼び止められ、人が少ないところまで連れて行かれてからの思いもよらぬ告白。
まさか好意を抱かれているなんて微塵も思っていなかったサクラは目も口も思いきり開いて呆然とする。
真剣な目のゲンマに、何て言ったらいいのか分からずにいると、ポンと頭に手を乗せられる。
「悪いな。突然こんなこと言って」
「い、いえ・・・」
初めての告白でどうしたらいいか分からずモジモジしてしまう。
「急かすつもりはないから。ちゃんと考えてくれ」
「・・・はい」
****
「そういうわけで、サクラに告白したんで」
昼休み。
上忍待機所で商店街で買ってきた弁当を食べていると、先ほど部屋に入ってきたゲンマがカカシにそう宣言した。
普段は隠している素顔を惜しげもなく晒し、卵焼きを食べようと口を大きく開けたままカカシは止まる。
食べられるはずだった卵焼きは口の中には入らず、そのままポロッとカカシのズボンに落ちる。
固まったままのカカシは気づかないので、隣に座る紅が取って代わりに食べた。
「それだけ言いたかったんで。それじゃあ」
用事はそれだけとゲンマは部屋を出ていく。
「あらあら。これはゲンマが1歩有利ね」
未だに放心しているカカシに紅は面白そうに肩に手を置いた。
****
次の日。
いつも通り七班の任務先へと向かっている間、カカシは昨日のゲンマの話が気になってサクラをチラチラと見ていた。
当のサクラもいつもと違って表情が暗い。
カカシは意を決してサクラに話しかける。
「さ、サクラ、大丈夫か?」
「え、何が?」
顔を上げたサクラはきょとん、と顔をしてこちらを見る。
まさか本人から告白のことを聞いてるなんて知るはずもないので、カカシは気まずそうに目を逸らす。
「あー・・・なんかいつもより元気ないなぁと思って」
「そう?ちょっと考え事してたからかな」
「相談に乗ろうか?」
「んー・・・ううん、大丈夫。自分で考えなきゃいけないことだから」
そうサクラは笑って前を歩くナルト達の元へ走った。
楽しそうにナルトとサスケと話すサクラ。
3人の後ろ姿にカカシは頭を掻きながら深くため息を吐いた。
その日の任務はもう恒例となっている民家の草むしり。
文句を言いながらむしるナルト、苛立った顔で草を抜くサスケ、そして心ここにあらずのサクラ。
昨日からずっとゲンマのことを考えて夜もなかなか寝付けず。
まさか自分が告白されるなんて。
しかも年上に。
──そういえばゲンマさんっていくつなんだろう。
前にカカシ先生がゲンマさんと親しく話しているのを見かけたことがある。
もしかしたら知ってるかもしれないわ。
自分の担当を早く終わらせて聞きに行こうかな。
サクラは無い袖を捲り、周りの雑草を勢いよく抜きだした。
「カカシ先生ー」
あれからものの10分で全部抜き取り、監督役をサボっているであろうカカシを探す。
どうせどっかで昼寝してるか、あのいかがわしい本を読んでるんでしょう。
真面目なサクラは不真面目なカカシの行為に苛立ちを覚える。
だけど戦闘になったらその大きな背中は誰よりも頼りになって好きだ。
その時だけだけど。
普段からちゃんと先生らしくしてくれたらもっと頼りになるのに。
サクラは頬を膨らませてカカシを探していると、木陰になっているところで、木を背もたれに気持ちよさそうに眠っているカカシを見つける。
「・・・カカシ先生」
あまりに気持ちよさそうに眠ってるから起こすのは憚られて小さい声になってしまったが、一応任務中なわけで。
「カカシせんせっ」
両肩を強く揺さぶると、カカシの目がゆっくりと開く。
「──サクラ」
「もう、一応任務中なんだから寝ないでよ」
「サクラ・・・」
「なに?寝ぼけてるの?」
虚な灰青の瞳を覗き込むと、カカシの手がサクラの背中に伸びる。
「えっ」
気づいた時にはカカシの胸に倒れ込んでいた。
「ちょ、ちょっと・・・!」
急いで離れようとするのにカカシの腕が強くなって更に密着する。
こんなところ2人に見られたら・・・。
「先生、離して・・・!」
「ん〜・・・」
懇願するがカカシはサクラの頬に自分の頬を擦り寄せる。
こんなふうに異性とくっ付いたことがないサクラは耳まで真っ赤にして涙目で狼狽える。
「先生!!」
「──たくないなぁ・・・」
「・・・え?」
小さく呟かれ、耳をすます。
「ずっと側にいてよ・・・」
普段からは想像出来ないほどの弱々しく縋る声、見た目は細身なのにきちんと鍛えられている胸元。
情報過多の状況に、先生に聞こえるんじゃないかと思うぐらい心臓が跳ねている。
今までこんなに高鳴ったことがあっただろうか。
サスケくんの側にいる時も、ゲンマさんに告白された時もこんなにドキドキしてない。
──なんで?
