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short.1

いつものように自分の部屋でダラダラと過ごしていると、サクラがつけたカレンダーの日付が数日前で止まっているのに気づく。
また「何のためにつけたと思ってるの!」って怒られるなぁと思いながらビリビリと破く。

「・・・あれ」

ペラペラと、ある日にちまで捲ると、そこに赤いペンで「1年!」とでかでかと書いてあった。
しかもハートまで書かれていて、すぐにこれを書いたのが誰か分かる。
同じこと書こうとしたのに先越されたなー、とニヤけながらベッドに倒れ込む。

「1年、か・・・」

天井を見ながら呟く。
今まで何人も付き合ってきたが1年も保ったことがない。
来るもの拒まず、去る者追わず。
ただ性欲を発散させるために寄ってきた相手と付き合って、すぐに「私のこと好きじゃないんでしょ」と皆決まって同じことを言って去って行く。
オレは一言も好きなんて言ったことないんだけど。
でもサクラにはウザがられるぐらい好きと言っている。
言わないとサクラが離れていくかもしれないという不安、そしてサクラから好きと言われた時の幸福感。
そこでようやく彼女たちがオレに好きを求めていた理由が分かった。
言われないとどんどん不安になるんだ。
その気持ちを教えてくれたサクラだけは絶対手離すわけにはいかないのだ。

しかし最近、好きだと言ってもサクラが遇らうようになってきた。
マンネリを脱するには、この1年目に何かしたいところ。
オレはベッドの横のサイドテーブルに置いてある雑誌を手に取る。
サクラが暇潰しに置いてある雑誌をペラペラ捲っていると折り目が付いているページに気づく。
そのページを見ると綺麗な宝石が付いた指輪の写真が載っていた。
この間、部屋に来た時に目を輝かせて見ていたのを覚えている。
これをあげたらきっとサクラは喜ぶだろう。
値段も上忍の給金からしたら余裕で買える。

「でもなぁ・・・付き合って1年で指輪は重くないか?」

オレは大きくため息を吐く。
付けるなら薬指だ。
そりゃいつか結婚したいとは思うけど、まだサクラは16歳。
まだ友達と遊びたい年頃だし、これから忍として成長していく。
結婚という足枷はまだしたくない。
それに昔から結婚願望がないから特に急ぐ必要もない。

だが本人は気づいていないがサクラは本当にモテる。
人当たりは良いし可愛いし。
モテないというほうがおかしい。
オレとサクラが付き合っているということは身近のやつは知っているが、まだ知れ渡っていない。
サクラとお近づきになろうとする野郎を退けるためにも虫除けは必要なわけで・・・。


オレはムクっと起き上がり、部屋着から着替えるためにタンスを開けた。



****



付き合って1年の今日。
せっかくなら良いレストランにでも行こうかと考えていたのだが、サクラに希望を聞いたら少し高いお惣菜を買って家でゆっくりしたいと言ってきた。
同じ時間に仕事を終え、手を繋いでデパートに行き地下で普段は買わないものを買ってオレの家に帰る。
一緒にワインと高いジュースも買って。


「なぁ、本当にレストランとかじゃなくて良かったのか?」

普段デパートに寄り付かないからあれもこれも買っていたら結構な量になってしまったのだが、お腹も空いてたこともありデザートもペロリと平らげた。
ワインも飲んで程よいほろ酔い状態で、向かいでお腹を撫でるサクラに聞く。

「うん。レストランだと緊張しちゃうし、ちゃんとした服なんて持ってないもの。部屋で先生とゆっくりお喋りしたほうが良いわ。それにケーキも美味しかったし!」

また食べたいな〜、と上目遣いでおねだりしてくるサクラに、またオレはサクラのために買いにいくだろう。
しかし、ここずっと計画していたことが無駄になってしまった。
まぁいいか、とオレは立ち上がる。
サクラの視線を感じながらポーチから箱を取り出し、深呼吸をしてサクラの元に戻る。
そして椅子に座るサクラの横に跪く。

「・・・え?」

突然のことに目を丸くサクラ。
オレは手に持っていた箱に入っている物を手に取って、サクラの左手の薬指に付ける。
サクラは自身の指に付けられた煌めく物を見て口をパクパクさせている。
そんなサクラが可愛くて小さく笑って、いつも曲がっている背中を伸ばすとその雰囲気を感じとったサクラは体をこっちに向ける。

「えーと、まだプロポーズするには早いと思ってるんだよね。まだお前も16だし」
「うん」
「これからのお前の成長を考えたらこんな束縛する物は贈らないほうがいいんだろうけど。でも、サクラはオレのものだって周りのやつに教えたいんだ。変な虫が寄ってこないように」
「変な虫って、そんなの来ないわよ?」
「いいや、来るよ。サクラは誰が見ても可愛くて素敵な女性だから。いつか同い年の、オレより若い男の方が良いんじゃないかって・・・」

気づいたらまた背中が曲がって俯いていた。
その顔をサクラはグイッと上に向けて、目が合うと唇を尖らせて怒った顔をしている。

「先生は私が他の男の人を好きになると思ってるの?そんなに私信用ない?」
「い、いや、そうじゃなくて、ただオレにサクラがずっと側にいてくれる自信がないというか・・・」
「何それ。私、今まで何回も先生が好きって言ったわよね」
「うん・・・でも14も年が離れてるだろ?」
「そんなの最初から分かってたことだわ。おじさんと付き合って今更同世代と付き合いたいとも思わないし」
「おじさん・・・」

サクラに顔を掴まれてなければ床に顔が付いているだろう。
何故こんなことになったのか。
記念すべき日なのに。


「そんなに信頼してくれないならこの指輪返すわ」
「えっ!?」

顔から手を離したサクラは先程指に付けた指輪を外す素振りをする。
情けなく縋るようにサクラを見ると、チラッとこちらを見てくる。

「いや?」
「嫌だ」
「なら私が好きだって言って。私が他の人好きになっても絶対手放さないって言ってよ」

「絶対誰にも渡さない。ナルトにもサスケにも絶対に。死ぬまで、死んでもサクラだけを愛してる」
「もう・・・最初からそれ言ってよね」

サクラは嬉しそうに笑ってキスをしてくれる。
可愛らしく啄むようなキスをして顔を離す。

「・・・馬鹿」
「ごめん・・・」

頬を膨らませて怒った顔をするサクラも可愛い。
サクラの頭の後ろに手を回して引き寄せて、先程とは違う大人のキスを。
頬を真っ赤にしてサクラからも舌を絡ませてくれる。
静かな部屋の中で2人のイヤらしい音だけが聞こえる。

名残惜しく唇を離し、サクラの太ももに顔をポスン、と埋めた。
サクラは優しく髪を撫でてくれる。
その気持ちよさに心が癒されていく。

「先生の心配性」
「うん」
「任務の時はあんなにカッコいいのに。他の人にはこんな姿見せれないわね」
「えー、こんなふうにしたのはサクラでしょ」
「あら、私のせい?」
「そう。サクラをこんなに好きにさせたんだから」
「じゃあ心配性で自信がなくてカッコ悪い先生にした責任取らなくちゃね
「うん。1年後も2年後も、おじいちゃんになって死ぬまで側にいてよ」
「うん。約束」

右手の小指を出すと、それに左手の小指を絡ませてゆびきりげんまんをする。
なんて子供みたいなんだろう、と思ったが、こんな幸せな約束が出来ることを今日知ることが出来た。


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