暫く先生の腕に抱かれていると遠くからナルトの呼ぶ声が聞こえて、サクラは思い切りカカシを突き飛ばす。
カカシは後ろの木に頭をぶつけて変な声を出していた。
****
「ゲンマさん」
綱手の使いでアカデミーを歩いていると、後ろから呼び止められる。
もちろん声で誰か分かり、少し頬を緩まして振り返るもすぐに引き締める。
「サクラか。どうかしたか?」
「・・・少しお時間よろしいですか?」
サクラの表情にゲンマは何を言われるか分かった。
苦しそうに微笑む。
「・・・ああ、いいぞ」
夜。
カカシがアカデミーに報告書を出しに行った時にゲンマに捕まり居酒屋に連れて行かれる。
一番人が混み合う時間でカウンターに横並びで座り、乾杯をして頼んだつまみを食べる。
「そういや朝見た時すげえ眠そうだったが今はそうでもねぇな」
普段は位が上のカカシを敬って敬語で話すゲンマだが、プライベートになると一気に砕ける。
ゲンマが2つ年上なのでこっちの方が普通なのだが、適当そうなゲンマは意外とちゃんとしている。
「あー、お前のせいで昨日は寝れなくてね。あの子達が任務こなしてる間に寝てたんだよ」
「そんなんでよく報告書書けるな」
「草むしりなんて毎回同じこと書いとけばイルカ先生の目ぐらいして欺けるよ」
「たく・・・サクラは怒らないのかよ」
「今日は突き飛ばされて頭にタンコブ出来た」
「ははっ、流石だな」
木に打ちつけて出来た頭の後ろのタンコブを撫でるとまだ少し痛い。
ゲンマはサクラの行動に嬉しそうに笑う。
「で、連れてきた用事は何なのよ」
暫く他愛のない話をしていたのだが、カカシはずっと気になっていたことを切り出す。
「あぁ・・・」
ゲンマはチラッとカカシを見て酒を煽る。
「オレ振られたわ」
何でもないみたいに言うゲンマに、カカシは1テンポ遅れて目を丸くしてゲンマを見る。
「そ、れは何て言っていいやら・・・」
「笑ってんの隠せてないぞ」
口は押さえていたが、漏れ出る嬉しさでバレたらしい。
睨んでくるゲンマに軽く謝る。
気持ちを落ち着かせてゲンマに気になることを聞く。
「何て言われて振られたのさ」
「好きなやつがいるんだと」
「好、きなやつ・・・!誰!やっぱりサスケか!?」
「さぁ」
「何で聞かないんだよ!」
「振られてんのに未練がましくそんなこと聞けるかよ。知りたいなら自分で聞け」
「そんなん聞けるわけないでしょ・・・!オレが聞いたら絶対変な目で見られるじゃん!」
酒も入っていることもあり、カカシは机にうつ伏せになって泣き出す。
ゲンマはカカシを放って1人で飲みながらサクラとの会話を思い出す。
****
人が少ないところまで連れていかれ、サクラが申し訳なさそうな顔をして話を切り出そうとしているので苦笑する。
「もういいぞ、分かってっから」
「えっ」
パッと顔を上げたサクラに微笑むと、泣きそうな顔をする。
「・・・ごめんなさい。でも告白してくれて本当嬉しかったんです!ただ、好きな人がいて・・・」
ぎゅっと服を掴んで必死に気持ちを言おうとするサクラの頭を撫でる。
「あぁ。すごい考えてくれたんだろうよ。クマ、出来てるぞ」
ゲンマが自分の目の下を指差すと、パッと恥ずかしそうに顔を隠す。
振られてるのにこんなことですら可愛いと思ってしまうから重傷だな。
「好きなやつが誰か聞いてもいいか?」
「あ・・・えっと、その・・・」
まさか聞かれるとは思わなかったのだろう。
顔を真っ赤にしてモジモジしている。
本当可愛いな、ちくしょう。
「んと、親しくさせてもらってる人で・・・」
どうせサスケだろう、と思っていたら予想外の返答。
ゲンマは諦めたように笑う。
「サクラと親しい男って言ったら金髪の煩いガキか、生意気な黒髪のガキか・・・ヘラヘラして掴みどころのない大人の男か」
サクラの反応を見ながら3人の特徴を言うと、最後の男で反応するのを見逃さなかった。
「告白したらどうだ?」
「む、無理ですよ!絶対無理・・・」
「サスケにはしょっちゅう告白してるってカカシが言ってたんだがな。じゃあサスケじゃないってことか。ナルトは論外だな」
「!いや、うぅ・・・」
想い人がもう分かっているのに気づいたのか、サクラの目が泳ぎ、ゲンマがおかしそうに笑う。
「何かあったら相談しにこい」
「でも・・・」
振ってる相手に想い人の相談をすることに引け目を感じるらしい。
「いいから。アイツのことなら詳しいぞ?弱みも色々知ってる」
「・・・ふふ。ありがとうございます。それじゃあ、お願いします」
ようやくサクラが笑ってゲンマも嬉しそうに笑った。
数時間前の出来事を思い出してゲンマは小さく笑う。
チラッと横目で見ると、酔い潰れて眠るカカシ。
「・・・たく。馬鹿なやつだよ」
ゲンマは酒を煽って追加を注文した。
****
次の日。
任務を終えて解散の合図を出したあとにサクラを呼び止める。
「なぁ、サクラ。この後あんみつ食べに行かないか?また期間限定出てるらしいぞ」
少し他所他所しいサクラにカカシは何気なく、いつものようにお誘いする。
何故か恐る恐る振り向くサクラは目を合わせない。
「えっと、ごめんなさい。ちょっと用事があるから・・・」
「なら、明日は?」
「し・・・暫く無理そうなの。ごめんなさい!」
「あっ」
きごちない雰囲気の中諦めずに誘うも、サクラはそう言って走り去っていった。
1人ポツンと取り残されたカカシは泣きそうな顔をしていた。
「なんかサクラに避けられてんだけど!」
「・・・何でオレに言うんすか」
また綱手のお使いでアカデミーにいると、カカシに捕まり人が来ない通路に連れ込まれた。
まだ仕事中なので敬語で。
「他のやつに言えないでしょ。なぁ、何でだと思う?」
「さぁ。知りません。オレ急いでるんで」
カカシの横をすり抜けたゲンマの後を付いて行く。
「なに?何の用事」
まだ話をしたいのか付いてくるカカシにゲンマは振り返り、嘲笑うように片頬を上げる。
「この後サクラに呼ばれてるんで。それじゃあ」
スタスタと去っていくゲンマ。
カカシはまた1人取り残されて。
「・・・・・・はっ!?」
任務終わりにゲンマに呼び止められ、人が少ないところまで連れて行かれてからの思いもよらぬ告白。
まさか好意を抱かれているなんて微塵も思っていなかったサクラは目も口も思いきり開いて呆然とする。
真剣な目のゲンマに、何て言ったらいいのか分からずにいると、ポンと頭に手を乗せられる。
「悪いな。突然こんなこと言って」
「い、いえ・・・」
初めての告白でどうしたらいいか分からずモジモジしてしまう。
「急かすつもりはないから。ちゃんと考えてくれ」
「・・・はい」
****
「そういうわけで、サクラに告白したんで」
昼休み。
上忍待機所で商店街で買ってきた弁当を食べていると、先ほど部屋に入ってきたゲンマがカカシにそう宣言した。
普段は隠している素顔を惜しげもなく晒し、卵焼きを食べようと口を大きく開けたままカカシは止まる。
食べられるはずだった卵焼きは口の中には入らず、そのままポロッとカカシのズボンに落ちる。
固まったままのカカシは気づかないので、隣に座る紅が取って代わりに食べた。
「それだけ言いたかったんで。それじゃあ」
用事はそれだけとゲンマは部屋を出ていく。
「あらあら。これはゲンマが1歩有利ね」
未だに放心しているカカシに紅は面白そうに肩に手を置いた。
****
次の日。
いつも通り七班の任務先へと向かっている間、カカシは昨日のゲンマの話が気になってサクラをチラチラと見ていた。
当のサクラもいつもと違って表情が暗い。
カカシは意を決してサクラに話しかける。
「さ、サクラ、大丈夫か?」
「え、何が?」
顔を上げたサクラはきょとん、と顔をしてこちらを見る。
まさか本人から告白のことを聞いてるなんて知るはずもないので、カカシは気まずそうに目を逸らす。
「あー・・・なんかいつもより元気ないなぁと思って」
「そう?ちょっと考え事してたからかな」
「相談に乗ろうか?」
「んー・・・ううん、大丈夫。自分で考えなきゃいけないことだから」
そうサクラは笑って前を歩くナルト達の元へ走った。
楽しそうにナルトとサスケと話すサクラ。
3人の後ろ姿にカカシは頭を掻きながら深くため息を吐いた。
その日の任務はもう恒例となっている民家の草むしり。
文句を言いながらむしるナルト、苛立った顔で草を抜くサスケ、そして心ここにあらずのサクラ。
昨日からずっとゲンマのことを考えて夜もなかなか寝付けず。
まさか自分が告白されるなんて。
しかも年上に。
──そういえばゲンマさんっていくつなんだろう。
前にカカシ先生がゲンマさんと親しく話しているのを見かけたことがある。
もしかしたら知ってるかもしれないわ。
自分の担当を早く終わらせて聞きに行こうかな。
サクラは無い袖を捲り、周りの雑草を勢いよく抜きだした。
「カカシ先生ー」
あれからものの10分で全部抜き取り、監督役をサボっているであろうカカシを探す。
どうせどっかで昼寝してるか、あのいかがわしい本を読んでるんでしょう。
真面目なサクラは不真面目なカカシの行為に苛立ちを覚える。
だけど戦闘になったらその大きな背中は誰よりも頼りになって好きだ。
その時だけだけど。
普段からちゃんと先生らしくしてくれたらもっと頼りになるのに。
サクラは頬を膨らませてカカシを探していると、木陰になっているところで、木を背もたれに気持ちよさそうに眠っているカカシを見つける。
「・・・カカシ先生」
あまりに気持ちよさそうに眠ってるから起こすのは憚られて小さい声になってしまったが、一応任務中なわけで。
「カカシせんせっ」
両肩を強く揺さぶると、カカシの目がゆっくりと開く。
「──サクラ」
「もう、一応任務中なんだから寝ないでよ」
「サクラ・・・」
「なに?寝ぼけてるの?」
虚な灰青の瞳を覗き込むと、カカシの手がサクラの背中に伸びる。
「えっ」
気づいた時にはカカシの胸に倒れ込んでいた。
「ちょ、ちょっと・・・!」
急いで離れようとするのにカカシの腕が強くなって更に密着する。
こんなところ2人に見られたら・・・。
「先生、離して・・・!」
「ん〜・・・」
懇願するがカカシはサクラの頬に自分の頬を擦り寄せる。
こんなふうに異性とくっ付いたことがないサクラは耳まで真っ赤にして涙目で狼狽える。
「先生!!」
「──たくないなぁ・・・」
「・・・え?」
小さく呟かれ、耳をすます。
「ずっと側にいてよ・・・」
普段からは想像出来ないほどの弱々しく縋る声、見た目は細身なのにきちんと鍛えられている胸元。
情報過多の状況に、先生に聞こえるんじゃないかと思うぐらい心臓が跳ねている。
今までこんなに高鳴ったことがあっただろうか。
サスケくんの側にいる時も、ゲンマさんに告白された時もこんなにドキドキしてない。
──なんで?
暫く先生の腕に抱かれていると遠くからナルトの呼ぶ声が聞こえて、サクラは思い切りカカシを突き飛ばす。
カカシは後ろの木に頭をぶつけて変な声を出していた。
****
「ゲンマさん」
綱手の使いでアカデミーを歩いていると、後ろから呼び止められる。
もちろん声で誰か分かり、少し頬を緩まして振り返るもすぐに引き締める。
「サクラか。どうかしたか?」
「・・・少しお時間よろしいですか?」
サクラの表情にゲンマは何を言われるか分かった。
苦しそうに微笑む。
「・・・ああ、いいぞ」
夜。
カカシがアカデミーに報告書を出しに行った時にゲンマに捕まり居酒屋に連れて行かれる。
一番人が混み合う時間でカウンターに横並びで座り、乾杯をして頼んだつまみを食べる。
「そういや朝見た時すげえ眠そうだったが今はそうでもねぇな」
普段は位が上のカカシを敬って敬語で話すゲンマだが、プライベートになると一気に砕ける。
ゲンマが2つ年上なのでこっちの方が普通なのだが、適当そうなゲンマは意外とちゃんとしている。
「あー、お前のせいで昨日は寝れなくてね。あの子達が任務こなしてる間に寝てたんだよ」
「そんなんでよく報告書書けるな」
「草むしりなんて毎回同じこと書いとけばイルカ先生の目ぐらいして欺けるよ」
「たく・・・サクラは怒らないのかよ」
「今日は突き飛ばされて頭にタンコブ出来た」
「ははっ、流石だな」
木に打ちつけて出来た頭の後ろのタンコブを撫でるとまだ少し痛い。
ゲンマはサクラの行動に嬉しそうに笑う。
「で、連れてきた用事は何なのよ」
暫く他愛のない話をしていたのだが、カカシはずっと気になっていたことを切り出す。
「あぁ・・・」
ゲンマはチラッとカカシを見て酒を煽る。
「オレ振られたわ」
何でもないみたいに言うゲンマに、カカシは1テンポ遅れて目を丸くしてゲンマを見る。
「そ、れは何て言っていいやら・・・」
「笑ってんの隠せてないぞ」
口は押さえていたが、漏れ出る嬉しさでバレたらしい。
睨んでくるゲンマに軽く謝る。
気持ちを落ち着かせてゲンマに気になることを聞く。
「何て言われて振られたのさ」
「好きなやつがいるんだと」
「好、きなやつ・・・!誰!やっぱりサスケか!?」
「さぁ」
「何で聞かないんだよ!」
「振られてんのに未練がましくそんなこと聞けるかよ。知りたいなら自分で聞け」
「そんなん聞けるわけないでしょ・・・!オレが聞いたら絶対変な目で見られるじゃん!」
酒も入っていることもあり、カカシは机にうつ伏せになって泣き出す。
ゲンマはカカシを放って1人で飲みながらサクラとの会話を思い出す。
****
人が少ないところまで連れていかれ、サクラが申し訳なさそうな顔をして話を切り出そうとしているので苦笑する。
「もういいぞ、分かってっから」
「えっ」
パッと顔を上げたサクラに微笑むと、泣きそうな顔をする。
「・・・ごめんなさい。でも告白してくれて本当嬉しかったんです!ただ、好きな人がいて・・・」
ぎゅっと服を掴んで必死に気持ちを言おうとするサクラの頭を撫でる。
「あぁ。すごい考えてくれたんだろうよ。クマ、出来てるぞ」
ゲンマが自分の目の下を指差すと、パッと恥ずかしそうに顔を隠す。
振られてるのにこんなことですら可愛いと思ってしまうから重傷だな。
「好きなやつが誰か聞いてもいいか?」
「あ・・・えっと、その・・・」
まさか聞かれるとは思わなかったのだろう。
顔を真っ赤にしてモジモジしている。
本当可愛いな、ちくしょう。
「んと、親しくさせてもらってる人で・・・」
どうせサスケだろう、と思っていたら予想外の返答。
ゲンマは諦めたように笑う。
「サクラと親しい男って言ったら金髪の煩いガキか、生意気な黒髪のガキか・・・ヘラヘラして掴みどころのない大人の男か」
サクラの反応を見ながら3人の特徴を言うと、最後の男で反応するのを見逃さなかった。
「告白したらどうだ?」
「む、無理ですよ!絶対無理・・・」
「サスケにはしょっちゅう告白してるってカカシが言ってたんだがな。じゃあサスケじゃないってことか。ナルトは論外だな」
「!いや、うぅ・・・」
想い人がもう分かっているのに気づいたのか、サクラの目が泳ぎ、ゲンマがおかしそうに笑う。
「何かあったら相談しにこい」
「でも・・・」
振ってる相手に想い人の相談をすることに引け目を感じるらしい。
「いいから。アイツのことなら詳しいぞ?弱みも色々知ってる」
「・・・ふふ。ありがとうございます。それじゃあ、お願いします」
ようやくサクラが笑ってゲンマも嬉しそうに笑った。
数時間前の出来事を思い出してゲンマは小さく笑う。
チラッと横目で見ると、酔い潰れて眠るカカシ。
「・・・たく。馬鹿なやつだよ」
ゲンマは酒を煽って追加を注文した。
****
次の日。
任務を終えて解散の合図を出したあとにサクラを呼び止める。
「なぁ、サクラ。この後あんみつ食べに行かないか?また期間限定出てるらしいぞ」
少し他所他所しいサクラにカカシは何気なく、いつものようにお誘いする。
何故か恐る恐る振り向くサクラは目を合わせない。
「えっと、ごめんなさい。ちょっと用事があるから・・・」
「なら、明日は?」
「し・・・暫く無理そうなの。ごめんなさい!」
「あっ」
きごちない雰囲気の中諦めずに誘うも、サクラはそう言って走り去っていった。
1人ポツンと取り残されたカカシは泣きそうな顔をしていた。
「なんかサクラに避けられてんだけど!」
「・・・何でオレに言うんすか」
また綱手のお使いでアカデミーにいると、カカシに捕まり人が来ない通路に連れ込まれた。
まだ仕事中なので敬語で。
「他のやつに言えないでしょ。なぁ、何でだと思う?」
「さぁ。知りません。オレ急いでるんで」
カカシの横をすり抜けたゲンマの後を付いて行く。
「なに?何の用事」
まだ話をしたいのか付いてくるカカシにゲンマは振り返り、嘲笑うように片頬を上げる。
「この後サクラに呼ばれてるんで。それじゃあ」
スタスタと去っていくゲンマ。
カカシはまた1人取り残されて。
「・・・・・・はっ!?」
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